・その日、明を早退させた沙羅井は放課後の屋上にクラス全員を呼び出した。
屋上の床上に、古めかしい書物を広げた。
そこには、弓矢を片手に真っ赤な鬼に立ち向かう、長髪の少女が描かれていた。
古い絵巻物の端には、『天照寺』の文字が有った。
「先生、これは一体......。」
花日が怪訝な顔で訊ねた。
「数百年前、ここに描かれた戦いが本当に起こってな?
その戦いの後、封印された
「そんな事が?オレ全く覚えてないです。」
「だろうな高尾......
「そう言えば、原因不明の奇病が流行った事が有った様な......。」
「あの事件の裏で、天照寺家と日向親子の、悪霊との戦いが巻き起こっていた。だが、先走ったアイツはたった一人で悪霊に挑み、結果体の一部を乗っ取られ、今なおその呪縛に苦しんでるってワケ......。」
「......で、どうやって明ちゃんを助けるんですか?」
「よくぞ聞いたな蒼井。
「具体的に、どうやって?」
沙羅井は明らかな悪人笑いを浮かべ、人さし指を立てて、高らかに叫んだ。
「聞いて驚け!沙羅井プレゼンツ、チキチキ 少し遅めの日向明 歓迎会大作戦!」
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その三日後の月曜日、明は登校を渋っていた。
先日の騒動で、自分の中に『化け物』が居る事はバレただろう。
どうせ登校しても、己の傷を抉る事になるだろう。
なのに......
お前は卑怯だ、お前は卑怯だ、お前は卑怯だ、卑怯だ、卑怯だ、卑怯だ......。
心の声に抗う事など出来るハズもなく、明は気が付けば登校していた。
「それにしても......。」
下駄箱で靴を履き替えながら、明は違和感を覚えた。
ホームルーム10分前、いつもなら教室入りする生徒で賑わい始める。
......が、今日は人っ子一人いない。
「皆さん、どうしたんでしようか。」
怪しみながら教室に入ると、電気の消えた教室から、クラッカーの爆音がなり響いた。
思わず目と耳を塞ぐ明。視界を開くと、 教室は色紙などで一面中 飾り付けされ、まるで別世界のよう。
黒板には 自分を歓迎するウェルカムのポップ文字が書かれている。
「日向明さん、ようこそ三年二組へ!」
クラッカーを持った同級生たちが お祝いの言葉 とともに拍手喝采した。
「あの……これは一体!?」
「見ての通り、お前の歓迎会だよ。」
とんがり帽子を被った沙羅井が、さも当然の様に言った。
先日の一件も有ってか、疑念が晴れない明。
「でも、先生はご存じでしょう!?私の中には、悪霊が……。」
反論しようとする明を静止したのは なぜか季節外れのサンタコス姿の結衣だった。
「先生もああ言ってるんだし、楽しむときは楽しもう、ね?」
「……はい。」
屈託ない笑顔のゆいに促され、並べられた机の誕生席に座る明。
そこからは、いつもの校内では見られない、 宴会モードマックスの 2組一同の パフォーマンス祭りであった。
空前絶後のパパラッチ『サンシャインエイコー』の一発芸や、漫才コンビ、『花日&まりん』の王道漫才など、 プログラムを重ね 楽しむ家に少しずつ 明の表情が明るくなった。
最終プログラムを終えた頃、明の笑顔はすっかり板に付き、結衣は安堵すると同時に、
明を本当の意味で救う為の、
「楽しい?明ちゃん。」
「ええ、とっても……私、先生の事を誤解してた見たいですね、それに気付けたのも結衣さんのおかげです。」
「私は何も?頑張ったのは先生と、明ちゃん自身だよ……逃げずにちゃんと、今日来たじゃない。」
「結衣さん……ウゥッ!!」
雑談の最中、明は突如、胸を押さえて苦しみ出した。
「明ちゃん!?」
「ァアア……クゥゥ………!!」
結衣の呼び掛けにも応じず、ただひたすら苦しみ悶える明。
その時、彼女の口から赤黒い煙がふきでた。
それは、やがて不気味にうねり、人のシルエットの様になった。
「先生……明ちゃんが!!」
「
「了解!」
保険委員、エイコーと山本が、明に駆け寄る。沙羅井の予想通り、明は大量の煙を吐き出し、それは巨大な怪物に変わった。
昔話の赤鬼を連想させる、 赤銅色の皮膚を持った鬼神。
鋭利な双角と、不揃いな牙、黄色く濁った眼から、明らかな悪意と殺意が表れている。
ウゥッ……アアアアアアアア!!オノレェェェ!
「全員避難しろ!こっからが正念場だ!」
沙羅井の言い付けを守り、続々と教室を出る生徒たち。
そう。沙羅井の真の作戦とは、明の“幸せ”を増幅させる事で彼を燻り出し、そのまま除霊するというものだった。
「おいでなすったな。悪霊、
成……仏……。
「 この世で日向に固執していても、未来永劫先は見えね
ー。あんたもいい加減……。」
笑わせるなァァァ……!
鋭いツメを、明を担いで逃げ遅れた結衣に向けてムチのように伸ばす陰我。
あわや結衣を、そして明を突き刺そうとした陰我のツメを弾いたのは、沙羅井が両手に構えた日本刀だった。
「……先生!?」
「よかったぜ。天照寺から
その刀は……!!
沙羅井の刀を目の当たりにし、陰我は少したじろぐ。
「逃げろ蒼井!こっからは……
「分かりました!」
沙羅井に従い、逃げた二人を確認すると、沙羅井は己の刃を、そして敵を見つめ直した。
「武者震いか、それとも恐怖の再来か?どっちにしても不思議はねえな。何せコイツは、うん百年前お前を斬り、祠に落とした一本だろう?」
あーーーあーーーあーーー!
また世界観の崩壊がアアアアアアア