「エクスプロージョン!!」
轟音が森の中に響き、周辺に陣取っていた魔王軍の悲鳴が聞こえてきた。
「なっ………なあああああああああ」
「今のは何だ!?」
「敵襲!敵襲だ」
魔王軍は慌てふためいていた。その間に急いで僕らは砦へと撤退をした。砦に戻り、カズマさんが戦果を報告をしていると、魔王軍が現れた知らせを受けた。
「防衛戦なら余裕だね!さぁ、勇者の力を見せるよ」
歌野さんの声を聞いた瞬間、全員が迎撃準備を始めるのであった。僕は須美と牡丹と共に遠距離で戦いに参加することになった。
防衛戦はこちらの勝利だった。みんなが戦勝ムードになっている中、僕はめぐみんに話しかけた。
「どうしたんだ?」
「何がですか?ウミ、早くみんなのところに行って宴会に参加したらいいんじゃないですか?」
「いや、ちょっと気になることがあって、お前、ウォルバクさんとどういう関係なんだ?」
「関係って、ウミやカズマの方こそ親しげに話しているじゃないですか。私としてはそちらのほうが気になるんですが」
「えっと……この砦に来る前の宿泊施設でカズマさんと一緒に会ったんだよ。そこでちょっと世間話をしていて……」
「………そうですか」
めぐみんはそう呟きながら、近くにあった椅子に座り、僕もその隣りに座り、
「勇者部五ヶ条1つ、悩んだら相談!何か悩んでいるなら僕に相談してみろ」
「………その勇者部五箇条ってよくユウナとウミが言ってますが、何なんですか?」
「これか?まぁ言うなれば勇者部の決まりみたいなもんだ」
「他にはどんなのがあるんですか?」
「そうだな……一つ挨拶はきちんと、一つなるべく諦めない、一つよく寝て、よく食べる、一つ悩んだら相談!一つなせば大抵なんとかなるだよ」
「何だかゆるい感じですね。でも、何だか元気が出てきました。ウミ、実はウォルバクさんはもしかしたら私が目標にしていた人かもしれません」
目標にしていた人って、確かめぐみんが危ないところを女の人に助けてもらったんだっけ?それがもしかしたらウォルバクさんだって言うのか?
「でもあの人は……私のことを覚えてないみたいでした。でも私としては納得できません」
ウォルバクさんがめぐみんのことを覚えてないか……僕としてあの時の言葉を思い返すと覚えている気がするんだけど……
「また会えたら話してみたらどうだ?」
「………そうですね」
めぐみんは笑顔でそう告げ、どこかへ行くのであった。さてこういう時はどうしたらいいものか………
それから何日もエクスプロージョンを撃っては、魔王軍迎撃を繰り返す内に魔王軍は……
「うわああああああ、神様神様!?ウォルバク様ぁ!?」
「俺、生まれ変わったら魔族じゃなくって猫になるんだ。それで、毎日に美人のご主人様に餌をもらって可愛がられて……」
「これは夢だ。そう目が覚めたらいつもどおり散歩に出かけて、帰ってくる頃には母さんが狩りたてのブラッドファングでステーキを……」
「おおおおお、俺は魔王軍準幹部と目されている男だぞ!?俺を生かしてくれれば、きっと魔王さまが身代金を……」
「エクスプロージョン!!」
泣いて逃げ回るようになっていた。おまけにめぐみんのテンションも凄すぎて、何だかこっちが魔王軍みたいな感じになってきた。敵も恐れて隠れてしまい出てこなくなってるし、もうこれ以上は爆裂魔法を撃たないほうがいいかもしれないと思い始めたときだった。
「探したわよあなた達、やっと会えたわね」
ここ最近攻めてくることがなかったウォルバクさんが苦々しい顔をして僕らの前に出てきた。
カズマさん達も突然現れたウォルバクさんと距離を置くために後ろへと下がっていこうとするが、ウォルバクさんの殺気のこもった目のせいで立ち止まってしまった。
「あなた達は暴れすぎたわね。これ以上は見過ごすわけにもいかないのよ。言葉を交わした相手とはあまり戦いたくないけれど、仕方ないわね………」
「ちょっと待ってくれ。俺もあんたとは戦いたくないんだよ。何せ一緒に温泉に入った中なんだし」
「「えっ!?」」
確かに温泉に入った中だけど、それをここで言う必要あるのか?ウォルバクさんも耳真っ赤にしてるし
「あなた達のことは調べさせてもらったわ。ベルディア、バニル、ハンス、シルビア。その四人の名前に覚えがあるわね。流石はおとぎ話の勇者の末裔と集合体の勇者ね」
おとぎ話の勇者?誰の事を言ってるんだ?
「おとぎ話って何の話ですか?」
「俺は普通の最弱職の冒険者ですよ。そんなおとぎ話の勇者の末裔なんて……」
「知らないみたいね。そのおとぎ話に出てくる勇者の名前は『サトウ』っていうのよ。こんな珍しい名前をしていて、とぼけるなんてね」
まさかカズマさんが勇者の末裔だなんて………そんなわけ無いか。サトウって名前は僕等がいた世界でも一番多い名前だ。ウォルバクさんはどうやら勘違いしているみたいだな。
「あの私の事、やっぱり思い出せませんか?」
杖を構えていためぐみんが頬赤くし、目を紅く輝かせながらそう告げた。だけどウォルバクさんはそんなめぐみんを一瞥し、
「………何度も言うけど、覚えてないわ。でも大丈夫。これから貴方のことはよく覚えておくわ。数多くの部下を葬った敵対者としてね」
この人は………いい加減にしてほしいものだ。僕はウォルバクさんが詠唱に入る瞬間、切り札を発動させた。
「義経!!」
ウォルバクさんは僕の攻撃に気が付き、すぐに後ろへと下がった。
「いい加減にしろ!!あんたはいつまでめぐみんの気持ちをないがしろにするんだ!!」
「………ないがしろにしているつもりはないわ。本当にその子のことは覚えてないもの」
「だったら、あの時どうしてゆんゆんの名前を聞いた時に、『あなたのその名前もあだ名じゃないのよね』って言ったよな」
「…………」
「それってつまりゆんゆんと出会う前に、紅魔族の誰かと会っていたんだよな」
「………黙りなさい」
ウォルバクさんは顔をうつむかせながら、僕の斬撃をかわしていく。いや僕としてはわざと当たらないようにしているだけなんだけど……とりあえず僕は攻撃をしつつ、カズマさんたちの方を見た。めぐみんは俯いたままで、ゆんゆんは何とか励ましていた。そしてカズマさんは……
「それもまだ幼い女の子の紅魔族に……めぐみんに出会っていたんだろ!!」
「黙れ!!」
「あんたはめぐみんのことを覚えていたんだろ」
僕は切っ先をウォルバクさんの首筋に当てた。ウォルバクさんは目をつむったまま動こうとしなかった。
「………悪いけど彼女のことは覚えてないわ。それに今は魔王軍幹部と勇者との戦いの最中、寸止めをする必要はあるかしら?」
ウォルバクさんがそう呟いた瞬間、ウォルバクさんは生太刀を蹴り飛ばし、僕の両腕を掴んだ。
「………動かないほうがいいわよ。このまま貴方を押さえ込みつつ、爆裂魔法を放てば……」
「出来るんですか?その……」
僕があることを言いかけた瞬間、突然ウォルバクさんは自分の体に起きた異変に気がついた。
「魔力が……吸われている?」
「ドレインタッチだよ」
ウォルバクさんの後ろにはカズマさんがいた。カズマさんは僕の目線に気が付き、潜伏スキルを使って、ウォルバクさんの後ろへと回り込んでいたのだ。そして気を見てドレインタッチでギリギリ爆裂魔法を放てないくらいまで魔力を吸ったのだ。
ウォルバクさんは諦めたかのように、膝をついた。
「貴方は囮だったということね」
「まぁね。僕もウォルバクさんとは戦いたくないんです。あんな風に温泉で楽しそうに話していたんですから……見逃しますから、これ以上はちょむすけのことや魔王軍とかかわらないでください」
「………でもここで私を見逃した所でどうにかなると思うの?きっと砦にいる人間はあなた達のことを非難するわ」
それは……言われてみればそうだな。どうしたものか……そんなことを考えていると、カズマさんはめんどくさそうにしながら……
「それだったら、ちょっと苦しいですけど………俺に考えがあります」
砦に戻り、カズマさんはみんなにある事を告げた。それは……
「何?カズマ、あんたあの邪神を倒したの!?」
「あぁ、ウミが頑張っている間に、後ろからな。ほら、見てみろ。一応御首みたいなもんとして、ウォルバクの髪の毛だ」
カズマさんはアクアさんやダクネスさん、砦のみんなにウォルバクさんの髪の毛を一房見せた。アクアさんはそれに触れると……
「確かに神格を感じるわ。それにしても流石はカズマさん、邪神を姑息な手を使って背後から倒すなんて……鬼畜ね」
「お前な……素直に褒められないのかよ?」
カズマさんとアクアさんが喧嘩を始める中、ダクネスさんと友奈が僕にあることを聞いてきた。
「本当に邪神を倒せたのか?私としてめぐみんの爆裂魔法で決めるかと思ったんだが……」
「それにめぐみんちゃんの姿が見えないんだけど……」
う~んこの二人には本当のことを伝えたほうがいいかもしれないな。
「実はと言うと倒してはないんだよ。ただ改心させただけで……あの髪の毛も切っただけだし……」
僕は真実を話すと、ダクネスさんあたりは怒ると思っていたけど……
「そうか、お前らしいな」
「僕としてはあんな風に話せるから、どうにか話し合い持ち込めないかなって……」
「海くんは優しんだね。めぐみんちゃんを傷つけないようにしたんだよね」
友奈は笑顔でそう告げるのであった。僕は恥ずかしそうにしていると友海がめぐみんの居場所を聞いてきた。
「師匠は?」
「そうだな………なぁ、友海、ちょっと協力してくれないか?」
ウォルバクさんを生存させましたが、何だか最後あたりグダグダになってすみません。