この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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28 ゆんゆんと特訓

夜になり、僕と銀、めぐみんはギルドで待ち合わせをしている歌野さんの所に行くのだが……

 

「久しぶりとは言え、良い談義だった」

 

「世界は違っても私と乃木さんは相容れないみたいだね」

 

歌野さんと若葉さんが暑い握手を交わしている中、ひなたお姉ちゃんともう一人の見覚えのない子は二人のことを見てニコニコ笑っていて、ゆんゆんは何故か居心地悪そうにしていた。

 

「一体何をしてるんですか?若葉さんたちも一緒だし……」

 

「海か。歌野とちょっとうどんと蕎麦について熱く語り合っていたんだ」

 

「前にもこうして蕎麦の良さとうどんの良さを語り合ったね」

 

そういえば同じ300年前の勇者だから知り合いなんだろうけど、どれだけ語り合ってるんだよ

 

「二人が一緒に食事を摂るといつもこうなんです……」

 

ゆんゆんは疲れた顔をしていた。いつも二人の話を聞きながらご飯食べていたら疲れるだろうな……

 

「海くん、海くん、この子は諏訪の巫女藤森水都ちゃん」

 

「初めまして、僕は上里海です。ひなたさんの子孫です」

 

「あれ?弟ができたって言ってなかったっけ?」

 

ひなたお姉ちゃん、あんた、いろんな事言いすぎじゃないかな?

 

「子孫だけど弟みたいだから、お姉ちゃんって呼んでもらってるの」

 

「そ、そうなんだ……」

 

水都さん、反応に困ってないか?

 

「あのあんまり気にしないでください」

 

「は、はい」

 

「それで君たちと話したいことだけど、海くんたちは未来の勇者なんだよね。未来について教えてくれない?」

 

「それぐらいでしたら良いですけど……」

 

僕と銀の二人は歌野さんに未来での出来事を話した。銀達、勇者の物語を、僕達勇者部の物語を……そしてこの世界にバーテックスがいるということを……

 

「なるほどね。海くんはこの世界にバーテックスが現れたのは自分が関係しているんじゃないかって考えているんだね」

 

「はい、現れたのも僕がこっちにやってきて少ししたあとですし……」

 

少なくても僕はそう考えている。だけど歌野さんはしばらく考え込み、

 

「やっぱりあの悪魔の言うとおりか」

 

「悪魔?」

 

「いや、こっちの話だ。上里さんからも君の勇者の力について聞いている。そこで海くん、君がやってる鍛錬をゆんゆんも参加させてくれないか?」

 

歌野さんがそう言うと、隣りに座っているめぐみんと歌野さんの隣りに座っているゆんゆんがが驚いた顔をしていた。

 

「ちょっと待ってください!?どうしてそういう話になるんですか!?」

 

「いや、詳しい話は出来ないが、今後のことを考えて、ゆんゆんを鍛えてあげたいと思ってね。乃木さんから君の話を聞いたから、ちょうどいいかなと思って……」

 

ゆんゆんと鍛錬か……確かゆんゆんって色んな魔法を使えるんだっけ?敵も魔物やバーテックスだけじゃなく、魔王軍幹部もいるし、魔法戦についても学んでもいいかな

 

「別にいいですよ」

 

「ウミ!?引き受けるんですか!?」

 

「まぁ、まぁ、めぐみん。海には何かしらの考えがあるんだよ」

 

「そ、そうかもしれませんが……」

 

「あ、あの、よろしくお願いします」

 

僕はゆんゆんに屋敷の場所を教え、屋敷の前で待ち合わせをする事になり、僕らは歌野さんと別れるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

若葉SIDE

 

海たちが帰るのを見送り、白鳥さんもゆんゆんを先に帰らせるのを見届けたあと、私はある事を聞いた。

 

「白鳥さん、どうして紅魔族の彼女を海と一緒に鍛錬させようと?」

 

「……少し前にバーテックスと遭遇した時、ゆんゆんの使う魔法がバーテックスに通じたんだ」

 

魔法が通じる?いや、そんな訳ない。街に現れたバーテックスに対して、冒険者たちが魔法を撃ったが、奴らには通じていなかった。いや、通じたことがあった。

 

「以前、完成体を爆裂魔法で消し去った事がある。あの時は爆裂魔法だからと思っていたが……」

 

「彼女たち紅魔族はバーテックスに対抗できる何かが有るんじゃないかって、私は思ってる。だからこそ、勇者の戦い方を海くんと一緒に学ばせようと思ってね」

 

「だからか………」

 

とりあえず納得する私だった。するとひなたと藤森さんが二人同時にふらついた。

 

「大丈夫か!?ひなた!?」

 

「大丈夫?みーちゃん」

 

「大丈夫だけど………水都さん……」

 

「うん、同じもの見たかもしれない」

 

巫女の予知か……一体彼女たちは何を見たんだ?

 

「………古きダンジョンにて、仮面の悪魔が倒れた時、空から災厄が現れる」

 

「そして赤き衣を纏った勇者はその生命をかける」

 

「赤き衣をまとった勇者………まさか!?」

 

私はとっさに思い浮かんだ人物は、三ノ輪銀だった。

 

「予知はそこまでしか見えなかったけど、銀ちゃんの身が……」

 

「変えられるのか?」

 

私がそう聞くが、首を横に振るのであった。

 

「予知を変えることは無理よ。変えようとしても少しだけ結果が変わるだけ」

 

「………この事はまだ黙っていよう。特に海はまだ話すべきじゃない。あいつはまだ例の件を気にしている」

 

私はそう言うと、白鳥さんはある事が気になっていた。

 

「仮面の悪魔………まさかあの人が……いや、あの人からしてみればそれを望んでいるのかも……」

 

「あの人の場合はそうかもしれないね」

 

白鳥さんも藤森さんも仮面の悪魔について何か知っているのか?だが、今は無理に予知を変えようとせず、なるべく良い方に予知を変えるように皆に頼まないとな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海SIDE

 

翌日、いつもどおり鍛錬に行こうとするとゆんゆんが屋敷の前で待っていたのだが、何故かめぐみんと銀の二人が僕よりも早く起きて待っていた。

 

「二人共起きるの早いな……」

 

「めぐみんがどうしてもって頼んできてね……」

 

「ギン!?それは言わないようにって言ったはずですよ!?私はただ二人がどんな鍛錬をするか気になっただけで……」

 

昨日から思っていたけど、僕がゆんゆんと一緒に鍛錬するのに何が気に入らないんだろう?そう思っていると、ゆんゆんが僕に耳打ちをしてきた。

 

「多分ですけど、めぐみん、ウミさんのことお兄さんだと思っているんじゃないんですか?だから取られると思って……」

 

「あーなるほどな」

 

「二人は何を話しているんですか!?ほら、早く行きますよ!」

 

めぐみんに怒られ、僕はみんなをいつも鍛錬をしている場所に連れて行くのであった。それにしても、お兄ちゃんみたいに思われてるんだな僕って………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いつも鍛錬をやっている場所に着き、僕は勇者の姿に変わり、

 

「いつもだったら素振りとか、各武器の鍛錬をやってるんだけど、ゆんゆん、一回模擬戦やらないか?」

 

「模擬戦ですか?」

 

「僕自身、爆裂魔法以外の魔法って知らないから、これを機に知っておいてもいいかなって思ってね」

 

ゆんゆんは考え込むが、すぐに持っていたロッドを取り出し構えた。

 

「分かりました。お願いします」

 

「それじゃ、銀。合図のほう頼む」

 

「分かった」

 

銀の開始の合図と同時に、ゆんゆんは詠唱を始めた。僕は生太刀を構え

 

「ファイヤーボール!」

 

火球が僕目掛け、放たれた。僕は生太刀で火球を切り裂こうとするが、さすがは魔法だけあって、切り裂くことは無理だった。僕は命中する寸前で避けた。

 

「魔法を切ることは不可能と……だったら!借りますよ!先輩!」

 

風先輩の大剣を取り出すと、ゆんゆんは次の準備を終わらせていた。

 

「ライトニング!」

 

迫りくる雷に対して、僕は大剣の大きさを少し変え、盾代わりにして魔法を受け止めた。

 

「海の奴、武器の使い方が上手くなってる!?」

 

「伊達に毎朝鍛錬を続けていますからね」

 

「あっ、でも、ゆんゆんが次の魔法を撃つ気だよ」

 

ゆんゆんは次の魔法の詠唱を始めていた。長引かせれば結構厄介だし、いい加減終わらせよう

 

「借りるぞ!友奈!」

 

友奈の鉄甲を装着し、地面を思いっきり蹴り、一気にゆんゆんとの距離を詰め、拳をゆんゆんの顔に当たる寸前で止めた。

 

「勝負アリだな」

 

僕がそう告げた瞬間、ゆんゆんは気が抜けたのか地面に座り込んだ。

 

「大丈夫か?寸止めだったけど……当たったか?」

 

僕は手を差し伸べるが、ゆんゆんは僕の手を掴もうとしなかった。ビビらせすぎたか?

 

「い、いえ、吃驚して腰が抜けちゃって……」

 

「魔法は威力が強いけど、距離を詰めれば詠唱を止めることができるし、至近距離で放ったら自分にも被害が出るから、そこら辺気をつけたほうがいいな」

 

「は、はい」

 

「まぁ後は近距離でも対応できるように体術とか覚えてもいいだろうし……」

 

「ゆんゆんは里の学校では体術も完璧でしたから、そこら辺は大丈夫だと思いますよ」

 

「逆にめぐみんは体育の授業サボってたもんね」

 

ゆんゆんがそう言った瞬間、めぐみんは目をそらしていた。授業とかサボるなよ

 

そんなこんなで、僕の鍛錬にゆんゆんが付き合うことになったのだった。

 

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