ヤミを祓うは七つ球   作:名枕(ナマクラ)

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少し前半部分を詰め込み過ぎた気がします


第三話 レッツ、コミュニケーション!

 宇宙船に戻ると荷物を纏め終えただろうブルマが何かの機械を弄っていた。

 どうやらそれは通信機で、地球にいる仲間の塵に連絡をとろうとしているようだ。

 その作業の最中、ブルマに一緒にいた二人はどうしたかと聞かれたので、怒りに任せて地上げ屋一行に突っ込んでいったから見捨てたと言ったら激怒された。解せぬ。

 

「ほんっとに信じられない!! そこで見捨てるフツー!?」

「そんな事より早く手を動かせ」

「言われなくてもわかってるわよ! もう!!」

 

 そう告げると怒りながらもそちらの作業に戻っていった。使えはするのだ、ブルマ(この道具)は。ただ五月蠅いだけで。

 

 そして通信機が繋がり、互いの現状を報告し合う。それによると地球で治療中だった孫悟空とかいう塵がナメック星に向かって出発したらしい。しかもその宇宙船なら六日程でナメック星に到着するとの事だ。

 ここまで一週間弱で到着できる宇宙船があるなら先に出せよ。そう文句を言うと、完成したのが先程という事だった。何と間の悪い。

 

 ようやく通信も終わったのでさっさとこの場所から離れるぞとブルマを急かすと、予想だにしない言葉を口にしたのだ。

 

「何言ってんのよ、クリリン君と悟飯君が戻ってくるのを待つに決まってるでしょ」

「は?」

「『は?』じゃないわよ。今移動したら二人と合流できなくなるじゃない」

「奴らはもう死んだ。諦めろ」

「あんた諦めるの早過ぎるでしょ!?」

「今移動しなければまた奴らに塵を差し向けられるぞ」

「塵って……さっきのヤツみたいな? チアが倒してくれたら大丈夫よ」

「面倒だ。私は見つかる前に一人で逃げるぞ」

「ヒドイ!? な、ならせめて行先を書いたメモか何かを残しておくわ」

「敵がそれを見つけたらどうするつもりだ! 阿呆か貴様!!」

 

 私がいくら言ってもブルマは散々駄々をこねて一向に移動しようとしない。おのれ……使える道具だと思えば、手間のかかる……!

 疲れるので使いたくはないのだが、仕方なく念力で無理矢理放り投げてやろうかと考えていると、なんと悟飯とクリリンがナメック星人のガキを連れて戻ってきたのだ。

 正直あの塵から逃げ伸びてきたことに私は驚きを隠せなかった。

 

「あっ、チア! お前一人で逃げてやがって! まあお互い無事だったからよかったけどさ!」

「私は塵の自殺願望に付き合うつもりはない」

「べ、別にそんなつもりで飛び出したわけじゃ……」

「まあ……確かに相当な無茶だったけどさ、こうして一人だけでも助けられたんだ。良しとしようぜ」

「それよりもそろそろ移動しましょうよ。いつまでもここにいちゃ見つかりそうで怖いわ」

「あ、それならさっきここに戻ってくる時によさそうな所ありましたよ」

 

 今まで散々渋っておきながらのブルマのこの発言に、苛立ちのあまりに頭の血管が切れそうになるが何とか抑える。早く移動した方がいいのは確かだからだ。

 

 

 そうして悟飯とクリリンの先導の下、ブルマの出したエアカーでブルマの持つ家のカプセルが使える程大きな洞穴のある場所へと拠点を移し、そこでそれぞれ情報交換を行った。

 

 

 私としては、ベジータとかいう塵が気をスカウターなしに探知を出来るという点であった。だが塵共が一番関心を示したのは別の情報であった。

 

「お父さんが来るんだ!」

「それに途轍もない修行しながら来るだって! これで何とか希望が見えてきたぞ!」

 

 孫悟空とかいう塵が六日後にナメック星に到着すると聞いた悟飯とクリリンは小躍りしながら喜んでいるが、それが私にはいまいち何故かわからなかった。

 

「ベジータとかいう塵よりも弱い奴が来たところでどうにかなるものか?」

 

 何せ敵の親玉はそのベジータよりもはるかに強いであろう化け物だ。そんな相手と敵対する中でそれ以下の塵以下の塵が来たところで何とかなるとは思えない。ないよりもマシではあるだろうが、それでもここまで喜ぶ理由がわからない。

 

「会った事ないチアにはわかんないだろうけど、悟空ならどんな絶望的な状況でも何とかしてくれるっていう不思議な何かがあるんだよ」

「それにお父さんは宇宙船で修行をしてるって言うし、きっとベジータにだって負けないよ!」

 

 あまりに楽観的過ぎる塵共の意見を聞き流しつつも私の関心はデンデというナメック星人のガキに移っていた。

 値踏みするように見ていると、デンデはこちらを警戒するかのように悟飯の背後へと隠れる。村が滅ぼされた直後だからこそ誰を利用すべきか子供ながらに思考しているわけか。

 どうやら頭は悪くないようだ。使える道具である可能性は高そうだ。

 

 

 さて、情報の整理をしている間にも状況は刻一刻と変化していく。

 

 遠くで感じる集落らしき気の集まりが、一つ一つと消えていくのを感知した。

 当然私以外にもクリリンと悟飯が気付き、それがベジータの仕業であると判明した。

 おそらくはその集落にあるドラゴンボールを狙った虐殺だろう。収集だけならば早く済ませるには効率がいい。

 しかし今まで得た情報からすると、フリーザたちが五つ、ベジータが一つドラゴンボールを手にしたことになる。

 

「となると、残るドラゴンボールはあと一つ……ドラゴンボールが全て集落にあったとするとナメック星人も残りわずかだろうな」

「そ、そんな……!?」

「ちょっとチア! 言葉を選びなさいよ!」

 

 事実を言っただけなのに何故か怒られた。どう選べというのだ。『生き残りの方に入れてよかったな』と言った方がよかったのか? 解せぬ。

 

 何やらショックを受けたらしいデンデが沈黙し、場が途端に静かになる。何故他の連中が黙ったのかがわからん。聞きたい事があるんじゃないのか?

 

 そんな謎の沈黙を破ったのは、先程ショックを受けていたデンデであった。

 

「……あ、あなたたちは一体どうして願い玉を欲しがるんですか……?」

 

 成程、確かにこの質問はデンデにとっては重要だろう。利用しようにも目的がわからなければ利用できるかわからない以上、デンデの疑問ももっともである。

 

 そのデンデの疑問に答えるためにブルマたちはデンデに地球からわざわざここまで来た理由を話し始める。私にとっては興味のない話だ。宇宙船でも聞いたが特に何も感じない。強いて言えば何故ピッコロとかいう奴は悟飯を庇って死んだのか問い詰めたかった。ヤツが死んでいなければ地球のドラゴンボールもなくなる事なくここまで来る必要もなかったのに……役に立たん道具が……。

 

「地球にも願い玉……そして僕らと同じナメック星人の方がいたんですね……」

 

 だがデンデにとっては違っていたようで、今の話で塵共に心を許したようだ。どこにそんな要素があったのか理解できん。そんな様子を見てたブルマが「あんたは人に共感とかしなさそうよね」と呆れたように口にするが、どうでもいい。

 

 そんなデンデは意を決したようにある事を言ってきた。

 

 

「皆さんを最長老様の所に案内します!」

 

 

 デンデの言う最長老とやらは、かつてナメック星で起こった天変地異の中での唯一の生存者らしく、今のナメック星人の全てと今のドラゴンボールを生み出した存在であるらしい。さらには最後のドラゴンボールもその最長老の元にあるという。

 

 とはいえ普通に行けば徒歩で30日程かかるらしい道のりを行くのにブルマが難色を示し、その長い道のりで人数が多いと敵に見つかる可能性が高くなる事を私が示唆した事によって、クリリンだけがデンデに同行する事になった。

 

 

 そうして出て行ったクリリンとデンデを見送ってから数日が経った。

 

 

 レーダーの反応が急速に移動を始めた事によってクリリンが最長老の所から戻ってくることが判明した。

さらにはレーダーを見ていた悟飯が比較的この拠点に近い位置にドラゴンボールの反応がある事に気付き、レーダー片手に取りに行った。

 

 ドラゴンレーダーによる優位性は思っていた以上に高い。悟飯はともかくレーダーを作ったブルマは本当に使える道具だ。

 

 レーダーを利用すればこの絶望的なドラゴンボール争奪戦も挽回できる可能性は少なからずある。

なんだ、思っていた以上にコイツらは使える道具じゃないか。これなら私のヤミが晴れるのもすぐかもしれないな。

 

 

 

――――そう思っていた少し前の私を諌めたい。

 

 

 

 何とドラゴンボールを手に入れたクリリンが、敵陣営の塵二人をわざわざ拠点まで連れてきたのだ。

 

 

 ……この表現ではクリリンが自ら招いたように見えるが、実際には後を付けられただけのようだ。とはいえフルスピードで飛んでいる後ろを同等の速さで追いかけられているのに気付かない時点で自ら招いているようなものである。

 

 馬鹿か!? どうして隠れている拠点に、ドラゴンボールを持って、それを狙う塵屑共を連れてくる!? 何故警戒もせず全速力でまっすぐに向かってくるんだ!?

 

 なお私は到着間近にクリリンの気に付いてくる二つの気を感じた時点でコイツらを見捨てて避難する事にした。

 

 ブルマは使える道具で勿体ないが、自殺願望染みた前回といい今回といい、全体でマイナス面が大きすぎる。戦況にもよるが様子を見ながら場合によってはすぐに離脱できるようにしておこう。

という事でクリリンが戻ってくる前にブルマに一言外を見回ってくると伝えて気配を隠しながら身を隠し様子を窺う事にした。

 

 そうしてやってきたクリリンと、それを出迎えるブルマと、その後にやってきた宇宙の塵共と同じような戦闘服を着た生え際がM字になっている逆立った黒髪をした塵と、さらにその後にやってきた宇宙の塵の側近の塵がその場に揃ったのだった。

 

 この状況を作り出したクリリンは本当に使えない道具である。使えないどころか有害ですらある。

 

 

 

 ……その後の事を簡単にまとめると、M字の塵、ベジータが側近の塵を消したのち、ドラゴンボールを差し出す事によってブルマとクリリンは見逃され、ご機嫌なベジータは高笑いしながらその場を去っていった。

 

 

 

 

 塵を見逃す程に機嫌のいいベジータの言を信じれば、あのドラゴンボールで全てが揃ったという事だが、悟飯が取りに行った一つだけ反応のあったドラゴンボールはベジータの隠していた物のようだ…………まあ、そこはどうでもいい。

 

 

 重要なのは、どうやってかベジータはフリーザからドラゴンボールを掠め取る事に成功したという事だ。

 

 

 実際に戦っている所を見たというのもあるが、私の想定以上にベジータは優秀なようだ。が、状況的にまだフリーザよりかは与しやすいときた。これはひょっとすると私の都合のいいように状況が転がり始めているのではないか……そんなことを考えながら立ち尽くす道具二人と合流する。

 

 合流してすぐに二人から「チア! どこ行ってたんだ!?」とか「チア、アンタもしかしてクリリン君にあの二人が付いてきてるって気付いてたんじゃないの!?」とか「一人で逃げようとするとか信じられねぇ!」など色々と文句混じりな事を言われた。ブルマはともかくとしてお前に言われる筋合いはないとクリリンを睨むと、ヤツは何も言い返せなくなった。なおブルマ自身に非はないので煩いままだった。

 

 なお、どうして塵が追ってきているのに気付かなかったのかと後で詰問すれば、最長老とやらに潜在能力を引き出されたとかで調子に乗ってしまってつい周囲の警戒を怠っていたと……コイツは使えない道具から無能な塵に格下げしておこう。

 

 

 そこからはまた忙しくなった。悟飯がドラゴンボールを回収して戻ってくるとすぐに拠点を引き払い移動、新たな拠点を探索する。

 

 ただ以前のような家を出せるような洞穴は滅多にないので新たな拠点となったのは、家のカプセルも使えない、雨風も防げない、視覚を遮れるような作りの岩場の隙間である。ブルマの文句が煩い。

 

 そしてクリリンの提案により悟飯の潜在能力の解放するためにもう一度最長老とやらの居住へ向かう事になった。確かに以前と比べても無能な塵の気が強くなっている。戦力増強としては間違っていない。

 

 だがそれに対してブルマが以前と同じ理由で拒否し、私も思う所があったために同行を拒否したため、最長老の所へは悟飯とクリリンの二人で向かう事になった。先程の反省を活かしてベジータに気付かれないように気を抑えていくらしいが……無能な塵の事だ。どうせまたやらかすだろう。

 

 

 さて、同行しなかった私はというと、今後の方針を固めるためにまずは状況を整理する事にした。

 

 

 まず重要なのがナメック星のドラゴンボールもこのままではもうすぐただの石になってしまうという事だ。

 

 ドラゴンボールを作った最長老とやらが既に寿命でくたばる寸前らしい。もって一週間程度だそうだ。

 つまりそれは、ドラゴンボールが使えるのは一週間以内だという事だ。明確な期限ではないが、その程度しか猶予は存在しない。

 

 クリリン(無能な塵)は願いを諦めてでも最後の一つを死守するなどと世迷言を囀っていたが、そんな事許容できるはずがない……! 何としてでもドラゴンボールを全て揃えてやる……!!

 

 そのドラゴンボールの所在は現在、ベジータの所に六つ、ブルマの所に一つ存在している。そしてフリーザの所には一つもない。

 

 悟飯とクリリンは最長老の所に向かっている。ベジータを警戒して気配を消しながらの移動なのでしばらくかかるのは想像に難くない。

 

 そしてフリーザに現状動きはない。おそらくは援軍とスカウターを呼び寄せている最中だろう。どれだけかかるかはわからないし、楽観視するべきではないのだが、そうすぐには動けないと考えていいだろう。

 

 つまり簡単にまとめると、最難敵であるフリーザが動けず、地球組の戦力がドラゴンボールから離れている以上、ドラゴンボールを揃える障害はベジータだけという現状だ。

 

 

 

 ならば、行動を起こすなら今がベストだ。ベジータに対して何らかのアクションを起こす。

 

 

 

 ただ真っ向からの戦闘では今の私ではベジータには勝つのは厳しいだろう。

 

 そしてドラゴンボールを悟飯に騙し取られた現状、ベジータがこちらの場所を感知にするのに集中しているだろうことは予測できる。つまり単なる奇襲も通じる可能性は低い。

 

 

 であれば、取れる手は交渉くらいしかない。

 

 

 他人の心を読み、相手にも旨味を理解できるようにする。それが交渉に必要である事は塵共との経験で理解した。

 思った事をそのまま言った所で相手がそれを呑むとは限らない。ようはいかに相手を乗せるかという事だ。

 あとはブルマとの雑談が多少は役に立つかどうかだが……まあ私なら問題ないだろう。

 

「……よし」

 

 善は急げ、ということで早速足を運ぶことにした……が、ベジータも気配を消しているため探索から始める事にしよう。

 

 

(★)

 

 

 ドドリアとザーボンを倒し、フリーザを出し抜いてドラゴンボールを奪い取り、さらに何故か来ていた地球人から最後のドラゴンボールを手に入れた俺は浮かれていた。

 

 これで俺は永遠の命を手に入れ、フリーザに代わり全宇宙の支配者になるのも夢ではなくなるのだから多少浮かれるのも仕方がないだろう。

 

 だが、最初に俺が手に入れ隠していたドラゴンボールをカカロットの息子に掠め取られ、さらには奴らが気配を完全に消しやがったおかげで不老不死も先延ばしになってしまった。クソッたれ!

 

 おそらくはあの地球人はどこかに隠してもドラゴンボールを見つける事の出来る装置を持っているんだろう。故にここにドラゴンボールを置いたまま奴らを闇雲に探しに行くという選択肢を取る事ができなかった。

 

 今の俺に出来る事は、奴らが戦闘力を解放して動き出すのを見逃さないように、精神を研ぎ澄ませることだけだった。

 

 フリーザがスカウターを部下に持って来させるまでが俺が有利に動ける時間だというのに……!

 

 そう歯噛みしながらも精神を研ぎ澄ませて二日が経ったあたりの事だった。

 

 

 俺の前に一人のガキが姿を現したのだ。

 

 

 それは不気味な雰囲気を感じさせるガキだった。齢は見た限りカカロットの息子と同じくらいだろうが、色が抜けたように薄い黄緑色の髪、病的に白い肌、腐りきった目、そして何より全身から感じられる不吉な気配…………碌なヤツじゃないと不思議と本能的に理解していた。

 

 だが、その身体的特徴は地球人共と一致している以上、おそらくは奴らの仲間であろうことも予測できた。

 

 何しに来やがったのか、理由はわからんがこれは好機だ。コイツから奴らの情報を引き出せば全てのドラゴンボールを揃えることができる。

 

「お前がベジータで間違いないな」

「貴様、地球人どもの仲間か。何しに来やがった? まさか俺から奪ったドラゴンボールを返しにきたわけじゃないだろう」

「取引に来た。フリーザを倒すのを手伝ってやる。その報酬としてドラゴンボールを寄越せ」

「ふざけるなよガキ。何故俺が貴様らにドラゴンボールを渡す理由がある?」

 

 どんな話を持ってきたかと思えば、いきなり訳の分からない取引を持ち掛けられた。何だこのガキ、ふざけてるのか? そもそも俺と取引できる立場にいると思っている辺り勘違いをしてやがる。

 

 だが今は我慢してガキの話を促す。無理矢理口を割らせるのもいいが、何かの拍子で勝手に口を滑らせてくれるのならその手間も省ける。

 

「お前はフリーザに勝てないから奴に殺される事がないように永遠の命が欲しいわけだろう? ならばフリーザを倒してしまえばお前が不老不死を急ぐ理由もなくなるわけだ。こちらとしては早急に叶えなければならない願いがあるのでな。お前の願いは緊急性を低くしてやるから次の機会にしてくれ、という取引だ。悪い話ではないと思うがどうだ?」

 

 ……話の内容だけ見れば悪い話ではない。俺が永遠の命を急ぐのはフリーザという目の上のたんこぶがいるからこそであり、奴さえいなくなれば後回しにしても大きな問題にはならない。

 

 わざわざ乗ってやる理由もないが、もしも不老不死にならずともフリーザを葬り去れるのならば、仮にこの話に乗ってやったとしてもそこまでの損失は俺にはないのも確かである。

 

 

 

 だがそれは、それができればの話だ。

 

 

 

「貴様らと組んだ所でフリーザが倒せると? 馬鹿馬鹿しい」

 

 そう、底知れぬ戦闘力を持つフリーザに対して、コイツらでは荷が勝ち過ぎる。だが目の前のガキはそう思っていないようでさらに口を開いてくる。

 

「お前は勝てないと思っているのか? 例え束になったとしても、どうやってもフリーザには勝てないと」

「少なくとも貴様らと組んだ程度ではどうにもならん。ヤツの強さは尋常じゃないからな」

 

 多少ハゲのチビは強くなっていたようだが、それでもドドリアにも届かない程度。カカロットの息子が同様の成長をしていればともかく、組むに値するとは思えん。このガキも今の戦闘力が全てではないだろうが……他の連中とそこまで変わらんだろう。

 

 そう計算立てる俺を見て、目の前のガキはわざとらしく「やれやれ」と肩を竦めた。

 

「随分と弱気なものだ。サイヤ人は誇り高い戦闘民族と聞いていたが……期待外れというべきか」

「……何だと?」

「お前がやろうとしている事はつまり、フリーザにはどうやっても勝てる気がしないから死なない体になって寿命で死ぬまで必死に隠れます、という事なわけだ。見つかったらその時は痛みに耐えて何とか逃げてまた隠れて……サイヤ人の誇りとやらは意外と埃に塗れているようだな」

「ふざけたことを抜かすなよ、ガキが! 俺がフリーザに勝てないのは今であって、この先は別だ! いつかはヤツを殺し、このベジータ様が宇宙の支配者に成り代わってやる!」

「ああ、そうかそうか。つまりお前は、フリーザが加齢でボロボロになる所を叩けるようになるまで待って、加齢で死ぬ前にフリーザに勝利したと言い張れるようにするわけか! 成程成程! 私には思いもよらない斬新なプライドの満たし方だな! はは、なんだお前、お利口さんじゃないか! 戦闘民族の誇りとやらはどうやら臆病かつ狭量なもののようだ!! これは予想外だ、恐れ入ったぞ!!」

 

 腹を抱えて大笑いするその姿は、人を虚仮にするようなその物言いは、俺の苛立ちを怒りに変えるのに十分すぎた。

 このクソガキから情報を引き出そうとこの減らず口を開かせたところで、欲しい情報を喋らせるまでに怒りでそのまま殺しかねない。ならこのガキに拘る必要などなく、むしろ見せしめにした方が効果はあるだろう。それに俺の精神安定にも繋がる。

 

「どうやら死にたいらしいな……クソガキ!」

 

 そうと決めれば行動は早い。この命知らずのクソガキの頭を木っ端みじんに吹き飛ばすつもりで拳を振りぬいた。

 

 

 

 

――――しかし俺の拳はヤツの頭部を砕くことなく、何の手応えもないままにすり抜けた。

 

 

 

 

「何!? 残像!?」

「――――交渉決裂だな、塵が!」

 

 背後へ振り返ると、そこにはエメラルドのような緑の核を持った黒い巨大なエネルギー弾がガキの両手から放たれていた。

 

「くっ……!?」

 

 咄嗟に両手を前に出して受け止めるが、その勢いのまま海上まで押し出されてしまった。

 

 どう考えても奴から今感じられる戦闘力から出せる威力ではない。あのガキ、あの地球人共の持っていた技術とはまた別の技術をもってやがる……!

 

「ふざけやがってぇっ!!」

 

 怒りがさらに湧き上がると共に両手で抑えているエネルギー弾をそのまま蹴り上げて空へと弾き飛ばす。続いてガキへと視線を向けると、そこには戦闘力が集中して光が点滅するその片腕を前方に振り払おうとするヤツの姿が……マズイ!

 

 

 

 そう思い上空へと飛び上がった瞬間、ヤツのエネルギー波によって今までいた周囲一帯が爆裂した。

 

 

 

 水柱というには大きすぎる程に海水が飛び散る。まさに水の壁という程にだ。だがあの程度の攻撃ではたとえ直撃したとしても俺には目晦まし程度にしかならん…………いや、それが狙いか!!

 

 

「チィッ! 狙いはドラゴンボールかッ!」

 

 

 もしもヤツの戦闘力が俺の想像通りただ抑えるものでなく隠すものだとすれば、完全に姿を見失った時点で俺にヤツを追いかける事ができなくなる。こちらがヤツの戦闘力を感知できず、相手はこちらの戦闘力を感知できる上に普段通りの移動スピードを出せる以上、闇雲な探索をせざるを得ないこちらから逃れるのは容易だ。

 

 そうなればせっかく手に入れたドラゴンボールというフリーザに成り代わり宇宙の支配者になるための手段がなくなってしまう!

 

 視界を塞がれた現状はあのガキの思惑通り! となればヤツを視界に捉えばいいだけだ!

 

 目の前の瀑布に突っ込み、ヤツを視界に捉えようとするが、背後……上空から戦闘力を感じ、咄嗟に身を翻して後方から飛来した何かを躱してその正体を目にする。

 

「くっ……!? さっき蹴り飛ばしたエネルギー弾だと!?」

 

 蹴り飛ばしても追尾してきたエネルギー弾に、地球人どもの戦闘力のコントロール能力の高さに驚く。連中弱っちいくせにこういう小手先の技術は山ほどありやがる。鬱陶しい事この上ない。

 

 だが次に向かってきたエネルギー弾をすれ違うように避けて一気にガキの場所まで行けばいいだけだ。そう考えエネルギー弾を注視すると、翠玉色の核が収縮していくのが見えた。

 

 

 まさか……! そう思った瞬間、エネルギー弾は急激に膨張し、周囲を巻き込むように爆発を起こした。

 

 

 爆発が広がっていく一瞬の僅かな間、俺はどう動くべきか考えていた。

 

 

 今後もしフリーザと対峙する可能性を考えれば、わずかな消耗も出来る限り避けたい。そう考えれば普通は爆発の範囲から離脱して回り込んでヤツを叩くべきだ。

 

 しかしそれをするとヤツを視界から外す時間が長くなってしまう。その隙をついて完全にドラゴンボールと共に姿を消されると完全に俺の負けだ。

 

 ではこの爆発をエネルギー波で吹き飛ばすか? いや、ヤツの詳しい位置もわからない現状、万が一威力の精度を間違えてドラゴンボールに何かあればそれこそ終わりだ。敵の姿も見えない現状、遠距離攻撃は可能な限り避けるべきだ。

 

 

 

 であれば、取るべき手は決まっている。

 

 

 

 俺は全身に力を込めながら全速力でそのまま前進し、その爆発に身を投じた。

 

「ぐっ……おぉぉぉぉっ……!」

 

 ガキの放った攻撃とはいえ、無防備に突っ込むとなるとダメージは避けられない。爆発による衝撃や熱が身体を蝕んでくる。

 

 だが、誇り高きサイヤ人の王子である俺にとってこの程度、なんてことはない!

 

「――――なめるなぁっ!!」

 

 気合いで爆発を無理やり突っ切り、多少のダメージを代償にようやくヤツの姿を捉えた。

 

 俺の危惧していた通り、あのクソガキは超能力か何かで六つ全てのドラゴンボールを浮かして持ち出そうとしてやがった。

 

 手っ取り早いのはエネルギー弾での攻撃だが、この位置関係ではドラゴンボールに当たって砕ける可能性もある。

 

 

――――なら直接ぶん殴ればいいだけの話だ!

 

 

 俺は爆発を突っ切ったままのトップスピードで奴に突撃をかけて殴りかかった。

 

「っ……!? 塵の分際でしつこい……!」

 

 俺の接近に直前で気付き間一髪で跳ぶように避けやがったガキは、苦し紛れにこちらにエネルギー弾を撃ってくるが、その程度でこのベジータ様を止められると思うなよ!

 

 そのエネルギー弾を裏拳で消し飛ばし、その勢いのままに蹴りをガキの身体に叩き込む。

 

「ソイツは、俺のものだぁぁ!!」

「ぐっ、ぎぃ……!!」

 

 浅い! コイツ、蹴りが当たる直前に後方に下がるだけじゃなく、俺の蹴りに対してエネルギー波を放つことで蹴りの威力と速度を減らしやがった! だがそれでもクソガキが苦悶の表情を浮かべた事に変わりはなく、今のダメージによって不自然に宙に浮いていたドラゴンボールがあのクソガキの制御下から離れたのか地面に落ちていき、しかも位置的にドラゴンボールを巻き込む心配もなくなった。

 

 最早遠慮する必要はなくなった。早急に消し炭にしてやるぜ!

 

 

 

「――――消し飛べ! ギャリック砲!!」

 

 

 

 渾身のギャリック砲があのクソガキを消し飛ばし――――――――いや、違う!?

 

 あのガキ、この俺のギャリック砲に吹き飛ばされながら、肝心のダメージ自体はバリヤーのような物で受け流してやがる!! 全てを防ぎ切る事は出来てないが、ギャリック砲に完全に飲み込まれる事なくその勢いにそのまま乗る事でこの場から離脱しやがった!?

 

 追いかけられない事もないが、これ以上派手にやればいくらスカウターがないと言ってもフリーザにこの場所が気付かれる可能性もある……いや既に気付かれているかもしれない。

 

 それにドラゴンボールは一つも奪われていない以上、あのガキを今すぐに追いかけて始末する必要もない。

 

 そう考えれば今はあのガキを追いかけて殺す事よりもドラゴンボールを持って別の場所に潜伏する事の方が先決だ。

 

「く……まさかこのベジータ様が雑魚一匹逃がすとは……!! クソッたれめ……ッ!!」

 

 敗けてはいない。だが、勝利というには程遠いこの戦いに苛立ちが湧き上がる。

 

 

「あのクソガキ……次に会ったらぶっ殺してやる……!!」

 

 

 




コミュニケーション(物理)
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