そして例のかしこい二人登場!
section Ⅰ: 二人の賢者
サンドスター山を後にした私達はしんりんちほーへと向かって飛び続けていた。博士たちが戻ってきていればいいのだが。頼りになる者も仲間?になったしな――性格に難ありだが。
「ふむ、ここにはたくさんのフレンズがいるのだな。我と同等の強さの者がいたらぜひ手合いを申し出たいものだ」
「炎王龍さんと同等って、風翔龍さんしかいなさそうですけどねぇ」
「昔は四神と呼ばれるフレンズの皆さんがかくちほーを守護していたそうですけど、強さまではわからないですね、神っていうくらいですからかなり強かったんじゃないかと」
「四神か――炎の王たる我にはもってこいの相手ではないか。だがその話は昔の話か。残念だ」
残念そうな顔をする炎王龍。奴は加減を知っているとわかってはいるが、全力を出したら相手を倒しかねない。まあもしそんな場面が訪れようものなら私が全力で阻止するのだが。
しばらくすると森林の生い茂ったエリアへと入っていた。どうやら戻ってきたようだな。ハンター三人組の案内がなければ路頭に迷ってたどり着くことすらできなかっただろう。感謝しないとな。
「図書館はどっちに行けばいい? 頼ってばかりで済まないが」
「そんなこと気にするな。私達はもう友達だろ? 友達の頼みごとを無下にできるわけないだろ」
「そうだぞ風翔龍よ。どーんと甘えさせてもらえ! ふはははは!」
「なんでそんな偉そうなんですか……」
「性格だ!! 気にするなリカオンよ!!」
「まあでもさばさばしてて私はいいとおもいますけどね」
キンシコウ、貴様はこんな性格でもいいのか……。それとも世辞というやつか?――なんにせよあ奴は波乱を巻き起こしそうな予感がしてならない。私はこれからうまくやっていけるのだろうか。なんだかお腹が痛くなってきそうな予感がする。
「図書館はこっちの方向ですね。割と道の名残が残っているんでわかりますよー」
「名残? 昔のフレンズが作った道のものなのか? その名残は」
「博士たちの話だとそれよりももっと前らしいですよー、詳しくは知らないけどヒトによって作られたものだとか」
「ほう、やはり人間によってこの世界は作られているのか。しかし今は人間はいないようだな。フレンズ化したけものを除けば」
「まあ詳しくは博士たちに聞いてみるといいですよ。私達よりももっと詳しく聞けるでしょうからね」
「あまり興味が湧かんな。人間は我をうち倒した敵だからな。だがその作ったものに関しては我も少し興味がある」
「といってももうだいぶ経ってるらしいですからボロボロですよ? どころどころにしかその名残は残ってませんし」
いったいどれほど昔の話なのだろうか。生前は人間など珍しくもなんともなかったが、この世界では噂すら聞かない。やはりこの世界に人間は――
「そういえばヒグマはもう宙を飛ぶことには慣れたのか?」
「え、思い出させていいんですか? 今たぶんそれすら忘れてると思いますよヒグマさん」
「え? 何か言ったか?」
「いえ、気にしなくても大丈夫ですよヒグマさん。ただの世間話です」
「そ、そうか。重要な話なら私にも言ってくれよな」
「ふうー……まったく、せっかく今忘れてるんですから思い出させたらまた面倒なことになりますよ?」
「え? 私何かさっき余計なこと言ったのか? それなら素直に詫びよう」
「いえ、いいです、大丈夫ですよー。ヒグマさんには聞き取れてなかったようですしね」
そういえばヒグマがずいぶんおとなしいなと思っていた。そうかそれをさっき思い出させようとしてしまったのか。確かに思い出させたら面倒事になるな。このまま忘れさせていた方が良いか。
「お、見えてきたみたいですよー」
リカオンが正面を見て言った。割と早かったな戻ってくるまで。しかし私の装甲はボロボロだな――サーバルのお説教は覚悟した方が良いか。……約束破ってばっかりだな私。
「まあ仕方ないと思いますけどねえ。感情が爆発しちゃったんですから」
「それでも傷ついていることに変わりはない。しかもそのあと正気に戻っても戦いはやめなかったのだ。説教も当たり前だな」
「あー、確かに楽しんでましたものね、二人で」
「そうだな! あれほどの熾烈な戦いは久しぶりだった、感謝してもしきれんな、またやりたいものだ!」
「……勘弁してくれ」
あれほどの戦いをもう繰り広げたくはない。体がボロボロになってしまう。それは炎王龍も同じのはずなのだが、なぜ奴はケロッとしているのだろう。こいつ実はセルリアンなのではないか? ――ここで倒しておくか……? まあ冗談なのだが。
「降りるぞ。私達の帰りを心待ちにしているだろうしな」
「貴様の仲間とやら、見定めさせてもらうぞ風翔龍よ」
「……危害を加えるなよ? 絶対にな」
「そこまで節操なしではないわ。しっかり見定めてから判断するわい」
判断次第じゃ加えるんだな。まあ私のような見た目でなければ大丈夫だろう、きっと、たぶん、おそらく。
「あー! 帰ってきたのだ! 待ちくたびれたのだぁー!」
「アライさーん、そんなに待ったかなあー? まあいいやー。おかえりー」
「ふうちゃん、みんな、おかえりー! ……なんか一人増えてるねー」
わいわいがやがやと迎えがやってきた。どうやらそんなに退屈はしていなかったようだな。まあここには本がたくさんあるしな。
「まったく、騒がしいのですよお前らは」
「まったくですね、博士」
聞きなれない声が後ろからした。博士といったな。ということは――
「貴様らが博士たちか。お初にお目にかかる」
「どうも、アフリカ大コノハズクの博士です」
「どうも、助手のワシミミズクです」
二人は挨拶を済ませるとまじまじを私を見てくる。
「む、見慣れないフレンズなのです、ということはお前が例の風翔龍ですか」
「そうだが。なぜ私の名を知っている」
「ジャングルちほーにいるという情報を得てそこで名前を知ることができたのです。名前からして元からここに住んでいたけものではないですね、いったいどこから来たのです」
「答えるのですよ、風翔龍」
ずいぶんと偉そうな奴らだな。性格に難ありか――あの三人の言うことも的を射ている。だが賢そうな見た目ではあるな。
「む、人を見た目で判断するのはよくないのですよ」
やっぱりここの住人は読心術を持っているな、間違いない。
「」
「まあそれはいいとしてだ。話してもらえるか? 私がここに来たその要因を」
「待つのです。物事には順序というものがあるのです」
「そ、そうか。すまなかった」
「先に我々の質問に答えるです」
「どこから来た、か……雪山からとしか言いようがないな」
「ふむ、地名はわからないですか?」
「ああ、ここでいうちほーのような名前のことか。知らぬな」
すると博士たちは後ろを見て炎王龍の方へ向かう。
「む? なんだ、我と一戦交えたいのか? 名も知らぬフレンズよ」
「我々は戦闘を好むけものではないのです。わきまえるのです」
「わきま――? よくわからんが戦いは好きではないのか? ならば我に何用だ」
「まず名前を言うのです。名前は重要なのです」
「名前か。人間どもは我を炎王龍と呼んでいたな。それが我の名であろう」
「では炎王龍、お前はどこから来たのです?」
「火山だ。煮えたぎるような熱いところだな」
「ひぃ!? そんなところから来たのですか!?」
「なんだ? 別に貴様らを取って食おうなどとはみじんも思わんぞ、前の姿なら――」
「ひいいぃい!?」
博士がシュッと細くなった。驚くと細くなるのか。面白い体をしているな。
「お前は山の上にいたフレンズですか? そこにいる二人組に見覚えはないですか?」
「む? いや、知らぬな。初めて見る顔ぶれだ」
博士たちに尋ねられて炎王龍は答える。まあフレンズ化する途中で帰ってきているからな、そこの二人組は。
「え、もしかしてあの大きなけものなのか?」
「おおー、そういえばその頭の角には見覚えがあるねえー」
「む? 我を知っているのか?」
「知らないのだ! 大きなけものの姿でなら知ってるのだ」
「フレンズ化してそこから記憶がよみがえったのか。つまり死体の状態からフレンズ化するまでの記憶はさっぱりない状態か。私と同じだなやはり」
ということはやはり同じ世界からここへ来た可能性があるのか。あの時見た夢も全く同じだと言っていた。やはり何か私と関係があるとみていいな。まったく同じ状態からここへ来るということも不可解だ。
「お前らは元は死体だったのですか? サンドスターが触れてまた命を得たということですか」
「サンドスターにはそんな力があるのか」
「サンドスターはまだまだ謎が多い物質です。死体を蘇らせるというのは昔の文献で知っていたのです。しかしそれはもともとここで暮らしていた生物に限ったことなのですよ」
「今回の件で他世界の獣にも影響があるということが分かったのです。感謝するですよ二人ともに」
「「あ、ああ」」
なぜだろう、感謝されてもあまりうれしくはない。
「さて、お前が知りたいその要因なのですが――」
「何か知っているのか!? 知っているならば早く――」
「わからないですね」
「わからないのです」
え? わからない? そんな馬鹿な。ここまで来た意味はいったい何だったというのだ。
「いくら賢い我々でも知らない、分からないことはあるのです」
「期待はしない方が良いですよ」
「それでは、ここに来た意味がない! 何か些細なことでもいい、教えてくれ!」
「くどいのです、知らないものは知らないのです」
「なのです、自分で探すのです」
無駄骨だったか……。だが手掛かりはある。トキの言っていたフレンズを探し出すことだ。そしてそれは夢で聞いた声にも出てきていた。何か関係があるに違いない。そうと決まればここにもう用はない。私の子の姿の要因ももうわかってしまったしな。
「どうするの? ふうちゃん、私もお手伝いするよ?」
「ああ、すまないなサーバル。感謝するぞ」
「私もいくわ。その子のことが気になるもの」
「アライさんも行きたいのだ! 冒険の予感がするのだ!」
「アライさんが行くなら私も行こうかなー。それに風翔龍さんにアライさんの突撃っぷりは止められないかもしれないしねー」
いや、フェネック、貴様はアライグマを止めるどころか止める気がないのでは……? まあいいか、旅の仲間は多い方が楽しいしな。なんだか性格まで緩くなってきている気がする……。恐るべしジャパリパーク。
「そうと決まればさっそく出発なのだー!」
「ちょっと待つのです、そこの青いの」
「アライさんは青いのじゃないのだー!」
ずいずいっと博士たちが前に出る。私たち二人を見て何か考えているようなそんな顔だ。
「一つ頼みがあるのです、お前らに」
「私に? まあできることなら」
「我にもか? 善処しよう」
沈黙が続く。なんだ、早く要件を言ってもらいたいのだが。
「我々はグルメなので最近ジャパリまんに飽きてきたところだったのです」
「食べ物をそのまま齧ることも飽きたのです」
「はあ……それがどうかしたのか?」
「ズバリ言うのです」
また沈黙が続く。何なのだこれは、私たち二人に何をさせるつもりなのだこいつらは。
「「我々に料理を振舞ってもらうのですよ」」
――は?
「ちょっと待て、なんだそれは。貴様らの要件とはその料理とやらを我々にしてもらいたいということか?」
「そうなのです。わかったらとっとと作ってもらうのです」
初めて聞いたぞその言葉。こいつらは私たちが料理というものを知っていると勘違いしているのか。ならばそれを教えてやらねばな。
「あいにくだが私たち二人はその料理というものを知らない。そもそも料理とは何なのかもわからない」
「!? りょ、料理を知らないというのですか!?」
「何かの冗談なのです! 他世界の者であれば料理くらい知ってるはずなのです!」
「いや、本当に何も知らんな。そこの風翔龍の言う限り」
「「 」」
だんまりになってしまった。二人ともぽかーんと口を開けて固まっている。私達が料理を知らなかったことがそんなに応えたのだろうか。
「あ、ありえないのです……よ、ようやく料理が食べられると思っていたのに」
「おに、あくま、ふれんずなのです」
訳の分からないことをつぶやく助手とめちゃくちゃ落ち込んでいる博士。なんだこの図。まあ面白いからいいか。少し心が晴れたのは内緒だ。
「まあ、なんだ。貴様らが教えてくれるのであればそれをやってみるとしよう」
「!? ほ、本当なのですか!?」
「そうと決まればさっそく教えてやるのです! 付いてくるのです!」
よっぽどその料理とやらが好きなようだな。まあ私達にはどんなものなのか見当もついていないが。頭に疑問をたくさん抱えたまま私たち二人は図書館の中へと引っ張られていった。
というわけで博士たちのご登場でございます!
やはり博士たちに料理は食べさせたかったw
果たしてどんな料理を二人は作るのか……
不安を抱えて次回へ続きます。