可能性がある限り、彼らの攻略は終わらない   作:ぺんたこー

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世の中甘くない。それが仮想の世界でも

 誤解されないよう最初に言っておく。俺の名前は『ko-ta』コータだ。故にたこでは無い。俺のことをたこと言ったあの女性は向こうの世界で幼なじみの奈々、この世界では『zerdoa』ゼルドアと言う名前だ。

「いや〜まさか宿屋に引きこもってるとはねぇ〜」

 にやにやしながらゼルドアが歩み寄ってくる。兜のせいで声が割れていたのと悪趣味な装備の色からして男だと思ってしまったが、兜を外して見えた顔はどこからどう見ても女だ。

「なんで俺がいるってわかったんだ?始まりの街はこんなに広いのに…」

「なんでって、たまたまだよ?クエストの帰りに道を通っていたらたこがいて話しかけただけ」

 偶然か……ってクエストの帰り!?ゼルドアはクエストに行ってたということか?パーティーに入るではなく、コンビを組もうと言っていたからソロなのだろう。

「でもゼルドアはなぜ俺なんかとコンビに?」

「ゼルでいいよ。言いにくいだろ?いや〜そろそろソロじゃきついし先頭集団目指すのは諦めてたところだし、どうせならこの世界を楽しまないとなーって思ってたらたこが出てきたから」

どうしたらこんな考えが出てくるのだろうか。恐怖で始まりの町から出られないプレイヤーが沢山いるはずなのに。少なくとも俺だってその一員だ。っていうか……

「たこって言うなー!」

 

この際だから言っておこう俺はデスゲーム開始からゼルに出会うまで食料を買いに行く以外に宿屋を出たことがない。つまり圏外にも行っていない。なのでレベルは1のままだ。

まだログアウトボタン消滅に気づいていない時に何匹か雑魚mobを倒したくらいだ。武具も町で買える格安のものだしずっと引きこもっていたこの宿屋だって格安だ。

「それで…コンビ組んでどうするの?」

 格安宿屋にもたれかかっているダサい魔王いや、女帝は少し悩んでから言った。

「やりたいことは色々あるけど、たこはレベルが低すぎる!まずは経験値稼ぎだろ」

「経験値か……」

「って言っても効率のいい狩場はほとんど狩り尽くされたからな…」

 こいつは本当に女なのかと思ったがセンスの良いとは言えない装備をまとったアバターからな発せられる言葉は乱暴だが、声は完全に女のものだ。

「本当は破壊不能オブジェクトを破壊するってのが次にしたい実験だったんだが先に無限モンスターリポップを検証するか!」

「………え?」

「そうと決まったら狩り場へ行こうぜ!」

ゼルは俺の腕を掴んで引っ張って、圏外へと連れて行った。

 

「具体的に何をするの?」

俺はゼルに連れられて圏外の森の中を歩いている。いつどこから襲ってくるか分からないというのゼルの腰に武器はない。

「経験値稼ぎ」

「どこで?」

「圏外」

「どうやって?」

「モンスターを倒す」

だめだ。全然聞きたいことが聞き出せない。どうすれば聞きだせるのか考えていると急にゼルが止まるので背中にぶつかりそうになった。なんとか踏み止まり、前を見るとそこは森だった。

「着いたぞ」

見渡す限り森だ。森としか表現できないほど森だ。木以外のものが見当たらない。

「じゃぁ、手短に説明するからな」

 そう言うとゼルは数歩歩き、メニューウィンドを開いて武器をオブジェクト化した。それはどう見ても斧だ。

「この先にモンスターが二匹だけポップするところがある。そこでたこはまず、一匹だけを倒す。そんでもう一匹から逃げろ。最初に倒した方がリポップすると同時に二匹目を倒せ。そうしたら バグって今倒した奴がリポップするはずだ。」

「ちょっと待て!バグるってどういうことだ?」

「リポップすると同時に倒すとシステムがリポップ完了を認識できず処理中の不具合だとみなされ再度処理が行われる。だから圧倒的な時間短縮ができる」

ゼルはウィンドを開くとコンビ申請をしてきたのでYESを押す。

 システムを欺くことなんてことができるのかと思ったが左上に現れたHPバーを見て言葉が詰まった。『zerdoa』の文字のとなりのレベルは二桁を超えていたのだ。

「じゅ…12レベ!?」

「おう、この方法で二日間ぶっ続けで狩ってたらいつの間にかこうなってた。まぁ、目標は明後日の朝までに10レベ越えだな」

 ゼルドアは、にししっとわざとらしく笑った。

 

 結果として俺はレベル6まで上がった。結果としては、だ。

 結局、システムを欺くことはできなかった。一度はできたことはゼルのレベルが証明している。でも俺がした時にはそんなことはできなかった。ゼル曰く、不具合が運営に見つかってアップデートされたそうだ。

 あれから三日間かけて森だの海だのダンジョンだのに籠もりひたすら雑魚モンスターを倒してきた。

 ゲームのアップデートをこれほど恨んだのは初めてだ。ゼルは何を考えているのか全く分からないが今回のようにシステムを欺いてみせたんだ。次も奇想天外なことを言い出すのだろう。

 そう言えば経験値稼ぎを提案する前に破壊不能オブジェクトを破壊するとか言ってた気がするが多分気のせいだろう。

 

 どうか元の世界へ戻れますように…

俺は夜空のように真っ黒な鉄の天井に願った。




こんにちはぺんたこーです。
 これはまだデスゲームが始まって一週間くらいしかたっていない時という設定です。つまり、ゼルドアのレベル12はチートレベルです。
こんな間抜けなバグをカーディナルが察知できなかったのもゲーム開始直後だったのかもしれません。
 では、また次のあとがきでおあいしましょう。
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