全くしっかりとして欲しいものだ。
首なしライダーの隼さんを見ただけで倒れるなんて情けない。
大体、非科学的とか言っているがリニスのような使い魔にしても魔導書にしても非科学、いや非現実的だろ。
「トール、彼女をどうするつもりです?」
非現実的一号リニスが話しかけて来た。
「ああ、取り敢えず縛って、今日は日本の怪奇現象に慣れてもらおう。 今からホラー系DVD借りてくるけど何か見たいものあるか?」
「韓国ドラマを頼みます。 この前のシリーズの続きが出たみたいなので」
「了解」
……最近リニスと母さんは韓国ドラマに嵌っている。
正直似たような展開ばかりだが飽きないのだろうか?
それを言ったらアニメや漫画も一緒だと怒られたが。
父さんはニュースと特撮を見ている。
因みに俺は男性アイドルユニット?が無人島を開拓しているの見ている。
気絶している非現実的二号をリニスのバインドとガムテープで縛りリビングのソファーに括りつけておく。
帰ったら和製ホラー映画祭りだ。
昔はリニスに見せたら泣きながら漏らしたっけ?
見た目年上の女性が泣きながら漏らしたのを見てから俺の性癖は歪んだのかも知れない。
これもリニスが悪い。 責任はとってもらおう。
まぁ、一部の幽霊達が巫山戯て映画の通りで動いたから仕方がないけど。
財布を持って外に出ると隼さんがまだ居た。
因みになぜ首なしライダーの事を隼さんと呼ぶのかと言うとバイクが隼だったからとしか言い様がない。
かなり優しい人?で昔道に迷ったら後ろに乗せて家まで送ってくれた。
「隼さんどうしたんです?」
俺と隼さんの会話は大抵メールだ。
頭が無いのに見ること聞くことは出来るが、話すことは出来ないのでこの方法をとっている。
『窓からこっち見てた子大丈夫か?』
「大丈夫だと思います。 今は気絶してますが……今晩が楽しみです」
『また、ホラー映画か。 お前は呼び易いんだから余り無茶するなよ』
「ああ、でも彼女は魔導書と言って俺のモノになったのでこれから慣れてもらわないと……うん仕方がないですよね」
『ぜってー楽しんでるだろ。 顔がにやけてんぞ』
「気のせいです。 まぁ、そういう訳でTutoyaまで送ってください」
隼さんの返事を待つ前に後ろに座る。
これで俺の姿は怪異に飲まれた為に一般人には見られない。
隼さんも慣れているのかそのまま走ってくれた。
TutoyaでDVDを借りているとクラスメイトの小川が話しかけて来た。
「おいっすー川崎。 珍しいなこの時間に出かけているなんて」
「ああ、小川。 少し野暮ようでな。 ……お前はどうしたんだ?」
「ああ、返済期限が今日までだったのを忘れてたから部活の帰りに……ちょっと待て」
小川が俺の持っているDVDをみて顔色を悪くしている。
……ああ、ホラー映画を持っているからか。
「ああ、少し同居人が増えるかも知れないから耐性を付けてもらおうと思ってな」
「……このネクロマンサーめ。 お前のそれで何人がトラウマを植えつけられたと思っているんだ!」
……ああ、小学校の時に修学旅行先で肝試しして俺の班員とお化け役の先生が全滅したっけ?
後は映画館でも2Dなのに3Dになってみんなで盛り上がったな。
廃病院とかヤバイな。 幽霊と浮浪者とDQNが溜まっていることあるから……DQN共に絡まれた時に看護師の幽霊達がDQN共の脚を掴んで助けてくれたりしたが。
……俺以外の全員が腰を抜かした。
……後日DQN共が謝ってきた。 どうやら寝ている時に押さえつけられてひたすら採血される夢や麻酔なしの手術の夢を見て気が狂いそうだったみたいだ。
不摂生な生活直したら見なくなると教えたら喜んでいた。
看護師の幽霊達はDQN達の事が心配だったから体に気を付けてとメッセージを送ったのだった。
「そんなに怖がるなよ。 彼らは基本構ってちゃんなんだ。 それに応えるか応えないかの違いだ。 俺たちは死者の上に立って生きていることを忘れなきゃ何もしてこないどころか助けてくれる」
「……そこまで割り切れねーよ」
……きっとそれが普通なんだろうな。
小川はどこかやりきれない顔をしているが、俺の言いたいこともわかるのだろう。
小川には小川の爺さんが後ろに居て守っているのだから。
爺さんが死ぬのが分かっていたけど怖くて逃げ出して結局気がついた時には葬式だったと言っていた。
それから暫くの間は怒った爺さんの幽霊や夢を見るから相談に来たわけだ。
小川の爺さんは怒っていたのでは無く心配していただけだった。
最近孫が来てくれないので何か事件や事故に巻き込まれたのではと心配だったらしい。
だから、暫くの間心配して聞いていたのだが自分の声が聞こえていない事に苛立っていた。
偶然見えるタイミングがそういった場面だったので勘違いしたみたいだ。
後は俺が仲介して解決。小川の爺さんは、小川が結婚するまで見守ると言っていた。
「俺もお前みたいに見えたら違ったのかな?」
小川がぼそりとこぼした一声に俺は笑うしかなかった。
「はは、見えなくて良いんだ。 見えたら大変だぞ。 こっちのプライバシーは無いし、下手すりゃ夜中は運動会で睡眠不足になる。 おちおちソロプレイも出来ない」
「……最後に下ネタ持ってくんなよ。 でもそうだよな。 きっと俺は見れても見ないふりするだろうしな。 おっと悪かったな引き止めちまって」
「気にするな。 帰りも隼さんが送ってくれるし問題ない」
「都市伝説をタクシー代わりにするのは止めろよ! この前取材が来て聞かれたぞ」
「分かった。 隼さん達に認知度が上がったよ、と言っておく」
元々この地は、人外魔境の地だ。今更都市伝説が増えたところで問題あるまい。
こうして隼さんに送ってもらって家に帰った。
隼さんはこれからジェットババアと峠攻めに行くらしい。
ものすごいスピードで走り去っていった。
家に入ると非現実的二号が椅子の上で暴れていた。
五月蝿かったのかリニスによって口枷をされており叫んでいるため涎がたれている姿は非常に興奮する。
ああ、これからホラー見せたらどんな反応するのか楽しみだ。
その前に夕食を楽しみネコ状態のリニスとお風呂に入った。
そしてお楽しみの時間になった。
俺はDVDをデッキにセットし次いでビデオカメラを非現実的二号に向けて撮影準備しておく。
リニスはその間に外に声が漏れないように結界を張って貰い。
俺とリニスは部屋に戻った。
暫くするとリビングから悲鳴が聞こえて来た。
『や、やめろ! 離せ! いやー、誰かが足持ってる。 画面から人が人が! なんで貴様は裸なんだー! 踊るな、その股間にあるものをしまえー! 近づけるな! あああ……あはははははは』
リビングから聞こえてくる声をBGMにしてリニスのブラッシングを続ける。
膝の上のリニスは昔のことを思いだしたのか微かに震えている。
そんなに怖いのなら魔導書に戻れば良いのに律儀に見てるから……皆喜んでいるじゃないか。
しかし、恐怖が限界まで達すると気を失うか笑うかのどちらかだな。
それからDVDが終わるのを待たずして気を失ったと女性の幽霊が教えてくれた。
久しぶりに人に認識されたからか満足して成仏していった。
リニスと共にリビングに入るとそこには椅子にもたれ掛かって気絶している非現実的二号の姿とそれを見て慌てている幽霊三体程いた。
内一体は裸の太った中年オヤジがピンクのブラとガーターベルトをしており非常に気持ち悪かった。
後で、死神に処分するように頼んでおこう。
……なんで魔導書なのに液体があるんだろうな。 椅子と床がびしょびしょだ。
って、ヤバイ、早く片付けないと両親が帰ってきたら怒られる。
全くなんて面倒な。 リニスに非現実的二号を風呂に入れてもらい俺は掃除だな。
「リニスー。これ洗っておいてくれ。 俺は掃除する。 あと皆さんありがとうございます。 成仏して下さい」
「分かりました。 ……私の時はトールが洗ったんですよね?」
「ああ、猫になったから洗いやすかったぞ。 それに当時だと俺じゃ人間形態を運ぶのは無理だ」
「分かりました」
リニスがそのまま非現実的二号を俵持ちして風呂場に向かっていった。
幽霊達はこちらを伺うようにしている。
『『……あの子大丈夫? やりすぎたかな?』』
「イヤイヤ、大丈夫ですよ。 これからもっと経験することになりますから先ずは初級レベルで……下手すりゃもっとキツいのが居ますから」
『あのー、 私たち成仏する方法がわからないのです』
幽霊のうち一体が困った顔をして成仏方法を聞いてきた。
成仏といっても様々な方法がある。
未練もなく消える人、 死神に魂を持っていかれる人、 後は案内人に連れて行かれる人もいる。
「あー未練が無いのでしたら案内してくれる神様に連絡しましょうか? 因みに死んだ場所はどちらになります?」
『都内の病院です』
『私は山の中で』
『私はプレイ中に突き飛ばされて電車に轢かれて』
幽霊たちは何か驚いた顔をしている。
まぁ、神様と知り合いの時点で可笑しい人だよな。
……俺が幽霊とか見えるようになってから契約を結んだ神様の一柱だ。
目を閉じて集中して祈る。
すると直ぐに反応があった。
目を開くとそこには蛙の姿をした神様がいた。
この方の名前はカサゴツトの神、死者の魂をあの世に案内してくる神様だ。
本来は家で死んだ人間を導いてくれるのだが、今回は俺の家を起点にして頼んだ。
「何時も呼び出して申し訳ありません。 この三人を案内してあげて下さい」
カサゴツトの神は一度頷くと幽霊の三人を導いて行った。
さて、さっさと掃除して寝よう。
掃除が終わった頃にリニス達が戻ってきた。
リニスは疲れた表情で非現実的二号はまだ、顔色が悪い。
「……あ、主。 これが日常的にあるのですか?」
……こんなのが日常的にあってたまるか。
そもそもこの地域で人はそんなに死んでいない。
代わりに妖怪とか都市伝説が闊歩していることがあるだけだ。
偶に悪霊化しているのもいるが、本当に偶にだ。
大体は死神が掃除してくれる。 その死神には缶コーヒーを奢っている。
「いや、そんなに幽霊は出ない。 この地域の幽霊は大体成仏していると思う……ただ、俺も全てが見えているわけでは無いからな」
「……と、ところで夕方に見たのは一体?」
「あれは、首なしライダーの隼さん。 自分の首を探して旅をしているナイスガイだ。 今日はジェットババアと峠攻めするから挨拶に来たらしい」
「で、デタラメな」
「イヤイヤ。 俺からすればお前等も似たようなもんだぞ」
全く失礼な。 結局のところ普通の人に扱えない力を持っている時点でデタラメなのだ。
で、再度聞いておいた方がいいな。
「さて、分かったと思うが俺の所有物になると言う事は怪奇現象に遭遇しやすいと言う事だが、遣っていけそうか?」
「が、頑張ります」
……ふ、不安だ。
ところで彼女は何が出来るのだろう?
「ところで、お前は何が出来るんだ?」
……動きが止まったと思ったら冷や汗を掻き出した。
「……主のサポートが出来ます」
「イラン。 リニスが全てやってくれている。 どんな魔法が使えるのか教えろ」
落ち込んだ様子でこちらを見てくる……まさか。
「もしかして何も出来ないのか?」
「い、いえ。 私はユニゾンデバイスを言いまして主とユニゾンすることで主の魔法を効率的に使える様になります」
「他」
「飛べます」
「薬をやっているみたいにか?」
「違います。 実際に空を飛ぶ事が出来ます。 ……ただ」
「ただ?」
「前の管理人格の魔法の情報の殆どが前主の八神はやてに移されていますので私には広域殲滅魔法と誘導弾しかありません。 なので夜天の書に魔法を書き込んで頂ければ主に合わせた形に直します」
……うっわー役にたたねー。
現状俺の周りで魔法を使えるのはリニスだけだ。
俺はバインドと身体強化位しか使えない。
……現代日本で使い物にならない。
「ちっ」
「舌打ちされた! 初めての主に舌打ちされた!」
「リニス頼んだ。 悪霊は無理でも妖怪になら何とかなるかも知れないからお前の知っている魔法を何時でもいいから入れておいてくれ」
「分かりました」
「む、無視ですか! 主、私は無視ですか!」
リニスは夜天の書に同情した顔をしている。
と、言うかこいつは主は俺だが、前の主を優先しようとしている時点で扱いがこうなることを理解してなかったのだろうか。
利用されるから利用させろと思ったが、基本は弄って遊ぶぐらいと思っておこう。
「リニスには悪いが出来たら探知系を入れて欲しい。 一刻も早く前主はやての様子が知りたい」
「分かりました。 でも、バレないようにしてくださいね。 もし何かあったらそれこそこの地域で百鬼夜行が行われるかも知れませんから」
「承知した」
リニスと話しているが、そろそろ非現実的二号が言いにくくなってきた。
適当に名前をつけよう。
「ところで、前の主がお前につけた名前はなんだ?」
「リインフォースです。 最近になり蒼天の書と言うものに私の情報を写したみたいなのでそこから情報を引き出すことは出来ません。 蒼天の書の名前はリインフォース・ツヴァイです」
うん? 家族なのにツヴァイね。 ああ、一郎、次郎みたいなもんか。
……ツヴァイかー暗殺者や重力勇者にいそうだ。
ツヴァイはドイツ語で2だったよな。
リインフォースなんて洒落た名前よく考えついたな。
なら0を表すのは……ヌルか。
一応女性だしヌルはかわいそうだよな。
リインフォース・ヌル……ヌルヌルしそうだ。
「うーん、ヌルハチ?」
「もしかして、私の名前ですか?」
「ああ、そろそろ考えようと思ってな。 ……リインフォース・ヌルって女性に使うのに抵抗があるな」
「で、ヌルハチですか? やめてください。 訴えますよ」
「うーん、 保留だな。 今日は疲れたから寝る。 リニス寝るぞ」
「分かりました。 こちらも作業が終わり次第行きます」
「二人ともお休み」
「「おやすみなさいませ」」
二人と分かれて部屋に戻ってそのまま寝た。
明日は、本探しを終わらせてゆっくりしたい。
ここまで読んで頂きありがとうございました。
引き続き夜天の書の管理人格の名前を募集したいと思います。
次の話で名前を決めたいと思います。
次回も出来るだけ早く書けるように頑張ります。