魔術協会カルデア査察録―あるいは誰かの査察録― 作:タマヤ与太郎
~アーチャー・エミヤ~
Fate/GrandOrder SS
魔術協会カルデア査察録―あるいはロード・エルメロイ二世の査察録―
「…………」
赤いコートに黒いロングヘアを靡かせ、葉巻を咥えた男性が、
苦虫を噛み潰したような顔で眼前を見据えていた。
眼前には、黒いスーツにメガネをかけた全く同じ容貌の男性が立ち、
こちらもまた、苦虫をかみつぶしたような顔で男性を睨んでいた。
「…………」
赤いコートの男性の名は、ロード・エルメロイ二世。
黒いスーツの男性の名もまた、ロード・エルメロイ二世。
どちらも本物である、というややこしい事態が発生した理由は、彼が今居る場所にあった。
人理継続保障機関フィニス・カルデア。
魔術師の総本山、時計塔は天体科のロード、アニムスフィア家の管理下にある機関。
魔術と科学、両極ともいえるそれら一方だけでは測れない世界を観測し、
人類社会の生存を保証するための機関である。
近頃、このカルデアから魔術教会へと救援要請が送られてきた。
要請とともに送られてきた数々の資料には、驚くべきことが記されていた。
人理焼却、七つの特異点、その他様々な、
にわかには信じがたいそれらの事象を詳しく調査するため、
現代魔術科のロード、ロード・エルメロイ二世を筆頭にした査察団が派遣され、
カルデアを訪れた。
しかし、そこで彼らを待ち受けていたのは、さらに信じがたい出来事の数々であった。
施設内を闊歩する様々な時代の様々な英雄、英傑。
彼らとの会話によって宗教観、人生観、様々な価値観を粉砕されるもの。
不用意に彼らに接触を試み、医務室送りになるもの。
『まさかこれはないだろう』という展開の続出で、彼らは消耗しきっていた。
そして、事態は冒頭に遡る。
「さて、ロード・エルメロイを筆頭とした査察団の諸君。出迎え役の諸葛亮孔明だ」
黒スーツの人物、本人曰く諸葛亮孔明が、赤コートの人物から目を離さないままで言う。
諸葛亮孔明。三国志で有名な劉備玄徳治める蜀の軍師であり、
『死せる孔明、生ける仲達を走らす』とまで言われた名軍師である。
「ほう、かの蜀の軍師殿は洋装を好まれるのか。これは世の歴史学者がひっくり返るだろう。
それと、二世をつけてもらおうか、ロード・エルメロイ?」
赤コートの人物、時計塔に十二人居るロードの一人、ロード・エルメロイ二世、
本名、ウェイバー・ベルベットが、こめかみを引くつかせながらも孔明に言う。
「何をやっているんだ、孔明。魔術協会の連中は任せろと言ったのは君だろう」
戸惑う調査員を尻目に依然としてにらみ合いを続ける二人であったが、
不意に、横合いの方から制止の声がかかる。
調査員たちがそちらを向けば、そこには赤い体に張り付くような衣装を身にまとった、
褐色の肌に白髪の青年が立っていた。
「エミヤか。何、ロード・エルメロイが先に因縁をつけてきたのだよ。
こちらとしては事を荒立てるつもりはなかったのだがね」
「君とて火に油を注いだのだろう? 大方そんなところだろう、とマスターが言うのでね。
私が仲裁に来たのだよ。同族嫌悪をする気持ちはわからんでもないが、今は抑えてくれ。
ロード、あなたもだ」
そう言われ、不承不承身を離す二人。青年は間に割って入ると、軽く一礼する。
「お初にお目にかかる、魔術協会の諸君。私はエミヤ。アーチャーのサーヴァントだ。
無銘の英霊ゆえ知る者はいないだろうが、よろしく頼む」
そして、後ろの孔明を指し、
「先程名乗っていただろうが、彼は諸葛亮孔明。クラスはキャスターだ。
戸惑うだろうが、彼もまた歴としたサーヴァントでね。
依り代を必要とする疑似サーヴァントという特殊なタイプの英霊だ。
姿や言動がほぼロードなのは……なんでも、英霊が主導権を彼に全権委任している形だそうだ。
同様の疑似サーヴァントの中でも特殊な例らしい。
……さて、立ち話もなんだ。詳しい説明は所長代理に聞いてくれたまえ。こちらだ」
ざわざわと戸惑う調査員一行であったが、エミヤが歩き始めるとそれに従い、
ざわめきながらも追従する。
そんな彼らと共に歩きながら未だにらみ合いを続けていた孔明とロードであったが、
どちらともなく深々とため息をつき、ロードの方から口を開く。
「……便宜的に、孔明と呼ばせてもらおう」
「……それで構わんよ、ロード・エルメロイ」
「二世を付けろ。わざとか?」
「わざとだとも。嫌味の一つでも言わねばやっていられないのでな」
「「ふんっ!」」
険悪な雰囲気だが、一応は睨み合いをやめた二人をみて、エミヤはやれやれと肩をすくめる。
「……まあ、私が彼らの事をどうこう言えた義理ではないのだがね」
エミヤは自嘲気味に苦笑すると、小さく一つ、ため息をついた。
ハーメルンでは読む専のつもりでしたが、
アカウントを腐らせておくのももったいない気がしたので、
Pixivの方にあげていた小説を投稿テストもかねてアップしてみる。
一応解説しておくと、これは年末年始にかけてTwitterで流行ったハッシュタグ、
「#魔術協会カルデア査察録」に乗っかる形で執筆した小説です。
一応あれこれ調べたりしていますが、介錯違いなどあればご容赦を。
なおカルデア内に残っているサーヴァント、
それらの立ち位置等は自分のプレイ内容を反映しているので、
出したくても出せないサーヴァントなどもいるのでその辺りもご勘弁を。