15歳。ーサライさんー   作:鈴木遥

5 / 25
·この話一応ラブコメだったハズなんですが、サスペンス見たいになっちゃって、がっかりしちゃったちゃおっ娘の方もいらっしゃった事でしょう。ホントすいません。
でも大丈夫!7部からはちゃんと皆様が『待ってるモノ』を書きます!
もうちょい待って下さいね〜〜



やりたい事は何事も二段構えの作戦でやるべし

·沙羅井の取り計らいで花日と高尾の仲直りこそは成立したモノの、時間は無情にも流れ、ついに犯行予告の金曜日がやって来た。

この日の朝、沙羅井は校長室に呼び出されていた。

「それで?殺人予告はどうなりました、沙羅井先生……。」

「その事ですが教頭。そろそろこの件を公表した方が。せめて学校の先生方に位は……。」

教頭は紅茶を注ぐ手を止め、沙羅井を睨んだ。

「『ソレ』が出来ない理由は、しっかりご説明したと思いますが?」

沙羅井は慌てて反論した。

「分かってます!混乱を避ける為に、教頭とて苦渋のご判断で……。」

「でしたら!沙羅井先生が、穏便に、内密に、早期解決なさるのが一番です。ムダに皆さんの不安をあおる必要はありませんよ。第一、その様子だと捜査は前進していないのですね?全く、校長先生のご期待を裏切らない様にせいぜい頑張って下さいよ。」

沙羅井は言葉が出なかった。現に二週間自分は自分の生徒達さえも満足に守れていない。こうしている間にも、賊が何か仕掛けてくるかも知れない。

(綾瀬にキケンな事頼んどいて、このザマかよ……。)

それからの授業も何事も無く順調に進み、誰もが平和な一日を確信していた。が、それは突然に、もろくも崩れ去る。

沙羅井が二組の帰りのホームルームに入ろうとした時、聞きなれない警報が鳴った。

『緊急警報!緊急警報!全員教室を出ないで下さい!まだ廊下にいる生徒は、近くの教室に入りなさい。繰り返す、全員教室を出ないで下さい!まだ廊下にいる生徒は、近くの教室に入りなさい。』

(チッ!ついに賊が来やがったか……。)

「先生!一体何事ですか?」

さすがしっかり者の唐沢と言った所か、いち早く状況を確認し、クラスの者たちを落ち着かせようとしている。

その時、スピーカーからノイズが走り、野太い男の声が響く。

『静粛に!相蓮中の諸君!これはテロじゃない!正当な復讐行為だ。これから全三学年の教室に、我々が一人ずつ出向こう。諸君らは彼らの指示に従い、同胞が探している罪深き生徒、高尾優人を差し出せばそれで良い!彼を匿ったり、指示に背けば、一クラス分まとめて死刑だ。誰も死ぬことなくコトが済む事を祈ろう。』

(ふざけやがって……!高尾が死ななきゃ全員死ぬんだろうが!何が誰も死ぬことなくだ!こんなもんどうしろってんだ!)

放送が終わったと同時に、教室に黒ずくめの男が入って来た。当然教室はパニックになったが、男は天井に発砲し、黙らせた。

「静かにしてもらおうか?抵抗しなければ、手荒な真似はしないと前もって言ったハズだが?」

男は黒いマスクを被り、服を上下黒で統一しているが、特別な装備というわけでもなく、よく見るとどこにでも居る学生の様だ。

「よく言うぜ。入って来るなり空砲かます奴がよ……!!」

沙羅井は全力で睨みをきかせたが、男は全く応えていない様だ。

「アンタが担任か……?」

「いかにも、沙羅井と言いまーす。宜しく。」

「能書きは良い。高尾優人を出せ。出来ないなら、分かるな?」

男は沙羅井に銃口を向けたが、沙羅井は全く尻込みしない。後ろで見ている高尾が、ガタガタ震えていたからだ。

「待ちなさいよ。オレァどうしても納得出来ねえってんだ!10年前の件は、遺族との交渉は上手く行ったんじゃねぇのかよ?首謀者を……阿島を呼べよ。大方の検討は着くが、直接話がしてぇ!」

男は一瞬黙りこくったが、やがてマスクを脱いだ。

「オレだよ……。」

「あ?」

「オレが阿島だ。直接話ならしてたぜ?さっきからずっとなァ……。」

「なら話は早えな。高尾の家族は賠償金を払っただけじゃなく、一家総出で月に一度お前の妹さんに線香をあげに行ってる。たしかに失った命はでけェが、高尾家の誠意は評価すべきじゃないのか?現に、アイツは充分反省してる。」

「学校内では……だろ?」

「……何言ってやがんだテメェ?」

「騙せると思ったか、先生。オレァ知ってんだ。高尾ってガキが、妹に助けられた事を自分の超能力だって自慢してるんだってなぁ!」

「そんな事、高尾は言ってません!!」ガタガタ震える足を奮い立たせ、阿島を睨みつける花日。

だが、阿島はフン!と鼻で笑い飛ばした。

「ごまかそうったってムダだよお嬢ちゃん、オレァお前が高尾の彼女だってのもちゃんと聞いてんだよォ!」

花日は恐怖から涙が溢れていた。

高尾は、何か諦めた様に『もう良い』とだけ言って花日に着席する様うながした。

「オレが……高尾です。」

起立した高尾に、クラス中から戦慄の視線が注がれた。

「テメェかァァァ!!」

怒り狂い大声を上げる男の銃口が高尾に向き、クラスメイト達が悲鳴を上げた。

「ちょっと待って下さい!確かに10年前妹さんが亡くなったのはオレのせいです!でもオレは、妹さんからのご恩を、あの日から一度も忘れた事は有りません!」

「ごまかすんじゃねぇよ!オレァ全部聞いてるんだよォ!テメェのクラスメイトである『大門』のヤツが、全部教えてくれたんだからよォ!」

その時、突然沙羅井が阿島に飛び掛かり、銃は教室の隅へ飛んだ。

「大門!?何モンだそいつァ、モンだけに……。」

「テメェ、この状況でなんてくだらねーシャレを……。」

沙羅井は阿島を床に押さえ込み、睨みつける。

「お前さんその『大門』に騙されたんだ。嘘だと思ったらクラスの連中に聞いてみな、高尾が妹さんからのご恩を踏みにじる様な言葉を、一度でも吐いたかどうか。それで納得できない様なら、オレを撃って帰れ。」

「先生、駄目です!」花日が泣き叫ぶ。

「良いんだ綾瀬!お前らまだオレの何倍も未来があるだろうが?オレの命なんざ秤にかけるまでもねえ。」

その時、青いカオをした教頭が、二組に駆け込んで来た。

後ろには美術の霧島も居る。

「沙羅井先生!二組の皆さん!ご無事ですか!?」

「放送室を占拠した賊を抑え、警察とも連絡が取れました!もう大丈夫です!」

霧島の言葉に、クラスから安堵の声が上がる。

「聞いたか阿島。お前さんらの負けだ、今回は諦めな。その代わり、お前さんや妹さんに出来るだけの事をさせてもらうよ。」

「オレももう、ここまでか……。」

「何を言ってるんですか!?まだまだこれからでしょう!!」そう阿島に叫んだのは霧島だった。

「……アンタ、一体……?」

「自分は、阿島さんの作品に憧れてこの学校の美術教諭になりました。霧島と申します!」

「そいつは嬉しいが、オレは今や犯罪者。罪を償い刑務所を出ても、その時誰もオレの描くモノなんざ求めやしない。」

「自分は、待ち続けますから……。」

「!?」

「阿島さんが、罪を償い、この世界に戻られるのを、きっと待っておりますから……どうかまた、誰かの為に絵を描く阿島さんの背中を、追いかけさせてくださいませんでしょうか?」

涙ながらに訴えかける霧島に、阿島も男泣きを抑えられなかった。

「霧島先生……。」沙羅井は、霧島が持っている絵を愛する姿勢に、感銘を受けざるを得なかった。

数分後、警察が来校し、阿島は全校に謝罪した上で連行された。

その顔は、霧島との約束を守る為の決意に固まっていた様に見えた。

阿島が連行されてすぐ、教頭が沙羅井に謝罪した。

「申し訳ありません。沙羅井先生の助言を聞いていれば、この様な事は……。」

「よして下さい、生徒たちは無事でしたし、おかげで色々と勉強になりました。」

「これを明日にも公表し、保護者の皆様に謝罪します。」

「それが良いでしょうね。ただ、まだ事件は終わっていないでしょうけど……。」

「何か、おっしゃいましたか?」

「いえ、何でも……。」

沙羅井は気付いていた。阿島襲撃の混乱の最中、二組の生徒が二人、いつの間にか姿を消していた事に……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。