亜人くんは気に入らない(仮   作:龍崎悠司

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のっぺらぼうくんは重ねたくない

 

 

 ーーーーー

 

 〜side蒼也〜

 

「ほい日下部、コーヒー」

「ありがとう、ございます……」

「平山のより、マズイけどな」

「いえ、そんなことは……」

 

 日下部が泣き止んでから、生物準備室に俺たちは通された。

 まぁ、あのまま泣き止んだからバイバイ、は高橋先生的にナシだったのだろう。

 

「俺は職員室に資料を取りに行くから、気が済んだら帰ってもいいからな」

「はい、ありがとうございます……」

「……っす」

 

 それだけ言って気まずい沈黙が流れる。

 用事があるのはそうなのだが、かと言って切り出せる状況でもないし、こちらから話しかけるのは先ほど抱き締めたのもあって気恥ずかしい。

 どうしたものか……

 

「あの、平山くん……」

「どうした?」

 

 話しかけてくれたのは助かったが、いきなりでちとビビった。

 

「さっきは、ありがとね」

「大したことは何にも出来ちゃいないよ」

「そんなことないよ……」

「慰めにもなんねぇことしか言えないし、現に日下部の助けになんて全然なってないだろ?」

「ううん」

 

 自嘲にも似た俺の言葉を首を横に振って否定する日下部。

 

「敵じゃないって言ってくれたの、すごく嬉しかった」

「あんなの……」

「私には、助けになったから……」

「そうか……」

 

 それだけ言ってまた沈黙が始まる。

 少しだけ雰囲気が軽くなったのは、助かった。

 

「ユッキー!」

 

 今度はこっちから話題を出すかと思った時に、勢いよくドアが開いて人が入ってきた。

 

「小鳥遊さん!?」

「小鳥遊!?」

 

 俺たちが2人揃って目を白黒させてると、日下部の手をむんず、と掴んで生物準備室から連れ出してしまった。

 

「えっと……」

 

 呆気にとられたのも10秒ほど。

 

「とりあえず、追い掛ける、か?」

 

 その選択肢で合ってるのか首を捻りながらも、小鳥遊たちの後を追った。

 

 

 

 ーーーーー

 

 〜side雪〜

 

「小鳥遊さん!ちょっと!」

 

 小鳥遊さんがいきなり生物準備室に来たと思ったら、無言で私の手を引いて歩いてます。

 

「待ってよ!」

 

 そう言っても、歩くペースは変わらないし、受け答えもしてくれません。

 そして、例のトイレに来てしまいました。

 

「小鳥遊……さん!」

 

 自分でも声が震えているのが分かります。

 

「ユッキー」

 

 と、ようやく小鳥遊さんが口を開いてくれました。

 

「私、アイツらに文句言いに行くから。ユッキーはここで待って聞いてて」

 

 その言葉に戸惑いを隠せないうちに。

 

「そのあとどうするかは、ユッキーにまかせるから」

 

 強い目をした小鳥遊さんを止める間もなく、トイレに入っていってしまいました。

 

「ーーーー!」

「ーーーー」

 

 そのまま話が始まってしまい、取り残された私は入り口をふらふら歩くしかありません。

 中に入った方がいいのか分からないまま、迷っていると。

 

「あ……」

「よ、よぅ」

 

 気まずそうな平山くんが、そこにいました。

 

「まぁ、なんだ。聞いてようぜ」

「う、うん……」

 

 とりあえず、よく分からないまま、平山くんに促されて廊下に座ることにしました。

 

「でも、その、いいのかな?」

「ん?あー、どうだろう……」

「聞いてなさい」

 

 平山くんもどうすればいいのか、手持ち無沙汰な様子でしたが、そこに高橋先生がやって来ました。

 

「先生?」

「ひかりは聞いててくれって言ったんだろう?だったら待って、ちゃんと聞いてやればいい」

「いいんで、しょうか?」

「いいんだよ」

 

 不安そうに聞く私に、高橋先生は笑顔で答えてくれました。

 

「日下部は全部を聞いて、それで自分なりの判断をすればいい」

「はい……」

 

 高橋先生の言葉に頷くことしか出来ない私は、大人しく聞いていることにしました。

 

 

 ーーーーー

 

 〜side蒼也〜

 

 どうすればいいのか、本当に止めなくていいのかは俺にはよく分からない。

 それに、俺が変に介入できる話じゃない。

 そう思った。

 そう、思ってた。

 

「『みんながやってるから』なんて理屈……私は嫌い!!」

 

 ーーお前は化け物なんだ、化け物退治は人間様の特権だ!

 ーーそうだそうだ!

 

「『傷つけあってるから私も傷つけていい』なんて……口に出して恥ずかしくないの!?」

 

 ーー化け物なんだろ?

 ーー化け物って聞いた

 ーー化け物らしいじゃねぇか

 

「でも決めたんだ……ただの自己満足だけど……」

 

 ーー化け物

 ーー化け物

 ーー化け物

 ーー化け物

 ーー化け物

 

「私は……人から嫌われても、後ろめたさが残ることはしないって……」

 

 ーーなんで、俺は化け物なんだろう?

 

「妹と、約束したから……」

 

 ーーもう二度と、化け物なんて言わないで!!

 

 隣で動く音がして、中から出てくる音がして。

 けど、それを見ることは出来なかった。

 

「って、うわっ!?そーやん、いたの?」

 

 小鳥遊に驚かれる。

 それはそうだろう。

 連れて来たのは日下部であって俺じゃない。

 

「って、そーやん、大丈夫?」

 

 自分だって精神的にキツくないはずがないのに、俺を心配してくれる。

 まぁ、そうだろうな。

 目の前で、座り込んで泣かれてたら、誰だってそうだろう。

 

「いや、いい……」

「いいって、そーやん……」

「大丈夫だから」

 

 自覚出来るほどに弱々しい声だが、きっぱり言ったのが良かったのか、それ以上は口にしないでくれた。

 

「それじゃあ、また明日ね。そーやん」

「ああ…………小鳥遊」

「なに?」

「ありがとうな。少し、救われたわ」

「……うん」

 

 先生も、あまり触れない方がいいと判断してくれたのか、小鳥遊を追ったみたいだ。

 

「あ、平山くん……」

 

 ケリがついたのか、日下部がトイレから出てくる。

 

「あー、その、なんだ」

 

 待ってようとは思ったが、なんだか言葉が上手く出てこなくて。

 

「おかえり?」

 

 そんなことしか言えなかった。

 

「くす……うん、ただいま」

 

 少しぎこちなかったが、それでも笑顔で答えてくれた。

 

「……帰るか」

「うん」

 

 それだけ言って、帰路に着いた。

 

 

 

 いつの間にか、雨は止んでいた。

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