【習作】魔術王は他作品にまで聖杯をばらまいた様です。 作:hotice
「さて、今日はこれくらいにして休むといい。こちらも色々と準備せねばならんのねでね。
大和、大淀に部屋などの準備を頼んである。案内してやってくれ。201号室で待っているはずだ。」
そう言って元帥は立ち上がる。その顔は満足気なものであった。
大和の案内で、立香達が建物内を歩いていると窓から見える中庭には人が集まっていた。何やら舞台の上で艦娘が踊りながら歌を踊っている。観客たちの中には、必死にその子を応援している艦娘や、一緒に踊る小さな艦娘、野次を飛ばす艦娘など様々な艦娘がいて、はじっこの方で提督達がその様子を微笑ましそうに眺めていた。
「ああ、那珂さんのライブ今日だったんですね。」
大和はぽつりと呟く。
「あの、歌っている人は軽巡の那珂さんでアイドルを目指しているらしく、月に数回こうして中庭でライブをするんですよ。」
「彼女はどうしてそんなことを?」
立香は思わず尋ねた。カルデアにも(自称)アイドルがいるからだ。彼女の願いは歪んでいた。純情な少女のアイドルへの憧れ、いつまでも若く美しくいたいという残虐非道の血の伯爵夫人の妄執。それらが入り混じった、とても歪んでしまった願いだ。どこまでもピュアな願いに血の怨恨がへばり付いた錯誤的な願いであった。
しかしながら今中庭で踊っている彼女の姿はとても誇らしげで楽し気であった。まさに皆の思い浮かべるアイドルがそこにいた。
まあカルデアには皆が思い浮かべない本物のアイドル(偶像)もいるわけだが。
「軍艦であっても今は女の子なのだから、戦うために作られた私達だけど戦うことしか出来ない訳じゃないから。だから私は歌うよ。皆が元気になれるように!
彼女はそう言っていましたね。」
大和は何かを思い出すようにそう告げた。
それはどこまでも誇り高く、希望と未来に満ちた言葉であった。
「うむ。なんとも素晴らしい理由だな。彼女達は物であったらしいが、なんとこれからを生きるための人の言葉であろうか。」
俵はしきりに頷く。彼は戦う者であった。確かに貧困を無くすことのできる宝具を彼は持っているが本質的に彼は生み出す者ではない。
けれど戦う物が何かを生み出す者に、先に進む者になろうとしているのだ。これ程めでたく素晴らしい話はない。
「那珂ちゃん・・・ね。かわいい子じゃない。」
メディアはそう言って彼女を眩しそうに見つめる。メディアには分かった。ある程度この時代の知識があったため、ドレスの素材は悪くない物だがドレス自体の出来はこの時代で売るには余りにお粗末なものだと理解できる。
きっと一生懸命作ったのだろう。アイドルに憧れて、精一杯輝くアイドルになりたくて。軍艦である彼女に裁縫の知識などあるわけがない。どれだけ必死に頑張ったのだろうか。
踊りも歌も練習の後が見て取れる。決して本物の様にはいかないが、十分上手い。どこぞのアイドル娘や皇帝とは違ってだ。
「マスター。後で少し生地をくれるかしら?」
メディアは決めた。彼女に最高のドレスを着せてやるのだと。カルデアにいる阿保ドラゴンアイドル娘にドレスを強請られても微塵も作る気なぞ起きなかったが、今メディアは猛烈に燃えていた。クリエイターの本気を見せてやる。あの子を最高のアイドルにしてみせる。
「・・・・あれ?黒ひげは?」
立香は辺りを見渡す。どう考えても彼が黙っているとは思わなかった。
「主殿、黒ひげ殿ならあそこに。」
牛若丸は中庭の舞台を差す。
「うおおおおおおおお!!!那珂ちゃあああああん!!拙者一発で君のファンになりましたぞおおおおおおおおお!!」
舞台の最前列、そこで黒ひげは叫んでいた。目から涙をぼろぼろ流しながら、黒ひげは必死に那珂の応援をしていた。何故か必死に最前列で応援していた二人の艦娘とも意気投合し、三人で必死の応援をしている。
「一体いつのまにあんな所に・・・。」
「神通さんと川内さん、あのお二人と一瞬で息ぴったりの応援が出来るなんて・・・・。」
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黒ひげは後で回収することにして、とりあえず立香達は大淀の元へと向かっていた。
「失礼します、大淀さん。」
そういって大和は部屋の中へと入る。沢山の書類が置かれた机に座っていた女性が、大和とその後ろの面々を見ると立ち上がる。
「そちらが提督の言っていたカルデアの方達ですか。初めまして、坂崎元帥所属の大淀です。
とりあえず皆さんのお部屋にご案内しますね。」
大淀は目の前のカルデアという組織のメンバーを見る。自らの提督、世界最強の艦娘である大和を率いるこの国の希望。その彼が言ったのだ。
このカルデアは大和より強いと。そう言い切ったのだ。それも総体ではなく個として。大和級を、それ以上を6人も引き連れているのだと。
もちろん大淀は自らの提督が嘘をつかない性格であるのを知りながら、しかしその言葉を信じるのは難しかった。
それ程までに大和は他の艦娘と一線を画すのだ。元帥がその地位にいる理由の多くがこの大和による物であるほどだ。まさに規格外と言ってもいい。
ならばこそ、カルデアは一体どれ程の戦力なのか。
彼らが居れば鬼級や姫級にも対抗できるのだろうか・・・。
彼らが居れば人類はようやく深海棲艦に勝てるのだろうか・・・・。
ぎりぎりイベント始まる前に投稿できた。
7時からイベントだからね!7時から!