これは驚いた。モンスター型のセルリアンはてっきりあのような轟竜をカタチどったセルリアンだけかと思っていたが、まさか鳥型もいたとは。しかもサイズも小さい。まるであの鳴き声の五月蠅い怪鳥のようだ。それとはまるっきり姿カタチが違うが。
「私の知らない世界のモンスターなのかこいつは。前世では見たことも聞いたこともない」
「え、風翔龍ちゃんも知らないの? あれ」
「これは驚きなのです。風翔龍さえも知らないカタチのがいたとは」
ちょっとムカッと来る物言いだが聞いていないふりをした。しかし見た目でわかる、こいつは鳥の類のモンスターだ。嘴が何よりの特徴か。
「グェェッ! グエッ!」
「なんか怒ってるっぽいのだ……」
「ははあー、寝てたのを私たちが騒いで起こしちゃったっぽいかな?」
「もしそうなら謝らないとだね……」
「セルリアンに謝っても理解できてないと思うわよサーバル」
まあ何はともあれ、セルリアンである以上野放しにはできないな。
「一応気を付けておけ……小さいからって力が弱いとは限らないぞ」
「ふん、あんなちっぽけなモノ――我の業火で炭にしてくれる!」
「おい、このしんりんちほーをはらっぱちほーに変えるつもりですかお前は」
「余計見通しが良くなってセルリアンが押し寄せてくるのです。お前は野生解放するななのです」
「むごっ!? 」
ぼかっと音がする。後ろからタックルを受けたようだな炎王龍。だがナイスタックルだ賢者どもよ。そうでもしないと本当にここが原っぱになり兼ねんからな。
「さて、戦闘狂は放っておくとして――まずは相手がどう出てくるかを見るべきだな」
みたところぎゃあぎゃあと翼をバタバタしながら騒いで怒りをあらわにしている。だがこちらに襲い掛かってくる様子はない。こっちから仕掛けても問題はなさそうだ、申し訳ないがさっさとケリをつけさせてもらうとするか。
「一斉に仕掛けるぞ、貴様ら、準備はいいか……?」
「一撃で仕留めるのね、わかったわ」
「いっせいにやっつけるんだね、わかった!」
「アライさんのスペシャルな一発をお見舞いするのだー!」
「はいよー、それじゃいきましょうかねぇー」
半ば残念そうに見守る炎王龍を尻目に一斉に野生解放しモンスターへとびかかる。そして――
「「「「「せーの!!」」」」」
掛け声とともに一撃を――
「グゥウウェェェェエエエ!!!」
与えられなかった。予想外なことが起きたのだ。なんといきなりけたたましい鳴き声と共にセルリアンの目の前が爆発したのだ。私達は吹っ飛ばされてしまった。
「――え? な、何が起きたの一体……」
「いきなり目の前がどかんってなったのだ……」
「セルリアンも特技を持ってるなんて聞いたこともないわ……」
「く……何とか風を起こして致命傷は避けられたが、あれでは正面からは無理だな」
「何と奴も火を使うのか、同じ炎を扱う身同士少し親近感がわくな」
「言ってる場合ですか。――うーむしかしこれは予想外すぎたのです。まさか鳥のくせに火を使うとは」
「博士、何か考えはあるのです?」
後ろで賢者二人が何か考え込んでいる――作戦を考えているのか。ま、私も私なりに考えはあるがな。
私は武器を構え、鳥のセルリアンの隙を伺う。おそらく奴の背中側は柔らかくいしもそこにある可能性がある。動きからして奴は背中を見せたがらない、ならば背中は弱点だというわけだ。こちらが動けば奴は正面で相対してくる。
「サーバル、奴の背中側に回れるか。おそらくいしがそこにあるかもしれん」
「みゃ? ふうちゃんもうやっつけかた分かっちゃったの?」
「まだそうだとは限らんが、可能性はある。お前の脚なら裏に跳んで回り込むくらい造作もないだろう?」
「でも気づかれたりしないかなあ……」
「ふふふ、アライさんにお任せなのだ!」
「こっちに注意をひきつければいいんだねー」
「私の歌ならひるませられるかも」
「「「それは勘弁して(なのだ)……!」」」
「……」
ほほう、ほかのフレンズたちもやる気は満々か。ならサーバルが回り込むまで私も頑張るとしようか……!!
「お前たちちょっと待つのです! いいことを思いついたのです」
一斉にかかろうとして後ろから呼び止められる。はずみで皆前のめりに転びそうになった。一名を除いて。
「なんなのだぁ!! せっかくかっこよく飛びかかろうとしてたのに!」
その一名が涙目で後ろに叫ぶ、盛大に顔面を打ち付けていたなアライグマ……。それでも平気とはさすがフレンズ、あなどれんな。
「それで、そのいいこととは何だ? 聞かせてくれ」
「まずはこっちに集まるのです。話はそれからしてやるです」
言われた通り私と皆は博士たちの元へと急ぐ、聞かせてもらおうではないか、貴様の考えた作戦とやらを。
「よし、集まったですね、……幸い向こうから仕掛けてくる様子はなさそうなのです。このまま作戦をお前たちに伝えるです、耳の穴かっぽじってよーく聞くのですよ」
作戦を話し始めるコノハ。ふむふむ、なるほど……確かにそれだとあのセルリアンが炎で攻撃してくることはなくなるだろう。私の考えた作戦と合わせてもいい。
「で、誰がその役をやるんだ? ……ああ、私か。貴様らのその表情を見て察した」
一斉に皆がこっちを希望に満ちた顔で見ていた、私はそんな大それた存在などではないのだが。はあ、まあやるしかないのか。
「それで、何故貴様まで私をそんな顔で見ている炎王龍よ」
「いや、貴公が武器を使って戦う姿はまだ見たことがないのでな。野生解放をせずに戦ったら貴公がどれほどの強さなのか少しワクワクしているのだ」
「ふうちゃんはすっごく強いんだよ! さばんなちほーでもわたしたちが戦えなくなっても一人でセルリアンを追い払っちゃったんだもん!」
「まあ確かに最後まで戦っていたのは私だったがお前が出てこなければシマウマを助けられなかったのは感謝しているぞ? あの轟竜もどきを前に飛び出てこられる勇気は大したものだと思うがな」
「えへへー」
ごほんと咳をして話を遮る博士。っと、そんな話をしている場合ではなかったな。まずは目の前のセルリアンを倒してしまわないとな。
「それではお前ら、作戦を実行するのです!」
「うまくやるのですよ、勝ったら料理をまたご馳走するのです、……風翔龍が」
「……」
またあれを作らされるのかあれを。少なくともこいつらが食べたいだけではないのだろうか。いっそのことここから飛んで逃げて山麓のカフェでのんびりくつろいでやろうかこの鳥ども。
「グエッ!!」
「!! 向こうがしびれを切らしたみたいね、来るみたいよ……!」
さてと、まずは様子を見てみるか。私は武器を構えてセルリアンを見据えながら機をうかがう。
「よし、行くよふうちゃん! 囮は任せてね!」
「くれぐれも無茶はするなよ? 怪我でもされたら面倒なのだからな」
「それふうちゃんもだよー!」
「仲がいいんだねー、私とアライさんには負けるけどねー」
「?? フェネック?」
まあこれまでの行いを見ればサーバルの言うことに違いはないな。そしてそんな他愛ない話を皮切りに私達はセルリアンと同時に駆けだした。 戦闘開始だ……!
しばらくは間が空く投稿が増えそうです……畜生セルリアンにうちの上司をもぐもぐしてもらいたいぜ。次回はいつになるかはわかりませんが投稿をやめるつもりは毛頭ないので気長に待っていてください。さてセルリアンとの戦いがまたまた始まります!今回のセルリアンはみんな大好き?ペッコちゃんに登場していただきました。いやー初見はマジで苦労しました。大型呼ぶなんて反則でしょあれwペッコちゃん相手に風翔龍一行はどんな戦いをするのか。