この素晴らしい勇者に祝福を!   作:水甲

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34 三人の勇者

銀を助けてくれたのは、もう会えないと思っていた友奈、東郷、そのっちの三人だった。友奈たちが二体のバーテックスと戦っている間、僕らと若葉さんたちは傷だらけの銀の元に駆け寄った。

 

「その怪我じゃ戦えそうにないな。アクアさん、銀の治療をお願いします」

 

「分かったわ。任せなさい」

 

アクアさんが銀の治療に入るのを見届けた僕は、若葉さんたちの方を見た。

 

「若葉さんたちはどうしてここに?」

 

「ひなたと藤森さんが銀が危ないという予知をしていてな…‥…すまない、お前に話しておくべきだと思っていたんだが……」

 

「いえ、若葉さんに何か考えがあったからですよね。気にしないでください」

 

僕はそう告げると、生太刀から樹の武器に変えた。

 

「待て、行くなら私達も……」

 

「若葉さん達はお疲れじゃないですか。今は休んでいて下さい」

 

僕は友奈たちと一緒に戦うために向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずはあの蟹型を倒すべきだと思い、ワイヤーで蟹型を縛り上げた。

 

「そのっち!!僕が抑えている内に!」

 

「カイくん!?ゆーゆから聞いてたけど、本当に勇者になったんだね~」

 

動きを止めた蟹型の頭に槍を突き刺すが、御霊が出るほどのダメージを負っていないし、更にはそのっちは槍を抜けないでいた。それだったら……

 

「借りるぞ!友奈!」

 

「えっ?」

 

いきなり名前を呼ばれて戸惑う友奈だった。ごめん、武器を出す時の掛け声みたいなものだから気にしないでほしい。とりあえず僕は思いっきり跳び上がり、突き刺さった槍目掛け炎を纏った蹴りを放った。

 

「勇者キック!!」

 

蹴りで突き刺さった槍が更に奥深く突き刺さり、御霊が出現した。

 

「友奈!」

 

「うん、勇者パンチ!!」

 

出現した御霊は友奈のパンチで砕かれ、蟹型が消滅していった。さて次は射手型だな。射手型は東郷が止めてくれているけど、かなり厄介な相手には変わりない。すぐに助けに入ろうとするが、何故か射手型が消滅していった。

 

「倒すの早くないか?」

 

「こう見えて一度は倒しているから………」

 

東郷はアクアさんの治療を受けて、眠りにつく銀の事を見つめながらそう言うのであった。あたりを見渡すと割れた空は元に戻るのを確認した僕ら一安心するのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バニルとの一戦、バーテックス討伐からしばらく経った日のこと、僕達はギルドでバニル討伐の報酬とデストロイヤー戦の報酬を受け取りに来ていた。

 

「冒険者、サトウカズマ殿!貴殿を表彰し、この街から感謝状を与えると同時に、嫌疑をかけたことに対し、深く謝罪を……そして遅くなりましたが、デストロイヤー戦と今回の戦いの報酬金を払います。しかし背負っていた借金、及び領主殿の屋敷の弁償金を報奨金から差し引き、借金を完済した残りの分、金、四千万エリスを進呈しここにその功績を称えます!」

 

今回の件でカズマさんの疑いも晴れて、セナさんから感謝状が送られることになった。バニルとの戦いで、魔王軍との繋がりがあるなら仲間を倒すことが出来ないはずだったのが、リーダーであるカズマさんは躊躇なく爆裂魔法を放ってと指示を出したり、アンデットのスキルであるドレインタッチの使用理由も仲間を助けるためだと思われたらしい。

 

そしてバニルに体を乗っ取られたダクネスさんはと言うと……

 

「ダスティネス・フォード・ララティーナ卿! 今回における貴公の献身素晴らしく。ダスティネス家に恥じぬ活躍に対し、王室から、感謝状並びに、一級鍛冶師による両手剣を贈ります」

 

新しい鎧と新しい剣を送られるのだが、何故か回りにいる冒険者たちに本名で呼ばれて、恥ずかしい思いをするのであった。

 

その後ギルドで宴会が始まる中、カズマさんがあることを聞いてきた。

 

「そういえばユウナとあの二人はどこ行ったんだ?」

 

バーテックスとの戦いの後、僕らはすぐに街に戻ることになったため、友奈たちとはそのまま別れたままだった。

 

「さぁ、聞きたいことがあったんだけど……」

 

「聞きたいことって告白の返事ですか?」

 

めぐみんの言葉を聞いた瞬間、僕は飲んでいたジュースを吹き出しそうになっていた。いや、確かに返事を聞きたいけどさ

 

「そっちじゃなくって、どうしてここにいるんだよって聞こうと思って……」

 

「そうなんですか?てっきり返事のことを……」

 

めぐみんは返事の件で僕をいじる気だ。僕は逃げるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めぐみんから逃げるとカズマさんとダクネスさんがギルドから出ていくのを見つけた。話を聞くと二人はバニルの件をウィズさんに話に行くとのことだった。あの時バニルが言っていたポンコツ店主はウィズさんのことだろう。

 

店の前にたどり着くとダクネスさんは重い口調で話しだした。

 

「カズマ。今回は私から報告しよう。ほんの一時だったが、体を共有し暴れまわった仲だ。人をからかうのは悪いことだが、そこまで悪い奴でもなかったと思う。エリス様に仕えるクルセイダーがこんなことを言ってはないが……嫌い奴ではなかったよ」

 

ダクネスさんが遠い目をしながら語り、店の扉を開けた。

 

「へいらっしゃい!店の前で何やら恥ずかしいセリフを吐いて遠い目をしていた娘よ、なんじに一つ言いたいことがある。まあ嫌いなやつではなかったよとのことだが、我々悪魔には性別がないのでそんな恥ずかしい告白を受けてもどうにもできず。…おっとこれは大変羞恥の悪感情、美味である!」

 

ダクネスさんが顔を真赤にさせながら、体を震わせていた。すると店の奥から出てきたウィズさんと何故か歌野さんたちが出てきた。

 

「あら皆さん、いらっしゃいませ!聞きましたよ、バニルさんを倒して疑いが晴れたとか!残るは借金だけですね!でも、大丈夫ですよ!このバニルさんはお金を稼ぐことに関しては凄いんですから!」

 

「いや、借金もどうにかできたけど……なぁ、ちょっと待て。なんでこいつ生きてるの?てかなんで無傷なんだよ」

 

「何を言うか、あんな物を食らえば流石の我輩も無傷ではすまん。ほら、この仮面をよく見ろ」

 

そう言われバニルの仮面をみる。よく見てるとひたいの部分に「Ⅱ」と書いてある。

 

「爆裂魔法で残機が減ったので今の我輩は、2代目バニルということだ」

 

「なめんな」

 

悪魔って本当に碌でもないな……

 

「というか歌野さんたちはどうしてここにいるんですか!?」

 

「どうしてって言われても……」

 

「私とうたのんはバニルさんと知り合いだったの」

 

まさか知り合いだったのか?この悪魔と?

 

話を聞くと少し前にバニルさんと遭遇したのだが、この世界にバーテックスが現れる理由を聞かされたらしい。

 

「この悪魔はかなり凶悪な力を持ってるし、バーテックスを倒すことだってやってのけるらしいわ。私たちは話し合って、利用価値があるって決めたのよ」

 

利用価値って意外と凄いことを言う人だな。歌野さんって……

 

「ふははは、我輩を利用するとまで言ってのけるこの小娘は、大変面白いであろう」

 

バニルさんの笑い声が響く中、僕はお店から出ていこうとすると、バニルさんはあることを忠告してきた。

 

「そこの胸に見栄を張っている女神と敵である神を取り込んでいる集合体の加護を受けし小僧よ。この先、お前は大変面白いことに巻き込まれるであろう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ウィズさんのお店を後にした僕だけど、お店の前にひなたお姉ちゃんとクリスさんがいた。

 

「海くん、少しいいかな?」

 

「何かあったんですか?」

 

「実はというとね。あの子達、ひなたさんのお家にいるみたいなの」

 

いるって、友奈たちが?もしかして保護してくれたのかな?

 

「色々と落ち着いてからの方が良いかなって思ってね。今日丁度いいかなって?」

 

「そうですね。僕も色々と聞きたいですし」

 

僕はひなたお姉ちゃんとクリスさんに付いていくのであった。

 

 

 

 

若葉さん達の家に入るとそこには銀も来ていた。どうやら銀も呼ばれたらしいな。だけど、何故か正座されてる。

 

「何事?」

 

それを見ていた友奈さんに聞いてみると、銀が死んだことや伝言で謝ってきたことについて、東郷に怒られたみたいだった。するとひなたお姉ちゃんは話を始めるということで、銀のお説教を終わらせるのであった。

 

「園子ちゃんたちは死んでこの世界に来たってことじゃないのね」

 

「そうだよ~カイくんみたいに若い歳で死んだり、ひなタンみたいに特例で来たわけじゃなくって、神樹様が作ってくれた道を通ってきたんだよ」

 

ん?今、ひなたお姉ちゃんのことなんて呼んだ?いや、聞き間違いか?

 

「神託があって、この世界にバーテックスが来ているって話だったんです」

 

「バーテックスが現れた理由については私たちは海くんから聞いてるよ」

 

ひなたさんは三人にバーテックスの出現理由を教えてくれた。まぁ、この事は僕がひなたお姉ちゃんに教えたのだけど……

 

「女神に、結界……友奈ちゃんから聞いてたけど、本当に異世界なのね」

 

「ね、すごい世界だよね」

 

「とりあえず、三人はこの世界に滞在することに?」

 

「そのことだけど~私達やあっちの世界にいる勇者たちは滞在することは出来ないの。もしもあっちで何か会った時に出遅れたら大変だからね~」

 

確かにバーテックスは、今はこっちの世界で進行を勧めてるけど、もしもその進行を諦めたら大変だろうな。

 

「でも、こっちの世界になるべく来るようにするようにって大赦に言われてるし、何かあったときのために直ぐに駆けつけるように勇者を一人こっちの世界にいるようにしておくから」

 

「ん?僕や若葉さんたちが連絡したりしたら駄目なのか?」

 

わざわざ一人残す必要が無いだろうと思っていると、そのっちは首を振った。

 

「大赦からもらった端末では、カイくんやわかちゃん達とは連絡をとりあうことが出来ないみたいなんだよね」

 

「私達が持っている勇者の力と海くんたちの力は似てるけどぜんぜん違うみたいって言われて、試してみたの」

 

いつの間にそんなことを試したんだよ。

 

「それでね。海くん、その残る勇者なんだけど、私が残ろうと思うの」

 

「友奈がどうして?」

 

「私は一度こっちに来たことあるから、それなりにこの世界に対応できるんじゃないかって」

 

確かにそれなら納得できる。その後、友奈はカズマさん達のパーティーに入ることになり、東郷とそのっちの二人は一旦元の世界に帰ることになったのだが、

 

「そういえば海くん、さっき連絡が入ってね。風先輩たちが一度来るって」

 

「どうして?」

 

「この世界について見て知りたいって、後は海くんに会いにかな?私やそのっちもまた来るからその時はよろしくね」

 

 

 

 

 

 

 




ゆゆゆ組は友奈が海たちと一緒に行動することになりました。告白の件は後々に……

次回からは勇者部メンバーが一人一人遊びに来る感じの話になります
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