料理を終えて私達は博士にカギを握っているフレンズがどこにいるかを聞いていた。だが賢者の二人もわからないという――うーむ、困ったものだ。
「とりあえずジャパリパーク中を周ってみるしかないか。どれくらいの広さがあるのかも把握しておきたいしな」
「おおー! 楽しそ―!」
「なんだか、ワクワクしてきたのだ!」
アライグマとサーバルが目そキラキラさせている。もう完全に付いてくる気だなアライグマの方は。まあ退屈しないから私はいいのだが。どうせあの赤いやつも連れてく気満々だろうしな。
「ふははは! いいぞいいぞ、我らについてくるがいい! どんな強い奴が出てくるのか楽しみだ!我を楽しませてくれる奴が出てくるといいな! ふははは!」
やっぱりだったな。だんだんと人数が増えてきたな。騒がしいのはもう慣れてしまったが、心配の種も増えてしまったな。うむ、私がしっかりしなければならぬな。その種どもが何をしでかすかわからんしな。
「ところで、シマウマの様子はどうなのかしら? 料理が終わってもまだ起きてくる気配はなさそうだけれど」
「うむ、たしかに少し様子を見てきた方が良いか。どうやらサンドスターのおかげで傷の治りは早いようだが、目を覚ましているかどうかはそれに因らないようだからな」
私は図書館内へ入り、寝室へと向かう。シマウマにとってはあの怪物の姿をしたセルリアンは脅威でしかない。相当怖い目にあったのだろうな。今度対峙したときにトラウマになっていなければいいが……。
「調子はどうだシマウマ」
「……むにゃ……」
寝ているか……起こすのも悪いな、このまま寝かせてやるとするか。
「くしゃるだおらさん……たすけないと」
寝言か、一体どんな夢を見ているのだろうか。まあ起きてから聞けばいいか。
私は寝室を後にし皆の元へと戻った。そうだな、作った料理を置いて行ってやるとしようか。料理を手にまたシマウマのところへ行く。
「ふああぁあ……あ、風翔龍さん、おはよーございます……」
「目が覚めたか、シマウマ。傷の状態はすっかり治ったようだな」
「まあ、よく寝てましたからねえー、おかげさまで元気ですよー」
「それは何よりだな。それより、料理を持ってきた。食べるがいい」
「りょうり? なんですかそれ」
私は料理について詳しく説明する。するとシマウマは、
「そんな楽しそうなことなんで教えてくれなかったんですか! 起こしてくれたら私もみんなと一緒に食べれたのにー!」
「いや、あんな気持ちよさそうな顔して寝てるお前を起こすのも気が引けたからな。だが料理はお前の分はしっかりとっておいた。これで文句は言うまい?」
「う……まあ、感謝はしますよ。ありがとうございます」
少しふてくされ気味でお礼を言うシマウマ。少しだけその顔にドキッとしたのは内緒だ。
「ところで、寝言で『くしゃるだおら』と言っていたが、一体何なのだ? どんな夢を見ていた?」
「詳しくはわからないですけど、ただひとこと、そのフレンズを見守りなさいとしか」
「それはわたしが聞いた声の主と同じだったのか?」
「そうですね――サーバルさんの声をちょっと低くしておとなしめにしたような声でしたかねー」
んー? なんとなーくだが私の聞いた声もそんな声だったような気がする。確証はないが私も聞いたことがある声だと言っておいた。
それにしても『くしゃるだおら』か……何故だろうか、この言葉を聞くともやもやするのは。
「まあとにかく、その言葉の意味も気になるな。夢で見たことなどあてにはできぬが、今はそれを信じて調べて回るしかあるまい」
「あのー、言いにくいんですけど私も――」
「まあ、連れていくしかないだろう。寝言とは言えそんな言葉聞かされたらますます声の主について気になってしまったしな」
「お別れだと思ったらまた合流してしまいましたねえー」
「確かにな。出会いというものは本当に不思議なものだな」
他愛もない話をしながら私たちは皆の元へと戻った。何はともあれ、シマウマは元気を取り戻したようで何よりだ。
「あ、ふうちゃーん! シマウマも元気そうだね!」
「はい、おかげさまで元気いっぱいです」
真っ先ににサーバルがこちらに気付いて駆け寄ってくる。
「やっとお目覚めですか、シマウマ」
「おそいのです、もう待ちくたびれたのです」
サーバルに次いでこちらへ近寄ってきた賢者二人が退屈そうに欠伸をする。起きてからそんなに時間は経ってはいなかったと思うがな。
「博士たちも心配してたくせにー」
「「うるさいのです、サーバル」」
「みゃ!? なんで怒るの!?」
二人にぎろりと睨まれてびくっとするサーバル。まああの二人の性格からすればそうなるだろうな。
「さて、これで全員ですね。ハンターの三人は見回りを続けていくそうなのです。何かあったらここへ情報を持ってくるとのことなのです」
「あの三人は別行動か。まあ腕は確かだしな、そう簡単にやられはしまい」
「まずこれから我々が行うこと、それは――」
皆ごくりと唾をのむ。――何名かは目を輝かせながら。
「雪山ちほーへ行くことなのです」
「雪山かー、まだ行ったことないちほーだなあ」
「ふふふ、アライさんがいればどんなちほーでも怖いものなしなのだ!」
「頼もしいねえーアライさん」
「どんな強いフレンズがいるか楽しみだな! 我を楽しませてくれれば満足だ!」
「いきなりけんか腰はやめてくださいねー……」
「まあ、手が付けられなかったら風翔龍が何とかしてくれるでしょうね、たぶん」
「結局私頼りになるのだな……」
雪山か。私にとっては懐かしくもある。同時に苛立たしくもある。しかしなぜ雪山なのだろうか。
「なぜ雪山なのか――知りたそうな顔をしてるですね風翔龍」
「――知ってるなら話してくれ、何故だ」
「トキの情報なのです」
「ええ、実はあなたたちがサンドスター山へ行った後少し遠くへ見回りに行ってきたの」
「なるほど、そこで例の歌を聴けたということでいいのか?」
「ええ、微かだけどね。残念なことに下は吹雪いててよく見えなかったけどサーバルのおかげで歌声が聞き取れたわ」
「えっへん! 結構寒かったけど頑張ったよー!」
さすがはサーバル。ただ待っているだけじゃなく情報を集めに行っていたのか。ここで待っているのは退屈で仕方なかったってこともありそうだな。
「確か初めて聞いた時も雪山だと言っていたな」
「ええ、その時は晴れていて下も見えてたけど歌が聞こえてきたのはちょうど木の下からだったから姿は確認できてないわ」
「でも歌声はトキの聞いた声と一緒だったよね、確か」
「ええ、間違いないわ。私は直接は聞き取れていないけどサーバルから歌の内容を聞いて確信できた。たぶん同じ子の可能性が高い」
まあもし同じ子ではなかったとしてもその子が歌を教えてくれた子のことを知っているだろうしな。どのみち雪山で歌を聞き取れたのは大きい。
「どうするのです? 早速向かってみるですか?」
「向かいたいのはやまやまだが何処にそのちほーがあるのかさっぱりわからない」
「それなら私が誘導しましょうか。昨日行ってきたばかりだし」
「そうかトキは昨日行ってきたばかりだったな、頼めるか?」
「もちろんよ、ばっちり案内してあげるわ」
やはり頼もしい、サーバルとは違った頼もしさだ。やはり鳥のフレンズは飛べることもあって場所には詳しいのだな。私では野生解放の限度があるから、自由に飛び回ることはできないだろう。こればかりはどうしようもない。
さて、行く先は決まった。このまま何事もなく着ければいいが、そうもいかないのが現実だ。どんなセルリアンがいるかもまだわからない。こちらに向かってきているかもしれない。例えば――
「来ているな……フレンズではないな。セルリアン――少し大きめのやつだな」
今のようにな……!
「セルリアンですか。我々では手に負えない奴なら後ろから見守っているのです」
「えー!? 一緒に戦おうよー!」
「こら、戦う気のないものを戦わせようとするでない。それで怪我でもされたら後味が悪いであろう」
「炎王龍の言う通りなのです。サーバル、我々を労わるのです」
「――まあ相手も見ずに戦わず観戦するのもどうかと我は思うがな?」
ニヤリと炎王龍が二人を見る。そそくさと後方へ逃げる二賢者。
「やれやれ。まああの二人は知恵が長けているしな。そちらで頑張ってもらうとするか」
「さて、どんなやつが来るか……だな」
「またあのモンスターみたいなやつなのかな……」
「心配なら下がってるといいのだ、敵を見るまでアライさんは動かないのだ」
「足が震えて動けないんだねーアライさん」
「フェネック!?」
ずるずるとフェネックに後ろへ引きずられていくアライグマ。威勢だけよくても実力がなければな……。
「トキは大丈夫なのか? 相手はまたモンスターかもしれぬのだぞ」
「まあいざとなったら空中へ逃げるわ」
「利口だな、そろそろ姿が見えるぞ。身構えろ……!!」
がさがさと音を立ててついにセルリアンが私達の目の前に姿を現した。だがその姿に私達は驚愕してしまった。
対峙したセルリアンは果たしてどんなものなのか!?
次回戦闘回!