時系列は、8巻エピローグ1と2の間。
――女神エリス、女神アクア感謝祭から数日が経った。
ミス女神エリスコンテストに、本人である女神エリスが参加したため、祭りが終わったというのに、街の外からやってくる人達がいて、街にはまだ少し祭りの熱気が残っている。
街の住民が落ち着くまではもう少し時間が掛かるだろうが、これといってやる事のなくなった俺は、以前から温めていた計画を進める事にした。
「……ふう。ようやく領主代行の仕事もひと段落ついたな。まだいくつか処理すべき案件は残っているが、あまり急がなくてもいいだろう」
食後の紅茶を飲みながら何かの書類を前にして難しい顔をしていたダクネスが、そう言って手にしていたペンを置く。
その言葉に、俺とアクアは顔を見合わせ。
「領主代行の仕事が落ち着いたって事は、ダクネスは少しくらい遊んでもいいって事だよな? このところ、ずっと忙しそうにしてたし、たまには仕事以外の事をしてもいいんじゃないか?」
「そうね! 私もお祭りの時はいろいろと頑張ったし楽しかったけど、やっぱり何もしないで一日中ダラダラしてるっていうのが最高だと思うわ! ダクネスも頑張ったんだから、領主の仕事は後回しにしてもいいと思うの!」
「お、お前達……。そうだな。あれだけ忙しい思いをしたのだし、少しくらい休んでも罰は当たらないだろう。そういう言い方をするという事は、二人には何か考えがあるのか?」
俺達に労われ嬉しそうにするダクネスに、俺は指を突きつけ。
「行けアクア! やっちまえ!」
「!?」
「任せなさいな! さあダクネス、覚悟しなさい! ……ねえカズマさん、これって役割が逆じゃないかしら? 確かに私の方がステータスは高いけど、女の子にこういう事をさせるのってどうかと思うんですけど」
「俺は女だからって理由で肉体労働を避けるような甘えは許さない男女平等主義者。お前、ステータスが高いって自慢してるけど、クエストでは大して活躍してないんだから、たまにはその高いステータスを役立てろよ。心配しなくてもフォローはしてやる」
俺の指示を受けたアクアが、驚愕するダクネスに掴みかかっていき……。
「な、なんだ!? おい何をする、やめろアクア! ……くっ、引き剥がせない!? この力、支援魔法を使っているのか! そんなものまで使ってどういうつもりだ!」
「どういうつもりって言われても。ダクネスに私コーディネートの超可愛らしい服を着せて、ギルドと街中引き回しの後に、魔道カメラで撮影会……わあああああーっ! カズマさんカズマさん、ダクネスがピンチの時に覚醒する漫画のヒーローみたいになってるんですけど! 暴れないでダクネス! これはあの熊みたいな豚みたいなおじさんと結婚するとか言って、私達を心配させたダクネスへの罰なんだから! 私だって、ダクネスが憎くてこんな事をやっているんじゃないのよ。ええ、ネズミ講のお金を取り上げられた事なんて、ちっとも恨んでないわ!」
「もちろん俺も、アドバイザー料を取り上げられた事なんて恨んでないからな」
「カズマさーん、見てないで手伝って! ほら早く手伝って! ダクネスが逃げちゃう!」
「ぬああああああああ!!」
「『ドレインタッチ』」
「あっ、カズマ! くそっ、二対一とは卑怯だぞ! めぐみん、めぐみーん! 頼む、見てないで助けてくれ!」
アクアに押さえつけられ、俺に体力を吸われるダクネスが、ソファーに座り膝にゼル帝を乗せているめぐみんに助けを求めるが。
「ダクネスには悪いですが、これは皆で決めた事なのです。結婚式の時は、私もダクネスに心配させられましたし、今回はカズマ達の側に付く事にしました。私はダクネスに恨みなんかありませんし、積極的には参加しませんが、ゼル帝の面倒を見るくらいなら協力しようと思います。私に助けを求めても無駄ですよ」
「ぬああああああああ!!」
めぐみんに協力を断られたダクネスは、必死の形相で暴れるも。
アクアの支援魔法によって、二人掛かりでダクネスを捕まえ。
ドレインタッチで弱らせてから、椅子に座らせて。
「いいかダクネス、俺達だって喜んでダクネスの嫌がる事をしているわけじゃないんだ。でもお前、また同じような事があったら、同じように自己犠牲に走るかもしれないだろ? そうならないように、今のうちに思い知らせておいた方がダクネスのためにもなると思ってな」
「わ、分かった。心配を掛けた事は謝る! 悪かった! すいません! だからそれだけは許してください!」
可愛らしい服を着せられるのが嫌なのか、ギルドと街中引き回しというのが嫌なのか、撮影会が嫌なのか。
……まあ、全部嫌なのだろうが。
恥も外聞もなく頭を下げ謝るダクネスに、俺は。
「一応、ダクネスがそう言うかと思って、もう一つの選択肢も用意してあるんだが」
「ほ、本当か! ではそちらにしてくれ。可愛らしい服を着せられるよりはマシなはずだ……!」
「小一時間、バニルに根掘り葉掘り恥ずかしい質問をされる刑」
「…………可愛い服でお願いします」
一瞬輝かせた瞳を急速に曇らせてダクネスは項垂れ。
ソファーに座りゼル帝を撫でながら、めぐみんが。
「一度逃げ道を与えてから再び閉ざすとか、カズマはたまにバニルよりも悪魔らしい事がありますよ」
俺をあんなのと一緒にするのはやめてほしいのだが。
アクアがダクネスを着替えさせてくると言って、二人で二階へ行き。
俺とめぐみんが、お茶を飲みながら待っていると……。
――しばらくして現れたのは。
「どうよこれ! 私コーディネートによる、超可愛い衣装よ! 可愛いでしょ? 可愛いでしょ! これはララティーナちゃんね! もうバツネスなんて呼べないわ!」
上機嫌で調子に乗るアクアと。
「……ど、どうだろうかカズマ。あまりこういう格好をする機会はないから、慣れていないのだが……、その…………似合っているか?」
ひらひらしたスカートを両手で掴んで、もじもじするダクネス。
座っている俺より顔が高い位置にあるのに、俯いているせいで上目遣いになっている。
こんな時、俺がコイツに掛けてやれる言葉といえば。
「あんた誰?」
「んん……!? こ、こんな格好をさせておいて、第一声がそれか! お前という奴は、いつもいつも私の期待を裏切らないな! 私にだって、素直に褒めてほしい時もあるのだが!」
「知らんよそんなもん。……というか、今、素直に褒めてほしいって言ったか? 実はその格好、結構気に入ってるのか?」
「い、言ってないし、気に入ってもいない……!」
しかし実際、見違えるくらい似合っている。
ダクネスは、ミス女神エリスコンテストの時に着ていたドレスよりも、さらにフリルが多く、スカートの裾がひらひらした、子供が思い描くお姫様みたいな可愛らしい格好をして、三つ編みを肩から垂らしている。
以前に着せたメイド服も似合っていたから、可愛い服が似合わないとは思っていなかったが。
と、顔を赤くし、ひらひらしたスカートを両手で握りしめるダクネスに、アクアが。
「ねえダクネス、その服は冒険者の服と違って柔らかい素材で出来ているから、あんまり力いっぱい握りしめると皺になっちゃうわよ。それはダクネスのために買ったものだしプレゼントしてあげるけど、せっかく買ったんだから大事にしてね? どうしても握りしめるものが欲しいんなら、私がコレクションしてる石を売ってあげましょうか?」
「い、いらない……。ありがとうアクア。その、着る機会はあまりないと思うが、大事にする」
アクアに礼を言うダクネスに、めぐみんが。
「ちなみに、選んだのはアクアですが、お金は三人で出し合いました。いつも盾役として私達を守ってくれているダクネスへの、ささやかなプレゼントですよ」
「そうだぞ、せっかく買ってやったんだから感謝しろよ?」
「お、お前達がそんな顔をしていなければ、私ももっと素直に感謝できるのだが!」
ニヤニヤしながら言う俺とめぐみんに、ダクネスが赤い顔で声を上げた。
*****
好奇の視線に晒されながら街を歩き、冒険者ギルドの前まで来ると。
「な、なあ、二人とも。やはり考え直さないか? 私は十分に反省したし、今後また同じような事があったら、必ず皆に相談する。本当だ。誓う。エリス様に誓おう。だから、それだけは……! 冒険者ギルドだけは……!」
俺は、エリスの名前まで出して嫌がるダクネスに。
「今さら何言ってんだ。いい加減に諦めて……!? あっ、こいつ! 抵抗する気か! 待てこら、逃げるな! おい、またドレインタッチを食らわされたいのか? あんまり駄々を捏ねるようだと、もう一つの方の罰も受けさせるがそれでもいいのか!」
「……ッ!? お、お前という奴は、どうしてそうも人の嫌がるところを的確に突いてくるんだ! 出来ればその才能を、もっと私の悦ぶ事に使ってくれ!」
「お前は真っ昼間から街中で何を口走ってんの?」
「そんなに縮こまらなくても大丈夫よダクネス! その恥ずかしい格好、とっても似合ってるわよ!」
褒めているつもりらしいアクアの言葉に、ダクネスがますます縮こまろうとする。
……アクアの言うとおりというのが気に入らないが、確かに似合っているのにこいつは何を恥ずかしがっているのだろうか。
たった今の発言の方がよっぽど恥ずかしいと思うのだが。
「くっ……! わ、分かった。ギルドには入る。抵抗もしない。だからバニルだけは……、バニルだけはやめてください……」
「お、おう……。お前が大人しく罰を受けるっていうんなら、俺だってそれ以上にひどい事はしないから安心しろ」
両手で顔を覆って懇願してくるダクネスに答え、俺がギルドに入ると。
すぐ目の前に、仮面を付けた背の高い男が。
「フハハハハハハハ! なかなか面白い事をしているではないか。仲間の見慣れない格好に内心ドキドキしている小僧に、似合っていると言われて満更でもない腹筋女、あとなんか発光物。我輩の手で生みだしたものではないというのに、これほどの羞恥の悪感情! 美味である美味である! これだから人間というやつは侮れぬ! そんな状態でわざわざ我輩の下までやってきてくれるとは、至れり尽くせりとはこの事か! エリス教徒のくせになかなか見所があるではないか! フハハハハハハハ!」
「ぬああああああああ!!」
ただでさえ顔を真っ赤にしているダクネスが、エリス教徒である事まで引き合いに出され、激昂してバニルに襲いかかっていく。
「そこよダクネス、右よ! 違う左よ! その薄っぺらい悪魔の本体をへし折ってやりなさいな! 今、私が支援魔法を掛けてあげるわね!」
バニルが相手とあって好戦的な事を言いだしたアクアのポンコツな指示に素直に従い、ダクネスは順当に攻撃をスカらせ。
「は、話が違うぞお前達! 冒険者ギルドに行ったら、バニルからの質問は受けなくても良いと言っていたではないか! どうしてギルドにバニルがいるんだ!」
バニルへと立ち向かうダクネスが、真っ赤な顔で振り返り、泣きそうな声でそんな事を……。
というか、半泣きである。
恥ずかしそうに顔を赤くしている姿は、正直かなりグッと来る。
……顔といいスタイルといい、外見だけなら完全に俺の好みのタイプなんだよなあ。
そんなダクネスが性癖を露わにするのではなく本気で恥じらっていると、中身まで純情乙女になったみたいで……。
「い、いや、俺だってこんなところにバニルがいるなんて思わなかったよ。ていうか、お前、悪魔のくせに冒険者ギルドで何やってるんだよ」
「おっと、不用意な発言は慎んでもらおうか。我輩はアクセルの街の善良なる一市民である。実は、我輩の見通す力をもってして、このクルセイダーのような脳筋冒険者にはこなせない類の依頼を請ける事にしたのだ。我輩の相談所は、本日もギルドの片隅で営業中である」
襲いかかるダクネスを平然と躱しながら、バニルがそんな事を言ってくる。
見ればギルドの片隅のテーブルに、水晶玉が置かれている。
……なぜかゆんゆんが椅子に座り、チラチラとこちらを見ているのが気になるが。
「フハハハハハハハ! 相変わらず不器用過ぎて攻撃が当たらず、最近めっきり活躍の機会を失ってきた脳筋クルセイダーよ! 不器用な貴様の攻撃がこの我輩に当たるわけがなかろうて! ……それより、良いのか? 貴様の雑な動きによって、いつもの格好と違うひらひらしたスカートの裾が翻り、露わになった太腿が小僧の目を釘付けにしているようだが?」
「んな……ッ!? カ、カズマ、見るなあ!」
恥じらう乙女のようなダクネスの反応に、俺まで恥ずかしくなってくる。
「みみみ、見てねーし! 別に見てねーし! おいダクネス。お前、後ろに目が付いてるわけでもないんだから、本当に俺が見てたかどうかなんて分かるわけないだろ。お前はエリス様の信徒なんだろう? 悪魔の言葉なんかに騙されるなよな。これは俺達を攪乱するためのバニルの作戦だ。仲間である俺と、悪魔であるバニル、お前はどっちを信じるんだ?」
「そ、それを言われると……。いや、分かった。そこまで言うならお前を信じ……信じ……、……信じたいのだが…………。ア、アクア、すまないがカズマの目を塞いでおいてくれないか?」
「分かったわ。カズマの目は私がちゃんと塞いでおくから、ダクネスはその性悪仮面をぶっ飛ばしてやんなさいな!」
「あっ、おいこらアクア、何やってんだ。あのバニルと戦闘中なんだぞ? 相手は何をしてくるか分からないってのに、俺の目を塞いでどうするつもりだよ? お前のポンコツな指示なんか役に立つはずがないし、俺がフォローしてやらないと勝てないだろうが!」
「ねえカズマさん。自分では分かってないかもしれないけど、目がヤバいんですけど。完全に犯罪者の目をしているんですけど。そんな姿をお茶の間に見られたら、モザイクを掛けられても仕方ないわよ? ていうか、警察に見つかったら捕まるんじゃないかしら」
「ふざけんな! 目つきがエロいなんて理由で捕まってたまるか! それに俺はダクネスが戦う姿を見ながらバニルの隙を探しているだけで他意はない。いいからほら、早く手をどけろよ!」
俺が目を塞ぐアクアの手をどかそうとするが、アクアはここぞとばかりに高いステータスを活かして俺の抵抗を撥ねのける。
クソ、どうしてこいつは俺の邪魔をする時ばかりまともに活躍するんだ。
「……ううむ。小僧に見られていた方がこの娘の羞恥の悪感情が高まるので、小僧にはこの娘のあられもない戦いぶりをじっくりと鑑賞していてもらいたいのだが。そこの鬱陶しい発光女はいつでも我輩の邪魔をしてくるな」
「ホントだよ! 今こそこいつをぶっ飛ばしてやりましょうバニル様!」
「ちょっとあんた待ちなさいよ! 悪魔に協力して女神をぶっ飛ばそうなんて何を考えてるの? それでも女神の従者なの?」
「うるせーバカ! 誰が従者だ!」
俺の言葉に文句を言うアクアに、俺が怒鳴り返していると。
「どうした恥ずかしい格好をした筋肉娘よ。慣れぬ服装のせいか、足運びに無理があるようだが」
「貴様に心配される事ではない! いいから一発殴らせろ!」
「まあ落ち着くがよい。そもそも今回、我輩が何をしたというのだ? 貴様が我輩好みの悪感情を発している時に、たまたま我輩が居合わせただけではないか。貴様がその羞恥の感情を発するようになったのは小僧のせいなのだから、素直に小僧を殴るが吉。我輩を殴るのは単なる八つ当たりではないか」
「……!」
バニルの正論に、ダクネスが反論できず黙りこみ……。
「……くっ……! あっ……!」
「ああっ、ダクネス! ダクネスが……!」
どうやらダクネスが足を縺れさせたらしく、ドタバタと大きな足音が聞こえる。
「お、おい! 何が起こってるんだよ! おいアクア、いい加減、手を離せよ!」
と、俺がアクアの手を引き剥がそうとしていると、いきなり何かがぶつかってきて。
貧弱な俺の腕力では受け止められず、倒れて下敷きにされる。
「……ッ!! す、すまんカズマ!」
「い、いやまあ、俺は大丈夫だが……?」
咄嗟にアクアだけ避けたので、俺は目が見えるようになり。
目の前には顔を真っ赤にしたダクネスが……。
以前、クーロンズヒュドラとの戦いでも似たような事になったが、今日のダクネスは鎧ではなく生地の薄い服を着ているせいで、肌の感触が生々しく伝わってくるし、ついさっきまでバニルを相手に大立ち回りしていたので、体温が高く少し汗ばんでいる。
…………。
これはいわゆる、ラッキースケベというやつだ。
一つ屋根の下に、見た目だけは美少女な三人と暮らしているのに、ほとんど訪れる事がなかったラッキースケベの機会だ。
なんというご褒美。
ダクネスと俺の体が密着しているが、俺は何ひとつ悪い事をしていない。
少しくらいダクネスの体を撫で回してしまっても、それは俺の人より高い幸運のステータスがようやく仕事をしただけであって、俺の意思ではない。
俺が幸運のステータスに導かれ、ダクネスに手を這わせると……!
「…………硬い」
畜生、どうして触れた場所がよりにもよって腹筋なんだ!
「おい、いつまで私の腹をまさぐっているつもりだ」
「あっはい」
「……なぜ私は腹をまさぐられたというのに、そんなガッカリした目を向けられなければならないんだ?」
俺が、白い目を向けてくるダクネスにどう言い訳をしようかと考えていると、バニルが。
「うむうむ。小僧のガッカリの悪感情、それなりに美味である」
「い、今のも貴様の策略か! 何がただ居合わせただけだ! やはり一発ぶん殴ってやらなければ気が済まない!」
バニルの言葉に再び激昂したダクネスが、素早く立ち上がりバニルに向かっていこうとして。
と、俺達が大騒ぎしていると。
「いい加減にしてください、皆さん! 他の冒険者の方々の迷惑になるじゃないですか! バニルさんも、それ以上騒ぎを起こすのなら、相談所は今日限りでやめてもらいますからね!」
ダクネスとバニルが暴れだしても巻きこまれない位置で、受付のお姉さんが大声を上げる。
お姉さんの言葉に、バニルが。
「本日も冒険者を相手に苦労している受付嬢よ。善良な我輩に襲いかかってくるこの凶暴な脳筋女はともかく、被害者である我輩まで叱りつけるのはやめてもらいたいのだが」
「むしろ私はバニルさんに注意しているんですよ。アクセルの善良な一市民だっていうから、ギルドの中に相談所を作るのを許可したんです。冒険者を相手に暴れるようなら、出ていってもらいますからね」
「それは困る。この相談所の収入を失えば、ウィズ魔道具店は今月も赤字である。赤貧店主に固形物を食わせてやるためにも、我輩はここであくせく働かねばならぬ。小僧の反応がいつもと違って自意識過剰に陥っている筋肉娘よ。ここは貧乏くじを引く事に定評のある受付嬢に免じて引くが吉。その代わりとして、我輩が一度だけ無料で貴様の相談に乗ってやろうではないか」
「断る! こないだも似たような事を言って、私に恥ずかしい質問をしてきたではないか! 今回はそれはナシでいいというからこんな格好をしているのに、どうして恥ずかしい質問を受けなければいけないんだ!」
「我輩にそんな事を言われても。我輩がこの場にいるのはまったくの偶然である。その辺りの文句は小僧にでも言うがよい」
そんな事を言うバニルに、いつの間にか近くに来ていたゆんゆんが。
「でもバニルさん、今日は面白い事がありそうだって言ってましたよね。それに、カズマさん達が入ってくるのが分かってたようなタイミングで、入り口の方に行きましたけど……」
*****
ゆんゆんの言葉に激怒した受付のお姉さんによって、バニルは追い出され。
すいませんでしたと頭を下げながら、ゆんゆんがバニルについていって。
「おい二人とも。ここに来るまでに街中を歩き回ったし、こうして冒険者ギルドでも辱めを受けたんだ。もう罰ゲームは終わりでいいだろう? もう十分に反省したし、次に同じような事があったら必ずお前達に相談する。…………だから今日はもう帰らせてください」
そんな事を言うダクネスは、冒険者に周りを囲まれ、顔を真っ赤にして小さく縮こまろうとしている。
「今日はまた一段と可愛らしい格好ですねお嬢様!」
「そんな格好も似合ってるぞララティーナ!」
冒険者達が口々にダクネスを煽り立てる。
と、その中の一人が。
「今度はカズマと結婚式でも挙げるんですかララティーナお嬢様!」
おいやめろ。
ダクネスをからかうのは勝手だが、いちいち俺を巻きこむのはやめてほしい。
「う、うるさい! 私をララティーナと呼ぶな! 引っ叩かれたいのかお前達は!」
顔を真っ赤にするダクネスに。
「そんな事言われても。今はダクネスっていうよりララティーナちゃんって感じだしな」
「ミス女神エリスコンテストの時もその格好で出れば良かったんじゃないか?」
「ララティーナかわいいよララティーナ」
「…………、……ううっ……」
冒険者達に口々にからかわれ、ダクネスが半泣きになって顔を覆う。
いつもなら殴りかかっているところだが、バニルとの戦いで、今の格好ではあまり激しく動けない事を学んだらしい。
「……わ、私はもう帰るぞ! カズマ! アクア!」
「えー? ダクネスったら、もう帰るの? 私はこの人達が、実入りのいいクエストを達成して報酬が入ったっていうから、お祝いパーティーに参加していくわね。宴会には芸がつきものだし、この私に任せなさいな! ほら見て見て、このエリス硬貨が……はい! 消えましたー! まだまだ消えるわよ! いくらでも消えるわよ! どう? 凄い? そうでしょうそうでしょう。もっと褒めてくれてもいいのよ。……えっ、何言ってんの? 消しちゃったんだから硬貨はもうないし、私にもどこに行ったのかは分からないわ」
……どうしてアイツはちょっと目を離した隙に他人様に迷惑を掛けているのだろうか。
アクアが早くもダクネスに罰を与える事に飽きているのを見て、縋るように俺を見るダクネスに、俺は。
「まあ待てよ。もう少し様子を見よう。今日はお前もいつもと違う感じだし、せっかくラブコメ的なお色気イベントが発生しそうなんだ。いつもお前らの面倒を見てやってるんだから、たまには俺にもご褒美があってもいいと思う」
「おお、お前という奴は! 普段は私達の事をまともに女扱いしていないくせに、こんな時にバカな事を言うのはやめろ。よ、よし分かった。屋敷に帰ったら少しくらい、その……、アレだ。だから今はやめてくれ。なんなら、背中を流すくらいならしてやってもいいから、もう帰らせてくれ。これ以上は本当に無理だ」
「マジかよ。お前、人目のないところで何をやらかすつもりだよ? こないだはめぐみんのいない隙にいきなり頬にキスしてくるし、お前の変態痴女っぷりには流石の俺もビックリだよ。言っとくが、お前はその格好で街を練り歩くより恥ずかしい事を何度かしてるからな?」
「だ、だからそういう事をこんな場所で言うなと……!」
「でもそうじゃないんだ。今俺が求めてるのは、そういうんじゃない。どうせ人目のないところでお前が迫ってきても、途中でヘタレるのは目に見えてる。だったら最初から余計な期待はしないで、ちょっとだけ幸せな感じのイベントの方がいい。具体的にはラブコメによくあるラッキースケベが発生するはずなんだ。今日のお前にはそういう可能性があると思う」
「お前が何を言っているのかさっぱり分からないが、ロクでもない事だという事は分かる。バニル相手にあれだけ恥ずかしい思いをしたのだし、私はもう十分に反省した! 悪いがもう付き合いきれん! 私は帰らせてもらうぞ!」
「いやまあ、そこまで嫌がるなら帰ってもいいんだけどな」
……コイツはアクアの話をちゃんと聞いていなかったんだろうか?
屋敷に帰ったら、可愛らしい服のまま、借りてきた魔道カメラを使って撮影会をするわけだが。
知られたらダスティネス邸の方に逃げそうなので、黙っておこう。
「おーい、アクア。ダクネスがもう帰りたいって……」
「なんでよーっ! 凄い凄いって言ってくれたじゃない! 私の芸で楽しんだんだから、お金の話は置いといてよ! 弁償って言われても無理に決まってるでしょう。アクシズ教会を建て直すのにお金を使っちゃって、ほとんど残ってないんだから!」
アクアはそれどころではないらしい。
調子に乗ってエリス硬貨を消してしまい、弁償しろと言われているようだ。
と、俺が様子を見ていると、アクアが俺の視線に気付き近寄ってきて。
「カズマさんカズマさん、あなたってほら、なんていうか……、…………。お金持ちよね」
「言っとくが、金は貸さないからな」
「なんでよーっ!」
……どちらかと言うと、ダクネスよりもコイツに罰を食らわせるべきではないかと思うのだが、どうせ反省しないので意味がない。
*****
「お帰りなさい。早かったですね」
俺達が屋敷に帰り広間に入ると、めぐみんがソファーに座り、生温かい目で、ゼル帝がちょむすけをつつき回すところを見守っている。
俺が、俺のところまで逃げてきたちょむすけを撫でてやっていると、ダクネスが自分の部屋へ行こうとしながら。
「もう罰とやらは終わったのだから、着替えさせてもらうぞ!」
「何言ってんだ? まだ罰は残ってるだろ。もう少しその可愛らしい格好のままでいろよ。まだ魔道カメラを使った撮影会があるんだからな」
「ああもうっ! どうして今回はそんなに周到なのだ! 私への嫌がらせのためだけに高価な魔道カメラまで用意したのか!」
俺が借りてきた魔道カメラを持ちだすと、ダクネスは頭を抱える。
「親切な貴族の人に事情を話したら、ダストの事を話すのと引き換えに無料で貸してくれたんだ。貴族なんて、市民があくせく働いた金で食っちゃ寝してる嫌な奴ばかりかと思っていたが、中にはいい貴族もいるもんだな」
「私にとってはちっとも良くない。あれだけの恥辱を受けて、この上、記念撮影なんて冗談ではない!」
「お前はいつもいつも、責められたいだの辱められたいだのと、恥ずかしい事を口にしてるじゃないか。念願が叶ったんだからもっと喜べばいいと思うぞ」
「こんなのは私が望む辱めではない!」
ダクネスが顔を赤くし、恥ずかしいセリフを恥ずかしげもなく口にする。
「まあ、とにかくこっちに来いよ。そんで、ニコッと笑って、スカートの裾でもつまんでポーズを取ってみろ。なんなら、脱いでもいいぞ?」
「断る! これ以上は付き合ってられん! というか、もう本当に許してください!」
そう言って、逃げようとするダクネスに、俺は用意しておいたロープを取りだして。
「おっと、いいのか? それ以上逃げると、王都で習得した俺のバインドが火を噴くぞ。そして、俺の手には魔道カメラがある。お前は可愛らしい服を着て縛られた状態で写真を撮られる事になるわけだが、いいのか?」
「ねえカズマさん、バインドって火を噴くスキルだったかしら?」
「……言ってみただけだ」
俺の脅しに、ダクネスは。
「やってみろ! やれるものならやってみろ! 確かに、結婚式の時に心配を掛けたのは悪かったと思うが、今日は散々からかわれて頭に来ているんだ! 私にはまだ、アクアの支援魔法の効果が残っている。お前のバインドを躱す事が出来たら、もう勘弁ならん! ぶっ殺してやる!」
「やろうってか! そっちこそ、やれるもんならやってみろ! だが、そっちがその気ならこっちだって容赦しないからな。バインドで縛られて無防備になったら、スティールを使い放題だって事を忘れるなよ。おまけに今、俺の手には魔道カメラがあるんだぞ? これがどういう事だか……、…………」
と、俺は途中で言葉を止める。
アクアとめぐみんが、俺を見てドン引きした様子で。
「うわー、うわー……。この男、ついに犯罪予告を始めたわ。ねえカズマ、流石にそれはどうかと思うの。越えちゃいけないレベルってあるでしょう?」
「最低です! この男、最低ですよ! 流石、街でクズマとかゲスマとか呼ばれているだけの事はありますね。こういうのを百年の恋も冷める瞬間と言うのでしょうか? 今のは私もちょっとゾッとしましたよ」
ダクネス以外の二人が俺を非難する中、ダクネスがハアハアと息を荒くし身悶えして。
「……は、裸の、しかも縛られた状態の写真だと……! んんっ……! ど、どうしよう? それはちょっと悪くないかもしれないと思う私は、どこかおかしいんだろうか……?」
頭のおかしいダクネスの言葉に、俺を含めたダクネス以外のがドン引きする。
「いや、お前は何を言ってんの? お前の羞恥の基準がさっぱり分からん。こんなのいつもの冗談で、実際にやるわけないだろ。だから犯罪者に向けるような目で俺を見るのはやめろよ」
「……なんだ、冗談ですか。冗談にしても悪質だと思いますが、まあカズマですしね」
「いいえ、この男は口に出した事はやるわ! だってカズマだもの!」
ほっとしたように言うめぐみんに、アクアが余計な事を言う。
「おいやめろ。やらないって言ってるだろ。お前らこそ、悪質な風評被害を撒き散らすのはやめろよ」
「な、なんだ……。やらないのか……?」
「お前もガッカリしてんじゃねーよ! お前ら俺をなんだと思ってんの? 流石にそんな、セクハラじゃ済まないレベルの事をするわけないだろ! ほら、撮影会だよ撮影会! ダクネスもいい加減に諦めて、こっちに来いよ!」
―― 一体何枚の写真を撮っただろう。
何もせず突っ立っているダクネスを様々な角度から撮影したり、笑えと言ってもぎこちない笑顔しか作れないダクネスを叱咤したり、調子に乗ったアクアがダクネスに変てこなポーズを要求したり……。
「おっ、いいぞダクネス! その物憂げな表情はすごくいい! まるで本物の令嬢みたいだ!」
「わ、私は本物の令嬢なのだが!?」
変なスイッチが入った俺は、ダクネスをおだてながら写真を撮りまくっていた。
最初のうちは撮影するたびに、もうやめようなどと言っていたダクネスも、少しずつ態度がほぐれてきて、今では自然体でいるように思う。
相変わらず笑顔はぎこちないが……。
「よし、じゃあ次は基本に立ち返って、可愛い系のポーズを……」
と、俺がダクネスに次のポーズを指示しようとした時。
どこかソワソワしながら撮影会の様子を見ていためぐみんが。
「あ、あの、カズマ。魔道カメラを借りてきたのは、ダクネスの写真を撮るためというのは分かっているのですが、私の写真も、一枚だけでもいいので撮ってもらえませんか?」
「私も私も! 高級な魔道カメラで撮影してもらう機会なんて、あんまりないと思うし、ダクネスばっかりズルいと思うの!」
めぐみんの言葉に、アクアまで便乗する。
そんなアクアの言葉に、ダクネスが顔を赤くして。
「お、おいアクア、私は写真を撮ってもらいたくて撮られているわけではないからな? というか、お前達が罰だと言うから大人しく撮られているのであって……」
「それにしてはノリノリでしたねお嬢様」
「だ、誰が……! というか、お嬢様と呼ぶのはやめろ!」
俺は、フィルムがまだ少し残っているのを確認して。
「まあ、ダクネスの写真はもうたくさん撮ったし、お前らが写真を撮ってほしいって言うんなら別にいいぞ」
「本当ですか? ありがとうございます。魔道カメラは紅魔の里でも作っていて、里でならそれなりの値段で借りる事が出来るのですが、ウチは貧乏だったので、記念日なんかでも写真を撮る機会はなかったのです」
よっぽど写真を撮りたかったのか、めぐみんが嬉しそうにそんな事を……。
…………。
「そ、そうか。好きなだけ撮ってやるからな」
「そうね! そんなに撮ってほしいんだったら、めぐみんの写真から撮ってもらえばいいんじゃないかしら。私は写真なんて珍しくもなんともないし、後からでいいわよ」
「なんですか? 別に私は気にしていませんし、急に優しくするのはやめてくださいよ」
ちょっと照れ臭そうにソファーから立ち上がっためぐみんが、俺の方に近寄ってきて。
「……というか、カズマが私の目の前で、ダクネスを褒めながら写真を撮っているのが、少し羨ましかったりするんですよ」
「お、おう……」
なんなのコレ。
そういう感想に困る事をこそっと言うのはやめてほしいんだが。
「よ、よし、それじゃあ撮るぞ」
――それからは、ダクネスの罰だとかそんな事は忘れて、ダクネスも入れて皆の写真を撮る。
めぐみんが、紅魔族流の格好いいポーズを次々と取って、俺がそれに、動いていると写真が撮れないと文句を言ったり。
アクアが、超格好いいポーズだとか言って、荒ぶる鷹のポーズを取ったり。
そんなアクアに爆笑するダクネスの横顔をこっそり撮ったり。
と、そんな事をしているとフィルムも残り少なくなってきて……。
「おっ、次で最後の一枚だな。そういや、ネガがあるわけでもないみたいだが、コレってどうやって現像するんだ? その辺の事は、貴族の人がやっといてくれるらしいけど」
俺が何気なく頭に浮かんだ疑問を口にすると、それまで楽しそうにしていたダクネスが、急に顔を青ざめさせて。
「な、なあカズマ。その……、写真は現像するのか? そんな事をしたら、私の写真がいろいろな人に見られる事になるんじゃないか?」
「……? 今さら何を言ってんだ? 写真ってそういうものなんだから、当たり前だろ」
「待ってくれ。今日限りだと思ったから、恥ずかしいのにも耐えたんだぞ。これからずっと、あんな恥ずかしい写真をいろいろな人に見られる辱めに耐えなければいけないのか? それに、こんなに楽しい気分にさせておいて、今さら罰を追加するなんてひどいじゃないか! そういう不意打ちは、もっと私好みの責めをしている時にやってほしい!」
「いや、本当に何を言ってるんだよ。別にコレは罰を追加したわけでもないし、不意打ちでもないだろ。写真を撮ったら現像するのは当たり前じゃないか」
いきなりわけの分からない事を言いだしたダクネスに、アクアとめぐみんも戸惑った顔をして、俺達のやりとりを見守っている。
……撮影されるのが恥ずかしくて、写真が残るという事にまで考えが及んでいなかったらしい。
なんていうか、本当に脳筋だなあ。
「そ、それはそうだが……。そうなのだが……。そ、そうだ! アクアの言った罰には、確かに撮影会も含まれていたが、撮った写真をどう使うかまでは決まっていなかったはずだ! 撮影はしたのだから、写真は現像しないでおいてもいいではないか!」
「まあ確かに、今さら罰って感じでもないけどな」
アクアとめぐみんの写真も撮ったのにどうするんだと、俺が問いかけるより先に。
アクアの掛けた支援魔法がまだ残っているらしく、素早く距離を詰めたダクネスが、俺から魔道カメラを奪っていく。
「ふはははは、残念だったな! もう罰とやらは終わりだ! 二人には悪いが、この魔道カメラは私が預からせてもらう!」
「おいふざけんな。せっかく穏便に済ませてやろうと思ってたのに、お前がそういう手段に出るんなら、こっちにも考えがある。いつもの事だが詰めが甘いぞ。……『スティール』!」
俺がすかさず片手を突きだし唱えると、突きだした手の上に白い下着が……。
…………。
「いや、違うんだって。さっきは確かにスティールで全裸にするとか言ってたが、今回は本当に魔道カメラを奪い返そうとしただけで、俺の意思じゃないんだよ。俺のスティールがなぜか女の下着ばかり奪うのは知ってるだろ?」
俺が慌てて言い訳をしていると、成り行きを見守っていたアクアが。
「ダクネスだったら、カズマさんがよく分からない言い訳をしてる間に逃げていっちゃったわよ」
言われて屋敷の玄関のドアを見ると、ドアはちょうど閉じられるところで。
……アクアの支援魔法の効果で、逃げ足も速くなっているらしい。
あれは追いつけない。
「ったく、なんなんだよあいつは? 見られるのが嫌だって言うなら、現像した写真は焼き捨てちまってもいいって言おうとしてたのに」
というか、あいつは可愛らしい格好を恥ずかしがっていたくせに、ノーパンで街を闊歩するのは恥ずかしくないのだろうか。
「まあ、ダクネスは可愛らしい格好を恥ずかしがっていましたし、写真を撮られるのも嫌がっていましたからね。現像するとなると業者の人にも写真を見られる事になるでしょうし、それが恥ずかしかったんじゃないですか? 今回は、結婚式の時に私達を心配させたダクネスへの罰という事でしたし、ちょっと追いつめすぎたのかもしれませんね。私は撮影会が出来ただけでも満足なので、写真は諦めますよ」
「えー? せっかく私の麗しくも格好いい姿を撮ったんだし、出来上がった写真を見たかったんですけど」
「まあいいではありませんか。撮影会も楽しかったですよ」
俺は、文句を言うアクアを宥めるめぐみんに。
「……お前、いつもは誰よりも怒りっぽいくせに、たまに物分かりのいいところがあるよな」
「何を言っているんですか? 私はどんな時でも冷静沈着なアークウィザードですよ」
――その夜。
ダスティネス邸に逃げこんだらしく、ダクネスは夜になっても帰ってこなかったが、誰も心配する事はなく、夕飯を食べ始めた。
続きます。