15歳。ーサライさんー   作:鈴木遥

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本当に強い奴ってのは別れた女のことを3日で忘れる

・名刀『宗羅』

 

数百年前、相蓮一の霊能力者、日向功労斎の愛刀であり、悪霊『冥藤院陰我』を祠に鎮めた一刀であるが、その時は、霊能力者の愛刀として彼を封じる。その程度の意味合いしか無かった。

 

だが、今日の沙羅井が握るその剣は、数百年前とは比べ

ものにならない重さと存在意義があった。

明を、コイツから解放し、彼女の呪われた運命に決着を着けるという存在意義が……。

 

 

「ハァ……ハァ……。」

 

 

 

 

まだ……立つカ!?

 

 

 

 

 

昨夜の徹夜のテスト採点の 影響もあり普段の1/3 よりも体力がすり減っていた。

だが、息が上がっていても未だ膝をつかない沙羅井の瞳に、諦めの色は微塵も見えなかった。

 

 

 

 

ナゼ立つ!!そこまで命を削り、危険に身を投じ、そこまでして、貴様に何が残る!!

 

 

 

 

 

「オレァ、テメーが無力なばっかりに、大事なモン全部なくしちまった。せめて、まだ未来のある生徒たち(あいつら)位ちゃんと守りてぇんだよ!」

 

 

 

 

くだらン!あのガキ共とていつかはここを出て、大人になる!貴様との時間など、人生の一割も満たんだろう。

 

 

 

 

「お前はその一割以上の日向の時間を、台無しにしてきたんだろうが!!」

 

 

 

 

……!!

 

 

 

 

思わず陰我が後ずさりする程の気迫。それは沙羅井だけの物では無かった。沙羅井の中に居る何か(・・・・・・)が、陰我を全力で威嚇していた。

 

それは、これまで振り返った事もない、破戒僧であった生前の記憶。

還付なきまでに叩きのめされた、ある氏神との戦いの記憶……。

 

 

 

 

 

まさか……貴様(・・)はあの時の……!

 

 

 

 

「オレ《・・》が誰だろうと構いやしねえよ。それよりどうする?今ならお前を、『殺せる』ぜ?」

 

 

 

 

黙れ、黙れェ……。怨念の如くワシに付き纏いおってェ

ェェ……。

 

 

 

 

「小娘の身体に10年以上も執着するロリコン野郎にゃ、言われたくねぇな。」

 

陰我を挑発している『彼』は、沙羅井であって沙羅井ではない。

刹那、「ソイツ」を起こしてしまった事に、陰我は誰より後悔した。

 

彼の体は、いつ振りかぶったかも分からない刃に、真っ二つに裂かれていた。

 

一閃(いっせん)熾烈(しれつ)花吹雪!』

 

言い放ったのが沙羅井なのか、『別の誰か』なのかは分からない。

確かな事は一つ。勝負は着いた。真っ二つになった陰我の体が灰になり、跡形もなく消え去る形で……。

 

三年二組は、そして明は、安寧を取り戻したのだ。

 

ふと気が付くと、勝利を確信して叫んでいた。

明を救う事が出来た喜び、目の前のカペに打ち勝った、

他に無き達成感。

 

沙羅井の雄叫びを聞きつけた生徒たちが、続々と教室に

戻ってきた。

 

彼らの笑顔を、感激の涙を目にした沙羅井は、安堵から力尽き、その場に倒れ込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数分後、沙羅井は保健室のベッドで目を覚ました。

傍らには、養護教諭の白鳥が、心配そうにカオを覗き込んでいた。

 

「やっと起きた!何してるんです先生!」

 

「あれ……オレ一体……。」

 

「二組の子たちが私を呼びにきたから、何かと思えば、子供たちはパニック、沙羅井先生は気絶してる、もう何が何だか……。」

 

「校長に許可とって、今日だけ校舎を二組が貸し切ってたんスけど……そっかぁ、オレ倒れたのか……。」

 

「何があったんですか。まぁ、先生の心配なんてし、してませんけど!」

 

「……そうだ!日向明はどうなりました!?」

 

白鳥のツンデレにまるで気付く事なく、沙羅井は突然起き上がる。

 

「慌てないで下さい!さっきから先生のお目覚めを、ずっと待ってましたよ。」

 

白鳥が乱暴にカーテンを開くと、そこには心配そうに立ち尽くす明と、付き添いの結衣がいた。

陰我の呪縛が解けたからか、 明の瞳の色が白濁から綺麗に澄んだ群青色に変わっている。

 

「よかったぁ……。無事だったかお前ら……。」

 

「……先生、その、すいませんでした!」

 

明の謝罪に沙羅井はきょとんとしている。

 

「……何が?」

 

「先生が私を助けようとしてくれたのも知らずに、悪態をついてしまい……。」

 

沙羅井は、 少々苦笑いを浮かべた。

 

「悪い。この前のアレは、お前にショック受けさせる為にやったんだ……。」

 

「……え?」

 

「陰我のやろうをいぶりだすためには、お前の感情が高ぶるか沈むかどっちかしねぇとだった。

どうせならでかいショックを受けた後、より昂った方が効果はでかいかと思ってな。想定通りやつはお前から分離して、見事 俺がたたっきることができたってわけ 。

だが安心しろ 歓迎会の方は ちゃんと近くの喫茶店を貸し切って予約してる。」

 

少し自慢げに人差し指を立ててはにかむ沙羅井。

 

「……先生。」

 

涙目の明に沙羅井は微笑み、彼は結衣に視線を移した。

 

「っつー訳で蒼井!全員に連絡回してくれるか?明日十二時に、『CAFE チャールフリードリヒ・ガウス』に来てくれってな。」

 

照れくさそうに下を向く明だが、彼女の瞳にもう孤独や絶望は無かった。

紆余曲折あったものの、ここに来て ようやく手に入れた友情と幸せ。

 

それらを大切に胸にしまって、先の長い人生を謳歌する誓いを立てるのだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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