15歳。ーサライさんー   作:鈴木遥

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最近(この作品内で)大胆発言を連発の高尾君。ちょっとやり過ぎかなぁとも思いましたが、カレカノの状態で思春期迎えたモテ男はこうなる、というある人の持論を高尾君に当てはめたらこうなりました。
クールな高尾君が好きな読者の皆様、もうちょいお待ちくださいね。
もうちょい。



リア充のカンケーにクビ突っ込んだらどんなにうっとうしくても最後まで見届けろ

·沙羅井転任からはや一週間が過ぎ、新年度の授業も本格化し始めた頃、花日は以前にも増して焦っていた。

謎の殺人予告から既に一週間が経過し、未だ何の手がかりもつかめていないのだ。

犯人の言う『妹の敵』とは一体誰なのか?7番目のユダとは一体誰なのか?

疑問詞だけが増えるだけ増えていき、何ら解決の兆しが見えないままに、予告の期日は刻々と迫る。

その割には、高尾を始め友人たちとのわだかまりは溶けぬままだ。

ー沙羅井先生にも、騙されちゃったのかな……。

花日の不安はMAX寸前だ。

その日の朝、教室には誰もおらず、花日は久しぶりの一番乗りだった。席に着いた花日は、自由ノートを広げた。これまでの状況をまとめて見る。

「四、五年前の事故で高尾を助けて亡くなったお姉さんには双子のお兄さんがいて行方知れず。今回の予告状の差出人『7番目のユダ』との関係は不明……はぁ。これじゃ、分かるものもわからないよ〜!!」

頭がパンクしそうになり、髪をかきむしる花日。

「花日……。何やってんの?」

いつの間にか結衣とまりんの二人が、教室の入り口に立っていた。驚いてイスから転げ落ちる花日。

「うわああー!結衣ちゃんにまりんちゃん!?いいいいつからそこに!?」

「花日が入って来た時からずっとよ……。」

クールに言うまりん。先日の一件からか、やはり目を合わせづらい様だ。

「……あのさ、花日。」切り出したのはまりんだった。

「ん?」恥ずかしいからか、花日は上目遣いのまま返事をした。

「この前は、ゴメンね。」今度は二人揃って言った。

「え?」花日には何を言ったのかはっきり聞こえていたが、『ソレ』は花日にとって再確認したくなるほど信じ難く、何より幸せな言葉だった。

「ごめんなさい!私達、花日の事ちゃんと考えるべきだった!私達バカだから、一方的に花日の事責め立てちゃった!でも、このままじゃ嫌で……だって私達、花日の事大好きなんだもん!」

結衣が言い終える頃には、花日の涙は滝のようだった。

「結衣ぢゃ〜ん!まりんぢゃ〜ん!私こそごめんね〜!私の為に言ってくれたのに、大声出して〜!私も大好きだよ〜〜!」

三人はいつの間にかひしひしと抱き合っていた。

花日は確信した。この二人とならきっと、どんな困難も乗り越えられる。この先何があってもきっと大丈夫。だって、あれだけぶつかっても、またこうして仲直り出来たんだもん。

これからも、きっと……。

ーという事で、めでたしめでた……。

「ん?ちょっと待って。何か忘れてるような気がする……。」

何だと言うのだろう。親友二人との仲直りを果たし、他に何をやり残したと……。

「あー!しまった!忘れてた〜〜!」

「……何を?」

花日は二人に洗いざらい説明した。高尾の事、沙羅井の仕事の事、謎の殺人予告の事、一言一句漏らさずに。

話を聞く間、終始二人は驚いて口をあんぐり開けていた。

「なんつーか、話うますぎない?何で『ソレ』を花日に任せるんだろうね。」とまりん。

「う〜ん。そんな気もするけど、先週初めて会った時、私そんな悪い人に見えなかったけどなぁ〜。」と結衣。

「私もそう思う。だから当分は先生を信じて見ようかなーって……。」

「構わないけど、気を付けてよ。花日は優しいから、良い様に利用されたりして……。」

その日の授業のほとんどが、花日の手に付かなかった。

体育のバレーボールも、家庭家の裁縫もーこういう日に限って実技教科が多いー何をしていても事件の事が頭をよぎり、連鎖反応で高尾の顔が気になってしまう。相変わらずこちらを見てはくれないが、そうなると余計に気になったりする。

四時間目は美術。花日は今まで以上にげんなりした。担当教師が校内じゃ有名な変わり者、霧島高一(きりしまこういち)で、なぜか花日を弟子だと思っているからだ。

「オー、我が弟子ョ!最近元気が無いじゃあないか〜!一体どうしたんだ〜い!?」美術室に入った瞬間からこのテンション。

あなたのせいですよ、あなたの!普段ならそう叫ぶ所だが、今元気がないのは彼のせいではないから、流石にそれは出来なかった。

「ちょっと、彼氏と色々有って……。」

「厶!そいつはイカん!一刻も早く美術部に入りなさ……。」

「先生話聞いてました?彼氏と色々有ったんです!」

彼にこうして悩みを打ち明けられるのは、彼が秘密を絶対に漏らさない事と、大事な秘密も三日後には忘れてる事が関係している。

「えー、それでは授業を始める。本日は身近なアーティストについてだが、本校の卒業生である阿島辰郎(あじまたつろう)氏は昨年二十五歳の若さで『12のユダ』シリーズを発表し、中でも『7番目のユダ』は特別高い評価を……。」

「先生!阿島氏が『7番目のユダ』を発表したのは22歳。大学卒業後すぐです!」 

高尾に次ぐクラスの女子人気ナンバー2、唐沢信児が挙手した。

「ん!?オー!そうだった。また助けられたな。さすが二組のエリート、唐沢信児ィ!」

「いえ、そんな……。」

クラスの女子連中が嬉しい悲鳴を上げたとき、花日の脳内に電気ショックの様な衝撃が走った。 

なぜなら、霧島が今言った二つの単語に聞き覚えが有ったからだ。

阿島……7番目のユダ……。

「先生!ものすごいお腹いたいです!ちょっとトイレ行かせて下さい!」

「厶!構わんが、大丈夫かね?我が弟子よ……。」

ヘタをすれば内申が下がることなど百も承知だった。だが花日は、サライルームへ駆け込まずにはいられなかった。

事件のカギである『7番目のユダ』の正体を掴んだかも知れないのだから。

ルームの看板には『外出中だお』と書かれている。

職員室……いない。教室……いない。トイレ……いない。というか花日は入れないが……。

後は……。

と、花日は屋上へ走った。

いた。沙羅井は屋上の手すりにもたれながら、パックの緑茶をすすっていた。

「ん?綾瀬じゃねぇか。どうした?血相変えて……。」

「大変です!『7番目のユダ』の正体が分かりました!」

 

「ブーーー!」

 

沙羅井は驚いて緑茶でむせた。

「ゲホゲホ!はぁ!?何で!?」

花日は全てを説明した。この学校を卒業した阿島という画家について、彼の作品である『ユダシリーズ』について。

「なるほどな、分かった。校長に言ってその阿島の足取りを追って見るよ。サンキューな、綾瀬……。」

沙羅井は花日の頭をグリグリとなでまわし、ため息を一つついた。

「んで『テメェ』は、いつまで隠れる気だよ!」沙羅井は屋上の扉の方を向き、隠れていた一人の生徒の名を呼んだ。

「えぇ?高尾!!」花日はハッとなって後ろを向いた。

いつの間にか恥ずかしそうに立ち尽くしていた高尾。花日は無意識にカオを背けてしまった。

「高尾、どうして……?」

口をつぐむ高尾を、沙羅井は責める様に睨んだ。

「彼氏のクセして冷てえ態度取ってた割にのぞき見か?随分と悪趣味だなオイ……!」

「……悪かった、綾瀬。」ポツリと、だが明らかにそう言った。

「……え?」

「浜名がさ、二年間ずっとオレを脅してたんだ。イジメの標的を綾瀬に変えられたくなかったら、綾瀬に冷たくしろって……。」

「その脅しに乗った逆効果で綾瀬は辛え思いしてたんだろ?」

「分かってます。オレがバカだった。綾瀬に対するイジメが本格化し出した時はもう、どの先生に相談してもムダで……。」

パァン!高尾の頬をパーで殴ったのは、花日だった。

「じゃあ何!?高尾は二年間ずっと、一人で悩んでたの?私にも、先生にも誰にも相談しないで、ずっと苦しい思いしてたの?」

高尾は申し訳なさそうに、黙ってうなずいた。

「バカ!何で全部一人で抱え込むの!心配したよ!高尾だってイジメられるかも知れないじゃん!嘘でもいいから『別れる』って言えばよかったのに……。」

花日の言葉を途切れさせ、高尾は花日を真正面から抱きしめた。

「言える訳ないだろ?その場しのぎのでまかせでも、綾瀬と『別れる』なんて、言える訳ない……!」

沙羅井はヤレヤレと頭を押さえ、いつもより積極的な高尾に、花日は参りましたとでも言うように、高尾の腕の中で笑った。

「ごめんね。二年間も心配かけて。でも高尾、もう大丈夫だから……高尾と二人一緒なら、きっと強くなれるから……。」

元に戻った相蓮中学校一のカップルを祝福する様に、四月の美しい空はどこまでも澄み渡っていた。

「ところでお前ら、授業は……?」

『ああ〜っ!忘れてた〜......てか先生、雰囲気ぶち壊し〜』

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