15歳。ーサライさんー   作:鈴木遥

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他人の言葉が有って初めて恋愛は成立する。

・その二時間後、沙羅井は体育主任の近藤に呼び出され、体育の授業のサポートに入った。

この日の『弓道』は、大ブーイングだった。

意外と楽しいかも?と思われていた弓道は、誰一人 的に当たらず、一矢射る度に生徒達のイライラだけがつのる有り様。

ブーイングの嵐を消し飛ばしたのは、明のファインプレーだった。

明は第一矢から真ん中を射抜き続け、3矢連続してヒット。

「さぁ野郎共!私に続いて撃ちましょうです!撃てねえ豚はただの豚です!」

「ウオオオオオ!!」

少々『キャラ変わってない?』と突っ込まれそうな明の雄叫びも、ストレスのたまった学年一同の士気を上げるには十分だった。

沙羅井は、期待と不安が半分ずつで、様子を見守っていた。

明に優しく接しているあの子達は、果たして日向の“秘密”を知っても、変わらないでいられるだろうか?

もし、宗庵殿が言った通りになったら......。

脳内を駆け巡る悪い予感を振り払う様に、沙羅井は己の頬を叩いた。

(何弱気になってんだ!オレが行動しねぇと、日向はまた『一人になっちまう』んだ!アイツらを信じるしか道はねぇだろうが!!)

不安要素はもう一つあった。沙羅井がギャラリーから見下ろす先には、呆けたカオの少年が気だるそうに体育座りしていた。

蒼井結衣の交際相手、桧山一翔(ひやまかずま)

(桧山......あの分じゃもう何日も蒼井と話してねぇのか?参ったな......あのカップルは日向の件を解決する最大の切り札だってのに......。)少なくとも沙羅井は、ここ数日結衣と桧山の会話シーンを見ていない。

小倉まりんの話では、あの二人のケンカはよくある話だそうだが、今回は桧山が一方的にへこんでいる。

まりんの知る“それ”と、今回は訳が違う様だ。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「それでは沙羅井先生から、一言いただきましょうか。」

「......」

「先生?沙羅井先生!!」

「え!?あ、ハイハイ。」

まるで夢でも見ている様なカオから我に帰る沙羅井。

「ちょっと先生、大丈夫ですか?」

「申し訳ありません、大丈夫です。」

「おいおい先生、何考えてたんだ?」

「女だ女ー!まじめに働けよなー!」

沙羅井は忍びなさそうに頭を押さえた。

「ハイハイ静かに、えー、みんなまだまだのびしろが有ると思うんで、引き続き頑張れ、それと......あー、何だっけ?」

「レポート提出忘れんな、だろ?」

「あ、そうだった。サンキューな桧山、手間ついでに今日の放課後、校門来てくれるか?話有ってよ。」

桧山は少し驚いて、目を見開いた。

「おー?ついに沙羅井VS桧山の蒼井争奪戦かー?」

「黙れエイコー、殺すぞテメェ!」

桧山の反応がいつになく“マジ”とわかったからか、珍しく素直にいじるのを止めるエイコー。

当の桧山はばつが悪そうに結衣をみつめている。

「ハイハイ、殺すとか言うもんじゃねぇな桧山。まぁ、そういうわけだ。本時は解散!!」

沙羅井は危機感を覚えていた。“今の”は恐らく、桧山にとっても甚大なダメージになってしまった。

ここは一刻も早く二人に仲直りして貰わねば......。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

放課後、桧山はサッカー部を欠席し、校門へ向かった。

待つこと10分、いつもの白ジャージで、沙羅井はやって来た。

「おう、待たせたな。」

「うん。あと五分遅かったら殴ってた。」

少しムスッとする桧山に、沙羅井はなだめる様に言った。

「まあまあ、怒んなって。」

「......で?何の用?」

「ちと手伝いを頼みたくてな、まあ少し歩こうか。そうだ、何か飲むか?おごってやるよ。」

規則違反(ダメ)なんじゃねぇの?ソレ......。」

「いいか桧山、規則ってのは破る為にあんだよ。規則が破れないヤツにろくなヤツァいねぇ。それがオレのポリシーだよ。」

「んじゃ、今の会話校長にばーらそっと!」

「ごめんやっぱ取り消し!」

呆れる様にため息をつく桧山。

「安っっいポリシーだなオイ。」

夏が近いというのに、夕方のそよ風が心地いい。

ヒグラシの鳴き声がこだまする度、桧山はどう切り出すべきか分からず気が重くなる。

相蓮町『日輪(ひのわ)商店街』に近づくと、沙羅井は重々しそうに切出した。

「桧山ァ、まぁ、あれだ。蒼井の事なんだけど......。」

「いいよ、その話は。」

桧山はいつになくなげやりだった。理由はわかっていたが、あえて質問を重ねる。

「......何で?」

「何でって!......アンタわかってんだろ?俺じゃアイツを幸せにできない。」

「何でよ。」

「ガキだし、空気読めないし、鈍感だし、すぐにアイツの事傷つけちまう。」

「うん、で?」

「だから、オレなんかといない方が良いって......。」

突然、沙羅井は桧山につかみかかった。

桧山も反抗的な目で彼を睨むが、その表情は読めない。

「お前ソレ、蒼井の口から聞いたのか?」

「......え?」

まだ訳がわからないカオの桧山に、沙羅井は冷たく言った。

「だ・か・ら!蒼井本人がきちんとそう言ったのか!?

お前がガキで鈍感で空気読めねぇから、お前とカレカノでなんかいたくねぇって、アイツからはっきりそう言ったのかよ!!」

沙羅井渾身の雷落としに、さすがの桧山も怯んだ。

「もう一度聞くぜ桧山......『お前は』どうしたい?」

涙目の桧山は、ようやく声を絞り出した。

「......蒼井と、もう一回話したい。」

「来な、チャンス位は作ってやるよ。」

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