【習作】魔術王は他作品にまで聖杯をばらまいた様です。   作:hotice

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第12話

 

 「よしよし、そんなにお腹一杯食べたいのなら俺に任せ給え。」

 

 俵はいきなり席から立ちあがり、近くにある空いた席へと向かう。それこそが彼の願いだからだ。

 

 「ではいくぞ!そら!出てこい!」

 

 掛け声に合わせて手を叩く。机の上を眩い光が包み込み、形を成していく。少しして光が弾けると机の上にはありとあらゆる食材が並んでいた。米も野菜も、肉や魚にお酒まで何でもある。

 回りの艦娘達が驚いたような声を上げる。正しく超常の行いであるが故に。

 

 

 「そ、それはまだまだ出せるんですか!?」

 赤城は必死の顔で俵に問いかける。隣にいた加賀は自身の姉妹艦が大声で問いかけたことに驚いていた。基本的に赤城という艦娘は真面目でお淑やかというのが似合う女性である。食事という行為にかなり思い入れがあるのは理解していたが、しかしこのような期待と興奮が入り混じった少女の様な顔をするとは思ってもいなかった。

 

 「もちろんだとも。確か今は冷凍技術とやらで保存できるらしいから多めに出しても大丈夫であったか。

 よし!全力で行こうか。」

 そういって俵が手を叩くたびに周囲の机に食材が現れる。都合6度程叩いたころには食堂中の空いた席全てが食材で埋まっていた。

 

 まるで野球少年がメジャーリーガーに会った時の様に、赤城は目を輝かせ、ただひたすら凄い凄いと繰り返し呟くことしか出来なかった。大規模作戦等でも一軍に登用されることの多い赤城は空母組や駆逐艦からその落ち着いた性格もあって少なくない尊敬の念を集めている。

 そんな彼女がらしくもなくはしゃいでいたのだが、誰もそんなことは気にも留めていなかった。それよりも目の前で起こった本物の奇跡に目を奪われていた。

 

 「こりゃ凄いもんだ。正しく英雄の所業って奴だな。

 恩に着る俵殿。今まで一部の艦娘達には食事や飲酒を少し我慢してもらってたからな。」

 

 「いやいや、坂崎元帥殿。気になさるな。これこそが俺の望みなのだ。誰もがお腹一杯まで食べられて、誰も飢えることのない世の中がな。」

 俵はそういって笑う。腹をすかせた人が、必死にご飯に齧り付いて、満腹になったときに見せるあの笑顔のなんと幸せなことか。それこそが彼の最大の幸せなのだ。

 約一名、正しくは同一人物だが複数いる騎士は泣きつつ笑ってご飯を食べるという器用な真似をするのだが。

 

 「お、お、お酒が湧いて来た・・・・。」

 「お酒が飲み放題・・。しかもかなりいい日本酒じゃない、これ。」

 何人かの艦娘が調理の必要のない酒を早速口にしていた。その光景を見ながら龍驤は嫌な予感に包まれる。

 鎮守府において酒を飲む場所というのは限られている。居酒屋『鳳翔』か部屋飲みの二つになる。居酒屋『鳳翔』も毎日はやっていないため、必然的に部屋飲みする時がある。

 

 しかしながら、大体どの鎮守府においても部屋飲みが行われるのはほぼ軽空母寮なのだ。それこそ他の艦種の艦娘が飲みたくなるとまず軽空母寮に立ち寄るほどに。

 なにせ鎮守府でも酒好きトップといってもいい隼鷹と千歳がいるため何かしらの酒とつまみが常備されているし、たまに鳳翔がおつまみを作ってくれることもある。駆逐や軽巡の様に酒が飲めない奴もいないし、割と皆ザルなのだ軽空母は。

 まあ瑞鳳は一人だけ弱いのだが、酔わせるとかわいいのでよく皆に潰されている。

 

 そしてもし、こんな状況の軽空母寮に無尽蔵に上手い酒とつまみが供給されるようになれば、だ。結果など目に見えている。

 まあ彼女自身も酒は好きな方なのでそれ程問題ではないのだが、面倒なことになったもんやで、と龍驤は肩を落とした瞬間だった。

 

 

 「俵さん、私と結婚してくれませんか!?」

 「赤城さん、きみそんな阿保らしいことで結婚なんか申し込むんか!?」

 龍驤は思わず突っ込んだ。赤城は少し抜けた所のある人物というのはなんとなく把握していたがここまでとは思わなかった。

 

 「ははは、ありがたいことだが、生憎龍の娘さんを嫁にもらっているのでな。すまんがそれは出来ないな。」

 「相変わらずファンタジーしとるな、そっちも!」

 自身の名前が天に昇る龍を指し示す様に、龍とはまさに超常、怪異の頂点。神の使いともされる存在なのだ。それをさらりと嫁にしたというのだ。

 

 「カルデアやばすぎるやろ・・・・。こんなんが百人以上もおるんか?」

 




リアルの用事で少し遅くなりました、すみません。
数少ない空いた時間もイベント回してたらつい。

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