ホットスパーズ ~命知らずの騎士と二人の女神~ 作:公私混同侍
足跡
夜が深まるにつれ寒さも一段と厳しさを増していく。泊まる所を探して市内を歩くが、大所帯では見つかるはずもなく時間だけが過ぎていく。結局あの場所へと戻ってしまった。ボロゾフ邸だ。
邸宅内の明かりは消えており警備員らしき人物も出払っているようだ。ルナが扉を引くと開いた。この場所に帰ってくる事を予想していたのだろうか。
恭夜達はシェリーヌが鍵をかけずに外出していることを不審に思ったがルナは気にも留めず中に入っていく。
あかり「メイドさん、寝ちゃったのかな?」
恭夜「鍵をかけ忘れるとは思えないけどなぁ」
ルナ「私達が困らないように開けといてくれた」
あかり「えー!本当?」
恭夜「俺達、監視されてんの?」
ルナ「わからない」
隆太は未だ恭夜の背中で寝息を立てている。
サリーは再会したばかりのカインを伴い買い出しに出ていた。ゲルマの様子は以前と変わらない。
サリー「次の狙いはなんだ?わざわざ素顔を見せたということはそれ相応の目的があるはずだ」
カイン「今のボクは無防備だ。それにキミ達に敵対心はないし、ましてやキミと斬り合おうなどと考えてもいないよ」
ゲルマ「良かったな、体目当てじゃなくて」
サリー「何?」
カイン「語弊のある言い方はやめてくれないか?キミの以前の性格からは想像できないキャラクターだよ」
ゲルマ「この体を作った博士達の性的
サリー「博士達がそんな下品な思考をインプットするわけないだろ!」
カイン「ところでサリーに確認したいことがあるんだ」
サリー「なんだ?」
カイン「その刀はいつから
サリー「これか?これは……確か恭夜が……」
ゲルマは口を閉じたままため息をした。
カイン「恭夜が刺された時では?」
サリー「!」
ゲルマ「マスターは刺された事があるのか?」
カイン「ああ……ボクが刺したんだ」
サリー「な、なんだと!?」
ゲルマ「何故刺した?」
カイン「命令されたからだ。ボクは弱みを握られていてね。逆らえる立場になかった」
サリーはカインを睨んでいる。今にも斬りかかりそうな形相だ。
ゲルマ「誰に命令された?」
カイン「……ヘルマン・ラングニックだ」
サリーは舌打ちした。
ゲルマ「ヘルマン……ラングニック……まさかあの男がこの時代にいるのか?」
カイン「ああ」
サリー「その男の目的は何だ?」
カイン「絵画を揃え絶大な権力を得る。そして世界を意のままに操る力こそがヘルマンの本願」
ゲルマ「短絡的な男だ。昔からそうだった」
サリー「昔から?さっきから何を言っているんだ?」
カイン「二度も同じ話はしたくはないから割愛するよ。ゲルマの頭脳にはヘルマンの情報がある。おかしな話ではないだろう?」
ゲルマ「そういう事だ」
サリー「なら話をややこしくするな」
カイン「それとナイフの件だが――」
ゲルマ「ナイフ?」
サリー「いつナイフの話なんてしたんだ?」
カインは手を口に当てて二人に横顔を向けた。ゲルマはカインの動きを観察している。
カイン「すまない。今のは聞かなかった事にしてほしい」
三人は買い出しを終え再び元来た道を辿る。ゲルマは丸々と太ったビニール袋を軽々と持ち上げサリーに帰宅を促した。サリーの背中が見えなくなるのを確認しカインに問いかけた。
ゲルマ「先ほどのナイフの話だが……」
カインはゲルマと目を合わせようとしない。その表情は何かを恐れているようだ。
ゲルマ「オレのナイフでマスターを刺したのか?」
カイン「……そうだ」
ゲルマ「そのナイフは持っていないのか?」
カイン「抜けなかった」
ゲルマ「抜けなかった?まさかナイフを無くしたのか?」
カイン「いや、そうじゃない。ボクの推測が正しければサリーの刀は……ゲルマのナイフと同一のものだ」
ゲルマ「バカな……」
カイン「信じられない話だと思う。しかし、説明がつかない。何故ナイフが刀に変化したのか?それはボクにも分からない」
ゲルマがそれ以上問いただす事はなかった。