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インドゾウと別れて暫く経った。私は半信半疑になりつつも川のあるという方向を二人のオトモを連れて歩き続けていた。水分を補給したとはいえ、やはり体には応えるな……。
「んー、水の音聞こえてこないねえ……」
「まだ聞こえぬか……あれからどれほど歩いたか分からんな」
未だにサーバルは水の音を耳にしてはいない。そもそも川というのは大きいのか小さいのかも分からない。迂闊だったな、大きさを聞くことを忘れていた。次は言葉を尋ねる時はそういったことも忘れぬようにしないとだな。
「退屈……まだ着きそうにない? まあのんびりでもいいけど?」
「暢気なものだな貴様は……退屈なのは私も変わらんが」
「うー……早く川が見たいなあー」
「川を目指してるのかー?」
上から声が聞こえた。なんだ? 敵襲か!?
「そんな警戒しなくてもいいぞ、楽にしなー」
枝に宙ぶらりんの状態で目の前に声の主が姿を現す。見た目はこげ茶色の毛皮を身にまとっている。そして尾が私くらいは長い。
「よっと。私はフォッサ。サーバルとオセロットだね、うわさは聞いているよ、よろしく!」
二人に挨拶を済ませたフォッサは私へと近づいてしげしげと眺めてくる。またか、いや仕方ないことなのだがどうにも慣れぬ。
「見かけない顔だね……。あんたは何のフレンズなんだ? 鎧を着ているということはサイの仲間か?」
「さい? いや、私は風翔龍というのだが、そのサイも私のような鎧を着ているのか」
「あんたほどのごつごつしたものじゃないけどね。それにしても……なかなか強そうだな、あんた」
サーバルが会話に割って入ってくる。
「ふふん、ふうちゃんはすごいんだよ! セルリアンを一人で追い払っちゃうくらい強いの!」
「へえー、なかなかやるじゃない。一度手合わせしてみたいものだね」
「やめておけ。私は手加減できる自信が無い」
「へえ、言うじゃないか。ますます手合わせしたくなっちゃうね」
私としては無駄な体力を消耗したくないのでできるだけ戦いたくは無い。だが向こうのやる気を向上させてしまったようだ。このフレンズに私は弱いということにしておこう。いちいち手合わせを申し込まれると面倒だ。
「……いや、前言撤回しよう。私はフォッサ、貴様よりは弱い。一瞬で負けてしまうだろう」
「?? 弱いのか? サーバルがこう言っているのに?」
「みゃ!? そんなことないよ! ふうちゃんはもご……!」
「ああ、私は弱い」
「わ、わかった。君がそういうなら手合わせはやめるよ」
サーバルが余計なことを言わないように口をふさぎつつ彼女との戦闘を回避させるのに成功したようだな。まったく、純粋無垢すぎるのもどうかと思うぞサーバルよ。少しは空気というものを読めるようになれぬものか。
「ぷは! ひどいよー! ふうちゃん」
「私を疲労で倒れさせるつもりか? いざという時を考えて無駄な戦いは避けたほうがいい」
「サーバルは思ったことをよく口にする?」
今後もこういうことは起こるだろうな、彼女の性格上。早く空気の読めるいい子になってもらいたいものだ。成長を期待しているぞ私は。
そして私はフォッサという案内役を連れて川を目指す。フォッサ曰くインドゾウの話はあくまで彼女基準でそう遠くないとのことだ。どれだけ体力があるのだゾウという生き物は。それにゾウ基準で話されても困る。
「まったく、とんだ迷惑をこうむった」
「あはは、彼女にも悪気は無かったんだから許してあげてよ。それに、もうすぐ聞こえてくるはずだよ」
私達は耳を研ぎ澄ます。 草を揺らす風の音……しなる木の枝のきしむ音……そして、
「!! 水だ、水の音だ。まだ微かにだが聞こえる!」
「……ほんとだ! やったね、ふうちゃん! きっと川だよ!」
「ついに到着? また泳げる?」
それぞれが喜びを見せる。どれくらい歩いたのだろうか、しかしそんなことはもはやどうでもいい。自然と私は走り出していた。
「行くぞ! 歩くのも億劫だ、走っていくぞ!」
「私は木を伝っていく、走るの面倒だし?」
「わーい! まけないよー!」
水の音が大きくなっていく……! 先ほどの水場とは違う大きな音。これが川か!
ついに川へたどり着いた。私は目の前の光景を見て唖然とする。私の想像していたよりもはるかに大きい、なんと言う水の量だ。目を奪われてしまう。
「川を見るのは初めてかい? それともここまで大きなものを見たことは無かったのかな?」
「水が流れているところとは聞いていたが、これほどの量が流れているとは思わなかった。川は言葉以外は知っていたが、これほど大きな川は見たことはない」
こんな大きな川で水浴びをすればさぞかし気持ちがいいのだろうな。体を濡らしたくはないが飛び込みたい衝動に駆られてしまいそうだ。
しかし誰も周りにはいない。こんなにたくさんの水があるというのになんともったいない。
「ここで水浴びをするものはいないのか? 誰もいないように見えるが」
「いつもは穏やかなんだけどね。今の状態で水浴びをするフレンズなんてまずいないと思うよ。流れが速くて流されていってしまうだろうしね」
「風翔龍ちゃんは無謀なことが好きな子?」
確かによく見ると水の動きが速くなっている。水に手を浸けてみるとなお分かる。これでは水浴びどころではないな。フォッサの言うとおり水に飲み込まれてしまう。考えただけでも恐ろしい。それに決して無謀なことが好きなわけではない、まだ知識が足りていないだけだ。
「この川を渡れば次のちほーが見えてくると思うよ」
「え? これを泳いで渡るの? それはちょっと……」
「そこまで私はひどくないよサーバル。確かあっちに橋が架かってたと思うんだけど行ってみるかい?」
フォッサに連れられて橋なるものがあるという場所へと向かう。恐らく橋というものは泳いで渡らずに済むという代物なのだろう、何とも今の私達にはありがたい。もしそうであれば使わない手はない。
が、着いたはいいものの予想外のことが起きていたようだ。どうやら川の流れが速くなっているせいで橋が流れてしまって使い物にならなくなっている状態にあるという。他にもこの橋が架かっている場所は無いか聞くが広すぎて分からないという。まあ迂闊に動き回れば自分の縄張りの場所がわからなくなってしまうしな。
「昨日の大雨のせいかなあ……これじゃ渡れそうにないね」
「く、翼があれば……!」
「ふうちゃん、まだ飛べそうにない?」
「……だめだな、まるで飛べる気がしない」
サーバルが背中に向かって翼はえろーと叫んでいる。それで生えてくるのなら苦労はしない。一刻も早く図書館へ行きたいのだが川がこの状態では渡ることもままならない。何かいい手段は無いものか。立ちふさがった大きな問題に私は頭を悩ませる。唐突に浮かんだある案をポツリと言ってみる。
「……この橋を作ることはできないのか?」
「え? 橋を?」
「おおー! ふうちゃん橋を作れるの!?」
「橋を作る……か。やってみる価値はありそうだね」
言ってみるものだな。こうして私たちは満場一致で橋を造ることとなった、誰一人作り方など知らぬのだが。まあ泳がずに渡ることができれば形などはどうでもいいか。
私は流された橋の残骸を見る。ふむ、どうやら木でできていたようだな。形状は脚があってその脚の上に渡るための木を乗せて固定していたのか。つまりは流されないようにもっと強い橋を造る必要があるのか。
私はそれぞれにこのことを話す。内容はおのおの理解はできたようだな。これは楽しいことになりそうな予感がする。ククク、戦闘以外でこんなに気分が高ぶるのは初めてだ。
高ぶる気分を抑えつついよいよ私は皆と橋を造ることを開始した。
まさかの壊れた橋を新たに造ることになった風翔龍一行!果たして橋を作り上げることができるのか!
次回予期せぬ事態が!?