15歳。ーサライさんー   作:鈴木遥

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その名は八神

・天照寺に戻った沙羅井は、あいも変わらず飛びついてくる縁美をよけ、和尚と茶を飲んでいた。

 

「勤務中じゃろうが、良いのか?こんな所で休憩して……。」

 

「うちの校長は割と寛容なご性格でね。俺今日もう授業ねーから、休憩もらってきたのさ。」

 

「して、 話とはなんじゃ 金なら貸さぬぞ お主にこの前刀を託して、家にはもう飾れるものがなくなってしもうたからの。」

 

「借りたいのは金じゃない、知恵さ……。」

 

そう言って沙羅井は、ここ数日の異変について、一言一句漏らさずに説明した。

 

時々 夢の中や一人で考え事をしている時に、どこからともなく話しかけてくる声があること。

転校生の明やドナルドから、得体の知れない気配がすること。

先日の悪霊の一件で、とどめをさすまでの記憶が、途中で抜けていること。

 

和尚はしばらく考え込んだ後、 ゆっくりと重そうな口を開いた。

 

「遂にお主も、目覚めたか。」

 

「何がよ。」

 

「この相蓮、いや、古くから 自然と共存してきた民族の中には、ごくまれに神羅万象が怪物となって現れるものが憑依したり、その姿が見れるようになったりするものがいるらしい。

かくいうこの寺にも、 古くからそう言った者たちの記述が残っている。

明クンとドナルド君に関しては、間違いなくそれじゃろう。」

 

「 なんなんだ、奴らは……いったいどこから来んだよ!?」

 

「その起源や実態は未だ不明……じゃが、 奴らが人に危害を加えるときは、必ずそこに憑依者、契約者の意思が伴っておる。

変に逆なでするようなことをせねば、 うまくやっていけるじゃろう。 じゃがこの力は強力であり貴重である。お前は出来る限り悪意の持った怪物を生み出さぬ様、子供らに促す必要があるな。その怪物を、古来からこう呼ぶ……八神(やじん)と!」

 

 

結局得られた情報は、自分やドナルド達に憑依している化け物が何であるか、という事だけだった。

 

道中考え込んでいた沙羅井は、腰にピストルと、背中に杖を刺した少年が電柱の上から見下ろしているのに気付かなかった。

 

(あれが八神か。 確かに予想以上の力だが、まどかちゃんを敵さんから救い出すには、まだ兵力が足りないな。あの人にはもう少し、強くなってもらわねば。)

 

学校に戻った沙羅井は、青い顔をした校長に出迎えられた。

 

「ああ先生!探しましたよ!」

 

「どうなさいました?」

 

「厄介な編入希望者が二人、校長室に来てるんですよ!どうにか応対してもらえませんか?」

 

「厄介……というと?」

 

「見れば分かります。とにかく、校長室へ!」

 

校長室に入った沙羅井は、校長が入っていた『厄介』の意味をようやく悟った。

 

一組目は 保護者が強面黒スーツの男連れられている少年は 小顔で華奢な 体格に似合わず、背中に大剣をさし上下黒で統一している。 腰に下げた紐で繋がっている手裏剣も あまり友好的な雰囲気を見せない。

 

もう一組は、髪と皮膚が緑色。頭からは黄色と黒の角が生え、瞳は澄んだ青色をしている。

 

「ええ、皆さん、こちらが沙羅井先生です。」

 

先に反応したのは、緑色の親子の母親の方だった。

 

「はじめまして先生!リリア・マーズィア・オーギュストと申します。 今回初めての火星からの移民でして。

こちらは、娘のマァムでございます。」

 

「はじめまして、マァムです。得意技は……。」

 

『火星人発言』を特に突っ込むことなく、おっ!何か出来るの!?と沙羅井が目を輝かせた時、 突如テーブルに電流が走り、沙羅井と校長は、一瞬にしてアフロへ変貌した。

 

「 十万ボルト!なんつって……どうですか?」

 

「うん、 とあるねずみポケモンを思い出したよ。」

 

和やかな沙羅井と娘 に反し、母は必死に頭を下げる。

 

「これマァム!無闇に放電してはいけませんといつも言ってるのに!すみません、火星由来なもので、この様な不躾な……。」

 

(火星由来以前の問題な気が……。)

 

「あの、 一発芸はもうその辺でよろしいでしょうか?」

 

強面黒スーツの男が無愛想に言った。

 

「これは失礼いたしました!どうぞお話になって下さい!」

 

「では……。」

 

と彼は、正面にいる二人の教師でも、横に座っている少年でもなく、その手に持ったクリップボードに目を向けて話し始めた。

 

「彼の名は九郎和(くろうなごむ)。 まもなく15歳になります 戦災孤児でありましたが浜名コーポレーション会長に拾われ今日まで訓練されてきました 幼少期より心愛お嬢様と仲が良く、今回は会長のご命令により、 お嬢様の専属ボディーガードとしてやってきました。」

 

男がクリップボードを置くと 今度は少年の方が何やら古臭い口調で話し始めた。

 

「お初にお目にかかる。沙羅井殿。 今こいつが言った通り、俺の目的はあくまで心愛の安全確保。修学ではないため、その辺を配慮していただけるとありがたい。 特技は暗技……。

短い間になるだろうが、よろしくお頼み申す。」

 

明らかにカタギとは思えない言葉や行動を連発する 二人に、校長の顔色がどんどん悪くなる。

だが、そんな校長とは 対照的に 沙羅井は明るくこう答えた。

 

「面白い!二人共、 このわたくしめでよろしければ 謹んで、責任もってお預かりしましょう!」

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