3章 邂逅
翌日、FFMにMSが運び込まれた。灰色の雲が空を覆い隠す暗い日だった。
荷台に深緑のシートを被せ、物々しい雰囲気で入る1台のトレーラー。各所に武装が装備された軍使用のものだった。
フーリ「…また荘厳なこった。こんなハリネズミ見てぇなトレーラー、軍以来だぜ見たのよ。」
ダイチ「でかい…18m級?」
ソラ「わかるの?」
ダイチ「伊達にMS工学やってないからね。それにしてもこの雰囲気は…」
暗い天候も合わさり謎のMSは更に不気味さを放つ。運んできたのはたった1人の男だった。
入口を抜け敷地を移動する。ダイチは一瞬運転席の男と目が合う。
???「…………。」
トレーラーはそのまま工場内へ進んでいく。ゆっくりと止まり、男が降りてきた。
???「…………。」
男は1度周りを見渡すとと荷台へ向かう。そして1箇所1箇所シートのロックを外し始めた。
慌てて作業員は手伝いに向かう。全てのロックが外れ、シートが外された。
塗装がされてない鋼色の機体が現れた。見たこともないデザインの機体。脚は脚先に行くほど細くなり一見アンバランスに見える。腕は左腕しかない。どうやら修理箇所は右腕のようだ。最後に頭部が現れた時だった。
作業員A「コイツは…」
作業員B「嘘だろ…伝説の…?」
作業員C「まさか…ツノがないぞ…?」
作業員D「いや…このヒゲは間違いねぇって!」
頭部を見て口々に言い始めた作業員達。ざわめきが工場内に響く。不思議そうにダイチ達も見に行く。見た瞬間、息を飲んだ。まるで歴戦の覇者のような顔立ち。この時代ではまず見ないツインカメラ。マスクパーツにある特徴的なスリット────
ダイチ「………ガンダム!?」
それは時代の節目に現れ、常に時代を動かしてきた。ある時は救世主。ある時は厄災。その強大なる力を持って世界を守り、壊し、変え続け、今尚語り継がれる。伝説のMS────
フーリ「コイツは驚いた…まさかガンダムだとはな。しかし…」
フーリはまじまじと機体を見つめる。目は真剣になり、職人のそれへと変わった。
そして目は頭部に差し掛かる。目は『ある物』を見つける。
フーリ「ッッッ!!!」
『ある物』を見つけてしまったフーリが顔色を変える。みるみる青ざめていくフーリ。そしてナンシーも動揺を隠せなかった。彼女もまた、『ある物』が何かを知っているようだった。
ソラ「…お母さん、お父さん。大丈夫…?」
青ざめて固まる2人を見たソラが言う。ソラは不安を感じ、フーリにも声をかける。
ハッと我に返り、ソラに言う。
フーリ「大丈夫…だ。お前は母さんとダイチくんと家に戻っているんだよ。いいね?」
ソラ「大丈夫そうじゃないじゃん…何があったのお父さ──」
話を遮りダイチはソラの手を引き連れて行こうとする。
ダイチ「行こうソラ。戻って待っていよう。」
ソラ「嫌よ…お父さんが心配なの…」
ナンシー「お父さんなら大丈夫よ。行きましょ。」
ソラは渋々了承し、家へと戻ったのだった。
4章 『タイムトラベラー』
────雨が降り出した。不安を加速させるように雨足は強くなる。ダイチはソラの部屋にいた。ソラはベットでうずくまっている。ダイチは窓の外を見ながら考え事をする。
(おじさんのあの反応…明らかに何かを知ってる顔だ。あのMS、ガンダムに何があるんだ。そもそも見た感じあんな機体設計自体わからない事だらけだ。教科書にも書いてないし、講和で習った覚えもない。過去の…まさか未知の技術…?それとも…)
ダイチ「…んなわけないか。SF映画の見過ぎかな。いくら時間移動が出来ても…ね。」
頭の片隅に浮かんだ仮説を心の奥にしまう。外から話し声が聴こえてきた。フーリの声と、知らない声。
ソラ「お父さん…?」
目を覚まし部屋を出ようとするソラをダイチが止める。
ダイチ「待て…………あの男も居る。」
声の正体は件の男だった。部屋のドアを開け階段下を覗く。2人はリビングへと入ったフーリ達を見て音を立てないようにリビングの前まで進んでいった。聞き耳を立て、話し声を注意深く聴く。
フーリ「────なのは分かった。お前さんが『あの時代』から来た事も、な。」
???「察しが早くて助かる。あの時代に軍にいた貴方になら頼めると…。」
フーリ「…他にも居たはずだが…そうか、俺だけだからか。」
???「そう、あの頃の技術を知っていて尚且つ軍属ではない…貴方にしかできない仕事だ。」
フーリは顔を真っ赤にし、机に手を叩き付けた。
フーリ「冗談じゃない!アンタの問題にウチの従業員を巻き込むな!唯でさえオーパーツ扱いの『アレ』をこの時代に持ち込みやがって!アレがどんなに危険なモノかわかってんだろうな!?ヘタしたらこの辺一体が消えちまうかも知んねぇんだぞ!」
物凄い剣幕で怒鳴り立てる。影で聞いてるダイチとソラも内容もさながらフーリの迫力に震え上がった。
ソラ「お父さん…?」
ダイチ「1回戻ろう。これ以上はやばい。」
2人はリビングを離れ部屋に戻る。ドアを閉めると
ソラ「ダイチ、さっきの話…。」
ダイチ「あぁ…。」
フーリの放った一言が2人の脳裏に浮かんだ。
────『アレ』をこの時代に持ち込みやがって!アレがどんなに危険なモノかわかってんだろうな!?ヘタしたらこの辺一体が消えちまうかも知んねぇんだぞ!────
そんなに恐ろしいものがあのMSに積まれていたなんて…。と2人は思った。
ソラ「ダイチ…!」
ソラはダイチを抱きしめる。全身が震え、恐怖がひしひしと伝わってくる。無理もない。あの話は彼女には刺激が強すぎた。
ダイチ「大丈夫だ…大丈夫。」
ソラをなだめる。しかし彼の恐怖心も増大していく一方だった。
(オーパーツ…?消し飛ぶ…?…わからない…わからない。そこまで危険なもの…核?いや、MSのジェネレーターには熱核反応路…。違う。なんだ、何なんだ。いやまさか…もしかして…)
ダイチ「別の世界…?」
ソラ「なに…それ…?」
ダイチ「時間移動できるんなら…空間だって移動出来るはず…映画の見過ぎかもしれない。けど、あのMSは…ガンダムは────」
刹那───窓の外に閃光と共に轟音が轟いた。地響きで家全体が揺れる。
ソラ「雷…!?」
ダイチ「…違う!アレは………軍のMS!?」
立ち上がる炎と煙の中からMSが現れる。雨が流れる装甲で赤い光りを鈍く反射し、佇んでいた。
雨が降り注ぐ中 突如起こる閃光と轟音
現れたのはMS その襲撃は何の為に
そして謎のMSに積まれている『アレ』とは
次回『屈折』
時代は《直線》とは限らない