「そう、造反神が魔王軍と……」
旅行からアクセルの街に帰ってきてから数日後のこと、僕はアルカンレティアであったことをひなたお姉ちゃんに話すため、屋敷に招き、話をしていた。
「なんとかみんなで協力して撃退しましたが、正直かなり厄介です」
「厄介?」
「今までは魔王軍とバーテックスは単体でしか戦ってなかった。最初に現れたときなんかベルディアと一緒に戦いましたけど、魔王軍と造反神が手を結んだことでこれから先はかなり厄介な戦いになると思います」
「………確かにそうかもしれないわね。今までは冒険者達と一緒に魔王軍かバーテックスと戦って何とか勝てたけど、その2つと同時に戦うとなると厳しい戦いになるわ。まぁ、でも海くん達のパーティーのリーダーは厄介事に巻き込まれないようにしているからそうそう魔王軍と戦うことはないだろうけどね」
ひなたお姉ちゃんはカズマさんたちの方を見た。カズマさんは紅茶を飲みながらのんびりと本を読み、アクアさんとめぐみんはチェスをしていて、ダクネスさん、友奈、銀の三人だけ僕らの話を真面目に聞いていた。
「おい、ヒナタ。俺のことを見てどうかしたのか?」
「いいえ、カズマさんは何人もの魔王軍幹部を撃退していて、かなり優秀な冒険者だなって思ってね」
「そ、そうか」
いや、カズマさん、照れなくていいか。その人さっきバカにした発言してたからね。すると友奈は何か気になることがあった。
「でも、今結界を張っているのは造反神なんだよね。そのおかげでバーテックスの進行を防げているって言うことになるけど……」
「そこが分からないんです。造反神は神樹を本当に裏切ったのかどうか………一体何のためにこんな事をしているのか………分からないことだらけですね」
ひなたお姉ちゃんもお手上げみたいだ。でも仕方ないことだもんな。300年近くバーテックスと戦ってきたけど、奴らは何のために人間を襲ったのか、奴らは本当に天の神の使いなのか?300年たってもわからないことだらけだ。
「ウミ、話を聞いているがかなり複雑なことになっているなお前が住んでいた国は」
「それもかなりね」
ダクネスさんはもちろんこっちの世界の人達には僕らは転生者だということは教えてない。この事はアクアさんやエリスさんから注意をされた。
理由は聞かなかったけど、何かしらの理由があるのだろうな。
「わからないことだらけなのはまだあるわ。どうして紅魔族の魔法だけバーテックスに通じるのかね。そこら辺は彼女のほうが調べてくれるといいけど、近いうちに彼女に会いに行ったほうがいいかしらね」
彼女………150年前の勇者であり、巫女でもある氷雨さんか。あの人は前に色んな事を調べているってめぐみんから聞いた覚えがある。一回会いに行くのもいいかもしれないな
「所で話は変わるけど、海くんと結城ちゃんはどこまでいったの?」
お姉ちゃんの突然の発言を聞き、僕と友奈は顔を真赤にさせていた。なんでそんなことを聞いてくるんだよ。この人は!?
「友奈ちゃんたちから聞いたけど、一緒にお風呂に入ったのよね。もしかして近いうちに子供でも…………」
「「いやいやいや!?」」
「僕らは健全な付き合いを……」
「うん、東郷さんにきつく言われてるもんね。ちゃんと海くんが責任取れるまではって………」
「あら、残念ね。未来の子孫が見れるかなって思ったけど」
「因みにキスはしたらしいぞ。あとはバスタオルまいていたけど、抱きしめあったって」
カズマさんはいきなり暴露してるし、というか何で知ってるんだよ!まさか………
「カズマさん、覗いていたのか?」
「俺は覗いてない。宿を出る前に職員の人が教えてくれたんだよ」
この世界にプライバシーというのはないのか?僕はため息をつき、ひなたお姉ちゃんは満足そうな顔をして帰ろうとすると、突然広間に誰かが入ってきた。
「ゆんゆん?」
「珍しいですね。ノックもせずに勝手に上がり込むなんて、ゆんゆんらしくもない」
めぐみんの言葉が聞こえてないのか、ゆんゆんは顔を真赤にさせながら僕の方を見て、
「あ、あの……突然こんな事言うのもなんですけど……!私……! 私……!! ウミさんの子供が欲しい!」
ゆんゆんの言葉を聞いて、カズマさんは紅茶を吹き出し、めぐみんとダクネスさんは口をぽかんと開いたままで、銀は僕とゆんゆんの方を何度も見て、ひなたお姉ちゃんは少し驚いた顔をし、友奈は慌てふためいていた。
いやいや、皆聞き間違いじゃないのかな?うん、きっとそうだ。
「ゆ、ゆんゆん。今なんて?」
「ウミさんの子供がほしいって言ったんです」
うん、聞き間違いじゃなかった。だけど僕の子供って言うと……なるほど旅行での一件をカズマさんかめぐみんから聞いて、僕らの子供の世話をしてみたいということだな。でも、何かしらあって慌てて『ほしい』って言ったのか。
「いや、ゆんゆん、誰から聞いたか知らないけど、一応僕がちゃんと責任取れるようにならないと僕と友奈はその………まぁ、結婚とか子供とかは………」
何だか言っていて恥ずかしくなった。
「違うんです。ウミさんと私の子供です!!」
「…………ちょっと待った!!」
これは本当にどういう事だ?あんなにいい子なゆんゆんがそんなことを言うなんて、ゆんゆんは僕と友奈が付き合っていることは知っているはずだし、人の恋人を取るような子じゃないのに……本当にどういうことだ。
「なぁ、頼むから修羅場に巻き込まないでくれよな」
カズマさんは関わりたくないみたいだし、ダクネスさんはと言うと
「どうしたらいいのかわからないが、ユウキの立場を自分と置き換えると………見知った女性に恋人を取られる。ふむ、中々なプレイだな」
頼むからこんな時に変なことを言わないでほしいんだけど、アクアさんはアクアさんで、
「そっかここにいらない子のクルセイダーを置けば……」
チェスに夢中で話に入ってきてないし、もう本当にどうにかしてほしい。心のなかで助けを求めているとめぐみんが立ち上がり、ゆんゆんに詰め寄った。
「ゆんゆん!何を言い出しているんですか!!いいですか!この二人の関係に茶々入れようとしないで下さい!!ウミとユウナの友達に物凄い怒られますよ!」
「で、でも、そうしないと世界が……魔王が……」
「まだいいますか!!この子は!!」
めぐみんはゆんゆんに掴みかかり、もう色々と大変な騒ぎになってきてる。友奈は友奈で悲しそうな顔をしてるし、銀とダクネスさんは二人の仲裁に入ってるし、ひなたお姉ちゃんとカズマさんはただ見ているだけだし……どうすればいいんだよ
「ただいま~帰る時にウミさんとユウナさんの友だちと会ったんだけど……」
「やっほ~二人共元気に………」
「何?この状況?」
タイミングいいのか悪いのかクリスさんと風先輩と夏凛が訪ねてきたのだった。僕は三人にあることを頼み込んだ。
「ごめん。この状況どうにかして…………」
どうにか先輩たちのおかげで、ゆんゆんを落ち着かせることに成功した僕。落ち着きを取り戻したゆんゆんはアクアさんが出したお茶を飲んでいた。
「それで一体何があったんだ?」
「実は……このままだと紅魔の里がなくなるかもしれないんです」
『はぁ!?』
その発言を聞いて、その場にいた全員が驚きの声をあげた。ゆんゆんは無言で封筒を取り出し、僕らはその封筒に入っていた手紙を読んだ。
『この手紙が届く頃には、私はもうこの世にはいないだろう。我々の力を恐れた魔王軍が、とうとう本格的な侵攻に乗り出したようだ。里の近くには巨大な軍事基地が建設され、魔王軍は数多くの配下と白い生物兵器と共に魔法に強い抵抗をもった魔王軍の幹部を送り出した。軍事基地の破壊もままならない現在、我らに採れる手段は限られている。この身を捨てても、魔王と刺し違える事。愛する娘よ。お前さえ残っていれば、紅魔族の血は絶えない。族長の座はお前に任せた。この世で最後の紅魔族として、その血を絶やさぬように』
まさか紅魔の里に魔王軍が……おまけに白い生物兵器って、造反神のバーテックスのことか。
「ちょっと待ってください。最後のって私がいるじゃないですか!?」
「というかこの手紙でどうしてウミとゆんゆんの子供がって話になるんだ?」
カズマさんはそう聞くと、ゆんゆんは二枚目の手紙を見るように促し、二枚目の手紙をよむと……
『里の占い師が、魔王軍による襲撃で、里壊滅という、絶望の未来を視たと同時に、希望の光も視る事になる。紅魔族唯一の生き残りゆんゆんは、いつの日か魔王を討つため、修行に励む彼女は、互いに研鑽を高めあった少年と結ばれるのであった。やがて月日は流れ、紅魔族の生き残りと、その男との間にできた子供はもう、少年と呼べる歳まで成長していた。彼は知らない。その少年こそが、男の跡を継ぎ、旅へ出る事になる。だが、少年は知らない。彼こそが、一族の敵である魔王を倒す者であると……』
「…………これはもしかして……」
手紙を読み終え、僕はある想像をした。
「もしかすると僕とゆんゆん以外全員……若葉さんたちはおろかあっちにいる勇者部メンバー全員が死ぬかもしれないってことだよな」
僕の言葉を聞いてその場にいた全員が驚いていた。勇者部メンバーも勇者システムの仕様が変わり、精霊の守りもなくなった。だとしたら死ぬ可能性が高いということだ。
「はい、この占った人もかなりの的中力がありますから……」
「だとしたら本当に厄介なことに………」
どうすればいいのか迷っていると、めぐみんが二枚目の手紙を見てあることを告げた。
「ちょっと待ってください。……こちらの手紙には、最後に『【紅魔族英雄伝 第一章】著者:あるえ』とあるのですが」
「どれどれ?あら、1枚目の手紙と字が違うわね。1枚目の手紙がゆんゆんのパパの手紙かしら。2枚目の手紙は、『追伸 郵便代が高いので族長に頼んで同封させてもらいました。二章ができたらまた送ります』って……」
「ああああああああああああああああああーっ!!」
アクアさんの言葉を聞いた瞬間、ゆんゆんは顔を真赤にさせながら手紙を奪い、クシャクシャに丸めて捨てるのであった。これは色々と恥ずかしいな。おまけにあの騒動もあったんだから余計に恥ずかしい。
「ご、ごめんなさい。ユウナさん」
「う、ううん、気にしてないよ」
「でも二枚目が創作だけど一枚目は本当のことだろうな」
魔王軍が紅魔の里に来ていて、かなりやばい状況になっている。これはどうにかしないとな
「私、里に行ってきます。このまま見過ごすことが出来ません」
「水都さんたちも行くのよね。それだったら私と若葉ちゃんも一緒にいくわ。丁度氷雨さんに聞きたいことがあったからね」
「ご迷惑をかけてごめんなさい」
ゆんゆんたちは屋敷を後にするのであった。残った僕らは……
「どうする?」
「行くべきだろうな。だけどめぐみん、どうしたい?」
「わ、私は………別にゆんゆんやワカバたちがいればきっと大丈夫でしょうし、ただ……里にいる妹が心配ですからね。行きます」
めぐみんも行くことを決意した。さて我らがリーダーはどうするのかな?
「たくっ、しょうがねぇな。フウとカリンの二人も来て早々悪いけど……」
「協力してあげるわよ。ここまで聞いたんだから行かなかったらおかしいしね」
「それに魔王軍幹部って奴にもちょっと興味があるわ。どれくらい強いのかってね」
先輩と夏凛も着いていくことになり、とりあえずある程度の準備のため出発は次の日の朝にすることになった