【習作】魔術王は他作品にまで聖杯をばらまいた様です。 作:hotice
立香が案内されて部屋で休んでいると、大淀が夕食の案内にやってきた。どうやら提督や艦娘は食堂で食事を取るのが一般的らしく、立香達も食堂へと案内された。
「ここが食堂になります。朝は6時から9時まで、昼は12時から2時まで、夜は6時から8時まで開いていますので、ご自由にご利用ください。」
大淀はそういって、食堂の扉を開ける。食堂はかなり広く、数十人の艦娘達がそれぞれ集まって食事を取っているようだった。真ん中の方の席に座っている坂崎元帥が立香を見つけると手を上げて挨拶する。
「やあ、立香君。こっちの席で一緒に食べないかい?」
「ありがとうございます。ただ、その皆はいいの?」
立香は周りに立っている艦娘たちに戸惑う。彼女達は席に座らず、坂崎元帥の周りに立ちっぱなしであった。
「ん?ああ、大丈夫だ。私達は食事を終わらせている。単純に提督の言っているカルデアとやらが気になってな。」
長身で黒髪の女性が答える。長髪で赤い吊り上がった目、鍛えられた綺麗な肉体をした武人肌の女性はどことなくスカサハを思い出させた。
「提督が言うにはあの大和をも超える艦娘を連れているらしいからな。見たこともない艦娘だが、一体何の艦娘なのだ?」
「長門、色々聞きたいことはあるだろうが先に飯にしよう。話ならその時に聞こう。」
そういって坂崎元帥は立香達に席を進める。少しすると艦娘達が料理を運んできた。
「しかし、元帥は艦娘と同じ席で食事をするのですね。」
アルトリアには意外であった。同じ釜の飯を食べる有効性は昔から変わらないが、それでも普通王族や軍のトップはそんなことを行わない。
「もちろん俺だって仕事が忙しければ自分の部屋で食事を取ることはあるが、基本はここで食事を取っている。」
「成程。素晴らしいことです。しかし元帥であれば全ての艦娘を把握するのは不可能なのでは?」
そう行われない理由など簡単な事である。数の問題なのだ。数千、数万もの人数がいて仲を深めることなど無理な話だ。上に行けば行くほどメリットより労力の方が大きくなりすぎてしまう。
「そうか。その辺説明していなかったが、基本階級に関係なく提督は自分の艦娘の指揮しかしないし、上位の提督からも支持されない様になっていてな。階級も戦果に応じて与えられるもので、あまり階級というのは重要じゃないんだ。
実は旧海軍、いわゆる自衛隊はほとんどが海に沈んでぼろぼろな所に、艦娘を多く従えられる魔術師の家系がどんどん海軍に入ったからな。そのせいで今の海軍はかなり魔術師の影響が強い。一応大規模作戦等の必要性は魔術師でも理解はしているし、艦娘の印象をよくするために海軍の形は保っているが、魔術師は命令されるのを嫌うからな元帥の俺にも指揮権はほとんどない状態だ。」
元帥はそういって苦笑いする。現代の軍でありながら実質軍としての形態は中世の物に近いの物であるのだ。
「そういや立香はサーヴァントと一緒に食事しないのか?」
そう元帥にとってそれは意外なことであった。立香は優秀なマスターである。きちんとサーヴァントと信頼を気づいている様に見えるし、理解しあっている。だからこそてっきり立香も同じようにしているのかと思っていた。
「あはは、実はカルデアは食料不足でして・・・。スタッフさんが何十人もいるのでサーヴァントの人達が食事できるほど食料がなかったんですよね。なにせカルデア以外の世界は消滅して無くなってしまいましたから。」
「・・・・・成程、それでは仕方がないのだろうが。」
呆れたように呟く。確かに世界を救ったからにはなんらかの形で世界は滅びかけたのだろうと予測はしていた、が。
「世界が消滅した・・・。それはどういう意味なんだ?」
長門が恐る恐る聞く。意味は理解できても、想像が出来ない。むしろ想像したくないのかもしれない、世界の消滅なんてものを。
「ゲーティアという存在によって約四千年の人類の歴史が、人類が現在に至るまで存続しているという世界そのものが消滅したんです。」
それは消滅としか言いようがなかった。崩壊でも荒廃でもない、存在そのものが消えて無くなる。余りにも単純で、余りにも馬鹿げていた。
「それを立香君は止めたのか。」
「はい。幸いカルデアは過去にタイムワープ出来ましたから。」
「提督が魔術師だというのは知っているが、魔術とは凄まじいものなのだな。もはやSFの領域だろう・・・。」
化学が生み出した化け物を長門は知っている。人工の太陽。あらゆる全てを破壊しつくす隔絶した熱量を生み出すそれでさえも、世界を消滅させるには程遠い。加えて過去にまで戻れるなどまるでお伽噺の世界だ。
「でもそれだけ凄いことが出来るのなら確かに大和級を6人揃えることくらいは出来るのでしょうけど・・・。」
そう元帥が彼らを招いた最大の理由がその戦力である。大和級を6体、それは余りにも信じがたいことであるが今の話が本当ならばそれも嘘ではないのだろう。
「確かに加賀さんの言う通りね。でもご飯を作り出すのは不可能だった様ですけど・・・。」
黒髪の弓道着を着た女性が悲しそうに言う。海外からの食料輸入が困難な現状、日本には食料に余裕があるわけではなくなった。艦娘達もきちんと食事は採れているものの、一部の大食いの艦娘が満足になるほどの食料は供給しにくいのだ。同様にそれは飲料、つまり酒についても同じである。
「お酒とかも造れたりはしないのよね・・・。」
「すげえ力でお酒が湧いてきたりしねぇかなぁ・・・。ひゃっはっは!」
「全く赤城さんも、そして千歳さん、隼鷹さんもそんなことどうでもいいでしょう。確かに私も沢山料理は食べたいですが・・。」
一部の艦娘は食事、飲酒という行為をとても好む。船の時においしい料理を食べて喜び、酒を飲んで楽しむという行為をさんざん見てきたのだ。故に人の身となった彼女達はその行為に憧れ、体験して感激し、その行為を好むようになる。だからこそ満腹になるまで食べれないことが、楽しく最後まで酒を飲めないことが悲しいのだ。
「ん?拙者の宝具で飯も酒もいくらだって出せるぞ?」
その時赤城にかつてない衝撃が走った。
イベントしてたら遅れちゃいました。
メルトが無事引けて満足です。
後俵さんがお酒出せるかは結構怪しいけど山の幸とか海の幸にお酒くらい入ってると信じて。