亜人くんは気に入らない(仮   作:龍崎悠司

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ひかり視点が難しい……





デミちゃんたちのお弁当事情

 キーン、コーン、カーン、コーン。

 授業終わりのチャイムが鳴り、今日も今日とて昼休み。

 Aクラスの蒼也も雪も各自のお昼ご飯を取り出したところで……

 

「蒼也ぁあ!!ヘルプミー!!!」

 

 教室のドアが思い切り開いて葵が飛び込んできた。

 

「「はい?」」

 

 教室にいた面々が揃って面食らっていた。

 

 

 

 ―――――

 

 ~side蒼也~

 

 

 

「んで、何だよ」

「い、いやぁ、その……お弁当、忘れちゃった」

「は?」

「忘れちゃった☆ミ!」

 

 ぱっこーん!

 

「いったぁー!!」

「そんで、だからって何の用だよ」

 

 人がせっかく作った弁当を忘れるのは少し苛ついたが、それだけでヘルプを頼むとは考えにくい。

 大方、財布も忘れたから金でも借りに――

 

「うん、だからお弁当ちょうだい♡」

 

 ぱこん、ぱこん、ぱっこーん!!

 

「いったぁああ!!?三回も叩くことないじゃーん!」

「うっさい!どこまで厚かましいんだお前は!」

 

 ウィンクまでばっちり決めてたのが余計に腹立つ!

 

「ちゃんとご飯は奢るからぁ!」

「当たり前だ!」

 

 そこまで見逃してもらおうとしてたらグーで行ってたわ!

 

「というか、金あるならそれこそ自分で購買なり学食なり買って食えよ」

「ええ~、だって買うよりもお弁当の方が美味しいんだもん」

「お前はその自分的にマズい飯を人に食わせようとしてたのかよ……」

「まま、そういう訳で、ね?」

「いや、ね?じゃあ……はぁ」

「蒼也?」

「購買で何か買ってこい。好みは分かってんだろ?」

 

 文句を重ねても頑なに動こうとしない葵は本当にテコでも動かない。

 下手に抵抗してもエネルギーを消費するだけだと早々に折れることにする。

 

「ありがとう!蒼也も誘うから一緒に食べようね!」

「いらねぇからとっとと行ってこい」

 

 ぱあっと顔を輝かせて購買へ向かおうとする葵。

 と、教室を出る前に振り向いて。

 

「そういう訳だから雪ちゃん、先に行っててね!」

「え?」

「う、うん。分かった……」

 

 そう言い残して今度こそ購買へ走って行った。

 残ったのは、気まずそうな様子の日下部。

 まぁ、そりゃあそうだろうな。

 自分が声を掛けた訳ではないにせよ、自分も含めた食事に誘って目の前で断られて、かと言って無視しづらい空気にされたら誰だって、なぁ。

 

「あー、その……」

「平山くんも一緒に、行かない?」

「え?」

 

 一瞬、何を言われてるのか理解が追い付かなかった。

 

「小鳥遊さんと町さんも一緒だから、さ」

「あっと、その……」

「ほ、ほら!この間のお礼も言いたいし」

「それはこの前言われた気がするが!?」

 

 まぁ、ここまで言われたら行かないのも悪い。

 …………そして断った後の教室の居辛さはもっと悪いだろう。

 

「分かった。行くから案内してくれ」

「!う、うん」

「てな訳だから佐竹、太田、悪いな」

 

 いつも一緒に昼食を食べているクラスメイトに謝る。

 まぁ、気にすんなとでも言ってくれるだろう、と思っていたのだが。

 

「…………羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい……………」

「佐竹?おぉーい」

 

 何かぶつぶつ言ってて思ってた反応と違う。

 

「あ、こっちは気にしないでいいから、いってらっしゃい」

「お、おう。サンキューな太田。で、佐竹は――

「それは置いといていいから行ってきなって、ほら!」

 

 催促されて慌てて日下部に着いて行く。

 ……何だったんだ?

 

 

 

 ―――――

 

 

 ~sideひかり~

 

 あおちーがお弁当を忘れたらしく、あたしたちで先にいつも晴れた日に食べてるベンチへ向かうと、先客がいた。

 

「お、やっほーユッキー!」

「うん、町さんもこんにちは。待ってたよー」

「こんにちは、日下部さん」

 

 元々約束してたユッキーはいるだろうと思ってたけど、珍しい人が1人。

 

「あれ、そーやんがいるの珍しいね」

「うちのバカ妹が原因でな」

 

 ため息を吐きながら事情を説明してくれた。

 

「あっはっはっは!面白いなぁ、あおちーは」

「いや、笑い事じゃ……笑い事か」

「それで、お弁当譲ってあげたんだ」

「そういうこった」

「へぇ、優しいじゃん、そーやん」

「まぁ、どうせあいつ折れないし、相手すんのに無駄に体力使うから早々に諦めただけだっての」

「へぇ~、ほぉ~、ふぅ~ん?」

「……なんだよ?」

「いや、そーやん妹思いだねって。何か親近感沸く!」

「うっせぇ。……ところでそれあだ名?それで決定なのか?」

 

 そーやんがあだ名について何か言ってるけど聞き流す。

 そーやんはそーやんで決定なのだー!

 

「そういや、小鳥遊って姉なんだっけ?」

 

 適当に話してると、思い出したみたいにそーやんが聞いてくる。

 

「うん?そうだけど、そーやんに言ったっけ?」

「ねぇけど、入学してすぐにあった実力テスト、覚えてるか?」

「覚えてるよ……」

 

 高校生ライフを満喫するぞー!ってやる気になってたところにぶっ込まれたあれはホントに色々あたしからエネルギーを奪ってくれたよ……

 

「あれで俺が2位で小鳥遊さんが1位だったはずだ」

「うんうん!すごいよね!ひまりは……って」

「「「2位!!?」」」

 

 あたしたち三人の驚きの声が重なった。

 いや、だって、えぇ!?

 

「ま、そんな訳で小鳥遊さんの存在自体は知ってたんでな。あんまありふれた名前でもないし、姉妹だってのは分かりやすかった」

「そ、そーなんだ……」

 

 こっちは驚きでそれどころじゃないよ……

 

「というか、あんまり頭いい方だと思ってなかった」

「裏表がないにしても言わねぇ方がいいこともあると思うんだが……」

 

 あ、地味に傷ついた顔してる。

 

「だ、大丈夫だよ!私は普段の授業とか佐竹君たちとの会話で知ってたから!」

「あぁ……フォローサンキューな、日下部」

「え、えへへ。ごめんごめん」

「んぅ?なになに~?なんの話ぃ~?」

 

 謝ってたらあおちーが合流してきた。

 …………

 

 

 助かった!

 

 

 

 ―――――

 

 ~side京子~

 

 

 葵ちゃんが来たことで話がうやむやになって、食事が始まりました。

 

「んまー!やっぱりお弁当の方が美味しいや!」

「はいはい、俺はその影でもさもさ食べてますよ〜」

 

 平山くんは少し不機嫌そうに購買のパンをもしゃもしゃしてます。

 葵ちゃんが自分の分のお弁当を食べてるからなんだと思います。

 

「うわー、いつも美味しそうだけど、今日は何か豪華だね。あおちーのお弁当」

「うん?そういえば……」

「あぁ、昨日は肉が安かったからな」

「あ、もしかしてスーパー〇〇?」

「おっ、よく知ってんな」

「私の家、あの近くだからね。昨日ちょっと寄ってったから」

「へぇ、俺らもあのスーパーから近ぇとこに住んでんだよ」

「そしたら、結構近いかもね、家」

「かもな。俺たちゃ、こっちにいる兄貴んとこに居候してる対価として、家事任されてんだ」

「なるほど、それで今日のお弁当係は平山くんだったんだね」

「いいや、基本的に家事は俺任せだよ」

「そ、そうなんだ……。それで、こっちにお兄さんいるんだ」

「ま、年は大分離れてるけどな」

「へぇ〜」

 

 何やら雪ちゃんと話してますが、会話の端々から平山くんがお料理できるらしいのが分かります。

 何だか、女子として色々と負けてる気が…………

 

「あれ?京ちゃんどうしたの?」

「いえ、ただ女子力の差を見せ付けられただけです…」

「???」

 

 ひかりちゃんが心配して気に掛けてくれますが、ちょっぴり落ち込むのは避けられません。

 

「あおちー、一品交換して!」

「あ、私も!」

「わ、私もお願い」

「うん、いいよー」

 

 ひかりちゃんと雪ちゃんが交換をお願いするのを見て慌てて参加。

 葵ちゃんのお弁当箱に卵焼きを置いて、代わりに一口サイズのハンバーグをもらいました。

 

「わっ、美味しい……」

 

 その一言に感想の全部が入っていると言っても過言ではありません。

 冷めてるはずなのに、温かさを感じるくらいに美味しい。

 肉汁だって出てくるし、和風の味付けで全然重くない。

 ほんとに美味しい。

 

「なんか、女子として色々負けてるなぁ……」

 

 これは敵わないと思ってしまうほどのクオリティだ。

 

「まぁしょうがないよ、京ちゃん」

「葵ちゃん?」

「蒼也は実家でずっと家事やってたからね〜、年季が違うよ」

「え?」

「うちは共働きだったんでね」

 

 少し悪い方向に想像力を膨らませたのを察したのか、平山くんが補足してくれました。

 理由は分かりましたが、それでも一応の疑問は残ります。

 

「何で葵ちゃんはやらなかったの?」

「ぎくぅ!!?」

 

 素朴な疑問、程度だったのにそのオーバーリアクションが全てを物語っていました。

 

「こいつ、焼けば料理だと思ってっから何食わされるか分かったもんじゃねぇ」

「ちょっと蒼也!?せっかくリアクションで濁したのに何でそういうこと言うかなぁ!?」

「そういうとこが浅はかなんだよ」

 

 平山くんは、ため息とともに、悔しかったら上手くなれ、と言って、もさもさと食事を再開してしまいました。

 

「ぷっ、ふふ……焼けば料理って……!」

「あー!笑ったなー、京ちゃん!」

 

 そのまま騒がしく、その日の昼休みは過ぎていきました。

 ……今度、料理習いたくなったら相談してみようかな?

 女子力を磨こうと思った、今日この頃でした。

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