お独り様のハンター生活   作:獅子脅

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成長はいつも無自覚的で。

さて、夜が明けたわけですよ奥さん。

いつもならもう少し遅く起きて、優雅に朝食を頂いて、華麗に出勤するところだが…

 

『おはようございまーす!!先生!!』

 

なんだあの少年は…何時だと思ってんだよ…お兄さん少年ほどフレッシュじゃないから朝弱いんだよ…。

 

『まぁ…悪夢で目覚めるよりゃマシか…。』

 

と、愚痴を零しつつも今日も今日とて愛用のヘビィボウガンを携え出掛けるんですよ。

 

♦︎♦︎♦︎

 

『あどゔぁいふ??』

 

いくら女将さんのメシが気に入ったからって口にものを入れて喋るんじゃないの、お兄さんめっしちゃうぞ。

 

『というか、また基本的なことだ。リオレウスは空の王者なんて呼ばれるだけあって空中にいる時間が長い。』

 

正直俺は一番嫌いなモンスターと言っても過言ではない。

 

『んぐっ…そ、それじゃ剣士はリーチ不足になっちゃいますね…。』

 

『そこで、だ。今回のクエストもアイテムをフル活用していけ。』

 

レウス相手に閃光玉ナシなんてやってられないからな。レウスが空を飛び続けてクエストの制限時間を過ぎて失敗なんて話もザラなくらいだ。

 

『なるほど、確かに閃光玉は有効ですね!!』

 

『まぁ、ティガレックスの時とほとんどやることは変わらない。アイテムを活用し、弱点を突き…』

 

『強さを証明する、ですね。』

 

あらま、言うようになったなぁ。

圧倒的な強者を目の前にして畏怖を覚えたはずなのにそんな顔をできる少年は大物になれるだろう。だが、それ故に危なげだ。

 

『先生?』

 

『あ、あぁ。早く食っちまえ、加工屋のおっちゃんのとこ行かなきゃ行けねぇんだから。』

 

ーーー『負けるわけにはいきませんから』ーーー

 

少年よ、俺たちハンターはモンスターと勝負をしてるわけじゃないんだぜ。

 

♦︎♦︎♦︎

 

『オウ!!よく来たな!注文の品出来てるぜ!!』

 

さっすが、おっちゃん。仕事が丁寧でしかも早い!そこに痺れる憧れちゃうよお兄さん。

 

『これが、僕の新しい大剣…!』

 

轟大剣【王虎】、めちゃくちゃ上物の大剣だ。

 

武器や防具なんて飾り、必要なのは相手の動きを見切る観察眼だけ。なんて言葉を残したG級ハンターがいたが、武器や防具を舐めてはいけない。

 

いい武器ならいい武器ほどモンスターを圧倒し、いい防具ならいい防具ほどモンスターの攻撃を耐え、モンスターの素材を用いた装飾品を装着することで【スキル】という様々な不思議な能力を発動する。

 

何故そういった能力が発動するのかは具体的には解明されていない。

伝承なんかではモンスターの素材用いた武具には竜や獣の魂が宿り、狩人達に恵みをもたらすとされているが、諸説ある。

 

『素振りしてみろ、少年。』

 

『は、はい!』

 

空を切る音がまるで轟竜の咆哮のような振動になって伝わってきやがる…。

 

『これは…今まで使ってた大剣とは格が違いますね…。』

 

そりゃそうだろう、下位の武骨包丁とは差があって当然だ。素振りだけでも格の差は如実に現れるだろう。

 

『武器に信頼を置きすぎるなよ?油断したら元も子もないからな。』

 

『はい!気を付けます!』

 

今回のクエスト、このクエストで少年が二つ名持ちに挑めるかどうかがわかると言ってもいい。

ハンターとして一人前になれるかどうかの相手だからな。

大体二つ名持ちというのは並みのハンターが挑めるものではない、通常の個体とは異なる性質を持ち、戦闘面においても一線を画す存在だ。

 

その危険さ故に、基本的には龍歴院からの許可がなければクエストを受けることすらままならない、センスと根性とあと諸々の才能がなければ絶対に届かない存在なんだ。

 

キリュウ少年は上位に上がりたて、しかも武器も防具も下位のものだったのにも関わらず、単身で見事轟竜の狩猟を成功させた。その功績は並みのものじゃない、龍歴院の目にも止まるだろう。正直なところ俺は8割方失敗を見越していた。残りの2割は途中で投げ出すと思っていたが…

 

 

『先生?どうしました?』

 

『…なんでもねぇよー、ほれほれ準備終わらせたらさっさと出発すんぞー。』

 

『?は、はい?』

 

♦︎♦︎♦︎

 

『着きましたね…!』

 

んだよテツカブラみてぇな顔してないじゃねぇか!弄れねぇじゃねぇか!!

 

『んじゃま、サクッとやってこい。』

 

『さ、サクッとなんてやれませんよ…。』

 

『昨日よりも強くなってるだろ?ここで負けるようならなーんも手に入んねぇぞ?』

 

『わ、わかってますよ!やってみせます!!』

 

よしっ、いい返事だ。

 

♦︎♦︎♦︎

 

ヴォオオオオオオオオオ!!!!

 

『ここで暴れてるのは君だね、悪いけど狩らせてもらうよ!!』

 

突進が来る…!落ち着いて、タイミングを見計らって…

 

『跳ぶッ!!!』

 

な、慣れてないエリアルスタイルだけどちゃんと跳べた!後は…

 

『振り下ろす!!!』

 

ヴォオオオオオ!!!?

 

すごい手応えだ…!武器が変わっただけでこんなに…!?

 

ヴォオオオオ!!!!!

 

『飛んだな…!!喰らえェ!!!』

 

ヴォオ!!!??!

 

やっぱりレウスには閃光玉が有効的だ!!

後は頭を踏み付けて…

 

『振り下ろし続けるだけ!!』

 

ヴォオオオ…!!!!?

 

閃光玉の効果が切れたっ…ヒット&アウェイを忘れずに…責めすぎず逃げすぎず…

 

ヴォオオオオオオ!!!!!!

 

ブレスが来るッ!

 

『当たらないよ!!』

 

空の王者、か。

小さい頃、リオレウスごっこよくしたなぁ。ハンターになったばかりの時もリオレウスを狩ることが夢だった。

 

でも今は、夢じゃない。

もっと上に行かなくちゃいけないんだ。

 

ヴォオオオオオオ!!!!

 

今僕は、ここにいるんだから!!

 

『落ちろォ!!!!!』

 

《ムーンブレイク》

 

ヴゥオオオオオオオオオオオ!!?!?!!

 

跳躍するんだ、自分の力の全てを込めて、

 

『叩き割るッ!!!』

 

ヴォオオオン…!??!!!!

 

『君を越えて行く!!僕の全てを以って!!!』

 

♦︎♦︎♦︎

 

『…天才だったか、怖いねぇ全く。』

 

双眼鏡はこういう時ほんっと便利だな、普段は全く使わねぇけど。

 

少年はさっきから被弾をほとんどしていない、見切ってるかのように攻撃し続けている…ずっと俺のターンみたいな状態だ。

リオレウスは下位で狩り慣れていたのか?いや、いくら慣れているからといって一筋縄でいくようなモンスターじゃない。

 

圧倒的なセンス…いや意志の力か。

ティガレックスを狩猟したことによる自信を持つきっかけ、越えなければならない壁の高さを認識し、目の前の敵を通過点として全力で越えようとする意志の力。

 

『先生でいる意味なくね…?俺…?』

 

核心を突けた気がするな…ん?

 

グウゥアアアアアアアア!!!??

 

『また乱入か…いや、ハンターも…?』

 

このフィールドに来ているハンターは俺と少年だけのはずだろう…?

ギルドの調査隊か?それなら受付嬢のお姉さんから報告があるはず…。

 

『まさか…?』

 

♦︎♦︎♦︎

 

グウゥアアアア…

 

『…。』

 

『いやー!やりますねー!ラージャン相手にお見事お見事!!』

 

『…!』

 

桐花・真一式に…ギルドナイトの双剣…それも特命を帯びた者のみが扱いが許された武器…。

やはりギルドの人間か…?

 

『ッ!?!!?』

 

キィイイイイイン!!!!!

 

いきなり斬りかかってきやがった…!?

 

『手厚いご挨拶だなぁ…!!』

 

『…』

 

『無口だな。あんた、何者だ?』

 

『…誰でもいい。…試しておくか。』

 

『ん?ーーーキィインン!!!

 

ふっ、ざけんなぁ…!!

早え…!!この野郎本気で…!!

こちとらヘビィボウガンだぞ!対人に効果なんて発揮されねぇ!いや対人に発揮する必要性なんて元々ねぇっつーの!!

 

『…早いな、そして異常な事態であるというのに冷静を欠かない判断力…流石は歴戦の手練れといったところか。』

 

『いきなり喋るじゃないの…知られてるとは光栄だが、その対人戦における実力の高さ…やっぱりギルドナイトだったりするのか?暗殺のスペシャリストなんて噂もあるくらいだしーーー

 

キィインッッ!!!

 

『あんな、俗物達と一緒にするなぁッ!!!』

 

…太刀筋が荒くなったな、動揺している証拠だ。初めて敵意以外の感情を露わにした…本音の言葉か…。

 

『っ…そうかい、そいつは悪かった…ってなんで謝んなきゃいけねぇんだ!!』

 

『ぐぅッ…!!』

 

『ヘビィボウガンでも殴られたら結構痛えだろ…?モンスターの頭にぶち当てればスタンだって取れるんだぜ?』

 

『…』

 

クエストを正式に受けたハンターではないことは確かだ。遺跡平原のクエストはリオレウスの狩猟だけだった、ラージャンの狩猟なんてクエストはギルドになかったし、先ほどの口ぶりからギルドの調査隊の人間でもない…消去法で行けば、

 

『密猟者か、あんた。』

 

『…答える必要はないな。』

 

『つれないねぇ、でもそうなら放っておく訳にはいかないなぁ。』

 

『…』

 

『人間相手なんざ御免だがな…大人しく投降する気はないんだろ?』

 

武器を構えたことが、無言の了承、か。

ったく、最近ついてねぇわ…。

 

ヴゥオオオオオオオオオオ!!!!!

 

『『!?』』

 

『あ、あれ!?先生?!それと…?』

 

少年よ、なんてタイミングだよ…。

 

『…目的は達した…私は失礼する。』

 

『はぁん!?ふざけんな!!ここまで来て逃がすかよ!!!』

 

ヴゥオオオオオオオオ!!!!!

 

『せ、先生!!危ない!!』

 

『チッ…!!』

 

『…また会おう、歴戦の手練れよ。』

 

また…?どういうことだ?

 

ヴゥオオオオオオオオオオ!!!

 

『クソッ…少年!さっさと片付けるんだ!!』

 

『は、はい!!』

 

♦︎♦︎♦︎

 

『終わりました…!』

 

『あ、あぁ。よくやったな、少年。』

 

『大丈夫ですか?先生?先ほどの人は…?』

 

『多分密猟者だ、多分な。』

 

ただの密猟者。じゃないだろうな…あの双剣、ギルドナイトの証…お姉さんに報告しとかねぇとなぁ。

 

『密猟者、ですか…物騒ですね…。』

 

『とりあえず狩猟お疲れさんっ、難なくって感じだったな。』

 

『そんなことないですよ!結構ギリギリでした…。』

 

謙虚なことは良いことだぞー、少年よ。だが謙虚すぎるのも困りもんだけどな。

 

『んじゃ、とりあえず帰るか。ギルドに報告もあるしな。』

 

『はい!』

 

これからまた面倒なことになりそうだな…。

なんでこうも面倒事が立て続けに起きるのかねぇ。巻き込まれ体質なのかな…?




更新が遅くなってしまいましたがやっと執筆できました…!
今後の展開を考えた結果すごく長くなりそうだなぁと思いながらも尽力致しますのでこれからもよろしくお願い致します!

ニンテンドースイッチ版MHXX発売決定おめでとうございます!!
最近操虫棍にハマってます。

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