【習作】魔術王は他作品にまで聖杯をばらまいた様です。   作:hotice

1 / 12
第1話

 ある日彼、藤丸立香はダヴィンチちゃんに呼ばれ、中央管制室まで来ていた。

 そこで待っていたダヴィンチちゃんと頼れる後輩マシュの姿を見て懐かしさを、そして寂しさを覚えていた。

 いつもほにゃりとした笑顔を浮かべる彼はもういないのだと改めて感じたいた。

 ダヴィンチもそれを悟ったものの、何も言わずに説明を始めた。

 

 「やあ、よく来てくれたね。実はちょっと新たに分かったことがあってね。君のおかげで魔術王の人理焼却は防がれた。その影響でいくつも現れた剪定事象もきちんと抑えられた。そうして今まで乱れていた人理も落ち着いて来たことでより正確な観測が出来るようになって一つ分かったことがあるんだ。」

 

 そうして彼女は苦笑しながら説明を続ける。

 

 「いやぁ、さすがは魔術王だねぇ。

 彼が人類の歴史の要所にばらまいた聖杯の数は確かに七つだけだった。それ以上ばらまいても効果は薄かったし、下手すればバタフライエフェクトで計画に支障が出るかもしれないことを考えれば妥当な判断だろう。

 けれどもそれは彼が作った聖杯が7つだけという訳ではないんだ。恐らくそれよりもっともっと多いんだ。数十個、数百個という単位で作ったんだろう。そして7つだけを送り込んだ後、邪魔になったそれらを計画に支障が出ないようにばらまいて捨てたんだろうね。そうしてばら撒かれた聖杯が各地で厄介事を引き起こしてるんだ。」

 

 どこぞの遠坂家やアインツベルン家が聞いたら憤死ものな話である。

 聖杯をポイ捨てとはおそらく英雄王に並ぶほどの贅沢であった。

 

 「まあといっても大半の聖杯は機能せずにそのまま消滅したんだけどね。例えばエリザベート嬢がハロウィンの時に使った聖杯なんかはあのまま何もしなくても大した影響は与えなかっただろうからね。でも全部がそうなった訳じゃない。いくつかの聖杯は平行世界や特殊な前提事象空間に辿り着いてその世界を滅ぼそうとしているんだ。ただし今回は今までみたいに聖杯達を回収せずに放っておいてもこの世界には関係がない。何の影響も及ぼさないんだ。そういう場所に魔術王は聖杯を飛ばしたからね。

 その上で、だ。」

 

 そこまで言ってダヴィンチは立香の目をのぞき込んだ。彼女は答えが分かっていた。それでもなお問わねばならなかった。

 

 「正直なところ今回のレイシフトはかなり危険だよ。君の歩んできた道はとても困難で危険だった。方向性は違うものの、それに負けず劣らずの危険性がある。

 第七特異点みたいに超ド級の厄ネタがあるわけじゃあない。けれども逆に今回は安全を保障するものがないんだ。

 元からとても不安定な世界であったが故に聖杯の影響で世界が崩壊するかもしれない。アラヤによるサーヴァント召喚がないかもしれない。そもそも人類が滅びるのが確定している世界かもしれない。

 

 それでも君は聖杯を回収しに行くかい?」

 

 もちろんであると、立香はその問に即座に頷く。

 多くの特異点を巡って来た。その中で多くの歴史に、人の思いに触れてきた。

 決して綺麗な物だけではなかった。悲しい出来事で満ち溢れていた。

 けれど決してなくなってしまっていいものではない。決してめちゃくちゃにしていいものではない。

 世界の影響だとか関係のないことであった。命の危険など承知の上であった。

 それでもなお彼は守りたいのだ。助けに行きたいのだ。

 

 「ま、君ならそういうと思っていたよ。何、ロマンはいなくなったがその代わりマシュ君がいる。安心したまえ。」

 

 ちらりと立香はダヴィンチちゃんの横に立っているマシュを見た。

 マシュはやっぱりといった顔をしつつも少しばかり不安げな顔をしていた。 

 「そうですよね、先輩。私はもう先輩を守ることは出来ませんが精一杯サポートさせて頂きます。」

 マシュはホムンクルス故に自己の確立に必要な経験というものが不足している。

 故に立香は彼女の中でいかにシールダーという立場が大きかったかを知っている。あの旅の続きを望んているのを知っている。

 けれども彼はマシュを連れていくことは出来なかった。マシュだって何も言わなかった。

 ただ彼に出来るのは頭を撫でてやることだけった。

 「例え一緒じゃなくてもマシュは俺の相棒だ。頼りにしてるよ。」

 「!!  はい!頑張ります!」

 マシュがぱっと笑顔になった。思わず立香は彼女にぶんぶん振られている尻尾を幻視した。

 「ふふっ。二人ともイチャイチャするのもそこまでにして、レイシフトの用意をお願いするよ。」

 ダヴィンチの茶化す様な声を聴いてマシュの顔が真っ赤になる。

 (かわいい!!)

 「立香君動じなくなったね・・・。」

 カルデアにおいてこの二人はクーフーリンとかドレイクとか達にさんざん茶化されたのだ。それはもうさんざんに。中学生でもあそこまではしないだろう。

 さすがに立香も茶化されるのには慣れた。

 というか未だに真っ赤になるマシュがピュアすぎるだけである。

 「いやぁ、面倒みてた後輩が偉業なしとげて、かわいい子と純情な少女漫画みたいにいちゃいちゃしてたら茶化さずにはいられないってもんだよ。

 まあそんことはおいといてだ。じゃあ今回のレイシフトについて説明するよ。」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。