そして今年新入社員の皆さん頑張りましょう!!僕は既に心をやられかけてます!
「ではでは翔さんの泣き顔も見れたことですしこれからの方針を決めていきましょうか」
「俺の泣き顔はいんだよ」
少し赤く晴れた目を擦りながらそう言う。
‴あぁ本当に俺は恵まれている‴
何故だか急にそんなことを思ってしまう。世界も滅んで。人口も十分の一になって。なのに俺には大切な家族が、守るべきものがある。
それだけでこんなにも変わるものかと感じてしまうほどに。
「まぁ皆さんの考えをまとめますとこれから柊シノア隊は『家族を大事に』。こんな世界でそんな方針になるとは思いませんでしたが──それで戦っていきましょう」
皆が頷くことによって決まった。
『家族を大事に』。この世界では全くもって異端な考えであり、本を読んでいた時はいい考え、すごいな、よく生きていける気になれるな、なんて思ったけれどこの世界で生きてきた限りやはり異端だと同時に感じてしまった。
「それであなたはどうするつもりなのかな?」
「そんなの決まってんだろぅが。王が決めたことならオレはそれに従うだけだ」
「そう、でもあなたはまだ彼を狙っているんでしょ?」
「当たり前だろぅが。オレはあいつであいつはオレだ。あいつの体はオレのもんでありあいつのもんでもあんだからよ」
「そう言う割に必死に護ろうとするのよね。…まぁ彼も貴方も昔からそういう所は変わらないから」
「…ッチ。やリずれぇ女だよテメェは。まぁ王がオレの力を望むなら貸してやる。だが……それでオレに飲まれても知らねぇけどな」
東京──名古屋間へと繋ぐ東名高速道路。そこを一台のバイクが走る。
「ったく…。なんで俺だけ集合時間が早ぇんだよ…」
背中に大きな刀の鬼呪装備『斬月』を背負う彼──朝倉翔は朝日が昇り始めると同時にバイクを走らせていた。何故こんなにも早く移動しているかというと単純に一瀬グレン中佐からの直接の命令だからである。
なぜ呼ばれたのかさえ分からず、指定の時間に来いとだけ言われそこにはバイクが置いてあったので向かっている。ということである。
「まぁあいつが急に呼び出すなんてのはいつもの事だし、慣れっちったよ。……慣れたくはなかったんだけどな」
苦虫を噛み潰したよう顔で言うも彼は更にスピードを上げ目的地である海老名サービスエリアへと向かった。
「よぉ、よく間に合ったな翔」
「……テメェグレン。あの時間に海老名に来いってわざと間に合わせないようにしたな」
「はて、何のことやら?」
手振りで分からない、と言いだけにする。
それにカチンときた翔は背中へと手を伸ばす。
「お前は今ここで殺す。すぐ殺す。跡形もなく殺す」
「おぉ言うね〜。だけど無理だよガキが。お前は俺を殺せない。何があってもな」
そう言って翔に背中を向け、建物の中へと向かおうとする。
それを見て冷静になった翔は渋々グレンの後をついて行く。
「おいグレン」
「なんだ?」
「なんで俺だけシノア達とは別の時間なんだ?なんかやることであんのか?」
グレンは口元をニヤッと歪ませながら答えた。
「あぁあるよ。お前にはこれからここで俺と──
戦ってもらう」
「は?お前何言ってんだ?これから大切な任務があんのにバカ言うなよ」
「あぁ悪い悪い。俺じゃなくて
暗い廊下を抜けた先は広い空間になっていた。大凡ショッピングモールか何かの跡地だろう。
そこには見覚えのある五人がいた。
「……まさかグレン隊全員を相手にしろ、なんて言わねぇよな?」
「当たり前だろぅが。相手すんのは俺と深夜だ」
パンを食べながら奥にいた深夜が笑顔を浮かべながら手を振っている。
「やっほー翔。尋問の時以来だねぇ」
「お久しぶりです、深夜さん。それでこれはどういうことか説明が欲しいんですが?」
ごくん、とパンを飲み込み、んー?と考える素振りをしてから答えた。
「単純に興味本意だよ」
「…言っている意味が分からないです」
「だーかーらー。君の鬼呪装備について知りたいから戦おうって言ってるんだよ」
「!!」
それを聞いた翔は驚いた。まさかと思うが『斬月』の憑依について知っているのか…。
まだシノア達にしか見せてない
「その反応だとあんまり知られたくないって感じだね。まぉ安心しなよ。ここには僕達しかいなし知ったとしてもそれを誰かに口外することは無いから」
朗らかに笑いながら言う深夜。だが──
「(グレンが言ってた通りなら彼の黒鬼は異常そのものってことみたいだし。それに彼の様子を見る限り、鬼のせいで感覚が異常なほど敏感になってる。それこそ僕が気づかれないように当てた殺気にも反応してたしね)」
深夜は密かに影から翔に対して僅かな殺気をぶつけていたのだ。翔はそれに
もちろんそれにはグレンも気づいていた。だからこそ今回特に用事もない中、翔を呼びつけたのだ。
時雨にシノア隊を監視させ──特に翔を──知ったのが翔の鬼呪装備の異常な憑依化。
それがもし自分たちに向けられたと、仲間を失いかけることに繋がるのならば──と考えた末の結論であった。
要は翔の力がこれからも
「…わかりました。でもここにいる人達以外には見せら「わかってる。だからお前を呼んだ」
そう言いながら刀を抜くグレン。それを見て翔も斬月へと手を伸ばす。
「これに時間をかけるつもりは無い。だから初めから全力で来い。深夜」
「はいはーい」
「お前は俺の援護だ、普通にやれ」
「わかってるよグレン。そんなに心配しなくても」
「じゃあ始めろ」
「……どうなっても知らねぇからな」
刀を真っ直ぐ相手に突きつけるようにし、左手を右肘に添え腰を落とし口上を述べた。
「卍、解!!」
翔を中心として煙が舞う。それを二人は目を細めながら見る。いや見てしまったのだ。
何故なら翔の体に鬼呪が
「ねぇグレンあれって…」
「あぁ、あいつ鬼呪を体内から出して身に纏いやがった」
深夜の疑問も尤もだ。何故なら鬼呪とは体内にあって身体能力等を鬼の力を引き出して使うものだからだ。
それを体外へと出してしまえば使用者本人は弱ってしまう。
いい例を上げればシノアや三葉等が該当するだろう。
彼女達の鬼呪装備は『具現化』なので特殊な能力を使える。だが、それは己の鬼呪を外へと出しているからだ。ならば体内の濃度を下がっていく一方だ。
なのにそれを更には纏うなど異常にも程があるのだ。
煙が晴れればそこには帝鬼軍の制服ではなく、黒のロングコートを羽織っており、先程まで刀と形容するには多すぎる刀は純黒の日本刀へと変貌していた。
「天鎖斬月ッ。グレン、まだこの力に慣れていなくて加減ができそうにない。だから…
死なないでくれよ!!」
そう告げた瞬間二人の視界から翔は消えた。
「ッチ!後ろだ深夜!!」
いち早く察したのはグレンだった。ワンテンポ遅れて深夜も反応するが既に翔は刀を振るおうと『天鎖斬月』を構えていた。
「っちょ!!これは反則でしょ!?」
後退しながらも『白虎丸』の引き金を引く。だが──
「嘘でしょ!?今のを躱すの?!」
「これは予想外だな…。いや厄介すぎる」
ゼロ距離で放たれた銃弾は翔には当たらなかった。
翔は最初の位置へと瞬間移動でもしたかのようにいる。
内心でまずいと思いながらも翔へと『真昼ノ夜』を振るう。
徐々に二人の剣戟のスピードは増していく。
均衡していると思われたが少しずつ翔が押し始めた。
だがそこで深夜の援護射撃が間髪なく入る。
「ナイスだ深夜」
深夜の元まで下がったグレンは一息ふぅとつく。
「もういいじゃないかグレン?今回の目的は分かった。お前は俺の力がもし暴走したら──って考えてるんだろうけど俺は傷つけない、傷つけたくない。それが寧ろ仲間なのならば尚更、な」
「そんなことはわかってる。だが、確認は取るのは上司としての役目だ」
それを聞いたグレン隊のみんなの反応は様々だった。
腹を抱えて笑う者やため息をつくもの。更には流石です!と尊敬の眼差しを向けるもの、それに同意するもの。
そんな反応を尻目に嫌な顔をしながらも答えた。
「……お前が上司とこブラック企業すぎるわ」
「よーし。今から全員でお前に攻撃を仕掛けるから覚悟しろよ」
それを聞いてみんなが構える。何故だかみんなの笑顔は怖かった。
「え、ちょっと待て。ほんとにやんのか…?来ないで…来ないでください!お願いだから!!いやぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁ!!!」
海老名サービスエリアに朝から悲鳴が上がったを聞いて他に集まっていた隊員たちは頭に?を浮かべながら来るべき時を待っていた。
──────
翔の卍解は上は一護の着ているもので下は帝鬼軍のものです。
案外合うんじゃないかなって考えてしました。
因みにグレンが本気を出せば卍解中の翔でも苦戦します。今回のは確認の為、こうしました