修学旅行、球技大会が終わり、一学期もあとは期末テストだけとなった。もちろん、手を抜くつもりはない。
「私達は太陽だ。名門椚ヶ丘中で上から皆を照らしている」
こんな厨二病みたいな台詞、私の黒歴史として頭の中に残るだろう。仕方が無いことだ。うん、本当に仕方が無いことだ。
「この学校の光を守ろう……私と共に!」
私が綺麗事を言うとクラスの皆は賛同して拍手と声援を送るのだ。もう慣れた事だ。
「浅野さん、この問いの事なんだけど……」
「ああ、確かにそれは難しいよね」
理事長から言われた事だ。A組の成績を上げろと。その為に放課後という貴重な時間を使って勉強会を開いたのだ。これで勝てなかったら一人ずつ殴ろうかと考えてるくらいだ。
と言ってもこの期末テストは負けなければならないのだが。
「えっーと、それは公式を使って……」
憂鬱である。
私は先生じゃないんだ。これくらい自分で教科書とノートを持って先生にでも教えてもらえよと思うんだが。
他の五英傑達を見ると、蓮は女子口説いているし、瀬尾は相変わらずのALに住んでいましたよ自慢。荒木は腹が立つような言い方で責めるし、小山は暗記、暗記うるさいし……。
「はぁ……」
思わずため息を吐いてしまった。
今日の勉強会が終わり、帰る前に理事長室に寄るようにと言われていた事を思い出し、理事長室に向かった。
「浅野です。失礼します」
学校では親子なんて関係はない。教師と生徒だ。
「A組全員がトップ五〇に入り、五教科全てでA組が一位を独占するのが合格ラインだ」
そうしたいのは山々だ。理事長の言う事を聞かなければどうなるか分からない。だが。この勝負の結果は知っている。だとしても私は“彼”にならなければならない。
「では、こうしましょう理事長。私の力でその条件をクリアしましょう。そうしたら、生徒では無く、娘として一つおねだりしたいのですが」
「おねだり……?父親に甘えたいとでも?」
まさか、私が生きてきた十四年という短い人生で一つもそんな事は言った事が無い。これも“彼”の為だ。
「私はただ知りたいだけです。E組の事で何か隠していませんか?」
一瞬、理事長の表情が変わった。
「まさかと思いますが、教育以外にもやばい事に手を出していらっしゃるとか?」
私が喋ろうとすると頭の中に台詞が流れてくる。カンペという奴だ。
本来、彼が言うはずだった台詞を私が代わりに言っているにすぎない。
「知ってどうする。ネタにして私を支配するでもする気かい?」
「当然でしょう。全てを支配しろと教えたのは貴方ですよ」
「流石は最も長く教えてきた生徒だよ」
不気味な笑い声が乾いた部屋にヒビを入れていった。