ひたすらに元来た道を突っ走る、フォッサの無事を祈りつつ。もし彼女に何かあればすべて私のせいだ。そのときは潔く自決でもしてやるとしようかな。
(いや、あ奴らは絶対にそのようなことは許さぬか)
「きっと大丈夫ですわ。彼女はこのちほーでセルリアンと何度も戦ってきていますもの」
「あのセルリアンはその以前戦ってきたというセルリアンとは違う。見た目は同じセルリアンでも中身はまったくの別物だ」
「それでも、無事を祈るしかありませんわ。信じましょう、風翔龍さん」
インドゾウは私の顔を見て察したのか私をなだめてくる。……インドゾウよ、貴様は強いのだな。孤高に生きてきた私とはまるで精神が違う。そもそも私はこのような他の者との接触など一切したことがない。周りの視線などまるで気にしたこともない。しかしここへ来てしまってから今までの常識がすべて覆されてしまった。最初はまとわりついてくるフレンズを煩わしいとも思っていたがその感情も今は消え、仲間と呼ばれる者たちを初めて持つことに喜びを感じることができた。その仲間が今死の危機に瀕している。一度も感じたこともなかった仲間の死。私はその死に今怯えているのだ。今どうすることもできない己の無力さに怯えているのだ。
「死んでくれるなよ、フォッサ……! 今すぐに私が向かう……!」
そんな恐怖と戦いつつ私達は走り続ける。水の音が少しずつ大きくなってきた。まだ気配は感じない、私は最悪のケースを予期してしまう。……だめだ、信じるとインドゾウに約束したではないか。弱気になってはならぬ。
と、突然何処からかフレンズの気配を感じた。彼女達か!?
「!! 風翔龍さん、誰かの気配を感じますわ」
「ああ、私も感じた! 彼女らかもしれない、行くぞ!」
声を上げつつ気配のする方向へ走る。インドゾウも私と共に呼びかけてくれているようだ。
「いるなら返事をしてくれ! 私はここだ!」
「どなたかいらっしゃるなら返事をしてくださーい!」
応答はない。だが確実に誰かがいる……まだこちらの声が聞こえていないのかもしれない。私達は距離を縮めつつ声を上げ続ける。そしてついに……!
「ふ……し……か?」
微かだが声が聞こえた。私は声のした方向へ再度呼びかける。
「貴様はフォッサなのか!? 私だ、風翔龍だ!」
「風翔龍!? あんたなのか!?」
声がはっきりと聞き取れた! 近いぞ、それにこの声には聞き覚えがある。間違いない……!
「風翔龍! 無事だったんだね、よかったあー」
「そちらも元気そうでよかった、安心したぞ」
私は思わず安堵のため息を吐いた。フォッサめ、ニヤニヤしおって。まあ気分は悪くはないが。
「安心しましたわ。フォッサさんは知ってると思いますけど私はインドゾウですわ、よろしくおねがいしますわね。ふふっ」
インドゾウも挨拶を済ませる。心なしか彼女の顔も朗らかになっている。やはり彼女には笑った顔がいい。思わず私も顔が緩みそうになる。
と、フォッサの隣にいるフードのフレンズがずいっと前に出て話しかけてきた。
「おお、お前が例の風翔龍だな? キングコブラだ、よろしく頼むぞ」
キングコブラか、なかなかに強そうな名前をしている。きっとこのジャングルちほーではかなりの強者だろう。
まじまじと見ているとコブラはこちらを見てにやりとした。
「ほほう、私と戦ってみたいのか? いいぞ相手になるぞ風翔龍」
「いや、遠慮しておこう。どうやら貴様にハッタリは通用しそうにはないしな」
「ほほう、察したか。分かっているな、さすがは強者だ。しかし何故あいつに嘘を教えたのだ?」
「無駄な争いごとはしたくはない、ただそれだけだ。それにわたしは手加減というものを知らない、それで相手が傷ついてしまうのは見たくない」
きっぱりと私は言った。ここで戦闘をすればまたセルリアン並みに厄介なことになりそうだと思ったからだ。私は基本的に戦闘は好きではない。ただ向けられた攻撃には過剰になるがな。今もあのセルリアンにお返しをしてやりたくてたまらない。
このとき私は知る由もなかった、自分の眼が緑色に光っていたことを。
「あれ、風翔龍、眼の色が……」
「?? 眼の色がどうかしたのか?」
「いや、私の気のせいだったのか……な」
フォッサが唐突にそんなことを言い出した。気になるではないか、その話。だが気のせいならば深く追求することもないか。眼が光る奴だのは私の世界にはたくさんいるからな。
とりあえずフォッサたちとの合流に成功した。幸運にも二人とも無事な姿だったのが嬉しい。元居た世界でももっと友好的に振舞うべきだったのかも知れんな。この世界に来てから私の人格は変わりつつある。
「『仲間』か……良いものだな。このような感情は生まれて初めてだ」
「?? なに言い出すの突然。まあでもその言葉は私も同感だねえ。初めてフレンズ化したときは風翔龍と同じだったもんなあ」
「不思議なものだな、フレンズ化という現象は。早くその原因を突き止めたいのだがな」
「だったら一刻も早くあいつを倒して、橋を完成させないとだね!」
「私も協力することにしたぞ。存分に使ってくれ、風翔龍!」
ありがたい! また橋造りを手伝ってくれる仲間が増えた。フォッサは顔が広いのだな。
「……ところでキングコブラよ。貴様の特技は何なのだ? 他の者は爪攻撃が特技だといっていたが、見たところ爪はなさそうだし」
私は彼女に特技を聞いてみた。当然彼女のフレンズ化する前の元の姿など想像もつかない。それは向こうも同じだしな。
「特技か? 私は相手を弱らせる猛毒攻撃だな。私の攻撃でじわじわ相手の体力を削ることができるぞ」
毒……なぜだ。寒気がする、この毒という言葉にものすごく恐怖を感じてしまう。わからん、言葉はわからんが寒い、すごく寒い!
「ちょ、どうしたの風翔龍!? 顔が青いよ!?」
「だ、だいじょぶだ。わ、たしは毒などこ、わくもない、ぞ?」
「動揺しまくってる……元の姿の時に何があったのほんとに」
「トラウマだったのか……毒に。意外だった、あまりこの言葉は出さないようにしよう。済まなかった」
「あ、やまら、なくて、もいい」
「少し深呼吸しようか、はい……すーはー」
ふう、落ち着いた。あの決戦の日を鮮明に思い出してしまった。一時的に体力を奪う現象……あれは毒というものが原因だったのか。あれを食らってしまうと私の一部の力が一時的に使えなくされてしまう。取り除くことはできるのだがその間はまったくの無防備状態。確か人間は何かを投げつけてきたら私が毒になったのだったか。つまり何らかの投げてくるものに当たると毒になるのか。絶対にあたらぬようにしなければな。もうあのような一方的な攻撃はたくさんだ。
(ん? まてよ……今私も武器を使えているということは、私もこの毒を武器として扱えるのでは)
「コブラよ、少し聞きたいことがある。いいか?」
「ん、いいぞ。何を聞きたいんだ?」
「その毒、私にも扱うことはできるのか?」
え? と言う表情をされた。と言うことは彼女自身もそれに気づいていなかったと言うことか? ならば好都合だ、みなが毒を扱えるようになれば奴とも有利に戦うことができるだろう。私がその第一人者になってやるとしよう。
「すごいことを考えるんだなお前は。その発想は一度も考えたことがなかった」
「でも、危なくない? というかどうやって扱うの?」
「とりあえず毒を私にくれ。何とか使ってみる」
言われるがままコブラは毒を捻出した。ぼとぼとと手の上にに液体が落ちる。何か私が思い描いていたものとちが……あれ、なんかおかしい……ちからがぬけて……あれ、ふぉっさが二人にみえてきた……。
「わー! ストップストップ! なんか痙攣し始めてるよ! 毒をもろに受けちゃってるって!」
「あ? はいひょうふは? ふーひょうひゅー」
こぶらのどくのねんしゅつをふぉっさがひっしにとめている。あーなんだかどうでもいいきぶんになってきたな。もじもひらがなばかりだ、うわーい、たーのしーなー……
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暫くの時間私は二人に介抱された。やはり毒は恐ろしい、あれを扱える人間はほんとに何なのだろう。というか私に毒を消せる力があって本当によかった。
「……すまぬ、やはり私には無理だったようだ。見苦しい姿を見せてしまったな」
「気にしないでいいよ、私達も忘れるから。それにしてもあれを扱えるコブラってやっぱりすごいんだな」
「私自身に毒の影響はないしな。というかお前はホントに毒に対して弱いんだな。それに何か扱い方も違うような気がする」
毒というのは液体だったのか……ならばあの人間が投げつけたものは一体……なるほどそういうことか。それならば直接よりも投げつけたほうが効率がいい。まあ当たればの話だが。しかしその投げつける武器が無い以上どうしようもない。
「お、何かひらめいたような顔してるね! もしかしてまた何か分かっちゃったの?」
「この毒、単体で使うものではないようだな。武器に塗って使うほうが利用価値がある」
「おおー! 素手で扱えないから武器に利用して使うんだね? これなら確かに私でも扱えそう!」
「すごいな、お前。これならあのセルリアンにも勝てるかもしれないぞ」
確かにこれがあれば勝つことも可能かもしれない。だが肝心の問題がまだ残っている。
「まず奴をどうやって陸上へと引き上げてやるかだ……私自身もまだ良い案が思いつけていない」
「確か大きな音に弱いのでしたわね。大きな声を上げることができるフレンズですか……」
「それならば私に少し心当たりがある」
「それは本当か!? コブラ、是非教えてくれ!」
「ああ、だが今いるかどうかは分からないぞ。たまたま見たことがあるだけだからな」
コブラからの思わぬ情報に期待を寄せつつ私はその詳しい話を聞いた。どうやら歌うことが好きなフレンズの様でその声はとても大きく遠くでも聞こえるらしい。何でも彼女が歌っている時はあまり他のフレンズ達も近寄りたくは無いという。歌とはいったい……。
それから彼女がよく来ていると思われる場所にも心当たりがあるようで、コブラはその場所まで案内をしてくれるようだ。一体どんなフレンズなのだろうか。
声が大きいといえば轟竜がそうだな。奴もまさかフレンズ化してここに来ていたりするのだろうか。何にせよあの水竜を打倒する手段が見つかったのだ、利用しない手はない。私達はコブラの後をついていきながらその場を後にした。
次回はサーバルちゃんたちのお話になります!