果たして何かわかることはあるのか……
そしてとあるフレンズ達が……?
図書館の中へと案内された私達は互いに自己紹介を済ませる。このやり取りももう慣れたものだな私も。
「ごめんなさいなのだ……どろぼうなんて言っちゃって」
「気にしていない。もう過ぎたことだ。さっさと忘れてしまえ」
「アライさんは突っ走りがちだからねえー、でもそういうところが好きなんだけどねー」
「仲がいいのね二人とも」
改めて中をぐるりと見渡してみる。ほほう、図書館にはペラペラなものがたくさんあるのか。それを束ねて置いてあるな、この中に私を知ることができるものがあるのか。
「お、何か知りたそうな顔してるねー、これらはすべて本っていうのさー」
「本か。しかしこれだけ大量の本から私に関することについての本を探すのは相当な時間がかかりそうだな――」
ずらりと並んだ本を見てため息をついてしまう。本について何もわからない以上、虱潰しに探すしかないか……。
「もちろんわたし達も手伝うよー!」
「アライさんも手伝うのだ! アライさんが一番に見つけてあげるのだ!」
「私も手伝うわ、歌を練習してくれたし、そのお返しにね」
「それじゃ、みんなで探すとしようかねー」
私達は手分けして本を探すことにした。しかし肝心なことをすっかり忘れていた。とても重要なことだ――内容がわからん。
「――読めん……。これはいったいなんなのだ、どの本にも同じ印がたくさん並んでいる」
「あー、そうか文字が読めるとは限らないよねえー」
「もじ? この印は文字というのか。せめて読み方さえわかれば内容も見えてくるのだが――」
「うーん、わたしもわからないなあ……本なんて一度も見たこともなかったし」
「サーバル、あなたそれで手伝うーってよく言えたわね……まあ私も断片的にしかわからないのだけれど」
「アライさんもこの文字は読めないのだー……フェネックならわかるのだきっと」
「無茶言うねえーアライさん。まあでもアライさんの頼みなら何とか読める範囲で読んでみるよー」
私は文字をある程度皆から教わった。うーむ、こんな面倒な印をフレンズ達は使っているのか。だがちょっとは読めるようにはなった以上、内容も少しだがわかるようになっただろう。
改めて本探しを再開する。ふむふむ、この本はだいえっととやらについて印されているのか。文字は読めるが意味が分からん。
「うーむ、読めるのはいいが文字の意味が分からないことが多いな……」
「ぷしゅー……」
「なのだー……」
サーバルとアライグマは早くもダウンか。二人に本は難しすぎたのか? 一応二人も私と一緒に読めるようには教えてもらっているはずだが。
「あらら、二人とも休ませとこうかー、私達は本探しを続けようかねー」
「これだけ読んだが一向に私に関する本は見つからぬとは――探すのはだんだん無駄な気がしてきたのだが」
「それじゃどうするの? 博士たちが帰ってくるのを待ってるの?」
「まあ博士たちに聞いた方が早そうな気はするねー、待ってるのもいいかもねえ」
結局私達は本を探すのをあきらめて博士たちが戻るのを待つことにした。
「そういえばフェネックよ。不思議なことが起きているといったな。詳しく教えてはくれぬか?」
「いいよー。アライさんと私は博士たちの頼みであの山の山頂へ調べ物をしに行ったのさー」
「フェネック、あのけものの話をするのか? ならアライさんにも話させるのだ!」
「調べものか。いったいどんな話を聞いたのだ?」
「空から何かが山頂に落ちてきたということを聞いたらしいのだ。んで調べ物をしていたアライさんとフェネックに調べてきてほしいと頼まれたのだ」
「半ば強引だった気もするけどねえ、まあ博士たちの性格上断るのはあきらめたけどね」
「え、無理やり行けって言われたの!?」
「いや、無理やりじゃないよー? 見返りにジャパリまんをたくさん分けてもらったからね」
「買収されてるじゃないそれ……」
「ばいしゅう? よくわからないがジャパリまんたくさんもらえると聞いたから引き受けたのだ!」
「アライさん一人で行かせるわけにはいかないからねー、私も一緒についていったのさー」
結局アライグマの性格上断れなかったんだな。なんだかその博士はあまり性格は良さそうではなさそうだな……。だが彼女らしか知らないとなれば頼るほかあるまい。
「それで調べに行ったんだろう。何があったのだ?」
「でっかいけものがいたのだ! 体が赤いけものなのだ!」
「けもの? それってフレンズ化する前の姿ってことかしら?」
「たぶんそうだねー。翼が生えてて、まるでライオンのような風貌だったね。角も生えてたかな、折れてたみたいだけど」
「折れていた? ひょっとするとそのけもの――横たわっていたのか?」
不自然だ。角が折れた状態でここへ来るということは、何らかの戦闘か何かがあったということ。ということは――
「なのだ。まったくピクリともしなかったのだ。逆にそれが怖かったのだ……」
「たぶんあれは死骸だったのかもねえ。見つけてもどうしようもなかったからそのまま山頂に置いてきたけどね」
「その戻ろうとした直後にサンドスターが触れてしまったみたいだったのだ。ぴかーって光り出して――」
「サンドスターが!? その後どうなったのだ!?」
私は少し食い気味で二人へ詰め寄った。
「お、落ち着くのだ……! そのあとはわからないのだ。何かフェネックが感じ取ったみたいでそのままここへ戻ってきたのだ」
「危険だと思ったからねえー、その姿は見らずに降りてきちゃったのさ」
うーむ――サンドスターが触れて光り出した、か。やはりそのサンドスター、一度調べてみた方が良いかもしれぬな。私のフレンズ化にも関係があるやもしれぬ。
しかしもしサンドスターの影響でフレンズ化したということが正しければ、私のほかにもう一人見知らぬフレンズが誕生してしまったということになる。となると厄介な話になりそうだな。私も関係なくはなくなってしまう可能性が高い。早くこの世界のことが知りたいが、まずは私に関する情報だ。
「何か陰が近づいて来てるよ!」
突然外からサーバルが駆け込んできた。少しあたふたしている。
「なに!? サーバル、一体どうしたというのだ?」
「たぶんフレンズだと思うけど、空からじゃないから博士たちじゃないと思う」
「どっちから来ているのだ?」
「うーんとねえ、こっちからだね!」
サーバルが指さす方向を見る。森林の中から確かに草木の擦れる音がする。音が大きい。おそらく走ってこちらへ向かってきているのか。
「博士! 大変だ――って誰だお前は!?」
見慣れぬフレンズがまた増えた。手には大きな手を持っている。これは私と同じような武器の類か。毛皮は白と黒だな。何か慌てているようだ。
「貴様こそ何者だ? 私達は調べ物をしに来ているだけだ」
「そうなのか? ――よく見るとお前、見慣れないフレンズだな……」
物わかりの良いフレンズでよかった。やはりしげしげと眺められている。まあこの世界には居るはずのない存在のようだからな私は。
「私はヒグマだ。セルリアンを倒して回るハンターをしている」
「私は風翔龍だ。ここへは私のことについて調べに来ている」
ハンターか。私の知るハンターとは違うようだ。同じ人間の姿であれど、彼女らはセルリアンを倒すハンターらしい。私の態度次第で敵か味方が変わるようだな。ならば友好的に行くとしようか。
「ほう、セルリアンを倒しているのか。ならばけものの姿をしたセルリアンはみたことがあるだろう」
「けものの姿? うーん、私が倒したのはでっかい嘴をもった鳥のようなセルリアンくらいだったかなあ、翼があるからそうとは言えないが」
む、気配がまた近づいてくる。こちらも走って来ているようだ。セルリアンではないか。
「ああ、警戒しなくてもいい。私の仲間だ。一緒にハンターをやっている」
「やっとおいつきましたー……」
「ぜぇぜぇ……いきなり走り出さないでくださいよぉー」
森林から黄色の毛皮のフレンズと黒白の変な模様のフレンズが現れた。黄色のフレンズは棒のようなものを持っている。あれが彼女の武器だな。
「まったく、たるんでるぞリカオン。少しは運動したらどうだ」
「度が過ぎてるんですよ、ヒグマさんのトレーニングは! なんですか腕立て腹筋各1万回って」
「これくらいできて当たり前だろう!」
「ヒグマさん基準で考えないでほしいですよ!?」
また騒がしくなりそうだな。私は思わずため息を吐いた。
「あはは……ごめんなさい騒がしくしちゃって。でも皆いい子たちなんでそこは我慢してくださいね」
「――わかった。してヒグマよ、なぜそんなに焦っていたのだ?」
慌ててここへ走ってきた訳を聞いてみる、すると、
「山頂にとんでもないやつがいたんだ。マントを羽織ってて体は赤い鎧のような物をまとっていた。髪は赤くて顔はライオンに似ていた」
――なるほど。私の読みは間違ってはいなかったようだな。
「なるほどな――ようやくフレンズ化の原因が分かった。感謝するぞヒグマ」
「へ? お前もフレンズ化したのか? 元はどんなけものだったんだ?」
「私か? うーむ、言葉ではうまく言うのは難しいのだが、大きいけものだったのは覚えている」
確か生前はハンターを見下ろすほどの大きさだったと自覚している。水を飲むときに映る姿くらいしかなかったからな。せいぜいわかるのは顔くらいか。
「すまぬがあとはよくわからない。顔以外は自分の姿など見たこともない」
「きになるのだー……! わかったら教えてほしいのだ!」
「まあフレンズ化する前ってほとんどみんな姿はわからないものだしねえ」
「私もどんな姿かはわからないわね。鳥だったことくらいしか覚えていないし」
皆フレンズ化する前はどんな姿かわからないものなのか。いったいどんな性質を持っているのだサンドスターというものは。
っと、話がそれてしまったな。つまりそのフレンズ化したけものが今山頂にいるということか。
「それで報告に戻ってきたということでいいのかなー?」
「それであってる。博士たちは今いないのか?」
「たぶん戻ってきているころだと思うのだ。用があるならここで待つといいのだ」
「用も何も緊急の報告なんですけどね」
「できれば今すぐ会いたいんですけど……」
まあ確かに私のような性格とは限らないしな。何をしでかすかわかったようなものではないか。もしもそ奴が彼女らを追ってきているとなればここら一体がどうなるか分かったものではないな。
「サーバル、周りに気配は感じるか?」
念には念を入れて気配がないかサーバルに確かめる。サーバルは耳をピコピコ動かせて音を探る。
「――――大丈夫みたい。周りから聞こえるのは草の揺れる音だけだね」
「どうやら追っては来ていなかったようね、まず一安心ね」
「山頂付近を縄張りにでもしたんだろうなおそらく」
「もし山頂に近づく子たちがいたら危険ですね」
「でもあれを相手にできる自信はないですよ……相手の力は未知数ですし」
まずは様子見からというところか。まったく、とんでもないことをしでかしてくれたものだなサンドスター。フレンズ化の原因はサンドスターにあったとは。これでようやく一つの謎が解けた。
「そういえば私達二人の名前をまだ教えていませんでしたね。私はキンシコウといいます。よろしくお願いしますね」
「リカオンといいます。ハンターとしてはまだまだですけど、よろしくお願いです」
キンシコウにリカオンか。ヒグマと比べると力はそんなに強くはなさそうだな、どちらかというと頭が切れる方か。
「まあ相手が動いてくれていないならこちらも動きやすいな。まずはどんなフレンズなのか動きを見よう。あの時は突然だったからよくわからなかったしな」
「えー!? またあそこに行くんですか!?」
「でも行かないとわかりませんよ? 怖いのは私たちも同じです」
少しビビり気味のリカオンを二人が窘める。私達もついていった方が賢明か?
「お三方はここに残って博士たちを待っててくれませんか? すぐに戻りますのでご心配なく」
「ならば私だけ行くというのはどうだ? 相手も同じ未知のけものだ。何か分かり合えるようなことがあるかもしれん」
「え!?ふうちゃんだけでいっちゃうの!? なら私も行くよ!」
「心配するなサーバル。ひとっ飛びで様子を見に行ってくるだけだ」
「暴走しないか心配だよ……」
「――わかった。戦うことはしないと約束しよう。もし相手が敵意を向けてきたらすぐに逃げることを優先する」
私は野生解放をする。現れた翼をぶわっと広げ、飛ぶ準備を完了する。
「うわあ!? びっくりした! いきなりなんなんですか……」
「飛んで行った方が早いだろう?」
「驚いたな……風翔龍は飛べるフレンズだったのか、飛ぶのに野生解放が必要なのは珍しいな」
「ほんとですね……それが風翔龍さんの特技になるわけですね」
「いや、私の特技はまだ使えていない」
ぽかんとする三人組。"え、どういうこと?"といった風な顔だな。
「私は本来は風の力を使えるはずなのだ。だがフレンズ化してからはそれがいまだに使えていない」
「すごいのだ! 風翔龍はまるで神様のようなのだ!」
「神様ねえー、なんだかあながち間違いでもない気もするねえ」
「ええー!? ふうちゃんってそんなにすごいフレンズだったのー!?」
「真に受けるな真に。神様というのはわからんがそんなに凄くはないと思うのだが」
またぽかーんとしている。今度は私以外の全員が。
「いやいや、風を操れるってだけで十分すごいと思いますよ!?」
「まるで伝説のけものだな……案外ホントに伝説級だったりしてな」
「まあ本人からすればフレンズ化前はその力を当たり前のように使っていたわけだしね。凄さが実感できないのはわたしもわかるわ」
でんせつ? まあとにかくすごいということか。まあそれは置いておいて――
「出発しよう。一刻も早く行かないとフレンズが犠牲になる可能性があるのだろう?」
「え!? あ、ああ。そうだったな、頼めるか?」
「私達もお願いします」
「うう、あんまり行きたくないけど腹くくるしかないですか……! お願いします」
私はハンター三人を抱えてふわりと宙へ舞い上がる。
「付いていけないのは残念だけどふうちゃんの邪魔になっちゃいけないもんね! 気を付けてね! 博士たちには私達から伝えておくからね!」
「こっちは任せておくのだ! しっかり見張るのだ!」
「途中で寝たりしたらだめだよーアライさん」
「もしボロボロになって帰ってきたら地獄のリサイタルでも開こうかしら、一晩中ね」
「トキ、それはやめてね?」
え、あの歌い方って意図してできるものなのか? だとしたら恐ろしい武器を持ってることになるぞトキは。
「さすがに冗談よさっきのは。無理はしないようにお願いするわね、じゃないとサーバルがまた泣きじゃくるわよ」
質の悪い冗談だ。トキの場合真実に聞こえてしまう。う……さすがにまたあ奴を泣かせてしまうわけにはいかないか。あれは見ていて胸がどうにかなりそうだったし。心の中で無茶なことはしないと私はしっかり釘を刺し、私とハンター三人は山のある方向へと飛んで行った。
やっと自分がフレンズ化した原因を突き止めた主人公、
そして謎のフレンズ、いったいどんなテスカトルさんなんでしょうか……
短いですが一旦しんりんちほー編は終わりです、
次回はサンドスターの山でのお話になります!