ソロプレイで何が悪い。   作:生粋のソロプレイヤー

1 / 1
とあるソロプレイヤーの末路

 

 ソードアート・オンライン。

 

 連綿と受け継がれてきたゲーム史に、大きな爪痕を残すこととなったVRMMORPG。

 

 一万ものプレイヤーが囚われ、ゲームオーバー=現実世界での死という過酷なルールを課された。

 

 プレイヤー達は絶望し、悲嘆に暮れ、落胆した。

 

 それでもプレイヤー達はSAOの攻略を進め、二年が経つ頃、一人のプレイヤーによってSAOは突如、終わりを告げることとなる。

 

 SAOをクリアへ導いた者の名を、キリトと云う。

 

 黒の剣士、ビーター、英雄。

 

 呼ばれ方は様々だったが、彼について語る者は口を揃えてこう言った。

 

「奴はソロ(ぼっち)だ」とーーー。

 

 ソロプレイヤー。

 

 特定のパーティーを組まず、単独行動を基本としたプレイングを選んだプレイヤーをそう呼んだ。

 

 ソロプレイのメリットは大きい。

 獲得経験値・ドロップアイテム・通貨(コル)の独占。

 ステータスの秘匿。

 フットワークの軽さ。

 

 だが、ソロプレイの大きなメリットにはそれ相応のデメリットが付きまとう。

 

 戦闘の長時間化。

 情報の少なさ。

 背負うことになる高いリスク。

 

 ソロプレイの高いリスク。

 それは、戦闘時に助けに入ってくれる仲間がいないことだ。

 

 麻痺にかかった。

 スタンした。

 武器を落と(ファンブル)した。

 武器・防具を壊した。

 ポーションが切れた。

 罠にかかった。

 

 どれもSAOでは、いつ起こってもおかしくない事象である。

 事実ソロプレイヤーの鑑であるキリトも、幾度となくこういったピンチに陥ったという。

 こういった窮地に立たされた時に、フォローのできる仲間の存在は必要不可欠だ。仲間がいなければ、死亡は必然。ソロプレイヤーが運良く生き延びたとしても、次は無い。

 それでもソロプレイを続けるような奴は、物好きか酔狂だとしか思われない。

 

 

 

「キリトの生存は必然だった」と彼は語る。

 

「奴はソロプレイヤーであって、ソロプレイヤーではなかったから」と彼は嘲る。

 

「奴の周りには人がいて、仲間がいた。奴のことをみんなが見ていた」と彼は蔑む。

 

「奴は知っているはずだ。仲間を失う痛み。その罪を」と彼は詰る。

 

「おれが……。おれこそが、本当のぼっち(ソロプレイヤー)だ」

 

 

 

 リンゴーン、と遠くの方で鐘が鳴る。

 

 響き渡る鐘の音は握る短剣の刃に乗り、楽しげに跳ねる。

 両目を深く覆う前髪を掻き上げる。

 

 空を仰ぐのは何日ぶりだろうか。

 

(そういえば、SAOでは一度も星、見なかったな)

 

 二年前までは、立派な趣味と呼べるほどには興味関心を持っていた天体観測。

 それを続ける理由が、この世界には無かった。

 この世界の空に色は無い。

 見せられてるだけの風景には、情緒も趣も無い。

 

 こんな思考に走ったのは、もうすぐ現実世界に帰るのだと理解したからだろうか。

 

(ああ、多分あいつだろうな)

 

 仲間と呼ぶつもりは決して無いが、同じ人種だと思っていた(キリト)がゲームをクリアしたと、容易に想像できる。直、アナウンスがされるだろう。

 

「ゲームはクリアされました」

「ゲームはクリアされました」

 

 無機質な女性の声が木霊する。

 推測通り、ゲームクリアのアナウンスが流れる。

 チュートリアルの赤フードの言っていたことが確かならば、これから生き残ったプレイヤー達は現実世界で二年の眠りから覚めるだろう。

 

(……面倒だな)

 

 現実世界と仮想世界。

 比べるまでもない。

 どちらがより面倒だと考えるならば、秒速脳内会議の末、圧倒的に現実世界だ。

 

(さて、茅場晶彦。いや、()()()()()()と呼んだ方が適切か)

 

「おれはあんたと行こう」

 

 目の前に鎮座するモノリスに手を当てる。

 

 ここはアインクラッド50層に聳え立つ迷宮区。その入り口だ。

 

 ヒースクリフ(ラスボス)が倒されたからか、或いはカーディナルの気まぐれか。

 

 右手で触れているモノリスは、カーディナルシステムにアクセス権を持つようだ。

 

 半信半疑だったが、大当たりだった。

 

 ホログラムキーボードを押すと、続けざまにウィンドウが幾つも出現した。

 目を通して必要な情報だけを抜き出す。

 目の上を走る膨大な情報は、命の奔流でもある。こんな文字列だけが、おれや他のプレイヤー達の存在を証明し続けていたのだ。これだけのことをやってのける、茅場晶彦という人間のスキルにため息が出てしまうが、喉の奥に留める。

 

(ヒースクリフのアカウントから辿って……。こいつか。茅場に与える電磁パルス情報をおれのものと同期化……できた。さあ、お前はどうするんだろうな)

 

 おれのやったことは、茅場の被っているだろうナーヴギアとおれが現実世界で被っているナーヴギアを、カーディナルに一時的に誤認させて同期しただけだ。

 茅場のナーヴギアは特注で、SAO内で死んでも現実世界では死なないのだったならば、この行いには何も意味もない。

 

 だが、茅場晶彦は何かをするはずだ。

 VR黎明期に自身が蒔いた種は、明るい未来を秘めたものなのか。それとも災禍を呼ぶものなのか。

 奴がそれを確かめないはずがない。

 

 おれは、茅場の行く末が見てみたい。

 

(他人に興味を持つなんて、何年ぶりだろうな)

 

 アインクラッドという異世界を作り出し、一万もの虜囚を生み出した男の目には何が映るのか。

 

(あんたは覚えてないだろうが、あの日ーーー)

 

 もう一度、空を仰ぐ。

 天を突き抜けるように立つ迷宮区の塔は、地上100mで途切れてしまう。

 そこに()()があるからだ。

 地面とはすなわち次の階層の。ぷつん。

 

 

 

 

 ーーーーーー

 

 

 その日、ソードアート・オンラインを生き抜いたプレイヤー約六千人が、醒めぬ眠りから解放された。

 

 どのプレイヤーも体毛は伸びきり、筋肉は削げ落ち、骨は今にも折れそうになっており、社会復帰にはしばらく時間がかかると予想された。

 

 数多くのプレイヤー達が現実世界への帰還を喜んでる中、総務省SAO事件対策室の片隅で小さく話題になった事象があった。

 

 黒幕であるヒースクリフがゲーム内で倒され、現実世界でナーヴギアに脳を焼かれて絶命したと同時に、第五十層でも一人のプレイヤーが死亡していた。現実世界で寝ていたはずのプレイヤーも脳を焼かれており、最後に亡くなったプレイヤーとして碑に刻まれた。

 ヒースクリフと同時に、という点が対策室の面々の頭に疑問符を浮かべさせたが、予想外の速さでのクリア後の対応に追われ、偶然だと考えられた。

 

 

 

 これは、最初から最後まで一人(ぼっち)を貫いた男の生きた証だ。

 

 フレンド数0人。

 パーティー結成回数0回。

 トレード回数0回。(売買回数は含まない)

 スイッチの回数0回。

 

 他人と関わることを徹底的に避けてきた彼を、黒の剣士はこう呼ぶ。

 

「奴は真のソロプレイヤー(ぼっち)だ」とーーー。

 

 






次からギャグ入れます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。