奴との距離がぐんぐん近づいていく! 迎撃するつもりか水を飲み始めている、フフフ……そうだそのまま頭を垂れていろ。いしがあろうと無かろうとそこは急所に違いないだろう! 私からの手痛い御もてなしだ、しっかりと受け取るがいい!
そのまま着地の勢いと同時に武器を頭部へと突き刺す! 足でしっかりと振り落とされぬよう奴の頭部をがっちりはさむ。そして一撃、二撃と繰り返す。それでも奴は水を飲もうとしている。
「……っ! まだ水を飲もうとするか! くらえっ!」
さらに一撃! さすがに効いたのか甲高い鳴き声を上げながら頭を激しくぶんぶんと振り回し始めた。武器を引き抜き頭部から離脱しようとした……時だった!
私に向けてブレスを撃ってきた! くっ、やはりそう簡単に逃がしてはくれぬか。……このままでは直撃、それだけは避けねば……! 避けることを無理だと悟った私はとっさに武器を構えて防御の体制をとる。
激しく武器にブレスが直撃する! 当然受け止めることはできず水と一緒に吹き飛ばされる。
「ぐぅぅううっ……!?」
そのまま木に叩きつけられ、背中に痛みが迸る。幸い奴の含んだ水の量はさほど多くは無かったようで武器を使ってしのぐことができた。もしも先ほど受けたものが初めて撃った奴と同じくらいの威力だったとしたら武器を突き抜け私は真っ二つだっただろう。なんとも途轍もなく危険な賭けをしたものだ。皆がいたら説教を食らっていたかもな。さて、ここを離れるとしよう、対策もうてないまま奴と戦っても死期を早めるだけだ。幸い密林の中まで吹き飛ばされたため視界は奴からは悪くなっているはず。ずんずんと来る背中の痛みに応えながら私はその場を後にした。
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あれからかなりの時間が経った。わたし達はふうちゃんから言われた通りに遠くへと逃げてきている。ふうちゃん大丈夫かな……ううん、ふうちゃんがそんな簡単にやられちゃうわけないよね!
「悔しいな……! あいつに対して何もできないなんて」
「うん、あんな姿初めて見た。ふーちゃん大丈夫かな、一人であいつに立ち向かうなんて」
「無理だと思ったらたぶん逃げると思う?」
「ふうちゃんならきっとだいじょうぶ! そんなに簡単にやられちゃう子じゃないもん! きっと戻ってくるよ!」
私はみんなの不安を和らげるためにみんなに言った。でもジャガーは冷静に応える。
「まだわからないな、あの子の姿をこの目で見るまでは」
「だったらみんなで信じよう? きっと無事だって!」
もちろんそのつもりだとみんなは言った。あのセルリアンと一人でなんてむちゃにもほどがあるよ……もしも合流できたなら思いっきり怒ってあげないと!
「とにかく、今は私達はあのセルリアンについて何か対策を考えるべき?」
「なんか大きな音を立てるといいって言ってたね! 叫べばいいのかな!?」
オセロットの言ったとおりそれぞれが案を出し合う、もちろんわたしも含めて。でもなかなかいい案が思い浮かばない。うーん、私がふうちゃんだったらどんなことを思いつくだろう……
「大きい音か……上から重いものを落としても下が土だからびっくりするほど大きい音は出ないよねえ」
「水に落とすのはどうかな? ばしゃーんって大きい音がすると思うよ!」
「それだったら私はむしろ投げつけて攻撃したほうがいいと思う? ぶつけた痛みで跳ね上がるかもしれないし? それに落としても大きな音が出るとは限らない?」
水に落とすのいい案だと思ったんだけどなあ。あっさりオセロットに看破されてしまった。悔しいけど力があるなら私もたぶん投げつけちゃうと思っちゃった。
「あ! それにそれに、近くで音を出さなきゃいけないとも言ってたよね!」
カワウソが言った。そうだった、近くで大きな音を立てないといけないんだったね。あのセルリアンは川の中にいるし、攻撃してくる時だけ水中から姿を見せてくる。あーあ、鳥のフレンズだったら近くまで運んでくれるんだろうけどなあ。でも近くまでいけたとしてもうまく大きな音が出せるとは限らないし音を鳴らす手段も今はあいまいなまま……やっぱりまずはふうちゃんと合流するべきなのかな。
無い知恵を絞ってわたしは考えた。みんなも一緒なんだしきっといい案が思い浮かぶよね!
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水竜から逃れて私は密林の中をあの四人を探して歩く。迂闊だった、集まる場所を言うのを忘れていた。これでは何処まで離れて行ったか皆目見当もつかない。
(あの時はかなり必死になっていたからな……もう少し冷静にならないとな)
あれから奴は陸上へ上がって私を追いかけてくる気配は無い。まあ奴の縄張りはあの川近辺だ、陸上へ上がってしまったらただのでかい的だしな。そこは本物と違って頭が切れるのか。厄介なものだ、セルリアン。
しばらくして見知った顔を見つけた、インドゾウだ。私は呼びかける。
「あら、またお会いしましたねえ、風翔龍さん」
「さっき振りだな、インドゾウ。この辺をサーバルたちが走っていかなかったか?」
「サーバルさんたちですか? うーん……ごめんなさい、見てないですわ」
「そうか……何処まで行ったのだろうな」
インドゾウが首をかしげ尋ねてきた。事情を知りたそうにしているな。
「あの、何かあったのですか? 神妙そうな顔をしていますわ」
「あ? ああ、実は……」
私は事の成り行きを話した。橋を造ろうとしていること、その途中でセルリアンに横槍を入れられたこと、そのおかげでばらばらになったこと。
「まあ、それは災難でしたわね……あの、もしよろしければ私も橋造りのお手伝いをさせていただいてもいいですか?」
「いいのか? 手伝ってくれるのであればすごくありがたいが」
「困っている方をそのまま放っておくわけには行きませんわ。ふふっ、よろしくお願いいたしますわね」
「感謝する。さて、あの四人を早く探さないとだな」
私はインドゾウを引き入れ、四人の探索を再開した。そういえば誰かを忘れているような気が……
「!! フォッサ!!」
「!? きゅ、急に大声を上げてどうしましたの?」
「しまった……! あやつ、あのセルリアンのことを知らない……! 戻っていたら鉢合わせになってしまう! あやつの身が危ない!」
「なんですって!? 一刻も早く戻らないと! 場所は分かりますの!?」
「こっちだ! ついて来い!」
踵を返して私達はまたあの水竜のいる川辺へ走り出した。無事でいてくれフォッサよ!
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密林の中を木を伝って飛び回る。楽しみだな、橋が出来上がるのが。気分を高ぶらせ私はフレンズを探していた。割と詳しいしなこの辺、誰かいると思うんだけどな。あ、やっぱりいた!
「お、いたいた! おーい!」
「?? なんだおまえは」
「今面白いことしてるんだ! 一緒にやってみないか? 私はフォッサだ」
「……キングコブラだ。面白いこと? なんだそりゃ、どんな面白いことなんだ?」
「今から橋を造るんだ! 面白そうだろ?」
私は彼女に内容を伝える。すると彼女はにやりとした。お、この反応は手伝ってくれる気満々かな?
「ほほぉ、面白そうだな。ちょうど退屈してたんだ、いいだろう。そいつに付き合ってやろうじゃないか」
「へへっ、ありがとう! 彼女も嬉しがると思うよ!」
「困った奴を助けるのは当然だな。よろしく頼むぞ」
キングコブラを仲間に引き入れることに成功した私は上機嫌になった。それを見て彼女が照れくさそうにくすりと笑う。
「ふふっ、おいおい、私を引き入れられたのがそんなに嬉しかったのか? 少し照れくさいじゃないか……やめてくれそういうの」
「ごめんごめん。でもやっぱり仲間っていいよなあ、あの子にも仲間っていたのかなあ」
「あの子? その橋造りを考えた子か?」
「そうだよー、詳しく話してあげようか? その子のこと!」
興味津々のキングコブラ。まあまだ私もあの子のことは詳しくは聞かされてないんだけどね。私は彼女のことを知っていることだけ話した。話し終えた後キングコブラも彼女のことが少し気になってきているようだ。
「風翔龍か。このジャパリパークには間違い無く存在しない種だな、興味深い」
「あまり彼女を脅かさないようにしてくれよ? びびるかどうかかも分からないけど」
「この私を見てびびる様じゃ、まだまだよわっちいな」
「実際彼女は弱いらしいからね? 彼女自身がそう言ってたんだし」
「そうなのか。まあ会ってみなければ分からないな。嘘をついている可能性だってあるしな」
彼女の話で盛り上がっているうちに私達は川辺へとたどり着いた。しかし様子が変だ、誰もいない。また材料を集めにでも行っているのかな。
「!! 気をつけろ……水の中に何かいる」
「え! ……確かに少しだけど気配を感じる。水に潜ってるようだな。でもよく気がつけたなあ」
「目がいいからな、わずがだが川に波紋が見えた。それに漂ってくる臭いも独特だ」
すごいなあキングコブラ。それにしてもあそこに潜んでいるのは何だろう、セルリアンか? 水辺にセルリアンはよくいることはあるけど水に潜っているのは初めてだ。あれを察知してみんな逃げているのかな。それだとしたら誰もいない辻褄が合う。少なくとも今まで戦ってきた奴とは違うみたいだ。下手に刺激しないほうがよさそうな気がする。
「どうするんだ? あれと戦うのか? 他の皆を待ったほうがいい気がするが」
「まだ姿も分からないからなあ……そうだね、君の言うとおり見つからないようにじっと待っていようか」
その場に腰掛けようとした時だった。水柱が立ち、水の中の陰が姿を現した!
「なっ!? 気づかれたか!? おいどうするんだ!」
「とにかく様子を見ないと! 迂闊に動いたら危険だ!」
慎重に相手の出方を見る。でかい、なんてでかさだ。あれはセルリアンなのか? でも体色はセルリアンっぽい色をしているし、たぶんあれはセルリアンだ。
セルリアンは動く気配が無い。辺りをきょろきょろ見回している。よく見ると頭部に傷がある。
「もしかして彼女、あれとやりあったのかな?」
「は? おいおい、あれと戦ったって言うのか? 勇敢を通り越して無謀だぞ」
「私達ではあれに太刀打ちできるかどうか……いや、考えるだけ無駄か。相手がどういう行動をとるかもまるで予測できない」
「賢明な判断だな、私でもあれと戦う気にはなれない。負けてくわれるのが落ちだ」
ん? 水を飲み始めた? なんだ、何をするつもりなんだあいつ……。
「なあキングコブラ、私少しやばい感じがするんだけどあの動作に」
「奇遇だな、私もそれを感じたところだ。もしかするとあれは攻撃の予兆……」
やばい、何故かは分からないけど途轍も無くやばい気がする。そしてその予感は、私達の真横を通り過ぎて行ったことで的中した。
全身を恐怖が支配する。え、なんなのあれ……。直撃したらくわれるどころの話じゃないよ。
「いま、とんでもないものを見た気がした……」
「……おい、地面えぐれてるぞ……。あの攻撃が通ったところ」
「彼女、ほんとにあいつと戦ったんだよね?」
「……確信した。彼女はたぶんおまえに嘘をついたな。あれほどの奴と戦える者が弱いとは到底思えない。間違い無く彼女は強い」
あのセルリアン、息が荒い。恐らく彼女との戦闘で怒っているのか。また飲み始めてる。ここにいると危険だ……。一刻も早く奥へ逃げないと……あのセルリアン、がむしゃらにさっきのを撃って暴れはじめそうだ……!
私達は踵を返しできるだけ遠くへ逃げることにした。途中で彼女に会えますようにとそう願いながら。
次回、散り散りになってしまったフレンズたちのそれぞれの話になります!