15歳。ーサライさんー   作:鈴木遥

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バッド・パーティタイム

・沙羅井、そして3-2の生徒たちはそれぞれ別の方向からマアム奪還を画策した。

 

沙羅井と警官隊は、相蓮四天王が一角、藤堂の指示を待って、MARSアジトの現場に待機。

一方生徒たちは、なんと真隣の雑居ビルに潜入していた。ガサ入れに巻き込まれる前に、敵も気づかぬ一瞬のうちにマァムを回収しようという作戦だったのだ。

 

「おいエイコー、大丈夫かコレ」

 

「チッチッチ、我ら新聞部の情報網を侮って貰っちゃあ困るねェ。沙羅井先生たちのミーティングはウチの開発した最新鋭の盗聴器で筒抜けさ」

 

物騒なものを作りやがってと、桧山が呆れたため息をつく。まりんは後方から窓の外の様子を見るが、ビルに異常は見られない。

 

現場に来たのは、花日、結衣、まりん、高尾、桧山、日向とドナルド。総員7名。

桧山が教室で待機している新聞部と通信し、様子を伺っている。

 

物陰から目的地の様子を伺うスーツの男たちはおそらく刑事たちだ。

MARSとやらの一員が出てきたタイミングを見計らって、一斉にガサ入れ、もとい制圧するつもりらしい。

 

「乗り込んだところで、マァムは本当にいるのかな?」

 

「昨日から学校に来ていない、加えてこれだけの人数を警察が動員し、先生が愛刀を持って駆けつけてる。

状況証拠から見れば、まずいないと思うほうが難しい」

 

教室から、如月蘭の質問に唐沢が答える介護が聞こえた。

 

「どちらにしろ、結衣さんは私が全力で守ります〜!」

 

「あ、ありがとう……ハハハ」

 

目をハートに輝かせる明に、少し引き気味に答える結衣。

 

「日向さんの防御力は、ハンバーガー4個ぶ……アラ~!!」

 

いつものお約束通り、明がドナルドをしばいていた時だった。

桧山のトランシーバーからの声が聞こえた。

どうも、沙羅井と相蓮四天王側に動きがあったらしい。

 

「高尾、事前に伝えていたルートを使って隣のビルに忍び込むんだ」

 

「え、もう?」

 

聞いていた作戦よりも、迅速で大雑把である。

高尾は眉をひそめるが、エイコーの指示にはどこか焦りを感じる。

 

「こっちの予測よりも早く警官隊が乗り込んじまった!

あいつらそれに気付いたら人質に取ってるマァムたちに何するかわかんねえぞ!」

 

エイコーの言葉を聞いた桧山たちの顔色が変わる。

向こうには八神使いが紛れ込んでいるという話だ。

沙羅井も投入されたとなれば、四天王も総力戦の構えだろう。

 

最悪の場合、切羽詰まった奴らがマァムを手にかけないとも限らない。

 

「とにかく急ごう。これ以上連中の好きにさせるわけにはいかない」

 

3階の廊下の突き当たり。

非常階段の扉をガチャリと分けたその時だった。

 

「好きにさせるわけにはいかないって、それはこっちのセリフだ」

 

全員を覆うほどの巨大な影。

それは一人の巨大な男の影だった。やすめの姿勢で、頭髪は丸刈りにし、身長はゆうに180 CM はあろうか。

暗がりでも銀縁の眼鏡と、その下の鋭い瞳がキラリと光り、視界に捉えたものをそのまま殺してしまいそうだ。

 

「初めまして少年少女諸君。MARSのお手伝いをしている、高坂該という者です」

 

「そこをどいてください」

 

高尾がやっとのことで声を絞り出した。

高坂と名乗った男の、あまりに鋭すぎる眼光のせいだろうか。

誰一人声も出せず、指先を動かすこともかなわない。

 

呼吸をするのがやっとだ。

 

1ミリでも動いた瞬間、懐から銃を出して打たれるか、あるいはナイフかもしれない。

まるで、獰猛なライオンでも目の前にしているかのような、異様な緊張感をその肌で味わっていた。

 

「それはできんよ、君たちはもう中学生だから理解できるだろう。大人の事情ってやつさ」

 

「そんなこと僕には関係ない。友達の命がかかってるんです!どいてください」

 

必死で抗議する高尾の声は、ガタガタと震えている。

 

「君は一見頭よさそうだけど、案外そうでもないな……それとも、死にたい?」

 

その時高尾は、滝のように出る脂汗の正体が分かった。

気配だ。

高坂自身のではない。

 

彼の躰の内に潜んでいる、得体の知れない存在の気配。それをいつの間にやら、高尾は感じ取れるようになっていたらしい。

 

「まあその方が楽かもな。実際死ぬのが怖いのは、生きてる人間が持ってる命をなくすのが怖いって損得勘定。

実際死んだ後の方が後より楽な場所に行けるだけかも」

 

「もう一度だけ言います。どいてください」

 

「もう一度だけ言ってどうする、死ぬのか?」

 

白と水色が混ざったような、独特のオーラが体から出るのが見えた。

銀縁メガネの下から明確な殺意の色が出始めたからか。

 

上昇するオーラは男の頭上で滞留し、人の形を成した。

鋭い目に一本角が生え、白と水色のまだら模様の影。

 

八神だ。

 

沙羅井のを以前見たことがあるが、あの時はどこか神聖な感じがした。

だが、目の前にいるものは違う。

 

破壊と殺戮の衝動のみを孕んだ、正真正銘の怪物だ。

 

「悟【サトリ】といってね……目の前にいる君たちの思考を読み取ることができる。もう一度聞くが、今君、どうするつもりだい?」

 

「簡単です。あなたを、倒す!」

 

高尾の声には、微塵も自信などなかった。今の彼が言う倒す、とは完全勝利を意味していない。

1 mmたりとも、後方の仲間達に手出しをさせない。という意味である。

 

高尾の挑戦発言に立腹してか、あるいは彼の覚悟を本物と読み取ってか、悪意のナイフを高尾の首元まで近づける高坂。

 

「ったく……運が悪いよ君。よりによって、俺にいきなり出くわすんだからさ……」

 

「やめて!!」

 

愛する高尾の絶体絶命の危機に、やっとのことで金縛りを解き叫んだ花日。

悲痛な叫びも虚しく、彼の首が切断されようとしたその時。

 

ガシァャン!!!!!!!

 

ガラスが割れる大きな音がした。

非常階段の向かい、つまり、今しもMARSと警察の抗争が続いているビル。

その最上階の窓が粉々に砕き割れ、中から血まみれの人影が降ってきた。

 

「あらら……向こうの本戦はもう佳境だよ。さて、どーすっかな……」

 

窓から落下し、背中を地面に叩きつける音が響く寸前、花日は、その人と認めたくなかった者の名を呼んだ。 

 

「沙羅井先生……!?」

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