ホットスパーズ ~命知らずの騎士と二人の女神~   作:公私混同侍

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現代
忍び寄る影


三月のとある夜……。

 

隆太「皆さんと一緒に遊びに行きたいのですが、どこがいいでしょうか?」

 

あかり「あたしはみんなに合わせる」

 

サリー「好きにしてくれ」

 

ルナ「……」

 

ゲルマ「やれやれ、どうしたものか」

 

恭夜「空気が重いなぁ。何かあったの?」

 

隆太はおどおどしている。あかりはため息をついた。サリーは腕を組み潜考しているようだ。ルナはうなだれている。恭夜は首を傾げている。ゲルマは頭を傾けている。

 

恭夜「サリーは桜を見たいとか言ってなかったっけ?」

 

サリー「言った気がするな」

 

隆太「花見ですね!僕はいいと思います!」

 

あかり「他に行きたい人は?」

 

ルナ「……」

 

ゲルマ「花見はいいとして果たして桜は咲いているだろうか?」

 

恭夜「まだ咲いてないのか……」

 

サリー「慌てる事もないだろう」

 

隆太「四月まで待つということですね?」

 

あかり「後一ヶ月ぐらいだね。ルナお姉ちゃんもそれでいい?」

 

ルナ「え?あ、うん」

 

ゲルマ「嫌なら嫌と言うべきだ。バッティングセンターならマスターもついてくる」

 

恭夜「オマケみたいに言うな。俺は野球に興味ねぇし、それにみんなで遊べる場所だって言ってるだろ」

 

話は決まったようだ。ゲルマの些細な一言でルナの表情が緩む。部屋中の風通しも良くなった。隆太が夕食の準備に取りかかろうと立ち上がる。

すると、サリーの携帯に着信音が鳴り響く。画面を見て眉間にシワを寄せた。スッと立ち上がり外に出る。

 

サリー「もしもし――」

 

?『やあ、僕だよ。去年パーティーでビジネスの話を交わしたんだけど覚えてないかい?』

 

男の声だ。サリーは周囲を見渡す。

 

?『サリー?君はサリー・ラングニックだろう?』

 

口調を変え高めの声で問いかける。

 

サリー「そうですが、どうしてこの番号を?」

 

?『僕にとっては造作もないことさ。なんせ情報屋だからね』

 

サリー「情報屋?……あ、ああ!思い出しました。その節は色々とご教授いただきまして――」

 

?『いいんだよ。あんな昔話、挨拶みたいなもんさ。それよりも僕と君にとって大事な話があるんだ』

 

サリー「何でしょう?」

 

?『僕と一緒にビジネスをしよう』

 

サリー「お誘いは嬉しいのですが私も世界中を回っておりますので、そのようなお話でしたら――」

 

?『君は今、日本にいるのだろう?』

 

サリー「!?」

 

?『ゴメンゴメン。驚かすつもりはなかったんだ。でも僕の気持ちを知ってほしくて電話したんだ。今すぐにでも君と会って話がしたい。もちろん君の大事な家族も一緒に構わないよ』

 

サリー「何がお望みでしょうか?」

 

?『僕が欲しいのは情報さ。この意味は君が一番良く知っているはず。六人分のチケットは手配してある。以前会った時、飛行機が苦手と言ってたから船のチケットを用意したよ。それでは約束の地で再会しよう、サリー嬢――』

 

サリーは男の言葉を聞き終える前に郵便受けに手を入れた。中から朱色の封筒が出てきた。中を確認すると男の言葉通り六人分のチケットが入っている。

周囲を確認すると部屋に戻った。

 

サリー「皆に話したい事がある」

 

あかり「どうしたの?」

 

サリー「申し訳ない。桜は見れなくなってしまった」

 

ルナ「どうして?」

 

恭夜「仕事か」

 

サリー「ああ、イギリスに行くことになった」

 

ゲルマ「イギリスか。楽しみだな」

 

あかり「ゲルマお兄ちゃんが行くわけじゃないのに?」

 

ゲルマは目玉をカメラのフォーカスを合わせるように回転させ、ほくそ笑んでいる。サリーの手にチケットがあるのを検知したからだ。

サリーは舌打ちした。恭夜は猜疑心に満ちた表情をしている。

 

恭夜「そのチケット、サリーが買ったの?」

 

サリー「ああ……」

 

隆太「凄いですね。でも、お金は大丈夫なんですか?」

 

サリー「気にするな……」

 

ゲルマ「花見は出来なくなったが、これはこれで都合がいいかもしれない」

 

あかり「でも、サリーお姉ちゃんは仕事で行くんでしょ?」

 

隆太「そうですよ。僕達じゃあサリーさんの足手まといになっちゃいます」

 

ルナ「そんなことない」

 

恭夜「チケットは六人分あるんだ。たまにはこういうのも悪くない。サリーの気持ちに応えてあげるのも俺達の役目なんじゃないかな」

 

サリー「私は皆に構ってはやれないが一緒にいる時間は大切にしたい」

 

ゲルマ「決まりだな。今すぐ準備しなくては」

 

あかり「今から?どうしよう?何持っていけばいいか分かんないよ~隆太お兄ちゃ~ん」

 

隆太「分かったよ。僕があかりの分まで準備しとくから」

 

ルナ「優しい、隆太」

 

恭夜は気になることがあったが不安を抱かせたくないと思いその場をやり過ごした。同時に皆を引っ張っていかなければならないという責任感も湧いてきた。それはサリーの身から不穏な気配が滲み出でいたに他ならない。

出発は二日後。恭夜達は急いで身支度を始める。恭夜とサリーは手慣れている。一時間で終えてしまった。

隆太は初めてにも関わらず淡々と荷物をまとめている。あかりは洋服選びに戸惑っている。ゲルマは言うだけ野暮であろう。ルナは誰かに電話しているようだ。

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