このすばShort   作:ねむ井

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 時系列は、4巻の辺り。


この愚か者の日に真っ赤な嘘を!

 ある日の夜。

 夕飯の後、屋敷の広間でダラダラしていた俺は、ふと思いつきつぶやいた。

 

「そういや、明日はエイプリルフールだな」

 

 ダクネスとボードゲームで遊んでいためぐみんが、盤面から顔を上げて。

 

「何ですかそれは? また何かおかしなことでも思いついたんですか?」

「別に俺が思いついたわけじゃなくて、俺が元いた国であったイベントなんだよ。エイプリルフールって言って、一年でその日だけは嘘をついてもいいってことになっているんだ。こっちではそういう特別な日ってないのか?」

「嘘をついていいなんておかしなイベントはないが、毎年夏にはエリス様に感謝を捧げる祭りが開かれるぞ」

 

 ダクネスがそんな事を言っている間にめぐみんが駒を進め、盤面に視線を戻したダクネスが泣きそうな表情になる。

 俺はそんな二人に。

 

「エイプリルフールってのは、嘘を吐いて普段はしないようなイタズラをしましょうみたいな日だよ。普段なら怒られるような嘘でも、その日だけは許してもらえるんだ。例えば、仕事をクビになったって言っておいて、実は昇進してたってネタ晴らししたり、玄関で死んだふりをしていて、相手が驚いたらエイプリルフールでしたっつって起きあがったり……。騙された方も、なんだエイプリルフールかってなると許してくれるわけだ。昔の話だけど、スパゲッティーは木に生るっていう嘘が新聞に載って、大勢が騙された事もあったらしいぞ」

「何を言っているんだ? スパゲッティーは木に成るものだろう」

 

 俺の説明に、ダクネスがそんな事を……。

 

 えっ。

 

「……と、とにかく、明日はそういう日なんだよ!」

 

 強引にまとめた俺の説明を、胡散臭そうな表情で聞いていためぐみんが。

 

「それで、どうして私達にそんな話をしたんですか? 私達に嘘を吐くつもりなら、明日がそのエイプリルフールとやらだとは言わない方がいいと思うのですが」

「いや、なんにも知らない相手に嘘を吐いておいて、後からエイプリルフールでしたって言ってもアンフェアだし、そんなもん知るかって怒られるだけだろ」

「その話をしたという事は、明日は私達に嘘を吐くつもりという事だな? いいだろう、お前がそういった駆け引きに長けている事は知っているが、いつもいつも簡単に騙されると思うな」

 

 ダクネスが不敵な笑みを浮かべ俺を睨む。

 

「そうじゃねーよ。こういうのは、油断してる相手を騙すもんで、相手が最初から警戒していたら、やる事全部疑われて面倒くさい事になるだろ? お前ら、明日はいちいち俺の言葉の裏を読んでくるんだろうけど、普通の会話まで疑われるのは面倒くさい。今のうちに言っておくと、俺は明日、エイプリルフールだからってお前らを騙したりはしないからな」

 

 二人は疑わしそうな目で俺を見て。

 

「……カズマと嘘を吐いていい日なんて、相性が良すぎて何をされるのかわからないのですが」

「ああ、間違いなくロクでもないろくでもない目に遭わされるだろうな。……んんっ!!」

「だから俺は嘘なんか吐かないって言ってるだろ! 想像して興奮してんじゃねえ! お前らにエイプリルフールの事を教えたのは、アクアを騙してもらおうと思ったからだよ」

 

 アクアは風呂に入っていて、この場にはいない。

 

「あいつはバカのくせに妙に勘が鋭い事があるだろ? 俺が騙そうとしたら怪しむかもしれないが、エイプリルフールを知らないはずのお前らに騙されるとは思わないはずだ」

 

 俺の言葉にめぐみんが納得したようにうなずく。

 

「なるほど。イベントのようなものだと言うなら、アクアに嘘を吐いてみるのも面白いかもしれませんね」

「そ、そうだな。私はあまり気が進まないが、カズマ達が元いたところの風習というのは少し興味がある」

 

 なぜかソワソワしているダクネスが、言い訳のような事を口にする。

 

「しかし、いきなり嘘を吐けと言われても……。正直言って、私はそういった搦め手に向いていない。何事も正面から当たって砕けるのが性に合っている」

「玄関で死んだふりをしていたら、アクアなら蘇生魔法を掛けるでしょうし……」

 

 俺が教えた変てこなイベントに、二人は乗り気な様子で悩み始めた。

 

 

 *****

 

 

 ――翌日。

 昼過ぎに起きだした俺が階下に降りると、広間はおかしな空気になっていた。

 気まずそうな表情で佇むダクネスの前で、なぜアクアが土下座をしている。

 

「ごめんなさいでした」

 

 ……いや、何これ。

 

「おはようございますカズマ。これはですね、嘘をつこうとしてダクネスがソワソワしているのを、隠し事を追及しようとしていると勘違いし、アクアが最近やった厄介事を勝手に自白して謝っているところです」

 

 俺の元へとやってきためぐみんが、コソッと耳打ちしてくる。

 アクアの自白と言い訳が結構シャレにならない内容を含んでいる事に、ダクネスの表情が引き攣っていき……。

 やがて、ハッと何かに気づいたように両目を見開いた。

 

「……ダクネスはアクアが言っている事がエイプリルフールの嘘だと思ったみたいですね。でも、自分がエイプリルフールについて知っている事を知られると、アクアに嘘を吐く事ができなくなるのでツッコめないようです」

 

 ダクネスはめぐみんの言葉通りに、もどかしそうな、なんとも言えない表情をアクアのつむじに向けている。

 そんなダクネスに、アクアが土下座したまま。

 

「――あと、こないだ皿洗いをしていて、ダクネスが大事にしていたカップをうっかり割っちゃったのも実は私よ。割っちゃった事がバレないようにご飯粒でくっつけて、わざと落ちやすいところに置いてダクネスが落とすように仕向けたのも私。ええ、全部私がやったわ。謝るので許してください」

「そ、そうか。まあ、アクアが厄介事を起こすのは今に始まった事でもないしな。それに、悪意がない事も知っている。いろいろと言いたい事はあるが、今回は怒っていないから頭を上げてくれ」

 

 ……ダクネスはアクアの言葉が嘘だと察し、騙されたふりをすることにしたらしい。

 顔を上げたアクアが小首を傾げながら。

 

「本当? ねえダクネス、さっきから様子がおかしかったけど、私が秘密にしてた事に気づいちゃったからじゃなかったの?」

「!? ななな、何を言っているのか分からないな! 私はいつもどおりだ! どこもおかしいところなどない!」

「でもさっきから、なんだかソワソワしているように見えるんですけど」

「それはアクアの気のせいだろう。ただ、今日はなんとなく優しい気分でな。大抵の事は許してやれそうなんだ。なあめぐみん?」

 

 アクアのツッコミに思いきりうろたえたダクネスが、めぐみんに話を振る。

 

「えっ? え、ええ、まあ……。そうですね。今日はなんと言いますか、私もなんとなく優しい気分ですね」

 

 ダクネスの言葉に、めぐみんが戸惑いつつもうなずいた。

 そんなめぐみんにアクアは。

 

「それじゃあ、他にも隠していた事を言うわね。めぐみんが大事にしている杖が汚れていて、あまりにもマジギレしていたから言いだせなかったんだけど、杖を汚したのが近所の子供達って言ったのは嘘で、あれも実は私だったのよ」

「!? そ、それは……。まあ、もう過ぎたことですからね。杖もきれいになりましたし、今さら蒸し返すようなことではありませんよ」

 

 許されると知り、さらに過去のやらかしを白状するアクアに、めぐみんが微妙な表情を浮かべながらも気にしていないと言う。

 

「それと、冬の間、冒険者達がギルドで暇そうにしていたから、何度か宴会を開いて芸を見せてあげたのよ。カズマさんの名義でギルドの酒場に借金が溜まっているんだけど、それも許してくれるわよね?」

「許すわけないだろ」

 

 ロクでもない事を白状するアクアに、俺は即答した。

 

「ちょっとあんた待ちなさいよ! 今のは完全に許してくれる流れだったじゃないの!」

「そんなもん知るか。俺の名は佐藤和真。空気だとか流れだとかいうわけの分からない同調圧力には屈しない男。酒場の人にはきちんと事情を説明しておいてやるから、自分で作った借金は自分で返せよ」

「わあああああーっ! 許してもらえると思ったから話したのに!」

 

 

 *****

 

 

「待って! ねえ待ってよ! 私の話を聞いてちょうだい。私は悪くないの。あのダストとかいうチンピラ冒険者にそそのかされただけなのよ」

 

 俺に小遣いを減らすと宣言されたアクアが、泣きながら俺に縋りつく中。

 

「そ、それでだな。アクアに話したいことがあるのだが……」

 

 ダクネスが意を決したような表情でアクアに話しかける。

 

「嫌よ! だって、ダクネスがなんだか怖い顔をしているもの。やっぱり何か私に言いたい事があるんでしょう? さっき私が言ってたやらかし以外に、ダクネスが怒るような事があるんでしょう? でももう私には心当たりはないわよ! それはダクネスの勘違いなので許してください!」

「ええっ? わ、私は別に怖い顔など……。この顔は生まれつきで……」

 

 嘘をつくという慣れない行為にテンパっているのか、表情を強張らせているダクネスがアクアの言葉にうろたえる。

 

「だったらダクネスも私を許すようにカズマに言ってやって! 罪のない私にこれ以上無体な事をするのは間違ってるって言ってやってよ!」

「そ、それは……。まあ、その……。なあカズマ、どうだろうか? アクアも反省しているようだし、ここは私に免じて許してやってくれないか?」

 

 ダクネスは、アクアは嘘をついているだけなのだから許したという事にして、早く自分の嘘をついてしまいたいらしい。

 

「はあー? お前は何を言ってんの? こういう状況で俺が簡単に許すわけないだろ。こいつが勝手に宴会をやって借金を作ったのに、どうして俺が金を返さないといけないんだよ?」

 

 俺がじっとダクネスを見つめながら言うと……。

 アクアが嘘をついているとしても、この状況で俺が許すと、アクアが怪しむかもしれないことにダクネスも気付いたらしく。

 

「そ、そうか。確かにあまり甘やかすのも本人のためにならないかもしれないな。うん、やはり自分で作った借金は自分で返すべきだろう」

 

 感心したような、呆れたような目を俺に向けながら、そんな事を言う。

 

「ねえ待って? どうしてそんなにコロコロ意見を変えるの? ダクネスったら、カズマの影響を受けて頭がやわっこくなりすぎていると思うの。昔の頑固で融通の利かない、ちょっと泣き真似をしただけで許してくれた、あの頃のチョロいダクネスに戻って!」

「お、お前は私をそんな風に思っていたのか……! さっきのは取り消しだ! 一度カズマに厳しく折檻されてしまえ!」

「なんでよーっ!」

 

 ――と、そんな時。

 

「実は、ダスティネス家が没落したそうでして」

 

 なかなか話が進まない事に痺れを切らしためぐみんが、爆弾発言をぶっこんだ。

 

 

 

「さっきからダクネスの様子がおかしいのもそのせいです。私はこっそり相談を受けていたのですが、路頭に迷ったダクネスは体を売ってお金を稼ぐと言いだしまして……。ダクネスがバカな事をしないように、アクアも一緒に止めてくれませんか」

「えっ」

 

 めぐみんの言葉に、戸惑ったように声を上げたのは、体を売ろうとしているなどと言われたダクネス。

 何か言おうとするダクネスを遮って、めぐみんはさらに。

 

「カズマは魔王軍の幹部や大物賞金首を撃退し、多額の賞金を得ていますから、この際だしカズマに嬲られるのも悪くはないなどと血迷った事まで言っていまして」

「ええっ」

 

 涙目になったダクネスがめぐみんを止めようか悩んでいるが、これもアクアを騙すためだと思い直し口を噤む。

 そんな二人の渾身の嘘に。

 

「ダクネスはもっと自分を大事にするべきだと思うの。どうしてもって言うんなら、私の貯金箱を割ってもいいわよ?」

 

 アクアがいろいろな意味でどうにもならない事を言う。

 

「い、いや……。二人の気持ちはありがたいが、これは当家の問題だ。貴族の問題に庶民を巻きこむわけには行かない。もちろん、労働の対価として金を得るのは当然の権利だし、私が身を売るとしたらそれなりの金は貰う事になるが……」

 

 少し顔を赤くしたダクネスは、チラチラと俺の方を見ながら。

 

「……し、しかし、そうだな、カズマは大金を持っているし、私が風呂上りにうろうろしていると舐めるような目で見てくるし、何よりねちっこくて他人を責めるのに向いているという私好みな性格をしている。どうせ誰かに身売りしなければならないなら、相手がカズマと言うのは悪くないかもしれん。……しかし、めぐみんがカズマの事を好いているそうなんだ。私としては、仲間の想い人にそういった事をするのはどうかと思ってな」

「えっ」

 

 嘘とは言え家を没落させられた仕返しにか、ダクネスがめぐみんを嘘に巻きこみ、巻きこまれためぐみんが声を上げる。

 

「えー? めぐみんったら、男の趣味が悪すぎると思うの」

「そそそ、そうですかね! カズマにもいろいろといいところはあると私は思いますが!」

 

 エイプリルフールの嘘に気付かれないために、めぐみんが俺のフォローをしてくる。

 ……ほう。

 

「そうだったのか。これまでめぐみんの好意に気付かなくて悪かったな。ちなみに俺のいいところってどういうところか聞いてもいいか?」

「!? そそ、そんな事をいきなり聞かれても! ええと、アレですよ。カズマは毎回文句を言いつつも私の爆裂散歩に付き合ってくれますし、背負ってもらっている時にちょっと頼り甲斐があるなって思ったりしたんですよ」

「ほう、それからそれから?」

「それから!? そ、そうですね。よく見るとイケメン……ではありませんね。強敵と戦う時には頼もしい……事もありませんね。……でもほら、カズマはそこはかとなくアレなので、私はカズマのそんなところが好きですよ」

「おいふざけんな。イケメンじゃないとか頼もしくないとか、全然褒めてないじゃん。そんなところってどんなところだよ! 褒めるならちゃんと褒めろよ!」

 

 俺の追及にめぐみんが視線を逸らす。

 そんなめぐみんに俺は。

 

「俺は優柔不断なハーレム主人公じゃないから、告白されたら聞き間違えたりヘタレたりしないで付き合うぞ。めぐみんもいつでも告白してくれていいからな」

「い、いえ、その……。そ、そう! 恋愛が原因でパーティーが崩壊すると言うのは冒険者にはありがちな事ではないですか! 私としてはこのパーティーが気に入っていますし、魔王を倒すまではカズマとも今の関係のままでいいかなと思っています」

「大丈夫だ。俺達はこれまでにも魔王軍の幹部や大物賞金首を撃退してきたパーティーだぞ? そんじょそこらのパーティーとは絆の強さが違う。パーティー内恋愛くらいで簡単に崩壊するわけないだろ」

「いいんです、気を遣わないでください! 万が一という事もありますし、私は想っているだけで満足ですから……!」

 

 アクアに嘘だと悟られないために苦しい言い訳を重ねるめぐみんに、俺がネチネチと絡んでいると。

 

「と、とにかく! 私はこのままでいいんです! カズマに告白する予定もないです! 今のところ私とカズマは付き合っているわけではありませんし、ダクネスがカズマに身売りしたとしても私が何か言う事はありませんよ」

「ええっ!?」

 

 めぐみんがダクネスを売った。

 顔を赤くし、涙目で俺から必死に目を逸らすダクネスに、俺は爽やかに微笑んで。

 

「構わんよ」

「構うわ! いやっ、その……。そ、そうだ! パーティー内で恋人ができるとパーティーが崩壊するという話と同じくらい、パーティー内で金のやりとりをするとパーティーが崩壊するという話もよく聞く。私としてもこのパーティーは気に入っているし、カズマから金を受け取るのは良くないと思う!」

「ダストのところは何度も金の貸し借りをしていて、しかもダストはまったく返していないのに解散してないぞ」

「アレを参考にするのはどうかと思う」

 

 ダクネスが普通にツッコむ。

 それはその通りなので俺も何も言えない。

 

「まあでも、俺達のパーティーはあいつらよりは強い絆で結ばれていると思うんだ。俺達は魔王軍の幹部や大物賞金首とも渡り合ってきたんだぞ? 恋愛のいざこざとか金のやりとりとか、そんなつまらない事で解散しちまうようなパーティーじゃないはずだ」

 

 俺の言葉に、ダクネスは恥ずかしそうに、けれども少しだけ誇らしそうに。

 

「あ、ああ、もちろんだ……!」

「だからダクネスが俺に体を売っても何も問題はない」

「……!?」

 

 ちょっといい雰囲気を作ったらコロッと騙されたちょろいダクネスが、俺の言葉にしまったというような表情になる。

 そんなダクネスに俺がさらに何か言おうとすると。

 

「え、エイプリルフール!」

 

 羞恥に耐えきれなくなったのか、顔を赤くしたダクネスが大声でネタばらしをした。

 

 

 *****

 

 

「エイプリルフール?」

 

 アクアがきょとんとした顔で言う。

 

「ああ。カズマから聞いたんだが、お前達が元いた国では、今日は嘘を吐いてちょっとしたイタズラをする日なんだろう? それで皆でアクアに嘘を吐こうという事になったんだ」

「まあ、ダクネスがバカな嘘を吐いたせいで、途中からおかしな事になりましたけどね。アクアには騙すお詫びとして、ちょっと高めのお酒を買っておきましたよ」

「あ、あれはめぐみんが、当家が没落したなどと言いだしたからで……!」

 

 めぐみんが差しだした酒を受け取りながら、アクアが不思議そうに首を傾げて。

 

「二人とも何を言ってるの? エイプリルフールは昨日なんですけど」

「「えっ」」

 

 アクアの言葉に二人が声を上げる。

 どういう事だと俺を見る二人に、俺はドヤ顔で。

 

「エイプリルフール!」

 

 そう。本当はエイプリルフールだったのは昨日の事で、今日は嘘をついたら怒られる普通の日だ。

 つまり、昨日言った『明日はエイプリルフールだ』という言葉こそ、俺がエイプリルフールについた嘘で……。

 

「この男!」

「……!? ……? ま、待ってくれ。どういう事だ?」

 

 めぐみんが激昂する中、俺に嵌められた事は察しつつもよく分かっていないダクネスが誰ともなく問いかける。

 

「明日はエイプリルフールと言っていたのが嘘で、本当は昨日がエイプリルフールだったんです! 最初からこの男はアクアではなく私達を騙そうとしていたんですよ!」

「そうだよ。お前らは俺に騙されているとも知らないで、普通の日にアクアを騙そうとしていたってわけだ。昨日はエイプリルフールだったんだし、俺が嘘を吐いても問題はないはずだ。エイプリルフールについてきちんと説明したんだから、そんな事知らなかったとも言えないよな? それに、今日がエイプリルフールだと思いこんでアクアを騙してたお前らは俺を責められないと思う」

「……ッ! ……ッ!!」

 

 俺の正論に、反論できないダクネスが悔しそうに歯軋りする。

 と、そんなダクネスが何かに気付いたように。

 

「ま、待ってくれ。今日はエイプリルフールではないという事は、さっきアクアが言っていた事は全部本当だったのか?」

「そうだよ」

「私の杖を汚したのも、近所の子供達ではなくて本当にアクアだったんですね? まあ、過ぎた事ですし、私の杖は綺麗になっているので構いませんが……」

 

 めぐみんとダクネスはアクアを見て……。

 

「という事は、私が大切にしていたカップを割ったのはアクアだという事に……。お、おい、アクアはどこに行ったんだ?」

 

 いつの間にかアクアが姿を消していることに気づき、ダクネスが俺に訊いてくる。

 

「ダクネスが俺に身売りをしようとした事とか、めぐみんが俺を好きだった事とかを、ギルドの皆に広めなきゃって言って出ていったよ」

 

 俺の言葉に、二人はアクアを追って屋敷を飛び出していった。

 


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