鉄の艦娘達   作:かじもこ

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百年兵を養うは、ただ平和を守るためである

山本五十六


5話 三日月、配属おめでとう!

 三日月は気がつくと暗い空間にいた。暗闇の中1人にされてとても不安だった。しかし、空間にひとつの光が差し込んだ。三日月はその光に向かってひたすら走り続けた。

 

 そして光を放つ正体を見つけた。しかし、そこにはなんと自分と同じ『三日月』が2人立っており、こっちを見ていた。

 

 気になり三日月が「誰なの?」と聞いたが返事は返って来なかった。ただひたすらに、こちらを見ていた。それはまるで睨んでるなどでは無く、懐かしんでいるように感じた。

 

 三日月は混乱する。この鎮守府の三日月は自分一人の筈なのに、なぜ私が3人もここに居るのかと。そもそも、ここはどこなのかと。

 

 すると突然、空間が渦巻きだし三日月は一人吸い寄せられた。

 

 

 ハッと目を覚ます。ここは暗い空間でも、同じ三日月が居る空間でもなく、病室のベッドの上であった。

 

 三日月は起き上がり辺りを見渡す。するとちょうど看護師が部屋に入って来た。

 

「三日月さん、気がつかれましたようですね」

 

「あの、ここは何処なんですか?」

 

「第3鎮守府の医療病棟よ。ちょっと待ってね、今夕張先生呼んでくるから」

 

 そう言って看護師は部屋を出て行った。そもそもなぜ自分が医療病棟に居るのか理解出来なかった。記憶の最後にあるのは、両目から赤い閃光を放つ不知火に殴り飛ばされたところであった。

 

「あっ、ちょっと待ってください!」

 

 看護師の焦った声が聞こえてくる。なにやら部屋の外が騒がしい。なにがあったのか見に行こうとした時、20人近くがこの狭い病室になだれ込んで来た。

 

「おい、大丈夫か⁉︎」

 

「傷はもう大丈夫なの?」

 

「あの不知火と互角に戦うなんて大したやつだなー!」

 

 

 ワイワイガヤガヤ

 

 

 三日月は混乱していた。一体なにがあったのか、先ほどまで一人として見つけられなかった艦娘が目の前に沢山居た。しかし、皆その姿はボロボロだった。辺りを見渡していると包帯だらけの深雪の姿があった。

 

「深雪さん!それに皆さんも大丈夫なんですか⁉︎」

 

 するとみんなから「こんなの大したことない!」という力強い答えが返って来た。

 

 話を聞くところによると、三日月は不知火に殴り飛ばされた直後に気を失い、深雪が救助に向かおうとするも非武装では一人では太刀打ち出来ないため、第3鎮守府の艦娘が総出で不知火と戦い、やっと止めることができたらしい。また、暴走は不知火が装備している艤装の影響のため、不知火自身に悪気はないとの事であった。あと、鎮守府に先ほどまで艦娘の姿が見当たらなかったのは、とある任務について居たかららしい。

 

 しかし、三日月は気になっていることがあった。三日月の病室には不知火の様子が無かった。深雪に尋ねたところ、三日月の隣の病室で休んでいるとの事だった。

 

 三日月はみんなの制止を振り切り、不知火の病室に向かった。そこには包帯だらけでベッドに横になっている不知火の姿があった。

 

「不知火さん、あのっ・・・」

 

「三日月、どうしたの?」

 

 不知火は諦めていた。三日月の表情から察するに怯えていることは分かっていた。また自分の居場所が一つ、無くなってしまったと。

 

 しかし、次に三日月が発した言葉は不知火が予想していた言葉とは全く違ったものだった。

 

「今日は演習ありがとうございました。不知火さんの動き、とてもカッコよかったです!もしよかったら弟子にして下さい!」

 

「は?」

 

 不知火は不可思議に思った。なぜ、あの様な目にあっても『ありがとうございました』と言えるのか。

 

「私のこと怖くないの?」

 

「あの時は怖かったです。でもそれと同時に自分にはなることができない強さ、北上さんのような強さに憧れを抱きました!」

 

 するとこの話を聞いていた深雪が病室に入り、不知火に語りかけた。

 

「おそらく、三日月はお前の強さを見抜いてたんだよ。あの演習で不知火が手加減していることもお見通しだったと思うぞ。そうだろ?三日月」

 

「はい、あの不知火さんの圧倒的な命中率なら接近した時に十分にトドメをさせたはずです」

 

「やはりバレていたのですね」

 

 確かに不知火は途中までは手を抜いていた。本気ではなく5、6割で戦っていた。接近した時も、本気だったなら最初の方で演習が終わっていたはずだった。理由は分からない。ただ、楽しかったのだ。しかし、手を抜いていたため三日月に地道に追い込まれ、結果としてこんな大惨事を起こしてしまった。

 

「分かりました。ですが私の特訓は厳しいので覚悟してて下さいね」

 

「はい!」

 

 これは三日月との演習で手を抜いてしまったお詫びとしての意味もある。

 

 深雪の前で新しく誕生する師匠と弟子。その様子を深雪は複雑そうに見ていた。

 

 そしてその後、深雪と三日月の荷物を取りに行き、寮へと案内された。不知火はもう少し病室で休むとのことだった。

 

「ここが艦娘の寮だよ。たくさん部屋はあるから好きなの使っていいよ!」

 

 急にそう言われても、なかなか決められないのでとりあえず深雪の隣の部屋にした。寮の部屋は思ったより広く、6畳の座敷、4畳の寝床、トイレ、お風呂があった。

 

 深雪と三日月は2人セッセとで荷物の整理を1時間ぐらいで終わらせ、提督からの正式な配属命令を受けるために執務室へと向かった。

 

 執務室前に到着し、緊張しだす三日月を他所に深雪が執務室に突入し、三日月も続いた。執務室には提督と、秘書官代行として秋月が居た。

 

「司令官お待たせー!三日月の案内終わったよー!」

 

「ご苦労様。ごめんね三日月、さっきは急に演習なんてさせて」

 

「いえ、大丈夫です」

 

「そう、なら良かった。じゃあ・・・」

 

 司令官はコホンと表情や姿勢を改め三日月に命令をする。

 

「駆逐艦 三日月に命じる。本日より、この東北管区第3鎮守府の第1攻撃艦隊に配属とする」

 

 人手不足や三日月の練度の高さから、三日月は出撃メインの第1攻撃艦隊へ配属された。

 

「はい!駆逐艦三日月、東北管区第3鎮守の第1攻撃艦隊へ着任いたします!」

 

「よし!それじゃ秋月、後はよろしくね」

 

 三日月は提督と深雪に案内され、鎮守府の中にある多目的体育館へと案内された。

 

 何が始まるのかと思いながら三日月は中に入った。すると中から多数の歓声とクラッカーの音が鳴り響いた。

 

『三日月!配属おめでとう!』

 

 体育館の中には当直担当と秘書官代行の数人と見張りの兵士数人を除いた鎮守府の全員が集まっていた。

 

 三日月の歓迎会は夜の11時まで行われ、皆で食べ、皆で飲み、皆で歌い、とても楽しんだ。

 

 三日月は思う、今日は色々なことがあったが鎮守府は楽しい所だと。

 

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 その頃、執務室では秘書官代行の秋月と当直の飛龍と榛名が夕食を取っていた。

 

「もー!なんで今日は私が秘書官代行なの!歓迎会行きたかったのに〜!」

 

「全く、ついてないねー。ま、私も当直なんだけどね」

 

「当直だとお酒も飲めないし、今度このメンバーで飲みに行きますか」

 

 

 つづく

 

 





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