山の名前は勝手に付けましたw
section Ⅰ: 山の憩い場
真下に見える森林をわき目に私達は山の方向へ飛び続ける。最初はおっかなびっくりだった三人も今は落ち着いているようだ。まあ空を飛べないフレンズがいきなり空を飛ぶのだから最初怖がるのは当然か。
「しかし、ほんとに私たち空を飛んでるんですね今……」
「最初は怖かったですけど慣れると風が気持ちいいですねぇ」
「うう……慣れたのは慣れたがやっぱり下は見れない……」
ヒグマ以外は楽しんでいるようだ。しかし意外だった、結構男気な性格のヒグマが高さを怖がるとは。
「見たくないなら目を瞑っていろ。それで何とかなるだろう」
「逆に怖いと思いますけど……目を瞑ると」
「そうなのか?」
うーむ、キンシコウの言う通りなのかもしれん、実際その気持ちを私はわかることはできないからなあ。
「ま、まだ着かない!? そろそろ降りたい気持ちなんだけど――!」
あたふたしている。なんだ、可愛げのあるところもあるんだな貴様も。思わずにやついてしまった。見られてたら蹴りでも入れられたかもしれぬな。
「もうだいぶ近くなってきてるぞ。貴様のためにも休めそうな場所を見つけてそこで休憩しよう」
「そうですね、このままヒグマさんの様子を見るのも面白そうでしたけど可哀そうですしね」
「キンシコウ!?」
「レアですよねぇ、ヒグマさんのこういう一面を見られるなんて!」
「リカオンまで!?」
がっくり項垂れるヒグマ。ちょ、いきなり力を抜かれたら落としかねない! ――まったく運んでいる私の身にもなってもらいたいものだ。
「ああ、私の黒歴史ができてしまったぁ……かっこいい私のイメージが……」
「可愛い一面もあるのもいいと思いますけどねぇ」
「そうですよ、今までなかった自分の新しい性格もさらけ出してもいいと思いますよ私!」
「――想像できるか? 私がエプロン愛好会の子たちのようなフリフリをまとっているところなど」
私含む三人が想像する――
「「「ごめん、やっぱり無理です」」」
「お前らああああああああ!!!」
バッサリと否定してしまった私達。それを受けてヒグマの虚しい叫びが空に響き渡った。実際着てみたい願望はあったのか。やっぱりかわいい一面もあるんじゃないかヒグマ。私は似合いそうだとは思うがねえ。つい無理って言ってしまったが。
そういうやり取りをしていると山が目前へと迫っていた。この山頂に私と同一の世界から来た可能性のあるけものがいるというのか。だがまずは休める場所を探さなくてはな。
山を上がりつつ探してみる。 んーさすがにごつごつしていて休むには適さないような地形が続いているな……これでは山頂についてしまいそうだな。周りも回りながら登ってみるか。
山の周りをぐるぐると回りながら上がっていく。やはり同じ地形が続いているな――む? 少し開けているところがあるな。何やら建物もある。フレンズたちが作ったものだろうか。何にせよ休むにはちょうどよさそうだ。
高さをどんどん低くし、ふわりと降り立つ。天気がいいからここはいい景色だ。私も高いところは落ち着ける。山の上は天気が変わりやすいがここは落ち着いているようだな。これもサンドスターのせいなのだろうか。まあなんにせよ天気がいいからいいがな。
「やっと地面だ……あー生きた心地しなかった」
「大袈裟ですよヒグマさん、ふふっ」
「笑うなキンシコウ! マジで怖かったんだからな!?」
「はいはい、わかりましたヒグマさん♪」
「おお、なんか建物がありますね、行ってみましょうかー!」
「ぐぅう……!!」
唇をかみしめるヒグマをよそに目の前の建物に私たちは近づく。ここに建って結構な月日がたっているようだ、壁にはところどころかけている箇所がある。いったい何をするためのものだろうか。だいぶ知識もついてきた私もこれはわからない。というか私よりも知識がありそうな三人も興味ありげに建物をいろんな角度で眺めている。どうやら三人もここには初めて来たようだな。
「入り口は……あそこか。こんなとこに住んでる子なんているのかねえ」
「まあ入ってみないことにはわかりませんね」
「お化けが住んでたりしてね……」
「「!!??」」
「おばけ?」
お化け――また不思議な言葉だ。何かこの世のものではない物体を思い描いた。てことは実際には存在しない物なのか?
「お化けを知りたそうですねえ。お化けっていうのは簡単にいうと死んだ人が目に見えて出てくるんですよー」
「死んだ者がでてくるのか……なんとも不可解なものだなお化けというものは」
「怖がらないんですねお化け」
「怖いも何もお化けそのものを知らないしな私は」
「私と風翔龍さん以外は怯えてるみたいですけどね」
「「…………ガクガクブルブル」」
キンシコウとヒグマががくがくと震えている。ふむ、お化けとは怖がらせるためにいる存在なのか。なんとも迷惑な存在だな。まあ実物を目の当たりにしたところで私は怖さも感じられないと思うが。
「ま、まあいい。とにかく中に入ろう。……ほんとに出てきたらどつくからなリカオン」
「ええ!? 勘弁してくださいよぉ」
「自業自得ですね、リカオン」
震えながら近づく二人とそうでない私達二人。ジャパリまんもあるといいな――
ドアを開く。きしんだ音を立ててドアが開いた。それと同時に小気味の良いちりんちりんという音がした。中には何やら四つ足の着いた物が並んでいる。大きいものと小さいものがあるな。小さいものには出っ張った板がついている。大きいものは無い。何に使うものだろうか。
「あらぁ! ここにお客さんが来るなんてぇ! ようこそぉ!」
何やら部屋の奥から声がする。ぱたぱたとこっちへ駆け寄ってくる。
「いやぁー久しぶりにお客さんが来てくれたぁ! どうぞゆっくりしていってねぇ!」
「あ、ああ。所でここはいったい何なのだ?」
いきなりのことで私たちはポカーンとしてしまった。白い毛皮をまとったフレンズがここには住んでいたようだ。私達のことをお客さんとか何とか言っていたな。
「お客さんとは私たちのことか?」
「そうだよぉー。――あれ、もしかしてお客さんじゃなかった?」
「いや、一応お客さんではありますね、休憩しにここへ寄りましたから」
「ふぁあああ……! やっぱりお客さんだったんだねぇ! こうしちゃいられないねぇ! まっててねぇ、今おいしい飲み物入れてあげるからねぇ」
またぱたぱたと奥の方へ行ってしまった。まあいいか、ここはどうやら休む者のためにある建物みたいだしな。
「しかしこんなところにフレンズたちは来るのだろうか……」
「久しぶりって言ってましたしねえ。知られていないのかもしれませんね」
「なんか雰囲気は良さそうだがなあ。場所のせいでここへ来にくいのかもしれんな」
「ですね……。ここに来る子ってたぶん飛べる子くらいしかいなさそうです」
各々がここの感想を述べる。もしここが知られたらフレンズたちはここへ来るのだろうか。
「お待たせぇー! 熱いからきをつけてねぇー」
白毛皮のフレンズが私達に何やら褐色の液体を器に入れて持ってきた。
これはまた……何とも言えない色をしている。
「あー、名前いってなかったねぇ。私はアルパカだよぉ。ここでカフェを開いてるのぉ。今出したのは紅茶って言うんだよぉ。博士のお墨付きだからぜひ飲んでみてねぇ」
まだ博士に会えてないから何とも言えんが、まあ飲んでみるとしようか。
「ほう――なかなかに落ち着けるな。私は好みだ」
「ほんとですね――なんだかほわぁってなっちゃいます」
「うーん、私は好きにはなれそうにないです……」
「好き嫌いはよくないぞ、リカオン。こんなにおいしいのに」
「いいのいいの! フレンズによって好き嫌いはあるだろうからねぇ」
アルパカは気にしていないようだ。これとジャパリまんを合わせて食べてみたいものだなあ。
「ふふふー、ジャパリまんが食べたそうな顔してるねぇ? いいよぉ、もってきてあげるよぉー」
「――ここの世界の者は皆読心ができるのか??」
「まあ食べ物って言ったら主にジャパリまんだからなあ」
「風翔龍さんはお好きなんですか、ジャパリまん」
「む? ああ、まあな――」
何とか語りたい気持ちを抑えるが、アルパカが持ってきた現物のせいで爆発してしまった。私のジャパリまんに対する語りは小一時間ほど続いてしまったという。
「はっ!? もしかしてまた私はジャパリまんを……」
「はい、それはもう満面の笑みで語ってましたよ」
「いつもの面とのギャップが面白かったぞー?」
「そのギャップが大きすぎて……ぷぷっ」
「いやージャパリまんが好きなことがよぉーく分かれてよかったよぉ」
ニコニコ顔でそのことを打ち明ける二人と噴き出す一人、そして素直に感想を述べるアルパカ。ああーまたやってしまったのか私は。だめだもう現物を見ると止まれる気がしない。そうだなもうすっぱりこれはあきらめよう。私の特徴と考えてしまおう。何かもうダメな方向に考えてしまっている気もするが。思わずため息が出る。深い深いため息が。
「元気出してください風翔龍さん。ほら、紅茶お代わり来ましたよ」
「死にたい……もうどうにでもなれ」
「わるかったって、誰にも他言はしないから」
「いや、もうたぶん手遅れだと思う……貴様ら以外にも見られているしな」
「そんな時は紅茶を飲んで落ち着いてぇ、はいどーぞぉ」
とん、と紅茶が目の前に置かれる。私はそれを飲んでまたため息をつく。
「ふうー……もううじうじするのはやめにしよう。これも私の個性だと割り切ってしまおう」
「おおっ、元気が出たみたいだねぇ、よかったよかった。それも個性でいいと思うよぉ私も」
「割り切っちゃった方が確かに楽ですね、いいと思います私もそれで」
アルパカとキンシコウはやっと立ち直った私を励ましてくれた。なんと優しい二人だ。
「でもやっぱり思い出しちゃうと笑いそうになっちゃいますね……」
「こらリカオン、ぶり返すとまた面倒だろうが。せっかく彼女が立ち直ったのに」
残る二人は小声で何かぼそぼそと話している。丸聞こえだぞ貴様ら。まあ聞かないふりしておいてやるか。
しかし本当にほかのフレンズたちは来る気配もないな。周りは閑散としている。こんなところによく一人で住めるものだなあ。生前なら私は何とも思わなかっただろうが、今なら耐えられないだろうな。
「あはは、大丈夫だよぉ、最初は寂しかったけど今はもうそれになれちゃったからねぇ」
「寂しくなくなったのか?」
「確かにお客さんが来ないのは寂しいけど、一人で紅茶を作って飲みながらこの景色を眺めてるとそんな気持ちも吹き飛んじゃうんだぁ」
「まあ確かに、この景色を見ると心が落ち着くな」
現在は外で紅茶を楽しんでいる。アルパカの言う通り外で飲むのもまた趣があっていい。沈んだ気持ちも自然と無くなってしまうのも頷けるな。
「ところで、ここを目当てに来たんじゃないんだよねぇ? もしかして山頂を目指してるのぉ?」
「ああ、この山の頂に私と同じようなフレンズがいるという話をそこの三人から聞いてな。確かめに行くところだ」
「万が一フレンズに危害が及んでしまったらいけないからな、もし危険そうなら四人がかりででも捕まえるつもりさ」
一応戦わないとは約束したが、やむを得ないときは戦闘も覚悟しておくか。
「ところで、そのお客さんが来てほしいとは思わないのか?」
「もちろん来てほしいと思ってるよぉ。でもここは場所が悪いこともあるからねぇ、あまり期待はしてないねぇ……」
「ならむしろ山のふもとでカフェを開くのはどうでしょうか?」
しかしふもとに建物らしきものは見当たらなかった。それにもしあったとしてもそれがここの代わりになるかもわからない。――ん?まてよ……
「一つ思ったのだが、作ってしまったらいいのではないかと思うのだ」
「え?! 建物をですか!?」
「作るっていったって私達じゃ作り方なんてわからないぞ」
「もちろん、私に当てはあるさ。彼女らならばきっとやってくれるだろう」
「おおー! 建物づくりの得意なフレンズがいるんですね!?」
まあそれはとりあえず図書館に戻ってから考えるとしよう。人数は多い方が良いしな。
「新しいカフェをつくってくれるのぉ!? すっごく助かるんだけど、そっちの迷惑にならないかなぁ……」
「そんなこと思うわけないだろアルパカ。むしろそれでフレンズがたくさん来るようになるなら私達もうれしいさ。当然私達も完成したら立ち寄らせてもらうぞ!」
「ええ! またおいしい紅茶をご馳走してくださいね!」
「出来れば、紅茶以外のも……なんて」
「あはは、考えておくねぇ。――皆ホントにありがとねぇー」
さてと、とりあえず約束をしたが、まずは安全のために山頂のフレンズの偵察だ。私達は山を見上げる。少し不気味な雰囲気が漂っているように感じた。
「きをつけてねぇ。終わったらまたここによって落ち着いていってねぇー、いつでも待ってるよぉ」
「ああ、ありがとうアルパカ。おかげで体力も回復した、これで万全の状態で山頂のフレンズと対峙できる」
「いよいよだなみんな。気は抜くなよ、相手は未知のフレンズだ」
「わかってますよヒグマさん。とりあえず危険だと感じたらまず逃げましょう」
「ええ、無茶な戦いはしないようにしましょう。風翔龍さんもお願いしますね!」
「ああ、泣き虫フレンズから念を押されたからな。もしかすると戦闘は避けられんかもしれんが無茶なことは絶対にしない、約束しよう」
お互いを鼓舞し合うと私は三人を抱えて翼をぶわっとはためかせ、宙に舞った。
「うわあー……! すごいねぇえ! 風翔龍さんって飛べたんだねぇ!」
「言って無かったな、すまなかった! ではなアルパカ、また寄った時はよろしく頼むぞ!」
アルパカの住んでいるカフェがどんどん遠くなっていく。やがて雲に隠れて見えなくなってしまった。私は上を向いて翼をはばたかせ、山頂を目指す。
ここでアルパカさん登場!書いているときも脳内再生余裕でしたw
次回はいよいよ山頂でフレンズとご対面?