【習作】俺の周りは人外ばかり   作:レイオード

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お久しぶりです。

内容が中々決まりませんでした。


第五話 アリサとアリサ

 金髪碧眼の幽霊少女アリサ・ローウェルを連れて家に帰ったら母さんお人形さんみたいと喜び、 リニスは呆れた顔をしていた。

 因みに帰りはシャドームーンさんに送ってもらった。

 車の中で俺が寝ている間に二人の仲が良くなっており、 別れる時にまた明日と言っていた。

 ……もしかして俺も巻き込まれるのか?

 

 部屋に戻り荷物を置いて、 風呂の準備をしていると管狐モードの茜が竹筒から顔を出して見ていた。

 管狐の状態では黒い毛並みに緑の目をした狐だが、 空狐になると黒髪碧眼の狐耳な和服美人になる。 ただし、尻尾はない。

 

 「どうした?」

 

 『……いえ、 主があと一年で元服を迎えると思うと感慨深く思いまして』

 

 元服か。 確か、昔は15歳で大人の扱いだったな。

 

 「元服といっても後一年はあるだろう。 それに現代は20歳で成人だ」

 

 『ええ。 ですが、 昔を思うと元服までに死ぬなんてよくあることだったのです。 ……飢饉に疫病に戦争……多くの人間が主の年になるまでに死んでいきました。 主は良き時代に生まれましたね』

 

 「……そうだな。 だが、いい時代を創っていったのは死んでいった人達のおかげだ」

 

 『その気持ちだけはお忘れなきよう』

 

 茜はそう言うとまた竹筒に戻った。

 彼女が居なければ俺は確実に小学生になる前に死んでいた。

 こんな体質の為に色々な幽霊に出会ってきた。

 主君を守れなかった侍が居た。 食べ物が無くて家族を殺した者も居た。 他には世界大戦時で死んでいった多くの人たち。 でも最低だと思ったのは二股だと思ったら実は男の娘にも手を出して刺された男だ。

 そんな幽霊達の中には……この時代に生まれた俺を妬み呪い殺そうとする者も居たし、 俺に戦争の体験を語る人も居た。 今の日本を憎む人、 喜ぶ人もいた。

 俺は、その人達に多くのこと教えられたし、 当時の事を夢という形でその人の一生を体験させられた。 

 一番苦しかったのは修学旅行で広島を訪れた時だ。 あそこで起きた惨劇をずっと見ることになり多くの悲鳴と怒号が聞こえて来た。 感覚をフィードバックして実際に火傷や大小様々な傷が出来た。 茜が駆けつけてくれなければ俺の精神は崩壊していただろう。

 

 過去を思い出しながら風呂の準備を済ませて、 風呂場に向かう。

 風呂場で服を脱いで居るとアリサ・ローウェルが姿を現した。

 

 『……徹? 何をしているの?』

 

 「ん? 風呂に入るから脱いでいるんだが?」

 

 ……彼女の様子が、 可笑しい。

 虚ろな目をしてこちら見据えている。

 

 『う、 嘘よ! 私にひどいことする気でしょ!』

 

 「……落ち着け。 風呂に入るだけだ」

 

 『……嘘よ! そう言いながら、 変な物を見せつけて私が動揺している姿を見て喜ぶに違いないわ! この変態!』

 

 「……お前は俺に風呂とトイレに行くなと言うのか……この臭フェチめ!」

 

 『可笑しいでしょ! なんで、 私が変態みたいな扱いされているの!』

 

 その後もお互いを変態と罵りながら、 着地点を探していた。

 その結果がこれだ。

 

 「もう少し力を入れてくれ」

 

 「はい。 ……初めから私を呼んでいれば……今後は気を付けないといけませんね」

 

 「……そうだな。 思慮が足りなかった」

 

 リニスに背中を流してもらいながら反省する。

 だが、俺に憑いている以上こういった事は避けられない。

 今回は、 俺が巫山戯る事でなんとか誤魔化せたが、 次はどうなるか分からないな。

 ……新しい寄り代を探したほうが良いのか……だが、彼女は既に祟り殺すほどの力を持った霊だ。

 耐性の無い人間なら波長が合わない限りアリサの意思に関係なく何らかの影響が出るだろう。

 

 体についた泡を流し今度は俺がリニスの背中を洗ってやる。

 ……リニスが発情期なら風呂場で一回、 次の日休みなら朝までコースだ。 

 そう言えば昔だが、リニスを腕枕している時にリニスの顔が血まみれのおっさんの顔になっていて死にたくなった。

 

 その後何もなく就寝になった。

 アリサは目の前でリニスが猫になるのを見て驚いていたが、 改めて茜と、 ヌルハチを紹介すると頭を抱えていた。

 

 「幽霊も妖怪も魔法もあったんだな。 これが。 まぁ、代わりに夢と希望はないが」

 

 『……死んでいるのに頭が痛い。 私も非常識な存在だと自覚しているけどあなたには負けるわ』

 

 「イヤイヤ、 世の中広いぞ。 時空管理を謳っている組織に吸血鬼の混血なのに『夜の一族』と名乗って粋がっている奴ら(この前、ホストをしている吸血鬼にそのことを教えたら悶えていた)、 人の身でありながら神を殺した奴らもいる」

 

 『……何それ? 頭の悪い物語みたいね』

 

 「そうだな。 だが、彼らに比べたら幽霊が見えて怪異を引き寄せる俺なんて大したもんじゃない」

 

 『そうかしら? 普通の人間からしたら十分異常よ。 あなたも自分の異能を隠す気もないみたいだし』

 

 「俺は、自分が普通だと思ったことは幼少期で終わっている。 それに俺は普通の人間とは一言も言っていない」

 

 『そうね。 でも隠さないの?』

 

 アリサは興味深そうにこちらを見ている。

 ……そう言えば彼女も普通じゃなかったな。

 IQ200なんて頭わる……化け物じみた頭の良さを持っており避けられていたから気になるのか。

 

 「ああ、 隠す必要は無い。 俺の場合は隠した事で人を巻き込んだら下手すれば即死、 神隠しは当たり前だからな。 出来るだけ距離があったほうがいい」

 

 『……そう。 寂しくない?』

 

 「どうだろうか。 それでも友達は出来たし、 人外の友達も多いしな。 ただ、 両親には申し訳ないと思っている」

 

 『……ずるい。 私は一人だった』

 

 アリサの囁くような声を聞き目を向けると何かを思い出すように目を瞑っていた。

 

 「……お休み」

 

 俺の声が聞こえたのか小さく彼女は頷いた。

 

 

 ……夢を……悪夢を見ている。

 夢の中の俺はロープで縛られ男達に囲まれている。

 どんなに力を入れても振りほどくことが出来ない。

 

 男たちの会話の一部が聞こえる。

 

 「なぁ、 コイツ。 あれじゃね? バニングスグループの社長の娘に似てね? 前にネットで見たから合ってると思うぜ」

 

 「マジか! なら、 身代金とか期待できんじゃね」

 

 「じゃあ、 俺が身代金要求してみるわ」

 

 「ギャハハ! 何本気にしてんだよ。 楽しむだけ楽しんだら、 コイツに金持ってこさせたらいいんじゃん」

 

 「どうせなら身代金要求した方が色々楽しめるだろ? 徐々に壊れていく娘の姿を見せてやれば……ククク」

 

 「うわー、 鬼畜」

 

 暫くすると本当に電話したが、 娘は帰っている。 間違い電話扱いされたみたいだ。

 電話をかけた男は顔を真っ赤にして怒っているようで周りはそれをみて笑っていた。   

 

 暫くすると男の一人が注射器を取り出し俺の腕に薬を流し込んだ。

 頭がクラクラする、 体に力が入らない。

 後は、 男たちの性の捌け口として体を蹂躙され、 首を絞められながら犯され殺された。

 

 そこで夢が覚める。

 時計を見ると時間はまだ三時だ。

 ……今のは、 アリサの過去の一部か。

 アリサの方を見ると彼女は眠っているが、泣いているように思えた。

 ……俺に憑いたから生前のような行動をとるようになっているみたいだ。

 

 再び目を瞑るとまた夢の世界だ。

 今度の夢の舞台は小学校だ。

 夢の中の俺は、 学校の授業中に大学の入試問題を説いていた。

 自我の境界が曖昧になり彼女の思考、感情が俺の意識と混ざり合う。

 

 学校の授業を聞く必要はない。

 全て塾で習ったことばかりだ。

 退屈だ。 ここに居ても話す相手も居ない。

 クラスメートは私が日本人じゃ無いから避けている。

 私としても人種や能力の差で排斥するような低脳な奴らに興味はない。

 ……ああ、詰まらない。 早く塾に行って先生と話したい。

 学校の先生はダメだ。 私にどう接したら良いのか迷っている。 それが子供に伝わっているのが分からないみたいだ。 

 やはり塾の先生だけが私の話し相手だ。

 

 偶にこちらを見て笑っている女生徒が居る。 下らない。

 ドラマに出ているアイドルや俳優が格好良いとか心底どうでも良い。

 どうせ下らない内容の話であんた達が騒いでいる役者も大根役者なんでしょ。

 クラスの誰が、良いとか言っているが、 将来の夢がサッカー選手なんて言っているようなお子様のどこがイイのよ。

 今がどんなに格好良くても、 将来的にはどうなるか分からない。 

 それなら多少顔が悪くてもどんな職に就くか計画性と将来性を考えてないと後々後悔するだけじゃない。

 

 

 ……でも、 寂しい。 虚しい。 

 どんなに虚勢を張ってもこの寂しさは埋められない。

 …………誰か……誰でもいいから私を見て! 話をして!

 

 ずっと孤独を抱えていた少女の悲痛な叫びを聞き目が覚める。

 ……気が重いな。

 アリサの方を見ると彼女は底なし沼を連想するような目でこちらを見ている。

 

 『……見たわね……私の過去を見たわね! ……お願いだから同情なんてしないで! 私は……ってなんで服脱いでいるのよ! 人の話を聞きなさいよ!』

 

 触れたら悪いと思い着替えていたら怒られた。

 仕方が無いのでパンツと靴下だけで彼女に向き直る。

 

 「で、 同情がなんだって? 殺され方には同情するが、 他はどうでも良い。 要は友達が欲しいんだろ?」

 

 『……そうなんだけど。 そうなんだけど! その格好で言われてもリアクションに困るわ!』

 

 「なるほど。 全裸がお好みか。 このスキモノめ!」

 

 『違うわ! あなたといれば私を見れる人が増えるからそれで友達を作るから……あなたは介入しないで! お膳立てされて作った友達なんていらないのよ! あと、 早く服を着て!』

 

 彼女の言うことも分かるが。 ……今までぼっちだった奴が、一人で友達を作れるとは思わないし、 幽霊を友達にしようという奇特な人間がどれだけいようか?

 ……ああ、 年齢的に大きなお友達ならいけそうかな?

 

 『何かしらその残念そうな人を見る目は?』

 

 「……言いたいことは分かるが、 ……大きなお友達は勘弁な」

 

 『あ、 当たり前でしょ!』

 

 「ああ、 この際友達になってくれるなら何でもいいやと自暴自棄になる可能性を考えただけだ」

 

 『そんな、 可能性は捨ててよ。 ……そうね、 小学生に声をかけるとなるとあなたが社会的な意味で危険だし、 あなたの同学年で良いわ』

 

 ……彼女は中学生が小学生の相手をすると思っているのだろうか。

 いや、 するかもしれないが、それは友達と言うより妹みたいに扱うだろう。

 でも、 その事を指摘するつもりはない。

 やっぱり小学生でと言われたら、 『まったく小学生は最高だぜ』キャラにされかけない。

 

 「……ウチは中学から男女別だって知っているか?」

 

 『当たり前じゃない』

 

 「……俺は女子校には近づけないぞ。 女友達もいないし」

 

 『えっ? すずかは違うの?』

 

 「えっ? 月影さんは俺の友達なの?」

 

 「『……何それ……怖い』」

 

 お互いの相互認識が甘かったのが浮き彫りになった瞬間だった。

 アリサは余程意外だったのか、 目に見えて困惑している。

 

 『えーと? 違うの? すずかは、 あなたの事を友達かそれ以上になりたいと思っているように思えたんだけど』

 

 「そうか。 ありがたいが、 彼女は学校で人気者だ。 そんな彼女と友達関係になったとなれば後ろから掘られる可能性がある。 ……そうだな彼女との関係を言うなら図書委員仲間といったところか」

 

 『……そこは刺されるの間違いでしょ? ……私と違って好かれているんだからもっと距離を詰めなさいよ』

 

 「なら、 怪異に巻き込んで良いと? 俺の近くに居たら間違いなくそう言った経験をする。 もしもの事が起きたら俺は自分を許せそうに無い。 その予防線を張るのは当然だろ」

 

 『……そう。 もし、 その予防線すら乗り越えてきたらどうするの?』

 

 「……分からない。 その時に考える」

 

 アリサはそれっきり黙り込んで俺の後を憑いてきた。

 

 通学路で死んでからも家を守っている柴犬のミッキーに挨拶したり、 奥さんと子供とを残して死んだ森田のオジさんとその飼い猫のチャチャに挨拶しながら通学する。

 オジさんは娘に彼氏が出来てホッとしたような……悲しいような気持ちらしい。

 彼氏は信頼出来る人物らしいからそろそろ成仏しようかなとか言っている。

 ただ、 チャチャは娘さんに子供が出来たらそれを守るために残るらしい。

 そう言えば猫といえば九州で猫神に出会ったことがある。

 1mぐらいの巨体で、赤いちゃんちゃんこを着ていたとアリサに話すとまた頭痛がすると言っていたが、 この周辺でもトレンチコートを着たホードボイルドなペンギンがいると言ったら疲れた顔をしてこちらを見ていた。

 ……何故だ? 彼らは人類を守護する一角なのに。

 学校に着くと俺が、 シャドームーンさんの車に乗っていたところを見たと話題になっており、 彼女のファンクラブに囲まれた。

 まぁ、 地縛霊の確保に向かったと話したら蜘蛛の子を散らすように去っていった。

 

 『……どこまで怖がられているのよ』

 

 「さぁ? まぁ、よくあることだ」

 

 『周りが、 注目しているわよ。 独り言を言っている気持ち悪いやつに思われているんじゃない?』

 

 「ああ、 それは無い。 幽霊と話していると分かってくれている」

 

 『……そんなに有名なの?』

 

 「まぁな。 取り敢えず、 心霊現象が起きたら、 『川崎の仕業か』と言われるぐらいに信頼されている」

 

 そう、それは昭和最後のライダーの直感並にだ。

 

 『それって、 信頼なのかしら?』

 

 と、一日アリサと話しながら過ごしているうちに今日の授業が終わった。

 ……アリサが五月蝿かった。

 やれ、 授業のペースが遅すぎるとか、 先生の字が下手とか、 俺の右二つ横の源(バスケ部のエース)の腋臭が臭いとか、 授業に関係あることからどうでもいい事まで口出しして来て大変だった。

 源は、 アリサの声が聞こえたのか、 休憩時間中に治療法を探していた。

 ……やるなー。 皆分かっていたけど言い出せなかったのに。

 

 そして、 放課後になり保管庫の整理に向かうと、 シャドームーンさんに八幡、 高見盛さん、 ハンマハンマさん、 そしてアリサ・ローウェルが成長すればこんな感じになったであろう女生徒、 アズサ・バニシングトルーパーさんが居た。

 清十郎爺さんは、 『若い子はええのー』と、 喜び、 八幡夫婦は、 旦那さんが、正座させられ奥さんにあそこを踏まれていた。 見てるだけで痛いのだが、 嬉しそうだ。 ハンマハンマさんの所も相変わらずで露出強のお母さんにハンマハンマさんの子供時代を連想する少女が居た。

 どうでも良いが、 八幡のお母さんにムチの使い方を教えるのはどうなのだろう。

 

 ……正直帰りたい。

 自称魔法少女兼異世界の軍隊志望で中卒予定の三人に、 吸血鬼との混血の少女に、 大企業の天才お嬢様の五人がいる。

 五人とも美少女だが、 俺の中では関わり合いたくないトップ5だ。

 だから、 扉をそっと閉めて帰ろうとした俺は悪くない。 

 

 「……お疲れ様でした」

 

 「なんでやねん! なんで私らの顔見て帰んねん!」

 

 八幡がドアを足で止めて俺の腕を掴んできた。

 ……思ったより力があるな。

 仕方がないが、 保管庫の中に入る。

 

 「分かった。 全員出てけ! 作業の邪魔だ」

 

 「だから! なんでやねん!」

 

 八幡にツッコミを受けたが、 何か物足りない。

 手首のスナップか?

 俺と八幡のやり取りを四人が呆れたように見ている。

 

 「で、 お前達は何をしている?」

 

 「何って、 アリサちゃんそっくりの幽霊がいると聞いて見に来たんやけど」

 

 「……確かにバニシングトルーパーさんを幼くした感じの女の子なら俺の後ろに居るが」

 

 「誰が、 ヒュッケバインよ!」

 

 「バニシングトルーパーさんガンナー時のファングスラッシャーを返してください」

 

 「私は、 ボクサー派だから関係ないわ」

 

 「君とは友達になれそうに無い」

 

 「私も思わないわよ!」

 

 「そうか。 それは置いておいて、 良く正気を保っているな」

 

 バニシングトルーパーさんは、 嫌そうに顔をしかめた。

 まぁ、 気持ちは分かる。

 

 「……まぁ、 なのは達がアレだから幽霊が居ても可笑しくないかなって思っただけよ。 それにすずかの頼みでもあったしね」

 

 「……おい、 聞いたか? 自称魔法少女で軍人共。 お友達から見たお前達の存在は幽霊と変わらないらしいぞ」

 

 三人は床に手を着いて項垂れていた。

 

 「ま、 まさか幽霊と同じに思われるなんて」

 

 「……確かに私は異世界人だけど」

 

 「アリサちゃんのまさかの裏切りや。 ……帰ったらシグナムのおっぱいを揉もう」

 

 ……大変ショックを受けているところ悪いが、 汚いな。

 保管庫の入口付近は一応他の生徒も入っているし、 俺も月影さんも掃除はしていない。

 ……あれだな。 最近のどこでも座る若者って奴だ。

 

 「は、はやてちゃん? そこは掃除してないから汚いよ?」

 

 …………三人とも俯きながら立ち上がった。

 スカートに付いた埃を払い、 そして恨めしそうにこちらを見てくる。

 ……日頃の行いを省みてくれ。

 彼女達から目を背け月影さんにどうして彼女たちを連れてきたのか問いかける。

 

 「地べた族は置いておいて。 どうして彼女たちを連れてきたんだ?」

 

 「え、えっと、 それはね」

 

 『私が昨日に頼んだからよ』

 

 言葉に詰まる月影さんの代わりにアリサが実体化して答えてくれた。

 正直に言えばこれから彼女を受け入れてくれる人材を探すよりは、 楽にはなったが。

 ……月影さんの方を見ても頬を引き攣らせながら頷いてくれた。

 恐らく半分正解だったのだろう。

 じゃあ、 残りの半分は一体何だ?

 

 「……まだ他に何かあるのか?」

 

 「う、うん」

 

 ……頬が赤くなっている。

 なんだ? 人には言えないほど恥ずかしい事なのか?

 

 「ああ、 それなら私が答えるわ。 昨日、 貴方が、すずかの家の車に乗って帰ったって話が広まっていてね。 真相を聞いたわけ」

 

 思わぬ人物からの返答に驚いた。

 

 「……そうか」

 

 男子校でも噂になっていたし女子校でも広まっていてもおかしくないな。

 ……もしかして外堀を埋めに来ている?

 

 「やれやれ、 物好きだな。 ……なら、俺は作業しておくから部屋の隅で幽霊鑑賞会でもしてくれ」

 

 「……何言っているのよ。 あなたも参加しなさい」

 

 バニシングトルーパーさんは、腕を組みながら俺を見据えてくる。

 逃げたら承知しないと目が言っている。

 だが、甘い! 俺はNOと言える日本人だ。

 

 「……悪いが、 断る。 何が悲しくて、 女子会に参加しなくてはならない」

 

 「貴方が居ないとその子とゆっくり話せないでしょ?」

 

 『まぁ、 私もバニシングトルーパーって子が気になるからイイけど』

 

 「違うわよ。 私の名前は、 アリサ・バニングスよ。 貴女は?」

 

 『奇遇ね。 私もアリサって言うの。 アリサ・ローウェルよ』

 

 ……二人のアリサか。

 その後、全員が自己紹介し女子会という拷問が始まった。

 逃げるタイミングを見失った。

 初めは、少々緊張した雰囲気だったが、 1時間もしないうちにバニシングトルーパーさん主導で話が広がっていった。

 俺は、天井のシミを数えながら女子会が終わるのを待っていた。

 

 現実逃避しながら、 彼女たちの人間関係を見ていた。

 基本話すのは、バニシングトルーパーさんと八幡の二人だ。

 まぁ、 八幡はボケをかましまくっているだけだが。

 高見盛さんとハンマハンマさんは、 それを笑いながら聞いているだけ。 

 シャドームーンさんは、 平等に話がいくようにする、 調停者だ。

 

 「そう言えば、 幽霊に憑かれるってどんな感じなん?」

 

 「やっぱり肩が重くなったりするの?」

 

 八幡とシャドームーンさんが俺に話を振ってきた。

 正直話を振られるなんて思っていなかったので、 かなり驚いた。

 

 「あ、ああ。 まぁ、 幽霊にもよるが、 肩が重くなったり、 寒気がしたり、 金縛りにあったりだ」

 

 「へー。 じゃあ、 守護霊はまた別なん?」

 

 八幡の疑問は最もだろうな。

 自分の後ろには両親がいるのにそれを感じることが出来ないのだから。

 

 「まぁ、簡単に説明するなら、 守護霊は存在を認識されようがされまいが関係なく相手を守ろうとする。 他の幽霊は、自分のことに気付いて欲しいから憑依した相手に様々な影響を与えることが多い。 偶に親和性が良いのがいると体に影響は出にくいが、精神的に影響されたり自分の記憶を見せてきたりすることがある」

 

 「なら、 守護霊はそう言った記憶を見せたりはしないの?」

 

 「いや、 あるのだろうな。 それが、俗に言う虫の知らせってやつだろうな。 俺は、 見えすぎて同調しやすいから色々見るけどな」

 

 「た、大変なんだね」

 

 ハンマハンマさんが、 気の毒そうに見てくるが……もう慣れた。

 昔から付き合いだ。 何度か自我の境界が曖昧になったりしたがその度に父さんや母さんに茜が呼び戻してくれた。

 

 「……もう慣れた。 さてと、 アリサもう良いだろ? 帰るぞ」

 

 アリサと話していたバニシングトルーパーさんの方に視線を向けると面倒な事になっていた。

 

 「……何をしている?」

 

 「『ど、どうしよう?』」

 

 アリサとバニシングトルーパーさんの相性が良すぎて憑依状態になっていた。

 しかもお互いの意識を共有しているみたいで、更に面倒だ。

 

 「あー、 アリサの未練が無くなったら何とかなる」

 

 「『ほ、本当に大丈夫なんでしょうね?』」

 

 「生まれた時から怪異に巻き込まれているんだ。 この程度は問題ない」

 

 「『よ、よかったー』」

 

 「気分が悪いとか、体が怠いとか無いか?」

 

 「『別にないわよ』」

 

 自信は正直ないが、ここで 弱気な所を見せたら二人に更に負担をかけることになるので何時も通りにする。

 ……本当に予想外すぎる。

 …………問題は、アリサの過去を見てバニシングトルーパーさんが正気を保てるのかが、鍵だ。

 ……死者が、 関係ない生者を殺すようなことはあってはならないと思っている。

 だからもしもの時は、アリサとその両親を強制的に成仏させる。

 本来は死者を鞭打つような事はしたくないが。

 

 俺は携帯を取り出しアドレス画面をバニシングトルーパーさんに見せる。

 

 「少しでも異常を感じたら連絡しろ。 時間なんて気にするな。 君の命にも関わるからな」

 

 「『わ、わかったわ』」

 

 バニシングトルーパーさんは、直ぐに携帯を取り出すと俺の携帯アドレスを登録し、空メールと電話をして来た。

 ……それだけだと良かったのだが、その場にいたシャドームーンさんと、 高見盛さん達とも交換されていた。

 ……彼女たちのアドレスって高く売れそうだなと、少々考えてしまったがやめておくことにした。

 

 「じゃあ、 俺は帰る。 お前たちも気をつけてな」

 

 携帯をポケットに仕舞い保管庫を後にした。

 ……まぁ、彼女達は今守護霊や学校の怪異達が見守っているから安全だろうけどな。

 今も二宮金次郎像が、窓から覗いているし、 花子さんもトイレの窓から任せてくれと言っているから大丈夫だろ。

  




改めましてお久しぶりです。
ここまで読んで頂きありがとうございます。
中々区切りのいいところが見つからなくて四苦八苦しておりました。
あと、リアルが少々立て込んでまして次回の更新はいつになるか分かりません。
出来るだけ早くに更新したいと思います。
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