今回はろくろ首のお話。
まさかの学校に自分含めて六人もの亜人がいることを各々が知った翌日。
「あ」
「お」
雪と蒼也が校門でばったり出くわす。
「おはよう、平山くん。昨日はありがとう」
「よう、もう体調はいいのか?日下部」
「うん、おかげ様でね」
「気にすんな。大したこたぁしてねぇよ///」
少し照れ臭そうにする蒼也にクスっと笑いが溢れる。
「そう?そう言えば、昨日の平山さんとは妹なんだよね?」
「ああ、そうだけど、それが?」
「一緒には登校してないんだね」
「あいつに合わせてたら遅刻しかねんからな」
「あはは……」
苦笑して二人で教室に向かおうとすると、横からゴチン!!!と音が響いた。
「こぉら蒼也!!置いていくとは何事だぁ!!?」
「ってぇ~~~……」
蒼也に頭突きをかましたその人は。
「ひ、平山さん?」
「おう!?雪ちゃんじゃん」
「おはよう。頭だけだけど、身体は?」
「ん?もうすぐそこ!」
ぐりん!と首を回した視線を追うと、首が異様に伸びた身体が走ってくるのが見えた。
「あ~、目ぇチカチカする……」
「だ、大丈夫?平山くん」
「ふん!ウチを置いてったのが悪い!」
「んなこと言ったって、葵に合わせると俺が遅刻するし」
「今日は別に問題なかったじゃんかー!」
「ギリギリなのは変わんねぇし、一緒に出たいなら俺の時間に合わせろっていつも言ってんだろ」
正論にぷんすこ!と頬を膨らませる葵。
楽しそうな兄妹のやり取りを雪が微笑ましく見ていると。
「おっはよう!ユッキー!」
「た、小鳥遊さん!?」
小鳥遊ひかりが突撃してきた。
「うぅん!冷たーい」
「ちょっと、やあ!」
雪女で体温の低い雪に、暑さのダメなヴァンパイアであるひかりが抱きつく。
思いっきり抱き着いて、頬ずりしたりして雪の服も乱れてきたので、かな~り百合百合しく見える。
「おっはよう!ひかりちゃん」
「おはよう!あおちー」
葵の存在に気付くと、ひょいと離れて挨拶する。
「そういや昨日のさー」
「あー、それウチも見た見た!」
「やっぱあれってさ」
「だよねー」
そのままポンポンと話題が広がるのは女子高生特有のスキルなのだろう。
ひかりと葵は二人で会話して校舎に向かってしまった。
「あー……大丈夫か?日下部」
「う、うん。大丈夫……」
「いい奴らなんだけど、な」
「いい人たちなんだけど、ね」
「「あはは……」」
なんとも言えない疲れた空気を纏いながら、雪と蒼也はとぼとぼ教室に向かった。
――――――
~side葵~
今朝ウチのことを置いてさっさと学校に行った薄情な蒼也を放っておいてひかりちゃんと教室に向かう。
「そういや先生がさ~」
「?どしたん?」
ひかりちゃんの中で先生と言えば高橋先生のことだ。
何で名前を付けないのかと聞くと、なんか高橋先生は『先生ぇ』って感じがするからだと言う。
気持ちはめっちゃ分かる。
かく言うウチはテッちゃん先生なわけだけども……
「いや、何か私たちの話を聞きたいんだって」
「ウチらって、デミの?」
「うん、何か昔からそういう研究してたけど、会う機会が今までなかったんだって」
「だからウチらの話が聞きたい、って?」
「そうそう、色々デリカシーないとこもあるけど、話してて楽しいし、生物準備室って涼しいからさ。オススメだよ!」
「ふぅむふむ……」
面白い情報をゲットした!
そういうことなら、昼休みにでも突撃しますかぁ。
――――――
~side先生~
「というわけでぇ、お邪魔しまぁす!!」
お昼ご飯を食べ終えてゆっくりしてたらいきなりドアが開いた。
「テッちゃん先生が乙女の秘密が知りたいって聞いたから来てあげたよん!」
「それ、他の奴には言ってないよな?」
話を聞く前に、俺についての誤解が拡がってないか不安になる。
「まぁ、色々と話してくれるのはこっちとしても願ってもない。よろしくな」
「うんうん!よぉろしくぅ!」
元気で笑顔な平山につられて笑う。
少し楽しい時間になりそうだ。
――――――
「それで、色々聞きたいがまずは首を長く伸ばすってどういう感覚だ?」
まず最初に一番気になることを聞いてみた。
あれだけ首が伸びるということは普通の人とは違う景色の見え方なり感じ方があると思うからだ。
「ん~、他の人が首動かしてるのとあんま変わらないと思うよ?」
「え、そうなのか?」
意外な答えが返ってきた。
「こう、さ。前の人が弄ってる携帯で気になる画面だったら首動かして覗きたくなるじゃん?」
「ああ、気持ちは分らんでもない」
実際はマナーとかでやらないがな。
「あれの延長みたいな?」
「そう言われるとまだ理解できるな。けど、その首は真っ直ぐにも伸ばせるんだろう?」
「うんうん、そうだよ」
「そうなると、また少し感覚が変わるんじゃあないか?」
「まぁ、確かに変わるっちゃ変わるけどぉ、むむむむ……」
唸りながら眉間にしわを寄せて悩んでいる。
「えっとねぇ、真っ直ぐ上に伸ばしてる時は普通に首を伸ばしてる感覚に、高台とか展望台から周りを眺めてる感覚が同時にある感じって言えばいいのかな?」
「う~ん、分かるような分からないような……」
「ん~、いざ説明しようとすると難しいなぁ」
悩みながら首をぐるぐると伸ばしていく。
本人は眼をつぶりながら首を横に傾けているだけなのだろうが、傾けたまま首も伸び続けるのだから顔が何回転もしていく。
「平山、お前目ぇ回さないのか?」
「ん?何が……って、わあ!?」
自分で気付いてなかったのか自分の首を見て驚いてる。
「もう、言われなかったら酔ったりしなそうだったのに~」
「……不便そうだな」
「え?なになに?何か言った?」
ぼそっと呟いた言葉に反応して、再び首を伸ばして顔を近づけてくる。
思ったよりも距離が近くて驚く。
「いや、不便そうだなと言ったんだ」
「んぅ?別にそんな風には思ったことないよ?」
「え、だが……」
「ちょっといい?先生」
そう言うと、こちらの許可を得ないまま首を伸ばして俺の身体に巻き付けていく。
「お、おい」
「いいから」
そうやって、全身にぐるぐる巻き付かれてしまった。
簀巻きである。
「よいしょっと」
「おお!?おぉ!!」
掛け声と共に俺をひょいと持ち上げてしまった。
「お前、それ首絞まったりしないのか?」
「ミスるとたまにね。けど、辛くもなければ苦しくもないよ」
「それはすごいな」
俺もそこそこガタイはいい方だし筋力もある。身長だって低くない。
そんな俺を軽々持ち上げるというのは控えめに言って怪力と呼んでいいだろう。
「この首って、速く長く伸びるし地元では川で溺れてる子供を助けたこともあったんだよ」
「お前はすごいな」
素直に感心する。川で溺れている子供を助けたということは、顔を水に飛び込ませたということだ。
いかに身体が陸地にあったとしても勇気がいることだったに違いない。
それを高校生になる以前からやれる人間がどれだけいるだろうか。
「ウチなんか、言うほどすごくないよ。身体が動いちゃうだけ」
しかし、平山は謙遜する。
内心で意外だと思ってしまったのは内緒だ。
「それに、近くで気になる会話してたら首伸ばして突っ込んじゃうし、それで蒼也に怒られたこともたくさんあるしね」
「ははは、平山の前では内緒話はできそうにないな」
「でもさ、でもさ!やっぱこう、気になるじゃん!」
そのまま他愛ない話を続けているうちに、なんとなく理解する。
首が伸びるということは、イコールで顔が動くということだ。
身体よりも早く動く首があれば、周りからの声に即座に反応して答えを返すこともできる。
反応がたくさんできるということはたくさんの人と関われるということ。
きっと好奇心旺盛な平山の性格も相まって地元でもこっちでも友達が多くいるのだろう。
それも含めてろくろ首の性質とも言えて、もっと言えば。
ろくろ首ちゃんは誰かと繋がりを持ちたいのだ。
「ま、ウチの話はこんくらいでいいでしょ」
「あ、ああ。もう昼休みも終わるしな」
少し唐突だが、確かに俺も次の授業の準備をしなくてはならない。
「あ、そうだテッちゃん先生」
「?どうした?」
「ウチのことは葵って呼んでよ。蒼也だっているんだし分かりづらい」
「ああ、そのくらいなら」
「あと、それと…さ」
名前呼びくらいなら、と思っていると妙に歯切れ悪く切り出してきた。
「蒼也のこと、気にかけてあげてくんない、かな?」
「ん?そりゃあ頼まれなくても」
「その、あいつはあんま相談しに来ようとしないと思うんだけど、ね」
「まぁ、こっちから声は掛けていくつもりだ」
「ん。ありがと」
今までとは打って変わって寂しそうな笑顔を浮かべる平やm……葵。
そのギャップに多少面食らってしまう。
「ま、また聞きたいことがあったら言ってね」
「おう。またよろしくな」
「にしし。首を長く伸ばして待っててよ」
またいい笑顔に戻って生物準備室から出ていこうとする。
「葵、その慣用句は伸ばしては要らないぞ」
「うぇえ!?先生のばぁ~か!///」
指摘すると恥ずかしそうにして走り去っていった。
読んでくださってありがとうございます。
自分なりのろくろ首の解釈を考えてみました。
原作では解釈や捉え方が独特で目から鱗でした。
これからも頑張って書いていきますのでよろしくお願いします。
……不定期なのは勘弁してください。