『もう20分経つのか…遅いな少年。』
いや、下位装備なら妥当か…?
まぁなんにせよ、難儀な面倒事持ち込んでくれたよなぁ、ジジイも。
ーーー『一応聞くが、何故俺を訪ねてきたんだ?』
『え、えとギルドマスターからの紹介を受けまして…』
『やっぱりジジイか…』
『あ、あの、伝言で戻る気はないかと言っていましたっ…。』
『帰ったら伝えといてくれ、もう死んでたって。』
『えぇ…』ーーー
本当に余計なことするよなぁ、あのジジイ。
それにしても上位あがりたての少年にティガレックスなんて狩れるかみんなも心配だろう?
確かにお兄さんも心配だ。
だが、ハンターってのは圧倒的な格上を越えなければ強くなんかなれないんだ。
もちろんセンスがなければ早死にするだけなんだけどな。
それでも、そのリスクを厭わず成長を望むのならば越えなければいけない壁だ。
死線を経験する。それこそがハンターとして一番の成長に繋がる。
ティガレックスを選んだ理由は他にもあるんだが…まぁ一番は少年に自信をつけさせるためだ。今まで他人に任せきりの狩りばかりしていた彼がたった一人で圧倒的な格上を狩猟する。
これほど自信がつくこともないだろう、なんせ相手は絶対強者だ。力を証明するにはうってつけだ。
『死んだら意味ないんだけどな…』
グルァアアアアアアアアア!!!!!
『ん?…オイオイ、少年は運もないのか…』
♦︎♦︎♦︎
『ハァ…ハァ…』
グルォオオオオオオオ!!!
閃光玉はもうない…もう20分も経つのか…攻撃してるはずなのになんでこんなに弱らないんだよ…!
ッ!!!また突進ッ!!!
グォオオオオオオオ!!!
ガキンッッッ
『ぐぅうゔッッ!!!』
ガードもそう何度も上手くはいかない…!!
受け身に回ったらダメだ、攻めなきゃ…!一瞬の隙も見逃すな、相手だって攻撃の直後は硬直があるはずだ!!
『ッッらァッッッ!!!』
グォオオオオオオオオオン!!!!!
よし!!!顔面に当たった!!!
この調子でヒット&アウェイを続ければ…!!
『狩れるッッ!!!』
ーーー『少年よ、大剣に限らず様々武器の立ち回りで共通するのはヒット&アウェイだ。攻めすぎたら隙を突かれるし、逃げすぎたらいつまで経っても狩れやしない。』
『はいっ!』
『んー、あと他には〜…ーーー
『うぉおおおおおおおおッッッ!!!』
また顔面ッ!!!次のタイミングで回避!!!
『よしっ!これならいけ…』
攻撃が、こない?
グルォオオオオオオオ!!!!!!
『ガァッッッ!?!!』
こいつ…タイミングを変えて…!!!?
まずい…!!突進が来る!!!
このままじゃ避けられない…!
やっぱり、無理だったのか…?
こんなやつに勝とうなんて傲慢だったのか…?
死ぬのかな、僕。
証明なんて、できなかったのかな。
最期に、会いたかったな。
ー『信じてるよ。』ー
『ってぇ!!!諦められる訳、ないだろうがぁああ!!!!!!』
ー『他には、ピンチをチャンスに変える力、それが一番戦局を変化させる。』ー
<狩技>
『っらぁあああああああああああああ!!!!』
ームーンブレイクー
グォオオオ!!?!!!
『来いよ…!!!僕は、前に進むッ!!!』
こんなとこで、やられてなんかやるものか。
諦めてやるものか。
前に、進むんだ。誰にも…
『邪魔なんか、させるのものかぁあああ!!!』
剣をしっかりと握って、信じてくれる人のために証明するんだ。
君を守れるって、証明するんだ!!!
グゥウォオオオオオオオオオオオオオ!!!!!
『ッ!!?』
なんだ!?血管が拡張して赤く…!?
怒り状態か…!!この状態になると攻撃力もスピードも跳ね上がるらしいけど…
『関係ないッ!!!』
それにこの状態は諸刃の剣みたいなものだ、血管が拡張された顔や前足の肉質は柔らかくなりダメージが通りやすくなる!
グォオオオオオオオオ!!!!
『当たるかッ!!!』
岩は避けれたけどその後は…前足を狙うか顔面か…。
思考してる場合じゃないな、攻撃は収まってない…!次は…飛びかかりッ!!!
<絶対回避【臨戦】>
溜めるんだ!!焦らず確実に!!
『尻尾、置いてけぇえええ!!!』
グォオオオオオオオオンンン!!!!!?
『やったぁ!!!切れた!!!』
これで尻尾の攻撃のリーチは短くなった!!あとはアレを用意しといて…
『っ!?マズイっ…ーグォオオオオオオオオオオオオオオオオー
轟音、音なんかじゃないだろ距離が大分空くほど吹っ飛ばされるほどの衝撃だ…!!
突進っ!?!早すぎるだろ!!!
ガードが間に合わ…
『ぐぁああッッッ!!!!!』
血が、流れ落ちる感触を、自分の命が流れ出ていく感覚を、痛みと共に感じる。
心音がとても早く脈打ち死を予感させてくる。
自分の無力さ、傲慢さを実感させてくる。
命を、身体全身で感じる。
だからこそ
『…ねない…死ねないんだ…こいよ。邪魔なんかさせない、僕は…』
グォオオオオオオオオオオオ!!!!!
そうだ、向かってこい。
今ここで、全ての力で相手をしてやる。
全身全霊で、
グォオオオッッ!?!!?
<シビレ罠>
『ハハっ…痺れるだろ…?』
溜めろ、力を。
入れろ、魂を。
あとは簡単だ、あいつに証明するんだ。
『うぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』
勝つのは自分だと。
グォオオオオオ…オォォン…
やった、やったぞ…
『やったぁああああああああああ!!!!!!!』
生きている、全身でその喜びを感じる!!!
僕は、やったんだ!!!
グルァアアアアアアアアア!!!!!
『え…?』
なんだ?「アレ」は…?
血肉に餓えた「アレ」を僕は知っている。
ギルドから耳にタコができるほど注意されたんだ、忘れやしない。
怒り喰らう、
『イビルジョー…?』
遭遇次第撤退しろと注意されたモンスターだ。
僕が狩ったティガレックスを貪りながら、次はお前だと言わんばかりの視線をこちらに向けている。
なんでだ、なんで足が動かない。負傷した訳でもないのに足がピクリとも動かない。
恐怖で動かないのを察するのに永遠とも思える時間がかかった。
『運も、ないんだなぁ…ハハっ…』
『ほんとそれな。』
銃砲が鳴り響いた。
え…?僕には神様のラッパのようにも聞こえたんだ。イビルジョーに手出しすらさせず何発もの銃弾がその身体を貫いた。ものの5、6分間、僕は指をくわえて見ているしかなかったけれどしっかりとその人の力を見せつけられた。
ギルドマスターから聞いた話は本当だと確信したんだ、彼はーーー
『まぁ、彼を訪ねれば間違いはないだろう。』
『ギルドマスターがそこまで言うとは…そんなにお強い方なのですか?』
『強いか?愚問だよ。彼は…』
『古龍すら単独で討伐した者だからね、ほっほほ。』ーーー
♦︎♦︎♦︎
『…ねーん?…しょうねーん!!!』
『は、はいっ!!』
呆然としていたのかはたまたティガレックスの咆哮にやられたのか全く何も聞こえなかった…。
『致命傷は〜…ないみたいだな、よく狩れたな!やったじゃねぇか!』
『え、えぇ…でも、乱入してきたイビルジョーには手も足も…』
『そりゃそうだろー?下手すりゃ燼滅刃より強いからなー、命があってよかった。』
そう微笑んでくれた。圧倒的な技量と力。それを実際に目の当たりにして、僕はこの人に憧れを抱いた。
『よっし、とりあえず剥ぎ取り終わらせて帰ろう!傍観するつもりがジョーなんて相手して疲れたし…』
『は、はい!!あの…』
『ん?なんだ?』
『せ、先生って呼んでもいいですか!!!?』
あ、あれーーー?返事がないぃい!!!やっぱり馴れ馴れしかったかな?!もう少し順序を踏んで…
『…ふっ、ぷふふ…す…』
『え…?』
『せ、先生て…ふふぉっ、あ、あぁすまんすまん!あんまりにも似合わないと思ってなブフォッ』
『そ、そんなことないですよ!!先生のアドバイスがあったから狩れたんですから!!』
『違うな、だって俺基本的なことそれっぽく言ってただけだもん。』
『え、だ、だって立ち回りとかアイテムとか…』
『ハンターならそれくらい基本的なことだろ?俺は少年自身の力とセンスを見たかっただけだ。』
そっか、
『じゃあ僕は…?』
そうなんだ、
『素晴らしい健闘だ。よくやったな。』
僕はこの人に、
『あ、ぁありがとうございますッ!!!』
証明できたんだ。
とりあえずティガレックス突破!!
キリュウ少年のお話はもう少し続きます。
構想的には15話〜20話くらいで完結させたいのですが、もしかしたらもう少し短くなるかもしれませんね。