15歳。ーサライさんー   作:鈴木遥

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決戦前にはあんパンと牛乳

・その日、明を早退させた沙羅井は放課後の屋上にクラス全員を呼び出した。

 

屋上の床上に、古めかしい書物を広げた。

 

そこには、弓矢を片手に真っ赤な鬼に立ち向かう、長髪の少女が描かれていた。

 

古い絵巻物の端には、『天照寺』の文字が有った。

 

「先生、これは一体......。」

 

花日が怪訝な顔で訊ねた。

 

「数百年前、ここに描かれた戦いが本当に起こってな?

その戦いの後、封印されたそいつ(・・・)が10年前、突如復活しちまったんだ......。」

 

「そんな事が?オレ全く覚えてないです。」

 

「だろうな高尾......あの一件(・・・・)は、表向きは伝染病として発表されたから......。」

 

「そう言えば、原因不明の奇病が流行った事が有った様な......。」

 

心愛(ここあ)が、悪夢を振り替える様に、怯えた声で言った。

 

「あの事件の裏で、天照寺家と日向親子の、悪霊との戦いが巻き起こっていた。だが、先走ったアイツはたった一人で悪霊に挑み、結果体の一部を乗っ取られ、今なおその呪縛に苦しんでるってワケ......。」

 

「......で、どうやって明ちゃんを助けるんですか?」

 

「よくぞ聞いたな蒼井。悪霊(ソイツ)のメカニズムは、日向の感情が極端に上がるか、沈むか。そのどちらかを成功させればいい。」

 

「具体的に、どうやって?」

 

沙羅井は明らかな悪人笑いを浮かべ、人さし指を立てて、高らかに叫んだ。

 

「聞いて驚け!沙羅井プレゼンツ、チキチキ 少し遅めの日向明 歓迎会大作戦!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その三日後の月曜日、明は登校を渋っていた。

 

先日の騒動で、自分の中に『化け物』が居る事はバレただろう。

どうせ登校しても、己の傷を抉る事になるだろう。

 

なのに......3年2組(あの場所)から逃げようとする明を、他の誰でもない明自身が責めている。

 

お前は卑怯だ、お前は卑怯だ、お前は卑怯だ、卑怯だ、卑怯だ、卑怯だ......。

 

心の声に抗う事など出来るハズもなく、明は気が付けば登校していた。

 

「それにしても......。」

 

下駄箱で靴を履き替えながら、明は違和感を覚えた。

 

ホームルーム10分前、いつもなら教室入りする生徒で賑わい始める。

......が、今日は人っ子一人いない。

 

「皆さん、どうしたんでしようか。」

 

怪しみながら教室に入ると、電気の消えた教室から、クラッカーの爆音がなり響いた。

 

思わず目と耳を塞ぐ明。視界を開くと、 教室は色紙などで一面中 飾り付けされ、まるで別世界のよう。

黒板には 自分を歓迎するウェルカムのポップ文字が書かれている。

 

「日向明さん、ようこそ三年二組へ!」

 

クラッカーを持った同級生たちが お祝いの言葉 とともに拍手喝采した。

 

「あの……これは一体!?」

 

「見ての通り、お前の歓迎会だよ。」

 

とんがり帽子を被った沙羅井が、さも当然の様に言った。

 

先日の一件も有ってか、疑念が晴れない明。

 

「でも、先生はご存じでしょう!?私の中には、悪霊が……。」

 

反論しようとする明を静止したのは なぜか季節外れのサンタコス姿の結衣だった。

 

「先生もああ言ってるんだし、楽しむときは楽しもう、ね?」

 

「……はい。」

 

屈託ない笑顔のゆいに促され、並べられた机の誕生席に座る明。

 

そこからは、いつもの校内では見られない、 宴会モードマックスの 2組一同の パフォーマンス祭りであった。

空前絶後のパパラッチ『サンシャインエイコー』の一発芸や、漫才コンビ、『花日&まりん』の王道漫才など、 プログラムを重ね 楽しむ家に少しずつ 明の表情が明るくなった。

 

最終プログラムを終えた頃、明の笑顔はすっかり板に付き、結衣は安堵すると同時に、真の作戦開始(・・・・・・)を控え、若干の不安を覚えた。

明を本当の意味で救う為の、真の作戦開始(・・・・・・)を……。

 

「楽しい?明ちゃん。」

 

「ええ、とっても……私、先生の事を誤解してた見たいですね、それに気付けたのも結衣さんのおかげです。」

 

「私は何も?頑張ったのは先生と、明ちゃん自身だよ……逃げずにちゃんと、今日来たじゃない。」

 

「結衣さん……ウゥッ!!」

 

雑談の最中、明は突如、胸を押さえて苦しみ出した。

 

「明ちゃん!?」

 

「ァアア……クゥゥ………!!」

 

結衣の呼び掛けにも応じず、ただひたすら苦しみ悶える明。

 

その時、彼女の口から赤黒い煙がふきでた。

 

それは、やがて不気味にうねり、人のシルエットの様になった。

 

「先生……明ちゃんが!!」

 

来たか(・・・)……!保険委員、作戦通りに吐かせろ!あの煙、まだまだ出るぜ!」

 

「了解!」

 

保険委員、エイコーと山本が、明に駆け寄る。沙羅井の予想通り、明は大量の煙を吐き出し、それは巨大な怪物に変わった。

 

昔話の赤鬼を連想させる、 赤銅色の皮膚を持った鬼神。

 

鋭利な双角と、不揃いな牙、黄色く濁った眼から、明らかな悪意と殺意が表れている。

 

 

 

ウゥッ……アアアアアアアア!!オノレェェェ!

 

 

 

「全員避難しろ!こっからが正念場だ!」

 

沙羅井の言い付けを守り、続々と教室を出る生徒たち。

 

そう。沙羅井の真の作戦とは、明の“幸せ”を増幅させる事で彼を燻り出し、そのまま除霊するというものだった。

 

「おいでなすったな。悪霊、冥藤院陰我(みょうどういんいんが)。 来て早々すまんが、ちと相談だ。 あの一件からもう10年。あんたもそろそろ俺の 生徒から出て 成仏したらどうかな?」

 

成……仏……。

 

「 この世で日向に固執していても、未来永劫先は見えね

ー。あんたもいい加減……。」

 

笑わせるなァァァ……!

 

鋭いツメを、明を担いで逃げ遅れた結衣に向けてムチのように伸ばす陰我。

 

あわや結衣を、そして明を突き刺そうとした陰我のツメを弾いたのは、沙羅井が両手に構えた日本刀だった。

 

「……先生!?」

 

「よかったぜ。天照寺からコイツ(・・・)も拝借しといて……。」

 

その刀は……!!

 

沙羅井の刀を目の当たりにし、陰我は少したじろぐ。

 

「逃げろ蒼井!こっからは……オレも加減できねぇ(・・・・・・・・・)からよ!」

 

「分かりました!」

 

 

 

沙羅井に従い、逃げた二人を確認すると、沙羅井は己の刃を、そして敵を見つめ直した。

 

「武者震いか、それとも恐怖の再来か?どっちにしても不思議はねえな。何せコイツは、うん百年前お前を斬り、祠に落とした一本だろう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あーーーあーーーあーーー!
また世界観の崩壊がアアアアアアア
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