私だけ前世の記憶が戻らない   作:淵深 真夜

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とりあえず話を聞くことにしました

「あ、お母さん? 急で悪いけど今日は晩御飯いらない。今から、友達と食べて帰る」

 

 母親に晩御飯が要らない事と遅くなることを電話で伝えると、本当に急な話だったのに全然怒られずあっさり許可を出された。むしろ、なんか嬉しそうだった。

 まぁ、私は小・中学校で少し苛められてた時期があったから、私自身は当時もさほど気にせずスルーしてたのに親の方がどうもトラウマ気味みたいだから、「友達と遊んで外でご飯食べて帰る」っていう普通の青春を過ごせるようになったことに感激してるみたい。

 ……私がそういうことを普段しないのは、苛めとか関係なくただ単に引きこもり気質でインドア趣味なだけなんだけどなー。

 

 親にオタク喪女でごめんなさいと心の中で謝りながら、そう遅くはならないことを告げて通話を切って、そして向き直る。

 ファミレスの向かいの席で、真っ青な顔色で死刑宣告でも待つように黙って俯いてる草薙君に。

 

「えっと……草薙君?」

 私が呼びかけると、草薙君は親に叱られる子供のように大きく肩を震わせた。

 

 ……マジで怯えられてる。

 いや、怯えてるというより恐れてるって感じかな?

 

 たぶん草薙君は、私に引かれて頭がおかしいと思われていること、そして二度と近づくなとやんわり拒絶されると思って、それを恐れてるんだと思う。

 それも当然か。普通に考えたら草薙君のリアクションの理由は、そういう反応をされて当たり前の話だったんだから。

 

『……あ、る……じ……。覚えて……思い出せてないのか?

 それとも……俺がわからないだけか? 名前に……ビャクヤという名前に覚えはないのか? ステラは? 他の奴らは? アリスにレイにオリヴィア……、ペルソナでもいい! 誰か、この中の誰かに一人でも覚えはあるか?』

 

 私が「何の事?」と訊けば、跪いたまま絶望顔でフリーズしてた草薙君が、私の手をさらに強く握りしめて、矢継ぎ早に縋るようにさらに尋ね返してきた。

 その顔がもう完全に藁にも縋るというような痛々しい顔で、嘘でも「うん、知ってる知ってる。覚えてる」とでも言ってあげたくなる顔だったんだけど、そんな嘘をついた方が余計に傷つくのはわかりきってるので、私は正直に「……誰?」と答えておいた。

 

 名前に聞き覚えがないことはないけど、それは全員3次元の住人の名前じゃない。何かしら、ゲームや漫画や小説の登場人物でしか覚えのない名前だった。

 そもそも、ビャクヤとレイって名前はともかく、後の名前は日本人ならド直球でいわゆるDQNネームだ。本人のためにも、実在してほしくないわそんな名前の奴。

 

 あと可能性があるとしたらハンドルネームとかペンネームの類だけど、私はSNSはラインくらいしか使ってない。フェイスブックやツイッターの類は面倒だからしてないし、ネトゲやソシャゲもはまると廃人になるのが目に見えてるからやってない。だから、ネット上の付き合いのハンドルネームの可能性は皆無。

 同人活動してるオタ友達のペンネームはもっと心の中学生が大暴れしてる感じだったはずだし、お気に入りの作家さんのペンネームも違うし、コミケとかでたまたま見かけて買ってみた一見の作家さんならもう覚えてるわけがない。

 

 うん、少なくともはっきり「知り合い」と言える相手の中で、草薙君が上げた名前を彷彿する人がいない事は間違いない。

 ……間違いないはずなのに、草薙君はもう一度絶望したような顔になり、私の良心をタコ殴りにしてきた。

 

 いやはや……イケメンってすごいね。私の実の兄と弟が私と同じ親の遺伝子で生まれたの? ってくらい美形な部類だから3次元のイケメンには耐性があるつもりだったけど、草薙君の絶望顔はまさしく「捨てられた子犬」だった。

 これを放っておける女はたぶん男を滅殺したいレベルの男嫌いかレズか、はたまた次元を超えて恋をしている方だけだろう。

 

 私は3次元どころか実は2次元に対しても恋愛方面に興味が薄い干物系なので、残念ながら草薙君の魅了Aクラス級の上目使いにすらきゅんとはしなかったけど、さすがに面倒くささや訳の分からなさより人としての良心が勝って放ってはおけなかった。

 っていうか、上にも下にも男兄弟がいるから異性慣れはしてるけど、どっちも良くも悪くも私に弱いところを見せるような可愛げのある兄弟じゃないから、こういう場合はどうしたらいいのか全く分からず、下心さえもわく余裕もなくパニックに陥っただけだったりする。

 

『え、えっと、ご、ごめんねなんか!

 き、聞き覚えが全くないわけじゃないから、ちょっと詳しいこと話してくれないかな? そしたら、思い出せるかもしれないし!』

 

 だから私は、もはや掴んでるというより引っかかってるぐらいの力加減で、それでも悪あがきのように私の手を握り続けた草薙君の両手を空いてた左手を重ねて、何とかフォローの言葉を掛けた。

 今思うと、別に何のフォローにもなってない。

 

 ただ、私の言葉は2度目の絶望中の草薙君に、もう一度小さくてかすかな希望の灯りを燈す言葉だったらしい。

 ……私がこんなことを言わなければ、草薙君は3度目の絶望なんか味わうこともなく、今現在のように怯えなくても済んだのになーと思うと、また良心が痛む。

 何というか、本当にごめんなさい。

 

 草薙君は、しばらく間をおいてから青い顔色で、前の質問の時と同じように、それ以上に今にも死にそうなぐらい悲痛な顔をして、それでも諦めきれずに私が「思い出す」ことを期待して、囁くような声音で言った。

 

 

 

 

 

『……ステラは……主の前の名前で……他の奴らは……ペルソナ以外は主の仲間だ。

 主は……、前世でこことは違う別の世界で俺たちと出会い、そして世界を救ってくれた英雄だ』

 

 

 

 

 

 その言葉を聞いて、思わず反射で出てきた言葉はよりにもよって、「どこのラノベ?」だったことが本当に申し訳ない。

 草薙君がきっと決死の覚悟で答えてくれた言葉を、あまりにもあんまりな感想で返してしまい、彼に3度目の絶望を与えてしまった。

 

 それがあまりにも申し訳がなくて、何とかフォローしようと思ったけどさすがに暗くなり始めた校内に部活動でもないのにまだ居座るわけにもいかず、私は草薙君に場所を移動して話すことを提案すると、意外にも彼は大人しくついてきた。

 まぁ、その間中顔色は最悪で空気はお通夜状態だったけど。

 

 で、こうやってとりあえずファミレスにやって来た訳なんだけど……

 

 うーん、何を話せばいいんだろう?

 

 * * *

 

 呼びかけておいて話す内容を決めていなかったから、私も黙り込んでしまうと草薙君はそれを悪い方向に受け取ったのか、体を小刻みに震わせながら呟いた。

 

「……ごめん」

「え?」

 

 何故かいきなり謝れて、また私は困惑する。

 いや、どっちかっていうと謝らないといけないのたぶん私の方じゃない?

 そう言いかえす前に、草薙君は俯いたまま私に謝り続ける。

 

「ごめん、ごめん。いきなり変なこと言って、気持ち悪いこと言ってごめん。

 忘れてくれ。俺の言ったことなんか、いや、俺の存在そのものを忘れてもいい。俺なんか忘れてもいい。忘れていいから、思い出せなくていいから、俺のことなんか知らないままでいいから……だから……だからごめん。図々しいけど、わがままだけど……言わないでくれ。

 主が望むのなら、俺は絶対に関わらないから、主の生活を脅かしなんかしないから、俺は関わらないから……だから、お願いだ。

 

 ……どうか、嫌わないでくれ。……無関心で、知らないままで、忘れたままでいてくれ。……主からしたら、頭がおかしくて気持ち悪い妄想野郎だろうけど、どうか俺のことを……、俺は主に嫌われたら生きては――」

「ちょっ! ちょっと待ったストップ! 落ち着いて! 大丈夫嫌ってない! 嫌ってるんなら、場所変えて話をしようなんて提案しないから!!」

 

 なんか怒涛の勢いで私に対しての謝罪と、嫌わないでほしいという懇願をされてパニクリつつもなんとか私の発言をねじ込んだ。

 ねじ込んだ私の言葉はちゃんと草薙君の耳にも正しく届いたらしく、俯いていた顔を上げる。

 

 教室から出て来て私の奇行を目の当たりにした時と同じような、信じられないものを見るような真ん丸い目をしたきょとん顔でまた彼は、しばし私を見つめてからオウム返しで問い返す。

 

「……嫌って……ない? 話を……聞いてくれるのか?」

「うん」

 

 その問いに即答で頷けば、何故か草薙君は絶句した。

 私としてはこう答えたら少しは落ち着いてくれるかなと思っていたから、その反応が予想外すぎてまた脳内でパニっくった。

 ……何で? え? 草薙君にとってお望みの展開じゃないのこれ? 私はどう答えたら良かったの?

 

「……俺の上げた名前に、覚えがないんだろ? 俺がさっき学校で話したことは、『どこのラノベ?』としか思えなかったんだろ?

 ……なら、どうしてまださらに話を聞こうとするんだ? 何で、嫌わないんだよ? 引かないんだよ? 逃げないんだよ?

 主にとって……俺なんか痛い妄想を押し付けてる危ない奴じゃねーか! むしろ少しは警戒しろよ!」

 

 私が脳内で半ば逆ギレのパニックを起こしていたら、草薙君の方は私に対して言いたいことがまとまったのか、初めは躊躇いがちだけどなんか段々と勢いついて、最終的にはこちらも逆ギレ気味に私を叱る。

 いや、まぁそう言いたくなる気持ちはわかるけど、自分で言う?

 

 というか、私が草薙君を嫌わないし引かない理由は今ほとんど、草薙君が言ったことにあるんだよね。

 

「んー……、草薙君がそうやって私の心配して叱ってくれるような人だからかなぁ? 嫌わない理由は」

 

 私はとりあえず注文して自分で汲んできたドリンクバーのジュースを飲みながら、まず初めに彼を嫌っていない理由を語ると、またしても草薙君は絶句してフリーズ。

 フリーズ中に私の話が脳内にちゃんと届くかどうかは怪しかったけど、またフリーズが解凍してすぐに矢継ぎ早に叱られるのも嫌だから、この間に私の思ったことや言いたいことを全部言わせてもらうことにする。

 

「私さ、忘れて欲しいけど草薙君が見た私の奇行とかでわかるようにオタクなの。漫画とかアニメとかが大好きなの。で、私の友達も類友でさ、同じようにオタクばっかりなんだけど……、オタクに限らず思春期ってやたらと自意識過剰になって黒歴史製造する人間は珍しくないでしょ?

 特に2次元に傾倒してるオタクって、変な妄想をこじらせて自分が漫画の主人公みたいな特別な力があるとか、草薙君が言ったような前世がどうのこうのとかいう妄想を、マジで語ってくる奴が結構いるんだよねー。

 ……だから、わかるんだよ。嫌な経験則だけど草薙君はそういう、現在進行形で黒歴史製造中の痛い妄想を押し付ける危ない奴とは全然違うってことが。

 

 そういう奴はね、自分から一方的に勝手に妄想を語り続けるし、それは妄想だって指摘したり痛いって言えばめっちゃキレるよ。草薙君みたいに、自分で危ない奴だなんて認めないし、相手に引かれるかもしれないとか不安がったりなんかしない。

 そういう奴はいつも皆、『自分』しか見てなかった。空想のすごい自分が世界の中心で、他の人間はその『自分』をちやほやする信者か、引き立てる為の舞台装置くらいにしか思ってなかった。

 だから……、私に嫌われないか引かれないかって不安がったり、引かない私のことを逆に心配する、ちゃんと私を一個人として見て対応してる草薙君は危ない奴だとは思わないし、そんな草薙君がする話だから、それもただのどっかのラノベ丸パクリな痛い妄想だとも思えないんだよね」

「……え? え、ちょっ、待て待て待て! ちょっと待て!!」

 

 私が彼に対して、どうして引かないでとりあえず話を聞こうという対応をしている理由や根拠を話してみたら、草薙君のフリーズは解凍されたけど、納得したから解凍したというより理解できない情報が一気に流し込まれたから、それを整理するために再起動したって感じで、彼は手で制して私の話に割って入った。

 

「いや、俺のことを信頼してくれるのはめちゃくちゃうれしいけど、ちょっと待て! いいのかそれで!? それじゃあ主は、俺の話を信じてることになるけど、マジでいいの!? あと、そういう話をマジで主の意思関係なく押し付けてくる奴とは縁を切れ!」

 

 またしても最後は何故か怒られたけど、まぁそういう反応をするのも仕方がない。

 相手の反応が妄想を押し付けてるようには見えないからって、草薙君の話が現実的なものではないことに変わりもないのだから。

 けど、私からしたら草薙君の話を妄想と切って捨てるのも乱暴な結論だと思う。

 

「うん、信じてると言えば信じてるかな? でもそれ、私からしたら幽霊や宇宙人、天国や地獄の存在と同じくらいの信憑性だよ。だから、正確に言えば『確実に存在しない根拠がないから否定しない』程度。

 少なくとも、現段階では別に草薙君の話は私を驚かせはしても迷惑はかけてないから、事実であれ妄想であれ頭ごなしに否定する権利なんか私にはないし、草薙君が否定してほしくないって思うんなら私はそれを尊重してとりあえず程度だけど信じるよ」

「主にとって今現在は、迷惑じゃねぇのかよ……。昔もそうだけど、本当に器が広いなあんた」

 

 ストローでグラスの中のジュースを掻きまわしながら草薙君の疑問兼ツッコミに答えると、さすがにもうフリーズはしなかったけど草薙君は大きくため息をついて俯き、呆れたような口調で言った。

 おかしいな。発言自体は褒め言葉なのに、どう考えても褒められていない。

 あと地味に気になるのは、草薙君は私を「(あるじ)」と呼ぶわりには、敬語をほとんど使わないな。

 さっきなんて最後、あんたって言ったし。主をあんたって呼んでいいの?

 

 実は草薙君の話を聞いてみようって思ったのは、この私を敬ってんのか親しみ程度なのかよくわかんない口調の所為で、前世の私と草薙君の関係があまり具体的に想像できなくて、好奇心が抑えきれなかったからだったりする。

 なんか本当に草薙君の話が痛い妄想であっても、下手なそこらのラノベより面白そうな内容な気がする。少なくとも、私に対する呼び名と口調の矛盾という時点でオリジナリティが割とあるのは確かだ。

 

「……っていうか、主。俺が言うのもなんだけど本当に危機感を持ってくれよ。主が言うような、若気の至りな黒歴史で前世がどうのこうのって言う奴はクソうざいけど、そういう奴らはなんだかんだでごっこ遊びの延長でしかないんだからまだましだけどさ、本当に病気の奴ならそれこそ何が地雷かわかんなくていきなり暴れ出したり、ストーカーになったりするかもしれないんだしさ。

 …………つーか、俺自身だって実は自分が病気じゃないっていう自信も、俺の記憶がただの妄想じゃない保証なんかもないんだから、……主の言葉は嬉しいけど主のためにもあんまり信用しないでくれよ」

 

 そんな危機感が欠片もない理由はさすがに口に出さないでいたら、草薙君はもう一度深いため息をついてから、私の心でも読んだのかと言わんばかりに私の危機感に関してお説教が始まった。

 うん、確かに私に危機感はないに等しいことをやってるね。でも本当に、自分でも言ってるけどあなたが言う?

 

 そもそも、妄想とかそういう精神的なガチの病気について私は当然詳しくないけど、そういう病気の人は自分が病気であることを自覚してないからこそ厄介であることくらいは知ってる。

 だから、「前世の記憶」に関して自分で自信を持ってない、自分の頭がおかしくなったという発想が先に来る草薙君だからこそ、幽霊や宇宙人の存在より信憑性があるかもなーと私は思ってる。

 

 それに、仮に草薙君が病気だったとしても……

 

「さすがに草薙君の話を全面的に信じるのは、危険だしバカな行動だってことはちゃんと自覚してるよ。

 でもさ、どこまで信じるか信じないかの線引きと、あなたを嫌いになるとか引くとか全然別の話だよ。仮に草薙君がガチで病気な人だったら、素人の私じゃ『病院に行け』としか言いようがないけど、それでも『病気であること』はあなたを嫌いになったり引く理由にはならないよ。

 

 病気なら、それこそ私だって同じ病気にならない保証なんてないんだから、そんな理由で他人を嫌って遠ざけるなんてしないよ。そんなの、自分が病気であることを言い訳にして、治療もしないで好き勝手する奴と同じだし。

 他人を嫌ったり自分の言動で人を傷つけることに、病気とか生まれ持ったものとか努力でどうしようも出来ない事を大義名分にするのは一番卑怯なことだから、絶対にしないよ」

 

 この話は私としては、人としての当り前の道徳のつもりだった。

 特に親や学校の先生から教えられたわけじゃないけど、普通に「自分がされて嫌なことをしてはいけません」という道徳の基本中の基本の一部でしかなかった。

 

 だから、ジュースを飲みながら何気なく、これ以上草薙君が変な罪悪感と不安を抱え込まなければいいのに程度の気持ちで伝えた言葉だった。

 

 なのに、草薙君の反応はやっぱり私の想像の斜め上に突き抜ける。

 

「――あーーっ!!」

「!?」

 

 私の言葉を、私が草薙君の話をとりあえず信じてると言った時と同じようにきょとんとした顔で聞いていたのが一転して、いきなり叫んで草薙君はテーブルを頭突きで割らんばかりの勢いで突っ伏した。

 突然の奇行と奇声に、当然私だけじゃなくて周囲のお客さんや店員さんもビビって注目を浴びるけど、本人は注目を浴びてることに気付いていないのか、突っ伏したまま頭をグチャグチャに掻き毟ってぶつぶつと呟いていた。

 

「あー、もうマジで何なんだよ。記憶戻ってないってウソだろ? 何でここまでまんまなんだよ?

 あんたはマジで何? 器がでかいなんてもんじゃねーよ。主の器って海なの? それとも文字通り底が抜けてダダ漏れなだけ?」

 

 うーん……、器が広いって褒め言葉のはずなのに、まったく褒められてる気がしない事を言われてるなぁ。

 というか、草薙君にとっての前世の私って、今の私まんまなのか。それなら、何でこんな反応取ってるの?

 喜ばれてもなんだかなぁって感じだけど、この嘆かれてるのか呆れられてるのかよくわからない反応はもっとなんだかなぁ……って感じで、こっちが反応に困る。

 とりあえず、謝ればいいのかな?

 

 そんなことを考えながら、本当にとりあえず意味もない謝罪を口にする前に、草薙君の方は自分で何とか私の発言やらなんやらに整理をつけたのか、突っ伏したのと同じくらい唐突に髪をぐしゃぐしゃにかき乱していたのをやめる。

 

 けど顔は上げないでテーブルに相変わらず突っ伏したまま、脱力したようにだらんと手をテーブルから下ろしたから、こっちはまた別の意味でビビる。

 何? 私の返答は、脱力するレベルだったの? と一瞬変な不安がよぎったけど、その不安は杞憂にもほどがあるものだったことを告げるように、草薙君は突っ伏したまま語り出す。

 

 

 

 

 

「………………俺は、魔物だったんだ」

 

 前世の話を、語り始めた。

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