ホットスパーズ ~命知らずの騎士と二人の女神~ 作:公私混同侍
庭園の芝はぬかりなく手入れが行き届いている。中央には噴水があるが人は
ルナの体を借りているライナは
ライナ『この国の空気ってなんか汚れてないかしら?』
ゲルマ「埃臭い家に住んでいた人間が言うべき言葉ではないと思うが」
カイン「ボク達の国は血生臭い争いばかりしていたんだ。この世界ではほとんど戦争をしていないみたいで羨ましいよ」
隆太「僕達と生きる世界が違い過ぎて話についていけません」
恭夜「ゲルマ達の時代で起きていた戦争って結局どっちが勝ったんだ?」
ライナ『戦争の勝敗を気にするなんて不粋よ。いつ時代も男って争いが好きなのね』
ゲルマ「言葉の
カイン「そんな声を荒げなくてもライナは理解しているさ」
隆太「兄さんはどうして気になったの?」
恭夜「この出会いが……偶然だと思えないんだ」
ライナ『ゲルマが戦ってた戦争に意味があるっていうの?』
ゲルマ「オレが戦っていた戦争に名前がつけられている事を知ったのは、この時代に来てからだ」
カイン「最後の宗教闘争であり、人類史上初めて、多くの国家を巻き込む戦争を起こしたんだ。この時代の資料にも目を通したが多くの人は知らないだろう」
隆太「学校に行ってるあかりなら知っているかもしれません」
恭夜「聞いたことないなぁ。歴史が好きなサリーなら知ってるかも」
ライナ『昔の人間なんて戦争ばっかりしてたのよ。ゲルマが戦ってた戦争なんて、いつ終わったのかも知らないわ』
ゲルマ「オレも最後まで戦い抜いたわけではないからな……」
カイン「そういえばライナは病死したと村の医者から聞いたんだが、どうも腑に落ちないんだ。あの絵が完成していたと聞いてライナの住まいに赴いたのだが誰かに持ち去られたようなんだ。キミは何か知っているか?」
ライナは唸り出した。記憶を呼び起こそうとしているようだ。周りから人がいなくなった。美術館に来てから時間が経つのが早い。歩き疲れた様子の隆太は
ライナ『ワタシずっと打ち明けようか悩んでいたんだけど、ちゃんと聞いてくれる?』
三人は顔を合わせると頷いた。
ライナ『実は絵を完成させることは出来なかったの』
ゲルマ「どういうことだ?」
カイン「絵が未完成?それは記憶違いではないのか?ボク達はボロゾフ氏の邸宅でキミの自画像が描かれた絵を見ているんだ」
ライナ『あれってやっぱりワタシよね……』
恭夜「ライナが自分で描いたんじゃないの?」
ゲルマ「他の人間に
ライナ『そんなわけないじゃない!』
カイン「写実的で新鮮味のない画風はライナの専売特許のはず」
ライナ『いつからパトロンから批評家になったの?』
ゲルマ「話を逸らすな。オレはリュッツェンの戦いの後、ライナを避難させようと民家へ馬を走らせた――」
ライナ『馬じゃなくてコスモスでしょ』
カイン「その時はいたんだろう?」
ゲルマ「それがどこにもいなかった。何故なら……」
ゲルマは見間違いを恐れているのか発言を躊躇った。恭夜は言いたい事が分かったような気がした。ライナと同じような表情していたのが真実へ近づく
恭夜「ゲルマはアンドロイドに魂を乗せて、ライナはルナの体を借りている。もしかして二人はもう死んでる?」
ライナ『それはアナタの時代から見れば当然でしょ?』
カイン「ボクも恭夜と同じ疑問を抱いていた。二人の肉体はどこにあるんだ?」
ゲルマ「ライナ、はぐらかさず正直に答えてくれ」
ライナ『ワタシは……』
ゲルマ「例えお得意の妄想だったとしてもオレはライナを信じる」
ライナ『本当?疑ったりしない?』
ゲルマ「ああ」
ライナ『ゲルマが来る直前まで絵を描き続けていたの。そしたら身体中が急に冷たくなって――』
ゲルマは自分の事のように耳を傾けている。
ライナ『心が押し潰されるような無力感……全ての感覚が無くなって……体が薄れて消えていくの……ああ、死ぬってこういう事なんだって』
カイン「結局何が言いたいのか僕には理解出来ない」
隆太は寝息を立てている。冷たい風が背中を撫でていく。
ライナ『ワタシ……絵の中に魂を吸い取られたの』
カイン「恭夜はどう思う?」
恭夜「外見がルナだからはっきりとは言えないけど嘘をついてるとは思ってないよ」
ゲルマ「同感だ」
ライナ『どうして信じてくれるの?初めて会ったばかりなのに……』
恭夜「俺達を助けてくれたから」
ライナ『え?』
恭夜「ここに来る前にサリーが脅迫されたんだ。その時ルナの中にもう一人いるのが見えたんだ。たぶんライナでしょ?」
ライナ『覚えてたのね……そうよ……』
ゲルマは隆太を背負い館内へむかって歩き出した。閉館時間のようだ。サリー達と合流するため美術館の前で待ち伏せした。