えっ?笛で戦ってるのって僕だけ?   作:モグ・モグラ

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どうも、モグ・モグラと申します。

ある意味ここからが本当の始まりの第十六話です。
前回までの色んな伏線に触れたり、回収したりします。(できたらいいなぁ…)
そして、オリジナルエピソードの終わりです。

では、どうぞごゆっくりと


第十六話~魂の渾沌 約束~

――何もできなかった――

――何も守れなかった――

――何も、何も――

 

 

――私は愚かだ。

――わたしはバカだ。

――私は無力だ。

――わたしは何もできない

 

――こんな私でも手を差し伸べてくれる人がいたのに、

――こんなわたしを『人』として見てくれる人がいたのに、

 

――私は……

――わたしは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           「「最低だ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――え?」

 

少女がきょとんとした顔で一部始終の光景を見ていた。

――いや、見ることしかできなかった。

少女の目に映ったのは二つ、一つは全身が骨でできた不気味で恐怖しか感じない化け物。少女が呼び出した『片割れの白き悪魔(ウロボロス)

もう一つは少年だ。少年が力なく宙を舞っているのだ。

少女が見つめる中、少年は一本の大きな柱にぶつかり、落下、そのまま地面に衝突した。

この出来事は実際に5秒もかかってない。しかし、少女はこれが数分、数時間、もっと長い時間に感じたのだ。

 

そして、

 

「――あ」

 

この状況を理解するのには、

 

「――ああ、あ」

 

1秒もかからなかった。

 

 

 

 

 

 

「あ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!!!?!????!??!??!??!??!???!????!!」

 

少女の悲痛な叫びが響き渡る。

 

「うわああああああああああああああああああああああ!!!???!??!?!?!?!!??」

 

少女は半狂乱になりながらも急いで少年のもとに駆けつける。

 

「そるおにいちゃん!!!!そるおにいちゃん!!!!!!」

 

少女は動かない少年を揺さぶり続ける。しかし少年は依然として動かない。

 

「いやだよおおおお!?!!?いやだあああああ!?!?!!こんなの!!!こんなのいやだよおおおおおおおお!!!!!??!??!??!」

 

少女は泣き叫んだ。声が潰れそうになるぐらい叫んだ。

この少年はポリゴンとなって散る(死ぬ)。そんな現実を少女は到底受け入れたくなかった。

 

「いやだぁ……!死なないでぇ…!死なないでよぉ!!」

 

しかし、どんな理由であれ、どんな形であれ、これは少女の招いた出来事だ。少女の招いた結果だ。

今、ここで一人の命が尽きようとしていた――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大…丈夫…だよ」

 

――と思っていただが(・・・・・・)、なんと、少年は、ソルはフラフラしながらも起き上がったのだ。

 

「………えっ?」

 

少女は困惑した。もしここに他の人たちもいれば少女と同様困惑していたかもしれない。

なぜならソルが生きているからだ(・・・・・・・・・・・)。確かに、さっきの悪魔の一撃はHPバーがレッドゾーンに到達していたソルに直撃したからだ。決して悪魔が弱かったわけではない。むしろ極めて厄介な部類の最凶モンスターの一体。直撃を喰らって、HPバーがレッドゾーンのプレイヤーが生き残るなんて絶対にない。

でも生き残った。自分の想像してた結果と真逆の方向になった少女は何が起こったのか分からなかった。

 

ピキンッ・・・

 

何かが壊れる音がした。ソルはやっとのことで口を開く。

 

「これが…なかった…ら……僕は…ポリゴンに…なってたよ…」

 

そう言って、ソルは服の中から、あるものを取り出した。それは(今は砕けってしまったが)赤くルビーのように光る石をはめ込んだネックレスだった。

 

「…え、こ…これ……って?」

 

少女もやっとのことで口を開く。しかしまだ現実を受け入れられていない顔だった。

 

「これは…『根性石』……またの名を…『身代わりの石』と言うんだ……」

 

「…!」

 

根性石(身代わりの石)』。その名の通り、一度だけ、致死量ダメージを受けたときにだけ発動することができて、HPを1に踏みとどまらせる手に入れることが滅多にできないアイテムなのだ。

 

「もしもの時に…保険用として……身につけたんだ…。…そして……今、役に立った……」

 

ソルは今にも死にそうな声で、それでも少女を安心させるように明るく言った。それが伝わったのか、少女はやっとのことで理解し、安堵し、泣いた。

 

「よか、よかったぁぁぁ………よかったよぉぉぉおお……!!!!」

 

しかし、それもつかの間の休息だった。

 

「ぐがぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

「!」

 

「っく…!」

 

ソルが生きてていても、まだこいつ(悪魔)が残っている。終わりではないのだ。

 

「…っうぅ!…体が……動かない………」

 

ソルは立とうとするが、先ほどの凄まじい衝撃のせいで体の自由を奪われてしまっていた。

 

「!ここはわたしが!!」

 

そう言って、倒れているソルと悪魔の間に割って入る少女。少女は何もない所から大きな笛をだした。形は同じものの、さっきのとは違い、色は白ではなく黒だった。少女は笛をかざして言う。

 

「召喚獣よ!主の声に従え!今をもって貴方の役目をここで終わりとします!さぁ、元の場所へ還りなさい!!」

 

悪魔に向かって、退散の命令をした。呼び出したのは少女だ。ならば悪魔は少女の命令に従う。

 

しかし――

 

「ぐぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 

「え!?」

 

悪魔は少女の命令に従わなかった。悪魔は依然としてこちらに向かってくる。

 

「しょ、召喚獣よ!主の声に従え!貴方の役目はここまでです!!早く元の場所に還りなさい!!!」

 

少女は再度命令を出すが、悪魔はそれを聞いていなかったかのように何食わぬ顔をしてこちらに来る。

 

「ど、どうして!?召喚はできたのに、退散ができないなんて!?」

 

少女はひどくうろたえた。突如として言うことをきかなくなった悪魔。

 

「…システムエラー……?いや、そんな…筈は絶対にない……だとしたら一体……」

 

ソルも異常な事態に感づいたのか、原因を考えたが到底わかる筈もなかった。

 

「……まさか」

 

少女は何かを察した。しかしその顔色は青くなっていた。

 

「召喚した瞬間に…すでに…『あちら側』についていたの…?」

 

(『あちら側』……?)

 

「そ、そるおにいちゃん!!」

 

少女がソルに駆け寄る。その表情からは焦燥が伝わってきた。

 

「早く、早く逃げよう!!あの召喚獣は、すでにわたしの支配下にいなかったの(・・・・・・・・・・)!!!」

 

そう言って、少女はソルを起き上がらせ肩に手を回してなんとか出口に向かって歩く。しかし、

 

「くっ…!」

 

「そ、そるおにいちゃん!!しっかりして!あと少しだから!!」

 

HPは残ったものの、ソルの体は歩ける状態にまではまだ回復していなかった。何度も膝をつくたびに、少女に励まされてなんとか立って歩くの繰り返しだ。

一方の悪魔は走ってくる様子もなく、歩いてこちらに来ている。これじゃぁまるで、

『遊ばれている』

屈辱を感じた少女は目に涙をためながらも悪魔を睨んだ。

 

「クロ…ちゃん……」

 

ソルが少女を呼び止める。

 

「そるおにいちゃん!頑張って!!あと少し――」

 

 

「僕を…置いて…逃げろ…」

 

 

「――――――っえ?」

 

ソルの言葉に少女は固まる。

 

「僕を置いて…はやく逃げるんだ…!」

 

その言葉を聞いて、『あの時』の光景がフラッシュバックする。殺されていく『皆』。自分の無力さ。そして逃亡。これらは少女にとってトラウマになっていた。

 

「――――――――やだ」

 

否定する。

 

「クロちゃん…!!」

 

「いやだ!!!いやだ!!!」

 

否定する。

 

「お願いだ…!このままじゃ二人とも死んでしまう!でも…君だけでも逃げれば―――」

 

 

「いやだぁ!!!!!絶対にいやだぁ!!!!!!!」

 

 

それでも否定する。

 

「そるおにいちゃんと!!!!!一緒に!!!!!生きていきたいの!!!!!絶対に!!!!!!!!」

 

「……」

 

「もう…もう、逃げたくないの……逃げたら…絶対に…また…『2人』だけになっちゃう……!」

 

「……」

 

「だから…だから…今度は『一緒に戦う』の……。そうじゃなくても…『一緒に逃げたい』の……!」

 

「……」

 

「……でも……」

 

少女は前を見る。そこにはこの部屋の出入り口だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、そこに悪魔が立ち塞がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それも…叶えられそうにないね……」

 

そう言って、ソルから離れる少女。そして悪魔に向かって歩く。

 

「クロちゃん!?」

 

ソルは慌てて呼び止めるが、少女は歩みを止めない。ソルは動こうとしても動けない。

 

「そるおにいちゃん」

 

少女はソルを見ずに言う。

 

「実はね…わたし…謝らなければならないことがあるの」

 

「……え?」

 

ソルがきょとんとした顔で少女を見る。そして、少女は笛を構えると同時に急に光始めた。

 

「っ!?クロちゃん!!」

 

ソルは慌てて少女を呼ぶ。絶対にいやな予感しかしない。

 

「大丈夫だよ」

 

少女はそんなソルを優しく声をかけた。

 

「辛かったこともあるけど…わたしは十分に幸せだったから」

 

やめて。

 

「それでね、そるおにいちゃんに謝りたいことはね。実はねわたしには真名があるの。つけられた真名がね」

 

やめてくれ。

 

「だから、今言うね」

 

少女はソルの方に振り返る――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わたしの本当の名前は―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

満面の笑みを浮かべながら――

 

 

「『ケイオス』。24の『武器に宿る意志』のβ(2番目)に位置する武器。

             そしてわたしは生命を糧にして自身もろとも魔を滅ぼす」

 

 

 

――少女が言ったのと同時に、光が部屋を包み込んだ。――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………う、うぅ~ん」

 

ふと目を覚ますソル。視界に映るHPバーはいまだにレッドゾーンになっていたものの静かだった。

 

「…!クロちゃんは!?」

 

そう言って起き上がる。時間も経ったのだろう。体はすっかり動けるようになっていた。

 

「クロちゃんは…!?シロちゃんは…!?」

 

辺りを見回す。部屋の、柱がところどころ壊されていて、瓦礫もいくつか、山のように積みあがっている。

あの悪魔もいなくなっていた。

 

「!」

 

そして、ソルは少女を見つける。黒と白の綺麗に混ざり合った髪、綺麗な肌。それでも自分の知っている少女だ。

 

「クロちゃん!」

 

ソルの声に気づいた少女は黒い瞳と白い瞳(オッドアイ)の可愛い顔で微笑み返す。しかし、ソルからしてみれば何か変だった。元気がないような――

そして突然、少女はバランスを崩した。

 

「!?――っ!!!」ッダ!

 

ソルは急いで少女に駆けつける。間一髪のところで少女を抱きかかえた。

 

「クロちゃん!どうしたの!?」

 

その声には焦りが見え隠れをしていた。なぜなら、少女の体が異様に軽いからだ。まるで羽根を持っているような感覚だった。

 

「えへへへ……体に力が入らなくなっちゃた…」

 

少女は笑い返す。しかし、どこか空元気を感じさせるような、さみしい微笑み。

 

「く、クロちゃん…」

 

「そるおにいちゃん、わたしの名前は『ケイオス』ですよ。さっき言ってたじゃないですか」

 

「……ケイオスちゃん……」

 

「えへへへ、そうですよ~」

 

またも微笑む少女。そんな少女を見てソルも少しだけ微笑み返す。

すこしだけ静かになるも、その静寂を破ったのは

 

「ねぇ…そるおにいちゃん」

 

少女(ケイオス)だった。

 

「…うん?何かな?」

 

 

「『狩猟笛』は好きですか?」

 

 

少女の何のとりえもない質問。そこに深い意味はない。ソルは答える。

 

「うん。大好きだよ」

 

そう言うと、少女は赤面しながら

 

「そうですかぁ…えへへ~嬉しいな~」

 

またしても微笑む。ソルは続ける。

 

「もちろん、ケイオスちゃんも大好きだよ」

 

「…ん!?~~~///」

 

そう言うと少女は両手で顔を隠す。耳まで赤くなっている。

 

「わたしも…大好きです……///」

 

「そうですか…僕も嬉しいよ」

 

落ち着かせるために少しだけ時間が過ぎる。すると少女はどこかせつない顔で話をし始める。

 

「…わたしは人間じゃないです」

 

「知ってるよ」

 

「わたしは武器です。プログラムです」

 

「それも知ってるよ」

 

「SAOからしてみれば異常なプログラムですから、いろんなずるいことをしてきました。圏内でも相手に攻撃出来たり、相手の精神プログラムに異常な信号を送ったりもしました」

 

「それも知ってるよ。と言うよりそれを僕にしたんだけどね」

 

「ごめんなさい」

 

「もういいよ。もう許すよ」

 

「ありがとうございます。そるおにいちゃんは優しいですね。甘々ですよ」

 

「そんなことは…いやよく言われててなぁ…ムムム」

 

「ふふ…くすッ」

 

「……くすっ」

 

お互いに少しだけだがクスッと笑った。それがどれだけ幸せな時間だったのかを…。少女はだんだんと表情を暗くした。それに釣られてソルも表情から笑みを失う。

 

「……わたしはそろそろ……いなくなってしまいます(・・・・・・・・・・・)

 

「……そうだね」

 

「でも…もっとそるおにいちゃんと一緒にいたいんです。大好きな…人と一緒に……」

 

「僕もだよ」

 

「だから、一つだけお願いがあるんです」

 

「?」

 

そう言って少女は右手を出す。ソルは何をしようとしているのか分からなかった。

 

「もし、よかったら…この手を握ってくれませんか?そうすれば…いつまでもそるおにいちゃんと一緒にいられるおまじない(・・・・・・・・・・・)がかかるんです。…でも一つだけ…一つだけ約束してください」

 

「約束?それは一体なんだい」

 

ソルは一つの疑問を投げかける。すると少女は瞳に薄らと涙を浮かべながら、それでいて微笑みながら弱り切った声で言った。

 

「どうか…どうか…狩猟笛(わたし)を使ってください。そして忘れないでください。狩猟笛(わたし)のことを……いつまでも…いつまでも……」

 

その言葉にソルは一瞬だけきょとんとしたが、すぐにいつもの表情にもどる。そして――

 

「うん、分かったよ。忘れない。いつまでもいつまでも――

 

 

――狩猟笛(君のこと)を忘れないよ」ギュッ

 

――左手で少女の右手を握った。

 

「そるおにいちゃん…これは……(ごめんなさい。これは――)」

 

「うん、分かってるよ。これは――」

 

 

 

「約束だね」

(呪いだよ)

 

 

 

 

瞬間、彼の体中で何かが駆け巡る。まるで急に血液の循環がよくなった時のような、スゥーっとした感覚が。それでいて体が軽くなったような気持の良さ。何もかもが体から通り抜けていく新鮮な気分。

そして、とある映像も流れ込んでくる。

 

 

 

そこは燃え上がる森?のようなところだった。辺り一面は火の海みたいだ。そこに男性のノイズ混じりの声が聞こえてくる。

 

---いいか――は逃げる―だ。お前だ――も――てくれ---

 

---いや!わたしも戦う!!わたしも戦える!!---

 

---駄目―。―前がいても―況は変わらない。だから早―逃げるんだ---

 

---そんな…。なんで…なんで皆、犠牲になったのに……なんでわたしは……駄目なんですか!!---

 

---……さぁな。どう――なんだろう―。俺も分かんね――でもお前にだけは――――て欲しい---

 

---っ!うぅ…うぅ…!---

 

---泣くなよ。ま――く。大丈―だ。俺は死ぬ―――はないから。だから早く、転移――でどっかに―け---

 

---で、でもぉ…!でもぉ…!---

 

---このローブを―ろ。これは『カーディナル――――』でさえもお前に――できなくなったり、――――コードを持つ奴からの――をも受けなくなる優れもの―。ただし、――には大きす――な---

 

---うぅぅ…!ひぐっ…!!ひぐっ…!!ぐすっ…---

 

---―!『アイツ』がそろ――こっちに来る。――行け!!早く行くんだ!!!---

 

---うぅ…ぐすっ、て、転移!『ランダム』!!!」

 

そうして最後の映像に映ったのは、武器を構える男性の後ろ姿と――

――騎士の鎧らしき防具、盾と剣らしき物を持った何者かの影だった。

 

 

「…っ!」

 

ソルはそこで意識が戻ってきた。眠ってはいなかったが、何かを見せられたような気分だった。

腕の中を見る。すると、

 

「ケイオスちゃん!?」

 

腕の中にいる少女はだんだんと体が透けているのだ。

ソルはこれまでにも人がポリゴンになって散るところは何度も見てきたが、この消え方はハッキリ言って見たことが無い。

 

「大丈夫…ですよ…」

 

腕の中から少女のか細い声が聞こえてくる。

 

「わたしの『形』は消えてしまいますが…『思い』は…『理想』はちゃんとそるおにいちゃんに受け継がれました…。わたしが…消えても……そるおにいちゃんの中にいます、『生きて』います…よ」

 

「け、ケイオスちゃん……」

 

「そして…これがわたしからのプレゼントです……」

 

そう言って、最後の力を振り絞りながら……ソルに白黒のローブを渡す。

 

「これは……」

 

「わたしには…大きすぎましたけど…そるおにいちゃんならサイズがちょうど…いい…はず――」

 

「もういいよ…もういいから……」

 

ソルは少女を抱きしめた。力強く。

 

「そる……おにいちゃん――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――ありがとう…大好きです」

 

少女は少年の腕の中で消えた。

 

この部屋には少年だけが残っていた。少年はずっと座り込んでいた。そして、もう何もない腕の中を、

 

大事そうに見つめて…静かに泣いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後

 

チャリ~ン♪

 

扉についている鈴が良い音色を奏でる。

 

「おお!ソルか!随分と久しぶりだな!!」

 

赤いバンダナを付けた赤い武者鎧を着けた髭のおじさん(これでも20代前半です)が声をかけてくる。

 

「お久しぶりです。クラインさん」

 

少年、ソルは丁寧に挨拶を返す。

 

「まーた堅苦しい挨拶しやがって!別に敬語で話さなくたっていいんだぜ?俺とお前の仲なんだからな」

 

「いえいえ、それでもクラインさんは大人ですから子供の僕は敬語を使うのが常識ですよ」

 

「そうだぞ、クライン。ソルはお前とは違って礼儀正しい奴だから、年上に向かって敬語を使わないお前とは違うんだよ」

 

そう言ってクラインを茶化すのはクラインよりも年上のガタイが良い感じの男、エギル。

 

「ちょっ!エギルそれはいくら何でもひでぇぞ!!俺だってちゃんと目上の人には――」ギャーギャー

 

「それよりもどうしたソル?数日も連絡をよこさないから何かあったかと思ったぞ」ッチョ!?ムシデスカ!?

 

「あはは、それに関してはすみませんでした。ちょっとした用事が立て込んでて、なかなか連絡を送れませんでした。それもあって今日は直接会って生存報告をしようかと…」ソル!オマエモムシスルノカ!?

 

「あぁ、それなら気にするな。でも無事に会えて安心したぜ」イイゼ、オイ!ナイテヤルゼ!

 

チャリンチャリン~♪

 

またしても扉の鈴がなる。

 

「よぉ、エギル。また来たz…ってソル!?」

 

「あぁ、キリト君。お久しぶりだね」

 

黒き剣士の少年、キリトはまるで幽霊でも見たかのような驚きっぷりだった。

 

「『お久しぶりだね』じゃないだろ!いったいどこにいたんだ!?連絡がなかったから心配したぞ!」

 

「あはははっ。エギルさんと同じこと言ってる」

 

「笑い事じゃないぞ…全く……?あれ?ソル、お前何か雰囲気変わったか?」

 

キリトがソルに何か違和感を感じたのか質問をした。しかしソルは頭に?を浮かべた。

 

「?変わったとは?」

 

「ああ、そういえばお前にしちゃなんか変わったような…変わってないような…」

 

「どっちだよ…でもたしかに変わったよな?見るからにだと、装備でも新調した影響か?」

 

どうやら、クラインもエギルもソルから感じる違和感を感じたらしい。クラインは分からん。

 

「……まぁ、そうかもしれませんね」

 

「見たことのないローブだな。何か隠しモンスターとかでも戦ったのか?」

 

「…まぁ、そんな感じですかね」

 

「何!?おいソル!それはどこにいたんだ!?是非!教えてくれないか!?いや、教えてください!!」

 

エギルの質問に、答えを上手にはぐらかすソル。しかし、そこはゲーマーのキリトに喰らいつかれた。

 

「う、う~ん、自分でも何が起きたのか分からないですが、適当にモンスターを倒してたらいつの間にかゲットしてて……」

 

「うぅ~、そうか~…まぁレアアイテムがいつ手に入るのか分からないしな。仕方ない…」ショボーン

 

ソルの適当な答えに少しがっかりするキリト。その隣にはクラインがドンマイとでも言いたげな顔をしている。そのあとキリトに小突かれたのは言うまでもない。

 

「ああ、そうだ。そういえばソル。あの子(・・・)はどうしたんだ?」

 

「――」ピクッ

 

エギルの何気ない質問。エギルも関りがあったので、その後の結果が知りたかったのだろう、聞いてきたのだ。幸いなのはキリトとクラインが小突きあいをしてて、話に参加しなかったことだ。これもエギルの計らいなのだろう。しかし、それはソルの心をえぐり掘る質問であった。

 

「あの子は見つかったのか?無事に」

 

「…ええ。何とか見つけました。どうやら裏路地で迷子になってしまったらしいんです。やっぱりそういうこともあると僕自身も動けない所とかがあって、攻略にも支障をきたすと思ったので…迷った末に1層の子供を預かっている教会に預けました・・・」

 

ソルは表情を陰に落とした。エギルの方は、

 

「そうか…。まぁ安全面とかを考えたら、まだ自分と同じぐらいの歳の子供がたくさんいた所に預けたほうが良いよな。なぁに、お前は間違ったことはしてないと思うぜ。それにいざとなったらいつでも会えるんだからな」

 

「…………はい、そう…ですよね」

 

エギルは都合のいい誤解をしてくれたが、所々の言葉がソルの心に突き刺さる。

 

「……すみません。もうそろそろ行きますね。素材集めとか、レベル上げもしておきたいので……」ガタッ

 

「お、おいもういいのか?こうやって久しぶりに会えたんだから、もうちょっとゆっくりしてきなよ」

 

「いえいえ、ちょっと攻略に間を開けてた分の反動が怖いので、万が一がないようにしたいので」

 

そう言ってエギル、キリトやクラインにまた来ますねと言ったソルは店を後にした。

 

「……やっぱりアイツ何かおかしくねぇか?」

 

「う~ん、確かにそうだな…。何事もなければいいが…」

 

(やっぱり気にしてるのか?あの子とあまり会えなくなったのが。まぁ、少しそっとしといてやろう…)

 

3人はそれぞれの思ったことを口に出したり、胸にしまったりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは現時点での一番高いレベルの層の圏外。そこに一人の少年がたたずんでいた。

 

「やっぱりどうしても慣れないよ…君がいなくなることは」

 

そう言って、胸に手を当てる。仮想世界なので、心臓の鼓動のような音が伝わってくる。

 

「でも駄目だよね。いつまでもこんなことじゃ」

 

青い空を見て少年は呟く。

 

「それに君はいつでも僕の中(ここ)にいるじゃないか」

 

そう言いながら左手をかざす。すると黒と白の色をした炎のような妖気が左手を包む。

 

「僕がこんなんじゃぁ君に怒られるよね」

 

そう言いながら左から右へゆっくりと左手を動かす。

するとそこから大きな笛が出現する。2mはある、1本の笛の本体を中心とした周りに黒と白の螺旋状になった物が付いた笛が目の前に出てくる。

 

「僕がしっかりしないといけないんだ。狩猟笛を扱う多分ただ、唯一、一人(・・・・・・・・)のプレイヤーなんだから。…だから今日も行くよ――」

 

――『魂の渾沌笛(ソウル・オブ・カオスホルン)』――

 

「――僕の一生涯の相棒。今日も多数の敵を蹂躙するよ。」

 

 

 

 

 

 

 

――頑張って!!そるおにいちゃん!!――

 

 

 

 

 

 

 

(うん、わかったよ――)

 

今日も渾沌のローブを靡かせながら少年(ソル)攻略(戦場)に身を費やす。

 

 

これは、何の変哲もないくだらない物語だ。主役はちょっと変わった少年の物語。ここから始まるのだ。本当の意味で。本当の、笛だけを使って攻略する物語が、始まるのだ。




さて、いかがでしたか?


これにてオリジナルエピソード編は無事に終了しました。ちょっと駆け足気味でしたが(汗)
え?分からないことや謎の伏線が多すぎて結局何がしたかった?ですって?
大丈夫です。長い時間をかけてですがですが、消化することにしていますので、頭の片隅にでも残してもらえればうれしい限りです。
次回からはまたSAOのアニメ本編にそって話を作ります。っと、その前にもうそろそろ主人公、ソルの設定・基本ステータスを投稿したいと思っています。というより予定です。
次回予告はここに書いときます。



次回「雪と竜と笛使いの共通点は空を舞うこと?」

では次のお話で会いましょう。
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