王女様との会食の日となり、僕らはダクネスさんの実家、ダスティネス家の屋敷に来ていたのだが………
「ウミ、お前眠そうだな」
「東郷に頼まれた演劇用の衣装をずっと作ってたのと皆の今日のドレスを作ってたから………」
二日前の事、ダクネスさんが会食で着る女性陣のドレスを試着してほしいとのことだった。僕とカズマさんは特に問題なく燕尾服を着れたのは良いけど、アクアさんは腰回りがブカブカで、めぐみんと銀は大きすぎて色々と落ちそうだった。友奈は少し大きすぎたみたいだった。一応ぴったりだった東郷と杏さんとひなたお姉ちゃんは特に問題なく着れた。
どうにかしないとのことでダクネスさんは僕にドレスの調整を頼むのであった。
「お前って、本当に器用だよな。冒険者家業なんてやめて衣類関係の仕事について方が良いんじゃないのか?」
「それを言うカズマさんこそ、商人になったほうが良いんじゃないの?前に作ったライターがすごく好評だったよね」
「最近、危険な冒険者家業よりそっちの方が良いと思い始めてる」
バニルさんとの商談でお金が沢山入ることになったし、無理に危険な冒険をする必要がないと思い始めてるけど、なんだか話が上手く行きすぎて、何かしらのドンデ返しが起きそうだって言わないほうが良いな
二人でそんなことを話していると、アクアさん達がドレスに着替えて僕らの部屋に入ってきた。
「どうよ二人共、馬子にも衣装でしょう。褒めてもいいのよ」
「はいはい綺麗綺麗。そんなことよりお姫様だ。昨日からこの屋敷に泊まってるんだろ?」
「……本当に無礼を働くなよ?お前はたまに、素でとんでもない暴言を吐く時があるからな。荒事商売である冒険者ということで大目に見られるかもしれないが!言葉遣い一つで本当に首が飛びかねん」
「そこら辺は大丈夫だよ。一通り礼儀作法教えたけど皆特に問題はないし」
ひなたお姉ちゃん、東郷、杏さんを除いたメンバーの礼儀作法教室では特に問題はなかった。ダクネスさんが心配していたカズマさんも特に問題らしいところはないし、
「ウミがそういうのなら安心だが、相手は一国の姫君だ。カズマもこの私がメイド服姿で奉仕までしたのだ。これで何かやらかしたらタダでは済まさんぞ」
特に突っ込まないでおいたけど、あのダクネスさんのメイド服姿は一体何だったのか?まぁ、カズマさんの口車に乗せられてあんな格好をしたのだろうけど……
「海くん、ドレス姿どうかな?」
「友奈、うん、似合ってるよ」
「えへへ~ありがとう~」
友奈はドレス姿を褒められて嬉しそうにしていると、東郷とひなたお姉ちゃんが羨ましそうにしていた。
「海くん、私はどうかな?」
「私たちは褒めてくれないのかな?」
「なんだか二人共ドレス姿に何故か違和感があるんだけど、二人は洋装より和装の方が良いかもしれないね」
「こっちの世界に合わせたんだけど、そう言ってくれるなら今度着てみるね」
「それじゃ着る時は海くんが作ってね」
いや、簡単に作れって言うけど、和服って作るとなると面倒なんだぞ。まぁ機会があれば作るけど……
「アクアは過度な宴会芸はやめろ。それとめぐみん、お前だけ身体検査だ」
「ちょっと待ってください!何で私だけ!?カズマやウミがいる前でやらないで下さい!?」
二人がもみ合いを始めていた。流石に身体検査をやるのであれば場所を選んでほしい。僕は顔を背けるのであった。
しばらくしてからめぐみんの胸元から出てきたのはモンスター除けの煙玉と開けると爆発するポーションだった。派手に登場したいんだろうけど流石にこういった場所ではやめた方が良いぞめぐみん
「うぅ、折角ギンと一緒に買ったのに……」
「銀、お前まで何か隠し持ってないだろうな……」
僕は銀の方を見ると銀は慌てて首を振っていた。
「いやいや、私は本当に今後の冒険のために買ったやつだからね」
「まぁ、銀はそういうことはしないわよ。ね、銀」
東郷がどこからか取り出した紐を持って銀に見せつけていた。何?アレを使って銀に何をするつもりだったんだ?
そんなこんなでようやく会食の時間になり、会場へと向かう僕ら。会場は高級すぎないほどの晩餐会用の広間で、周りには数人の使用人が控え、テーブルには色とりどりの豪華な料理が並んでいた。そしてテーブルの奥に座る純白のドレスに身を包んだ少女が王女様か。その両隣には白スーツの女性と黒いドレスの女性がいた。あの二人は護衛だろうな。
ダクネスさんが挨拶を済ませるとアクアさんの挨拶になったのだが、
「アークプリーストを務めております。アクアと申します。どうかお見知り置きを。……では、挨拶代わりの一芸披露を……」
寸前の所でダクネスさんはアクアさんの手を掴んだ。だけどその隙にめぐみんが隠し持っていた黒マントを取り出そうとし、銀に止められるのであった。最初からこんな調子で大丈夫だろうか?
ダクネスさんは場繋ぎをしろと僕にアイコンタクトをしてきたため、僕は挨拶を始めた。
「お初にお目にかかります。上里海と申し上げます。役職はここ一二年くらい前より新たな職業の一つである勇者です。本日はお招きありがとうございます」
「ここ最近に現れた謎の生命体を殲滅してきた方々ですね。特に貴方は色んな武器を扱えるみたいですが、どのようなものか見せてくださいと仰せだ」
白スーツさんが代わりに話していた。まぁ王女様っていうとこんな感じだろ。でも、武器を見せろか……
「申し訳ありません王女様。このような場で見せるようなものではありません」
「それは何故ですか?私の命令でもですか?……と仰せだ。ウエサト殿、王女様の命だ。断るのは無礼であるぞ」
「王女様、僕の持つ武器は物騒なものでして、下手に見せた際に王女様に怪我をさせてしまったらそれこそ無礼じゃないですか?」
僕がそう答えると王女様は白スーツに耳打ちをし、
「貴方の言うとおりですね。こちらも気が付かず申し訳ありません……と仰せだ」
さて納得してもらえたみたいだ。おまけにダクネスさんもホッとしてる。
次のカズマさんの番になったのだが、
「チェンジ」
いきなりとんでもない発言をして、ダクネスさんに連れて行かれた。チェンジって何がチェンジなんだよ。もしかして思っていた王女様と違ったからか?
二人が戻ってくるまでの間、残っている友奈たちが挨拶を済ませるのであった。
そしてダクネスさんとカズマさんが戻ってくると、白スーツさんが王女様の代わりに……
「あなた達が魔剣の勇者ミツルギの話していた人ね?さあ、聞かせて、あなたの話を……と仰せだ。私も聞きたいものです、あのミツルギ殿が一目置くというあなたの話を」
それからカズマさんはベルディアからシルビアの戦いをやや盛って話しだした。まぁ間違ってないし、王女様も嬉しそうだから問題はないな
だけどカズマさんの冒険者カードを見せてほしいとの話になり、カズマさんはそれを拒否した。カズマさん的にはリッチーのスキルがあるから見せ辛いんだろうけど……
「あ、あの、王女様。カズマさんの職業冒険者の特製の一つである他の職業のスキルを覚えられるのですが、そのスキルの一つには普通では覚えられないはずのスキルがあって、そのスキルはちょっとした事情で覚えたのですが、未だに誤解を受けてしまって……」
杏さんがフォローに入ってくれた。うん、これは助かるな。すると白スーツさんが疑いの眼差しでカズマさんを見ていた。
「最弱職だったのですか、ですがあなたは本当に先ほど言ったような活躍をなされたのですか?あなたはミツルギ殿との勝負にも勝ったことがあるとおっしゃっていましたが、それは本当なのですか?それが本当ならばあなたはミツルギ殿にどうやって勝ったのかを教えていただけませんか?」
カズマさんは更に戸惑っていた。流石にスティールで魔剣を奪って勝ったという嘘みたいなことは言えないだろうな。すると王女様は白スーツさんに耳打ちをし
「…そ、その…イケメンのミツルギ殿が最弱職の者に負けるなんて信じられない。王族である私に嘘をついてるのではないですか?魔剣使いのソードマスターの名は首都においては知れ渡っています。とにかくそんな彼が駆け出しの街の最弱職に負けるとはとても信じられません。彼はイケメンですし。…と仰せだ。…私もそう思います、彼はイケメンですし」
「おいお前ら、流石の俺でも引っ叩くぞ」
バカにされて口調が悪くなるカズマさん、正直僕も何も知らないのにただバカにしているのを聞いてイライラしてきたけど、ダクネスさんに迷惑はかけられないためここは我慢しないと……
「無礼者!貴様、王族に向かってお前ら呼ばわりとは何事だ!」
「申し訳ない、私の仲間が無礼なことを…!何分、礼儀作法も知らない男なので、私に免じ、どうかご容赦を…!」
ダクネスさんが代わりに謝ってくれた。すると王女様は更に耳打ちをし……
「アイリス様はこう仰せだ。今までこの国に対して多大な功績のある、ダスティネスの名に免じて不問とする。ですが気分を害しました。冒険譚の褒美はちゃんと取らせます。そこの最弱職の嘘つき男はそれを持って立ち去るがいい、と」
それを聞いためぐみんがダクネスさんの三つ編みを思いっきり引っ張った。だけど手を出そうとせず、じっと我慢していた。
「よく我慢できるな。僕なんか結構厳しいぞ」
「ウミ、ここで暴れるのは簡単ですが、暴れてはダクネスに迷惑がかかりますからね」
「海くんも我慢してね」
「分かってますよ」
ひなたお姉ちゃんは僕が苛ついているのに気がついていた。釘を刺された以上は我慢しないと……
するとダクネスさんが立ち上がり、頭を下げた。
「申し訳ありませんアイリス様。…先ほどの嘘つき男という言葉を取り消しては頂けませんか?この男は大げさに言ったものの、嘘は申しておりません。それに、最弱職ではありますが、いざという時には誰よりも頼りになる男です。お願いしますアイリス様。どうか先ほどの言葉を訂正し、彼に謝罪をしては頂けませんか?」
「何を言われるダスティネス卿、アイリス様に、一庶民に謝罪せよなどと…!」
ダクネスさんの言葉を聞いていきり立つ白スーツさん、すると王女様は立ち上がり僕らに聞こえるようにはっきり言い出した。
「……謝りません。嘘ではないと言うのなら、そこの男にどうやってミツルギ様に勝ったのかを説明させなさい。それができないと言うのなら、その男は弱くて口だけの嘘ッ!?」
王女様が無言でダクネスさんに頬を引っ叩かれ、その言葉が遮られてしまっていた。
「何をするダスティネス卿っ!」
激昂した白スーツさんが抜刀し、ダクネスに切りかかった。
「あっ! ダッ、ダメ……!」
王女様も慌てて止めようとするが、ダクネスさんに刃が迫ってきていたが……
「えっ?」
「なっ!?」
白スーツさん腕と剣に緑のワイヤーが巻きつかれ、寸前の所でダクネスさんの腕が切り落とされないように防げた。全員が僕の方を見ていた。まぁ止めたのは僕だということは丸分かりだもんな……
「このような場所で物騒なものはしまって下さい。それとも王女様に血腥いところを見せるのですか?」
僕は樹の武器をしまうと、王女様は安堵した表情をしていた。
「カズマさんの事を嘘つき呼ばわりをしたことは今は謝らなくて結構です。ですが、まずはその目と耳で真実を確かめるべきかと思いますよ。王女様」
僕は王女様の目を見つめながらそう告げると、王女様は頷くのであった。
「よし分かった。ここまで仲間が庇ってくれて教えないわけにもいかないだろ」
カズマさんが立ち上がるけど、僕はそれを止めた。
「カズマさん、別に見せようとしなくていいから……下手するとカズマさんとんでもないことしそうだし……」
「とんでもないことってなんだよ!?」
いや、それはスティールで下着を奪ったりとか……
「だけど……」
「カズマさんの活躍を嘘だっていう人がいたとしても、僕らがそれを証明している。それだけでいいじゃないか」
「う、まぁ、ウミがそう言うなら……」
カズマさんも落ち着きを取り戻し、なんやかんやで会食が終わるのであった。僕らは王女様たちを見送る中、王女様はカズマさんに嘘つきと言ってごめんなさいと謝るのであった。
「あの、貴方の冒険譚も聞かせてください」
「機会があればですけどね」
「それじゃあ、王女様。またいつの日か、俺の冒険話をお聞かせに参りますので」
「何を言っているの?」
黒いドレスさんがテレポートの詠唱を終わらせ、転送されようとした瞬間、王女様は僕とカズマさんの手を掴んでいた。
そして気がつくと目の前には大きなお城があり、白スーツさんと黒いドレスさんが驚いた顔をしており、王女様は笑顔で……
「また私に、冒険話をしてくれるって言ったじゃない?それに貴方の冒険譚も聞いてません」
まさか王都に連れてこられるなんて……