亜人くんは気に入らない(仮   作:龍崎悠司

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少し修正しました。


のっぺらぼうくんはそっぽを向く

 

 

「あははは!何してんだよ!」

「うるさいよ、少し躓いただけ」

「あんまり笑うなよ佐竹。おい太田、大丈夫か?」

「ありがとう、俺の味方は平山だけだよ」

「ちぇー、俺だけ悪者かよ」

「まぁ、そう言うなよ。俺もダンスみたいだとは思ったけど」

「あー!そういうこと言うんだ!?」

「あーあー、太田怒らしたー」

「なっ!?俺が悪いのかよ!?」

「知ーらない!」

「わ、悪かったよ太田」

 

 休み時間の廊下で連れションした帰り。

 クラスメイトと馬鹿やっていた蒼也の元へ鉄男がやって来る。

 

「おー、いたいた」

「あん?高橋先生?」

「平山、忙しかったら別にいいんだが、放課後時間あるか?」

「放課後ですか?」

 

 聞かれ、悩む蒼也。

 

(う〜ん、時間は無くはないけど、今日のセールは卵の特売……逃したくはない……)

 

 家事を任されている蒼也にとって、スーパーのタイムセールは結構重要な問題だ。

 蒼也の懐から出ている訳ではないが、居候の身である以上、財布の紐は締められるところでは締めたい。

 どうしようかと悩んでいると……

 

「あー、まぁ無理する必要はないぞ?俺が今日、時間があったから声を掛けたっていうのもあるし」

 

 ピクッ

 

「少し、話が聞きたかっただけだから、また今度でいい」

 

 じゃあ、と去ろうとした鉄男の腕を蒼也がガシッと掴む。

 

「?どうした、平山?」

「先生……」

 

 蒼也のその鬼気迫る顔に、鉄男は少したじろいで……

 

「放課後、すぐに学校を出られますか?」

 

 蒼也の言っている意味が分からないまま、

 

「は、はぁ……」

 

 つい、曖昧な返事をしてしまっていた。

 

 

 

 ーーーーー

 

 〜side先生〜

 

 

 平山が言っていた意味が、放課後になってようやく理解出来た。

 

「うっしゃあ!卵の特売、お一人様2パックまでが先生のおかげで4パック!ありがとうございます!!」

「あ、あぁ……力になれたなら何よりだ」

 

 凄い勢いでスーパーに向かったかと思えば周りの主婦たちに負けじと全力で卵を取りに行く。

 教え子のそんなパワフルな一面に驚きつつも、ホッと息をつく。

 スーパーを出るまでの平山の気迫が結構すごかったので、正直ビビったのは内緒だ。

 

「そんで、これからどうする?適当に店でも入るか?」

「あー、先生さえ良ければ、うちで食べてきません?特売付き合ってくれた礼に」

 

 今日は話をする、ということだったのでそう提案したが、少し意外な提案で返された。

 とはいえ、今日は時間もあるし、特に断る理由もない。

 

「そんじゃ、お言葉に甘えるよ」

「うす」

 

 

 ーーーーー

 

 〜side蒼也〜

 

「ただいま〜っても、まだ誰も居ませんけど」

「確か、両親は共働きなんだったか?」

「まぁ、そうすけど、ここには俺と葵と家主の兄貴が住んでるだけなんで」

 

 先生は複雑そうな顔をしてはいたが、家庭の事情と察してくれたのか、追求はしてこなかった。

 

「俺、このまま夕飯の準備始めちまうんで、適当にくつろいでてください」

「あー、了解だ」

 

 とはいえ、先生1人にして放っておくのは流石に失礼なので、コーヒーを淹れて持って行く。

 

「先生、どぞ」

「おお、サンキュー」

「砂糖とミルクが欲しかったら言ってください」

「いや、ブラックでいい」

 

 そう言って、ズズ、と小さく音を立てながら飲んでいく。

 

「ほぅ、結構美味いな」

「兄貴が好きなんですよ。そんで、昔働いてた喫茶店のツテで豆を買ってるんですよ」

「だが、平山の腕もあるんじゃないか?」

「コーヒーだけは、兄貴にゃこれっぽっちも敵いませんよ」

 

 少し照れるが、言ってることは事実だ。

 喫茶店で修行した人間の本気のドリップコーヒーを舐めてはいけない。

 そちらに慣れてしまうと、下手なインスタントや缶コーヒーが飲めなくなってしまうのだから。

 

「まぁ、来てもらったのにただ待ってもらうのもあれなんで、話ませんか?夕飯作りながらで良ければですけど」

「あぁ、分かった。そうさせてもらうよ」

 

 というわけで、料理しながらのお話が決定した。

 

 

 

 ーーーーー

 

 〜side先生〜

 

「まぁ、葵から聞いて、話題が何かは大体想像がつきますけどね」

 

 苦笑しながら手際よく野菜を切っていく平山。

 その予想は的中しているので、さっさと切り出すことにする。

 

「平山の予想通りだよ、デミの体質について聞きたいんだ」

「でしょうね」

「それで早速なんだが、平山は確か……」

「えぇ、のっぺらぼうですよ」

 

 のっぺらぼう、と普通の顔で言われてしまったが、どこがのっぺらぼうなのかが非常に気になる。

 

「しかし、俺には普通に見えるんだが……」

「あのですね、先生」

 

 そういった疑問は今までもされて来たのだろう。

 料理の手を止めることなく説明を始めた。

 

「のっぺらぼうだからって、常に目と鼻と口と耳が無かったら生活出来ないどころか息すら出来ませんよ」

「ああ!」

 

 思わず、コーヒーカップを置いて、ポン、と手を叩いた。

 確かに生物として、呼吸や食事が出来なければすぐに死んでしまう。

 

「ということは、任意でのっぺらぼうに出来るのか?」

「そうなります」

 

 見せてくれ、と言おうとしたが、危ないし会話もし辛いからやりませんけど、と釘を刺されてしまった。

 確かに、料理中に五感のほとんどが使えなくなるのは危険だろう。

 

「そしたら、気が向いた時にでも見せてくれ」

「そんな時が来たら、ですけどね」

 

 どことなく拒絶の色を見せながら、淡々と手を進めていく。

 

(まぁ、体質である以上、好きになるとは限らんだろう)

 

 デミの性質とは、個性であり体質だ。

 披露すれば、自身に危険が及びやすくなる体質など嫌に思うのは不思議でも何でもない。

 自分の太りやすい体質を恨む話などよく聞く話だ。

 自分のことが嫌いだなどと言うのは、教師として悲しく思う。

 だが、危険性が付き纏うからには無責任に何かを言うわけにもいかない。

 平山はきっと自身の体質とこれまで付き合ってきて、向き合ってその上で嫌だと判断したのだろう。

 そう、のっぺらぼうくんはそっぽを向くことを選んだのだ。

 決めたことを無理にひっくり返す必要はない。

 ただ、もしも平山が困っていたら手を差し伸べればいい。

 

(今のところは、様子を見よう)

 

 いつか、こちらを頼ってくれるまで。

 

「たっだいまー!」

 

 玄関から元気な声が響いてきた。

 

「ねぇねぇ!何か知らない靴が置いてあったんだけど……って、先生じゃん!」

「おー、葵、お邪魔してるぞ」

「蒼也、どしたの!?」

「いいから手ぇ洗ってこい」

「ほーい!」

 

 葵が帰ってきた瞬間に随分と賑やかになったな。

 ほんのつい先ほどまで、静かな雰囲気だったというのに。

 

「……ま、いいことだろう」

「?何か言いました?」

 

 何でもない、と言ってリビングに戻る。

 

「あ、先生ありがとね」

「あぁ、まぁ頼まれたからな」

 

 この前、葵に頼まれた話だろう。

 

 ーー蒼也のこと、気にかけてあげてくんない、かな?ーー

 

 それほどに気にかける必要はない、と思えるほどには平山は優秀だ。

 けれど、先ほど見せた自分の体質への嫌悪。

 教師として、気にかけていこうと思った。

 

 

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