ホットスパーズ ~命知らずの騎士と二人の女神~ 作:公私混同侍
一行は最後の経由地ロシア、ウラジオストクに舞い降りた。
恭夜「飛行機もたまには悪くないなぁ」
サリー「あかりと隆太は怖くなかった?」
隆太「怖くないと言ったら嘘になります」
あかり「でもパパとママがあたし達に勇気をくれたから、もう何も怖くないよ」
カイン「健気だね。恭夜とサリーが心の支えにしたくなるのも頷ける」
ゲルマ「気になっていたのだが――」
ルナ「ゲルマ?」
ゲルマ「カインはいつまで見送るつもりだ?」
カイン「もうすぐ目的地だ。そこまで案内したらボクの役目は終わりさ。心残りはあるが……」
サリー「まだ何か企んでいるのか?」
あかり「もしかして一緒に住みたいの?」
隆太「カインさんなら大歓迎ですよ!」
カイン「キミ達と行動すると中々気まずくてね。気持ちだけ有り難く受け取っておくよ」
ルナ「気まずい?」
恭夜「水臭い奴。ここぞとばかりにカッコつけやがって」
カイン「キミがいるからだ」
サリー「喧嘩でもしたのか?」
ゲルマ「悩んでいるとお見受けする。吐き出せる時に吐き出さなければ、ライナがオレ達に与えた『今』という時間を失なってしまうことになる。失われた時間はもう返って来ない」
ゲルマ「ゲルマ、元気出して」
カイン「恭夜、ボクはキミに謝罪しなければならない」
恭夜「初めて会った時のことか?あれぐらいの傷ならすぐ直るから気にすんなよ」
カイン「ボクはキミを二度、殺そうとしたんだ」
あかり「えぇぇぇ!」
隆太「どうしてですか!?」
サリー「聞き間違いか?私が聞かされたのはナイフの件だけだ」
カイン「キミは溺れた経験をしているだろう?」
ルナ「えっ?」
恭夜「お、おい!まさかカインがフェリーから突き落としたのかよ!?」
ゲルマ「それもヘルマンの差し金か」
カイン「元の時代に戻るためにはヘルマンの命令に従うしかなかったんだ」
ルナ「私が助けた」
サリー「そうだったのか。ルナには世話になりっぱなしだ。お礼にはならないが今度一緒にバッティングセンターとやらに連れて行ってくれないか?」
ルナ「うん!」
ゲルマ(ルナの刀は恐らくマスターが溺れた体験によるものだろう。ライナの発言が正しければの話だが――)
サリー(恭夜が抱いていた『水』のイメージが刀に具現化したとでも?憶測に過ぎないが私の例もある。とりあえず頭の片隅にでも置いておくか)
ゲルマ「何故マスターの命を執拗に狙う必要があった?」
カイン「サリーを精神的に追い詰め、この世界に失望させヘルマン自身に従属させたかったのかもしれない。共依存の関係にある二人を分断させるには恭夜を殺害する方が手っ取り早いからね」
ゲルマ「結果的に家族の絆を強くさせたのはヘルマンにとって最大の誤算だったわけか」
カイン「因果応報さ。いづれボクに神の裁きが下るだろう。二度と……いや、三度同じ過ちを繰り返さないよう肝に命じないと」
あかり「ねぇねぇ、溺れた恭夜お兄ちゃんをルナお姉ちゃんを助けたってことは――」
ゲルマ「あかり、料理で男の胃袋をつかめという格言があるが、火に油を注ぐ女だけにはなるな」
カイン「それは戒めと言えるのか?」
隆太「そっか!兄さんはルナさんに人工こ――ぶぶぶ!」
恭夜「アハッ!強固な
意味不明な言動と猟奇的な表情で隆太の口を塞いだ。
あかり「やめてよ恭夜お兄ちゃん!隆太お兄ちゃんが死んじゃうよ!」
サリー「はうっ!?――恭夜ぁぁぁ!貴様ぁぁぁ!」
恭夜「サ、サリー!?な、なんで怒るんだよ!?ルナは人助けをしただけで俺は人工呼吸されただけなんだ!それに俺のファーストキスは夢の中、でしょ!?だから刀を俺に向けないでぇぇぇ!!」
ルナ「ふふふ。まさにつけ焼き刃、だね!」
あかり「ルナお姉ちゃんって小悪魔だよね」
隆太「今のサリーさんは鬼にしか見えないけどね」
カイン「話が大きく逸れてしまったが許してもらえたのだろうか?」
ゲルマ「マスター達から見れば些細な問題に過ぎないということだ」
カイン「それとナイフをキミに返せなかった事も謝らなければならない」
ゲルマ「墓標にならなかったのはオレにとって悪い結果ではない。それに傭兵としての大義名分もこの時代では意味を成さないだろう。カインが自責の念に駆られているのならオレとしても心苦しいだけだ」
カイン「そう言ってもらえると助かるよ」
目的地はもうすぐそこまで迫っている。