全く俺のことを陰陽師か何かと勘違いしている奴らがいる。
今日は日曜日、何時もなら家でゲームしているか一日寝て過ごしているのに、父さんに隣町の洋館に幽霊が出て、工事ができないからどうにかしてくれ頼まれた。
正確には父さんの取引先らしいが、何時も迷惑をかけている手前断ることが出来なかった。
目的の場所まで歩くのが面倒なのと護衛を兼ねて隼さんに同行してもらう。
後は、余り頼まないが管狐の茜にも同行してもらった。
茜は管狐と言っても空狐と呼ばれる上位の妖狐だ。
妖力だけなら妖狐の中でも最上位だ。
俺は幼少の頃片輪車に攫われた事があったらしい。その時に助けてくれたのが鈴鹿御前であり、その後その紹介で空狐の茜が俺を守護してくれている。
『全く、自分から実体化している幽霊に会いにいくなんて馬鹿げているぜ』
「分かっています。 でも、父さんに頼まれたら断ることが出来ませんよ」
『そりゃー分かるが……でも、気をつけろよ? 普通の人間にも見えるってことは怨霊になっている可能性もあるんだぞ』
『……五月蝿いぞ。 妾が居るのだ。 主に怪我などさせるものか。 さっさと現場に行け若造』
『いや、姉御が居るなら安全だが、こいつが一人で行動した時にだな』
『その為に管狐になっておる。 大体、空渡りぐらい出来んと空狐に成れんわ』
……ああー、なんと言うか過保護だな。
それが嬉しくもあり恥ずかしくもある。
因みに空渡りとは簡単に言えば空間を捻じ曲げて移動する術だ。
吸血鬼とかもよくやる。
最終的に隼さんが茜に脅されて飛ばしたから思ったより早く着いた。
目的の場所には洋館が立っており六年前にここの長女アリサ・ローウェルが殺された後その家族も後を追うように自殺したと言われている。
その夫婦に子供が出来なかった為、孤児院から引き取り溺愛していたらしい。
夫婦が死んでから夜になると娘を探す声が聞こえてきたり、 殺された恨みに対する怒号が響き渡るそうだ。
何の因果か俺の二年上の先輩に当たるらしい。
夜になったので茜に憑依してもらう、これで霊的な加護は完璧だ。
……まぁ、マイナス面で俺に狐耳が生える事だが、人に見られなかったら問題ない。
洋館の玄関扉に触ると自然に開いた。
これも茜の力によるものだ。
奥に進むと誰も居ないはずの家に灯りがついている部屋があった。
そこから男の呻き声が聞こえる。
俺は迷わずその部屋に入った。
その部屋は殺された女の子 アリサ・ローウェルの部屋に違いない。
子供用のベッドに可愛らしい壁紙、埃まみれの犬のぬいぐるみ、 そして蹲りながら一人泣く男。
恐らく件の幽霊だ。
男は俺の気配に気がついたのかゆっくりとこちらを見てくる。
その体躯は痩せぼそり憔悴している。
『どなたか知りませんが、娘を知りませんか? 金髪碧眼の可愛い子なんです。 歳は10歳 名前はアリサ、 アリサ・ローウェルと言うんです』
そこにいるのは娘の死を受け入れる事が出来ずに探し続けていたであろう父親の姿だ。
……真実を告げるのが正しいとは限らない。
それにもうひとつの噂によると死んでいるのを理解しているようにも思える。
「……あなたの娘さんは、もう死んでいます」
『……か』
「何?」
『お前が殺したのか! まだ、十歳だったんだぞ。 頭はよく可愛かったが、人付き合いがちょっと苦手で優しい子だった。 娘はただ友達を欲しがっていただけだ! それなのに薬を使い、汚し、殺す! どこまで畜生なのだ!』
言葉が無茶苦茶だったが、言いたいことはわかる。
それは、娘を汚され無残にも殺された父の嘆きであり、怒り。
その思念が館中に広まりラップ音が聞こえてくる。
ラップ音が収まったところで散らばっていたガラス片などが襲いかかって来た。
だが、その全ては俺に届くことはない。
茜の加護によって守られているからだ。
『何をした? 何故死なない! なんであの子が死んでお前が生きているんだ!』
「……娘さんの仇も既に死んでいます。 俺はただあなたの話を聞きに来ただけだ」
暫くポルターガイスト現象で俺を殺そうとしてきたが、効果がないのが分かると虚ろな目をしたままこちらを見てきた。
『今更、なんだと言うのだ。 私はアリサがここに帰ってくるまで動くつもりはない』
「分かりました。 なら、アリサちゃんは俺が探しましょう」
『……どこにいるのか分かるのか? どうやって探すつもりだ』
「写真をお借りしていいですか? 幸いそう言った情報網はあるので大丈夫ですよ」
『任せて良いのか?』
「ええ」
『頼む、 アリサをアリサを探してくれ。 この身は死んで対価を支払えないが頼む』
目の前に女性の幽霊が現れ一枚の写真を手渡された。
写真には犬のヌイグルミを嬉しそうに抱いている少女の姿があった。
「お預かりします。 ……それから一つ言っておきます。 これ以上人を襲うのはやめてくださいね」
『これ以上暴れるようなら妾がその魂消滅させてやる』
『分かった。 もう、人は襲わないからアリサを頼む。 ……アリサを』
そう囁くようにして男は部屋の片隅に移動し眠りについた。
女性の幽霊も男に寄り添い眠っている。
面倒な事になりそうだが、さっさと見つけるか。
洋館を出たところに隼さんが待っていてくれたので後ろに乗り、そのままアリサ・ローウェルの墓に向かった。
……墓は掃除するものが居ない為か荒れ放題だ。
墓地にいる幽霊たちにアリサ・ローウェルの居場所を聞くがやはりここには来ていないらしい。
と、なると殺された場所か……話では廃屋と聞いているがどこかまでは聞いていない。
恐らく父さんも知らないだろう。
……魂だけを探すなら清十郎さんの幽霊仲間や俺の怪異仲間を集めて一斉に探してもらうか。
一応自分でも探すなら過去の新聞記事とネットだな。
新聞は学校の図書館で四紙とってあるからそれで……後は、ネットで心霊スポットと廃墟スポットを調べるか。
家に帰り父さんに今日のことを報告しておき、一応廃屋の場所を調べるように頼んでおいた。
隼さんはこの辺りにいる怪異達に探すように頼んでくれていたし、何とかなるか。
今日は放課後まで何事もなく済んだ。
担任と司書の岡村さんに下校時刻になっても緊急で調べたいものがあるから居残る許可をもらった。
担任は『早く帰ってくれよ。 この前は人体模型がマット運動していたとか、人がいないのに音楽室からピアノの音が聞こえてきて、それに合わせて二宮金次郎像が歌い人体模型が踊っていたとか聞いていたんだからな。 今日の当番俺なんだから頼むぞ!』と、担任に泣きつかれた。
まぁ、先に清十郎爺さんに写真を見せて頼んでおこうと思い保管庫に行くと既にシャドームーンさんが居た。
「お疲れ様、月影さん。 清十郎さんはどうした?」
「あっ、お疲れ様。 清十郎さんは書架の上の方の本を見てくれているよ。 あと、私は月村だよ。 ……そんなに覚えにくいならすずかで良いよ。 鈴鹿御前さんと同じなら覚えやすいでしょ?」
確かに覚えやすいが、……嫉妬の的になるのでお断りしよう。
「……ああ、悪い。 それから苗字は頑張って覚えるから名前は勘弁だ。 もし、名前で呼ぶようになったら……嫉妬の嵐だ。 人間怖い。 それから暫く用事が出来たから整理の方は良いよ。 岡村さんに許可をもらっている」
「ええっ! そ、そうなの?」
「ああ」
シャドームーンさんは驚いた後、残念そうな顔をしている。
……もしかして彼女は俺のことを好きなのだろうかと勘違いしてしまいそうだ。
もし、そうだとしても今は返事に困る。
『ほほほ、徹ちゃんも来たのか。 いやー賑やかになっていいの』
嬉しそうに話しかけてくる爺さんには悪いが、今は協力してもらおう。
「清十郎さんに頼みがあります」
『ほー、珍しいの。 ……碌でもないことじゃろ。 その目を見たら分かる』
「ええ、 本当に胸糞悪い話です。 実は……」
昨日あった事を爺さんに話して協力してくれるように頼んだ。
爺さんも居た堪れない表情をしながら、協力を承諾してくれた。
「これが、その少女の写真です」
爺さんに写真を見せたときシャドームーンさんが爺さんより先に反応した。
……しまった! 彼女が、居る前であんな話をしてしまった。
「こ、これって。 アリサちゃん?」
「な、何? 月影さん、この子を知っているのか?」
「う、うん。 私の友達だよ。 アリサ・バニングスでしょ?」
シャドームーンさんは青い顔して答えてくれたが、 別人の名前だ。
「いや、違う。 彼女の名前はアリサ・ローウェルだ」
「えっ、だって。 か、川崎くんの何時もの呼び間違いじゃ無いの?」
「お前の友達は生きているだろ。 ……最近になり何度かお前と歩いているのを見たが生きている。 それとも殺したいのか」
「ち、違うよ。 ただ、本当にソックリで……生き写しだよ」
……全く信用されてない。
まぁ、今回は俺の自業自得だが。
写真を裏返しそこに書かれた名前を見せる。
「ここに書いてあるだろ? アリサ・ローウェルって」
「ほ、本当だ。 よ、良かったと言って良いのかな?」
「さぁな。 だが、似ているだけの他人より近くの友達を大切に思うのは間違ってはいないと思う」
確かアリサ・バニシングと言えば、かなり大企業のお嬢様と聞いたことがある。
ありえないと思うが、もしもの事があるから手札は増やしたほうがいいか。
さっさと動いたほうが良いな。
「清十郎さん、 取り越し苦労なら良いんですが、もしもの事があります。 彼女を探してください。 俺は少々この事件について調べます」
『わ、分かった。 じゃが、気をつけるんじゃぞ』
「はい。 月影さんは、今日はもう帰ったほうが良い」
「あ、あの。 私も手伝うよ。 このアリサちゃんが殺された場所を探したら良いんでしょ?」
月影さんの申し出はありがたいが、 余り巻き込みたくない。
「どうやって探す気だ。 歩いてなんて言うなよ。 それに殺されたところにいるとは限らない」
「私の家もこう言った事の独自の情報網はあるよ」
月影さん家の情報網か。
確かに地元ではかなりの力を持っているらしいが、こんな事に使っていいものか?
「……それに、川崎くんが気にしている事って、アリサちゃんが、間違えて殺された場合のことを心配しているんでしょ?」
そうだ。 もし、犯人の狙いがローウェルで無くバニシングトルーパーの方だった場合、殺された奴らに裏が居る可能性もある。 いや、名前的に。
そうだとしたら月影さんに危険が及ぶかも知れない。
まぁ、六年も前の事件だから大丈夫だとは思うが、気をつけたほうが良いのには変わらない。
「そこまで分かっているなら、 踏み込むな。 ……友達に注意を促す程度にしておけ。 俺達の思い込みで周囲を巻き込むな」
「で、でも」
「……はぁー、それじゃ今日だけだ。 それ以降は普段通りに生活してくれ」
「……う、うん」
このままでは拉致が明かないと判断し妥協点を決めておく。
……下手に意固地になったらシャドームーンさんも暴走するかも知れないからだ。
「じゃあ、今日は用事がないなら図書委員の仕事に戻ってくれ」
「……でも、 川崎くんはどうやって調べるの?」
「先ずは、ここに保存されている六年前の新聞記事を調べて事件現場を探す。 後は、犯人たちの名前なり情報があればそれを頼りに幽霊や怪異達に頼んで調べ上げる。 まぁ、途中でアリサ・ローウェルの幽霊が見つかれば、実家に連れて行って父親共々成仏してもらう。 以上だ」
「なら、新聞を調べるのだけでも手伝わせて」
……確かに一人でやるより効率的だが、こんな事件を調べさせていいのだろうか。
シャドームーンさんの意思は固いようでそれが目に出ている。
何が何でも手伝うぞと言う強い意思だ。
「分かった。 今日は手伝ってくれ。 俺は夕日と日済を調べるから読買と産業を任せる」
「うん。 分かった」
こうしてシャドームーンさんと二人で図書館のPCを使い過去の事件を調べていく。
暫くして二人で情報をまとめた。
街外れの廃ビルで、今も残っている。
犯人は当時未成年だったらしく名前は記載されていなかった。
解体しようにも不可解な事故が多発し現在は放置されている。
さらに気になることは同じ場所で金髪の女の子を見たという情報と鳥のような化物に目を抉られたという情報があった。
……下手すりゃ退魔師とかに除霊されているかも知れない。
それから学校の過去の生徒名簿を出し当時の担任を見つけて話を聞きに行った。
まぁ、かなりビビられたが……アリサ・ローウェルについてお聞きしたい事がと言ったら悲鳴を上げられた。
シャドームーンさんが一緒に来てくれていたので大抵の事は彼女が聞いてくれた。
……まぁ、ローウェルの霊はついていないが、浮気がバレそうだからソロソロやめておくように言っておいた。
後日封筒が届き中には学校の食券が10枚入っていた。
まぁ、分かった事は、頭は良かったが、帰国子女でクラスから浮いていたところはあったらしい。
他には塾の先生とは仲が良かったらしいが、ローウェルが死んでから暫くして田舎に帰ったみたいだ。
学校を出ようとしたら爺さんが戻ってきた。
どうやら最近、町外れの廃墟ビルにいるのを目撃した人がいるみたいだ。
と、言う事はまだ、退魔師に除霊されていない可能性が高い。
出来るだけ早く行動するべきと思い、家に帰ろうとしたらシャドームーンさんが車で送ってくれると言ってくれたので甘えることにした。
メイドさんが出てきたが……絶対この人、人間じゃない。
付喪神とか、フランケンシュタインとかに感覚が似てる。
家に着くとリニスが準備をしてくれていた。
こういうところでどこぞのポンコツな魔導書と違い気が利く使い魔だ。
ただ、シャドームーンさんとメイドさんの前で『徹のつか……妻のリニスです』はやめて欲しかった。
シャドームーンさんの目がやばかった。
鞄の中を確かめるとポンコツが入っていたが、今回は盾として使ってみるか。
先ほど袖引き小僧が照魔鏡を持ってきたので入れてくれた。
そして俺の切り札管狐の茜が入った竹筒と。
後はおにぎりとか食料と水、ソーイングセットに携帯用救急箱だ。
リニスには家で待機しておいてもらう。
隼さんも気がつけば門の前で待機してくれていたのでその後ろに掴まり住所を教えて出発する。
『早い段階で居場所が分かったんだな』
「はい、ただ一般人にも見えるぐらいの力を持っているらしいので急がないと退魔師にやられてしまう可能性もあります」
『情報社会は伊達ではありませんね主。 ところで今回は魔導書もお持ちになられるのですね』
『あ、あのー主。 こちらの狐は一体?』
「まぁ、茜が居たら事足りるが、こんなんでも俺の魔導書なんだ。 慣れてもらおうと思ってな」
『ふむ、 主がそうおっしゃるのでしたら妾は何も言いませぬ。 おい、ポンコツ』
『……狐の使い魔風情がなんだ?』
『……殺すぞ?』
……茜がキレた。
早くしないと街が吹き飛ぶかも知れない。
『あっ、はい。 申し訳ありません』
よ、弱いな。
本当にコイツは凄い魔導書なんだろうか?
そんなことを考えていると噂の廃ビルの近くについた。
ある程度は離れた所から歩いて近づこうとした時後ろに気配がしたので振り返るとシャドームーンさんが立っていた。
「……何しに来た?」
「手伝いにだよ。 まだ、今日は終わってないし。 何より相手は女の子だよね。 なら私が一緒の方が良いかなって」
……メンドくさい。
彼女の言うことも一理あるが、……死にたいのか彼女は?
そう考えて居ると背筋が凍るような感じがしたので前を向くと鳥の姿が見えたと思ったら強風が吹いてきた。
目にゴミが入らない様に瞬間的に瞑ってしまった。
厄介な事になりそうだな。
シャドームーンさんには先に帰ってもらおうと思い振り返るとシャドームーンさんが二人いた。
そうか、最近の美少女はプラナリアみたいに増えるんだと考えてしまった俺は馬鹿だ。
「ほらーこういう事になった」
「「えーとっ、ごめんなさい」」
「あーもうーお前はあれだろ? 羅刹鳥だろ?」
「「……」」
めんどくさいので鞄から照魔鏡を取り出しついでに茜の準備をする。
「……運がなかったな。 羅刹鳥」
二人のシャドームーンさんに照魔鏡を掲げると片方は吸血鬼としての姿が、もう片方は鳥の姿が映っていた。
瞬時に茜を憑依しそのまま殴り飛ばす。
……明日は絶対筋肉痛だ。
茜を憑依させることで普段以上の力を出せるが、限界を超えての動きなので良くて筋肉痛、最悪空中分解されるのでこの姿では戦いたくない。
殴り飛ばした羅刹鳥はそのまま消えていった。
シャドームーンさんは驚いた顔でこちらを見ているが、それよりポンコツが五月蝿い。
『あ、主と妖狐がユニゾンした。 ……あれ? 私の存在意義はどうなるんだ? ……私はもしかしていらない子なんだろうか?』
「か、川崎くん。 今のは一体? それよりその姿は?」
「今のは羅刹鳥と言って、昔は墓場とかに出てきて人に化けて目を抉ってくる妖怪だ。 ……これは俺の管狐の茜を憑依させている姿だ。 と、言ってもさっきみたいに人間離れした動きを連続すると筋繊維がずたずたになって動けなくなるから余り動かないけどな。 さて、 ここで待っていろ」
「……う、うん。 ごめんなさい」
謝るシャドームーンさんを背中に廃ビルに入っていく。
正直中の空気は最悪だ。
埃と血の匂いが混じっており、 さらには瘴気も出てる。
少し奥に行くと一人の少女が浮いていた。
『あら、こんなところに人が来るなんて珍しいわね』
「だろうな。 君がアリサ・ローウェルか?」
『ええ、そうよ。 でも、どうして私の名前を?』
「君の両親に頼まれてね。 興味無いかもしれないが一応名乗っておこう川崎徹だ。で……君はここで何をしている?」
『何にも。 ……アイツ等を祟り殺してから特に何もしていないわ。 私に説教でもする?』
「別にそんな趣味はない。 君が祟り殺した奴らは羅刹鳥に魂ごと取り込まれたみたいだな。 さて、君はどうする?」
『どうするって?』
「君のご両親に会って成仏するか。 それともここで退魔師に強制的に消されるのを待つか。 ……未練があるなら多少は手助けするがどうだろう?」
『……多分両親に会っても成仏できないわ』
未練があるのか。
いや、誰もが未練を持っている。
妖怪たち曰く人間がやるべき事は沢山あるのに与えられた時間は半分もない。
その中で無意識に切り捨てて行って満足できるように生きている。
予期せぬ事で死んでしまったり、生前の事を悔やんで自殺したモノが幽霊として残りやすい。
「そうか。 で、未練はなんだ?」
『……別になんだっていいでしょ』
彼女はそのまま顔を伏せてしまった。
「そうか。 取り敢えず、ここから出て、君の未練を解決しよう」
『ふーん、 私の未練が分かるの?』
「いや、でもここに居ても解決しないことは確かだ。 それともアレか? 退魔師に強制的に消されたいのか?」
『まさか。 いいわ出て行ってあげる。 けど、私は地縛霊よ。 どうやって連れて行く気?』
「ああ、簡単だ。 俺に憑依すればいい。 何かに憑かれるのは慣れている」
『……狐耳が生えてて変わった人だと思ったけど、 思った以上に変な人ね。 この変人!』
「そう、 褒めるな。 大体この狐耳は俺には似合わないが、 かなり可愛いと思っている。 それでどうする?」
『まぁ、いいわ。 あなたに憑いて行ってあげる。 これであなたは、私の下僕ね』
「ははは、 うっかり消滅させるぞ?」
『……御免なさい』
茜との憑依状態を解除し、新たにアリサ・ローウェルを憑依させる。
これで、 彼女をここから連れ出せる。
後は、 シャドームーンさんと合流するだけだ。
『付け耳だったんだ。 やっぱり変な人』
こうして俺と彼女の生活が始まる。
「……憑かれると肩が重いな」
『お、重いとか言うな!』
……どうしよう全然進まなかった。
だらだら書きすぎたかも。
……次でアリサが二人になるかもしれません。
どうしよう余り考えていない。
多少の修正は入ると思います。