僕は一人、街の広場で佇んでいた。
「これまで以上に悲しい思いをするか………」
確かにそうかもしれないな。二度と会えないと思っていたはずなのに、また再会できたんだ、だけどまたすぐに離れ離れになってしまう。それはかなり辛いことだよな
「どうしたんだ?そんな所で……」
声をかけてきたのは若葉さんだった。若葉さんは僕の隣に座り……
「友奈から聞いた。お前の友達が来ているんだってな」
「明日には帰りますけどね」
「本当のことを言わなくていいのか?お前が死んでるって……」
「それは……」
多分元の場所に戻ったら誰かから聞くだろうけど、話したほうがいいのかな?
「とりあえず後悔だけはしないほうがいい。後悔してしまうとこれまで以上に辛い思いをするぞ」
「…………」
若葉さんはそう言い残し、その場から去っていった。
「後悔だけはしない方がいいか」
僕が死んだことを伝えるべきだろうな。でも、それだけでいいのかな?
しばらく考えるが、何も思いつかない。
すると今度は銀が僕を訪ねてきた。
「こんな所で何してんの?一緒に案内してやればいいのに……」
「ん?ちょっと考えることがあって……なぁ、銀。お前はもう一度そのっちや須美に会いたいか?」
「二人に?」
銀は傷ついた二人のために、一人でバーテックスと戦い、その役目を終えた。きっと何かしらの後悔があるんだと思っていた。
「確かに会いたいさ。だって色々と話したいことがあるんだから……」
「銀………」
「でも、今回みたいにあの二人が来るわけ無いから………私は友奈に伝言を頼んでおいたからそれで充分だよ」
銀は笑顔でそう言い、僕の肩を叩いた。
「でも、お前はちゃんと話さなきゃいけないぞ。今のお前の顔、凄く暗いからな」
銀はそう言って立ち去った。
「やっぱり話さないと駄目か………そうだよな。後悔のないように……」
僕は屋敷に戻るが、まだ友奈たちは戻ってきていなかった。帰ってきたら話そうと思っていると、休憩をしに来たのかアクアさんとダクネスさんがリビングに入ってきた。
「あら、随分と暗い顔をしてるわね。何か悩んでるの?」
アクアさんって何でそういう所だけ鋭いんだろうか?女神の力なのか?
「もしかして彼女と別れるのが嫌なのか?」
ダクネスさんも僕が何に悩んでいるのか気がついているみたいだ。
「別れるのは嫌だって言うわけじゃないですよ。いつかは誰かとお別れをしないといけないですから………」
僕はそう言うとアクアさんはため息を付いた。
「何だか面倒な方ばっかり考えてるわね。そんなウミにいい言葉があるわ。迷ってる時に出した決断はね、どの道どっちを選んだとしても、きっと後悔するものよ。なら、今が楽ちんな方を選びなさい」
楽ちんな方か……それもいいかもしれないけど……
「アクアさん、僕は………」
「でも、あくまで答えを出すのは貴方よ」
「アクアの言うとおりだ。こればかりはお前が選ぶべきことだ」
二人がそう言い、僕はある事を決意したのだった。
それから友奈を交えて夕食を食べ終え、僕は一人部屋で休んでいると友奈が訪ねてきた。
「友奈?」
「海くん、そのね………聞いたよ。海くんが勇者になったって……海くんが死んじゃってるって……」
カズマさんが話したのかな?でも勝手に話すような感じはしないだろうし、何かあったんだな
「あぁ、僕はみんなの事を助けようと思って、この身を……」
「………海くんならそうするって思うよ。だって、誰かを助けるために自分がどんなに傷ついてもいいって言ってたもん」
「それで前にお前に怒られたよな。少し前にある人にも怒られたし……」
「海くん……」
「ごめんな。お前たちを助けようと思って勝手に死んで……」
突然友奈が抱きついてきた。僕は戸惑うが友奈は……
「謝らないで……海くんは私達のためにやったんだよね。ありがとうね。私達のために………ごめんね。いつも心配かけて……」
「いいんだよ。僕がそうしたいって思っただけだから………」
「海くん……またね」
「あぁ、またな」
友奈は涙を流しながら、別れの言葉を告げるのであった。
そして友奈が帰還する準備が整った。その場にはカズマさんたちの他に、若葉さん、ひなたお姉ちゃん、友奈さんが来ていた。
「それじゃ一日だけだけど、お世話になりました」
「ユウナ、今度来た時は私の爆裂魔法見せてあげますね」
「うん、楽しみにしてるね」
友奈がみんなに挨拶をしていく中、カズマさんはある事を話した。
「悪いな。めぐみんがお前の特典のこと話したからつい……」
「ううん、怒ってないですよ。僕もその事も話そうと思っていましたから……」
すると友奈が立つ魔法陣から光が現れた。
「汝、迷える魂よ。元の肉体に戻りなさい。そうすれば貴方は目覚めるわ」
「はい」
友奈が光りに包まれる中、僕はゆっくりと前に出てあることを告げた。
「友奈!!僕は………お前のことが大好きだ」
「えっ!?」
「もう会えないかもしれないけど、これだけは伝えておきたかったんだ。返事はいい。ただ、思いだけは伝えたかった。それだけだ………」
「う、海くん………」
「さようなら。友奈」
「海くん!?」
友奈が僕の名前を告げた瞬間、友奈は光りに包まれ消えていくのであった。
「………えっと、カズマさん、カズマさん、私……悪いことしたのかな?」
「い、いや、今回はしょうがなくないか?でもな………」
「まさか告白するとは思っていませんでしたね」
「だが、一番辛い思いをするのはウミなのに………」
「これが海の選んだ答えなんだね……」
「………本当に良かったのか?」
「大丈夫?海くん?」
みんなが心配する中、僕はみんなの事を見ず、あることを告げた。
「これでよかったんですよ。僕はこの思いを伝えられただけで十分ですから………アクアさん、友奈を返してくれてありがとうございます。後で何かおごりますよ」
僕がそう告げた瞬間、クリスさんが後ろから抱きついてきた。
「ウミさん、いいんだよ。こういう時は無理しないで泣いても………」
「あはは、僕が泣く訳………」
気がつくと僕の頬に冷たい水が伝った。触れるとそれは涙だった。
「あはは、泣かないって決めてたのに………これで後悔も何もないって思ったから……」
涙が段々と溢れ、僕は膝をつき思いっきり泣いた。
「後悔ないわけ………ないだろ!!大好きな人ともう会えないのに………」
「ウミさん……今は思いっきり泣いていいんですよ」
「う、う、うああああああああああ」
僕は思いっきり泣いた。そんな僕に皆はそっと寄り添うのであった。
私が目を覚ましてから数日が経った。私はお見舞いに来た東郷さんに海くんが死んだことを聞いた。
「………知ってるよ。海くんが死んだってこと……」
「なんで?誰かから聞いたの?」
私は東郷さんに眠っていたときのことを話した。あの素晴らしい世界のこと、海くんにお別れを言ったこと、海くんに告白されたことを………
「信じられないよね?」
「信じるよ。だって友奈ちゃんが言うことだもん」
「私ね………またあの世界に行って、返事をしたいの。きっと海くんもそれを待ってるから…………」
友奈帰還回と最後にちょっとした伏線みたいなものです。
次回からは原作の話に戻ります